スクラム開発の「スプリント」とは?開発の流れやメリット・デメリットを解説
開発においては、プロダクトの内容や経営方針などによって、さまざまな手法が選択されます。
手法は大きく分けて、主要工程を逐一実施するウォーターフォール型と、短いサイクルでタスクを次々こなしていくアジャイル型があります。
中でも後者に含まれる「スクラム開発」は、少人数チームでの遂行やスプリント単位の開発、コミュニケーション重視など、多くの特徴を持つ手法です。
短期間で目に見える成果を得られる手法として、多くの現場で採用されています。
この記事では、スクラム開発について、どのような手法なのか、「スプリント」とは何かを、メリット・デメリットと合わせて見ていきましょう。
スクラム開発とは
まずは、スクラム開発がどのような手法なのか、アジャイル開発と合わせて解説します。
チームを編成してタスクを分割する開発手法
スクラム開発とは、少人数のチームを複数編成して、それぞれに役割・タスクを分配することで開発を進める手法です。
スクラム開発という用語は、ラグビーにおける、メンバーが組み合ってボールを争う「スクラム」というプレイが由来です。
一般的には10人程度の小規模なチームを編成し、その中で密接にコミュニケーションをとることで、チームワークを高めて開発に取り組みます。
また、プロジェクトマネージャー(PM)は任命せず、メンバー共同でプロジェクトの進捗管理をするというのも、この手法の特徴です。
その代わり、チーム間の橋渡しとしてプロジェクトの管理や交渉をおこなう「スクラムマネージャー(SM)」が置かれます。
この手法の目的としては、開発に携わる人々のコミュニケーションの活性化による、スムーズなプロジェクト進行が挙げられます。
メンバーどうしが連帯感を持ち、助け合うことで、開発効率を目指すというのが、スクラム開発です。
アジャイル開発との関係
スクラム開発は、アジャイル開発に含まれる開発手法です。
アジャイル開発は、ソフトウェア開発のプロセスにおける「計画・開発・実装・テスト」を、小さいプロセスに分割して繰り返すことで開発を進めます。
開発スピードが早く、仕様変更も柔軟におこなえるという特徴があります。
この手法に、少人数のチーム編成、スプリントと呼ばれるタスク割を組み込んだものがスクラム開発です。
スクラム開発におけるスプリント
スクラム開発において、プロジェクトは「スプリント」と呼ばれるフレームに分割されます。
短いサイクルの開発単位
スプリント(sprint)は「短距離走」などと訳される英単語で、アジャイル開発においては、小分けにされた開発プロセスを指す言葉です。
スクラム開発におけるスプリントは通常、1~4週間程度を目安とした開発・実装・テストのパッケージとして指定されます。
こうしたスクラムを繰り返しこなしていくことで、スピーディーな開発が可能です。
ちなみに、アジャイル開発には「イテレーション」という用語がありますが、スプリントとほとんど同じ意味で使われています。
スプリントを設定する理由
スクラム開発でスプリントを設定する理由としては、
「仕様変更が重なっていつまでも製品をリリースできないといった事態を避けるため」
です。
システム開発において、仕様変更はつきものですが、その箇所が多い場合や、大きな方向転換があると、システムをリリースすることが出来ません。
特にカスタマー向けのシステムの場合には、
「リリースが遅れる = 機会損失」
と捉えることが出来るため、リリースすることが非常に重要なのです。
スプリントによって、各機能の開発期限が逐一設定されることで、プロジェクトをスムーズに進められます。
スクラム開発の特徴
スクラム開発の特徴である
「小規模なチームでコミュニケーションをとり、スプリントをこなしていくこと」
について、もう少し詳しく解説します。
少人数で進行
スクラム開発は、多くても10人ほどの小規模なチームでタスクを進行します。
通常の開発では、各プロセスごとに人員が割り当てられるため、他のプロセスに深く関わることは少ないです。
しかしスクラム開発では、チームメンバー全員がすべてのプロセスに関わるのが大きな特徴です。
プロジェクトの進捗管理についてもメンバーが共同で担うため、チーム内の連携が強化されます。
短いサイクルでの開発
スクラム開発は、スプリントに次々と取り組むことで、短いサイクルでの開発が可能です。
仕様変更に容易に対応できるため、プロジェクトの軌道修正を前提とした手法でもあります。
この特徴によって、顧客のニーズを捉えやすくなり、より市場に合致した製品を開発できるようになります。
また、スプリントをスムーズに進めるためには「何を・どのように」開発するのかを明確にしなければなりません。
この具体化の作業を短期間でこなすのも、スクラム開発の特徴です。
コミュニケーションを重視する
スクラム開発では、メンバーそれぞれがプロジェクトにおける重要な役割を担います。
開発プロセスすべてに関わるだけでなく、進捗管理なども全員で進めなければなりません。
そのため、スクラム開発はコミュニケーションの重要度が高い手法です。
この開発方法において、スクラムマスターと呼ばれる役割が設置されるのは、円滑なコミュニケーションを保つ必要があるというのが理由です。
スクラム開発の流れ
スクラム開発において、スプリントは次のような工程で実行されます。
まずバックログを作成し、それを基にスプリント計画を作成。
スプリントを実行したら、結果を精査することで、次のサイクルへフィードバックします。
このサイクルについて、詳しく見ていきましょう。
プロダクトバックログの作成
まずは、スプリントの基礎となる「プロダクトバックログ」を作成します。
これは開発対象について、どのような機能を実装するのか、改修が必要な箇所はどこか、さらにユーザーからの要望などをまとめたドキュメントです。
各要素には優先順位がつけられており、スプリント計画に活かします。
スプリントの実行中にもユーザーニーズを忘れないよう、バックログを作りこむ必要があります。
スプリント計画
「スプリント計画」は、スプリントの期間や開発内容、チームの行動などを具体的に決めたものです。
メンバーそれぞれにどのタスクを割り当てるのか、担当するタスクをどのように実行するかといった、実際的な内容が盛り込まれています。
作成したスプリント計画は、プロダクトバックログとともにチーム内で共有されます。
スプリントを実行
スプリント計画をもとにして、実際に開発を進めていきます。
スプリント実施期間は「デイリースクラム」と呼ばれる定期ミーティングをおこない、プロジェクトの進捗や作業の現状と課題、今後の予定をチームで会議します。
仕様変更などが発生した場合、チームとしてどのように対応するかもミーティングの議題です。
スプリントレビュー
各スプリントの最後には「スプリントレビュー」が設置され、開発した機能についてテストをおこないます。
ここでの検証結果はバックログに反映されるため、今後の開発展望に発展する場面です。
スプリントレビューで問題が発見されなかったものについては、そのままプロダクトに実装され、リリースされます。
スプリントレトロスペクティブ
ひとつのスプリントが終了したら、ここまでの工程を検証する会議が開かれます。
今回のサイクルでの成果と課題を洗い出し、次のサイクルへフィードバックするため、スクラム開発に欠かせないプロセスです。
開発チームはここまでの成果を持って、新たなバックログを作成し、次のスプリントへ移ります。
スクラム開発のメリット
スクラム開発には、以下のようなメリットがあります。
開発効率が良い
チームメンバーそれぞれの役割とタスクが明確で、メンバー同士が協力してプロジェクトを進めていくため、それぞれの工程を効率的に進めることができます。
またスプリントを設計することで、短いサイクルで作業が進み、ハイペースでの開発・リリースが可能です。
短期間で目に見える成果を得られるのが、この手法のメリットです。
仕様変更に対応しやすい
各工程を逐一進めていくウォーターフォール型と違い、スクラム開発はひとつの工程が短く設定されているため、仕様変更へ柔軟に対応することができます。
ミーティングやレビューが頻繁におこなわれるため、フィードバックを反映しやすいのは、この手法の強みです。
また、全員がシステム全体の仕様の把握や進捗の把握を行っていることから
「この部分の仕様で、他の画面との矛盾が生じている」
などのチェックを全員が行えるため、無駄な仕様変更が発生しにくいのも特徴です。
見積もりを立てやすい
スプリント単位で工数を立てるため、詳細な見積もりがしやすいのもメリットです。
また、短期間で次の工程に進むので、スケジュールや工数の調整もしやすいというのも特徴です。
スクラム開発のデメリット
さまざまなメリットがある一方、スクラム開発には以下のようなデメリットも存在します。
高度なスキルが要求される
少人数のチームでスピーディーに開発していくため、メンバー全員に高度なスキルが求められます。
チーム内のスキルに差があると、足並みがそろわず、サイクルが乱れることにもなりかねません。
また開発スピードが速いため、新しいメンバーが入っても十分な教育ができないという現実もあります。
どのような人員を集めるのか、チーム編成が難しいのが難点です。
コミュニケーションの重要性が高い
チーム内で密にコミュニケーションをとる必要のある手法のため、高い開発スキルを持っていても、コミュニケーションが苦手な人がいると、チームの行動が鈍ってしまうことがあります。
チーム編成の際には、各人のコミュニケーション能力や、メンバー同士の相性なども考慮しなければならないため、社内環境によっては実施が難しい手法です。
管理工数の割合が高くなる
スクラム開発では、スプリントを行っていくために
・頻繁な定例会議
・スプリントごとのテスト
などを必要とします。
その際に、テスト仕様書の作成やエビデンスの作成、会議資料の作成などの雑務が生まれる可能性があります。
直接開発が進むわけではないこういった間接的な作業が、開発そのものの負荷を上げる要因ともなります。
適切なシステム開発はAMELAに
今回は、アジャイル開発の中でもスクラム開発と、その重要な概念でもあるスプリントについて見てきました。
システム開発の手法は多種多様で、適切なものを選択しなければ、長期的に見た時に大きなトラブルに発展する可能性があります。
今回のスクラム開発においても、仕様変更に対応しやすいなどのメリットが有る一方で、デメリットやリスクも有りました。
こういった特徴を総合的に判断して開発手法を選択する必要性があるのです。
AMELAでは、オフショア開発により優秀な海外のエンジニアを参画させ、幅広いシステム開発を行うことが出来ます。
もちろん、規模や開発するシステム・参画するメンバーなどによって適切な開発手法を選び、質の高いシステムを作っていきます。
システム開発でお困りの場合には、是非一度ご相談ください。