意外と知らない?Bluetoothとは?生活のあらゆる場面に登場するその仕組みを解説

Bluetoothを使う機会は、非常に多くなってきました。 しかし、単にスマホやパソコンからヘッドホンやプリンターに無線でつなぐものだと思っていませんか? このような用途に使われるのは 「Bluetooth Classic」 というのもで、それ以外に、Bluetooth Low EnergyやBluetooth Meshもあります。 前者はカーナビでお馴染みのビーコンや医療機器などに使われており、後者を利用したショッピングセンターなどの広域施設も検討されています。 今回は、このように急速な広がりを見せるBluetoothについて、その仕組みを解説します。

Bluetoothとは

Bluetoothとは

Bluetoothとは[/caption] Bluetoothは短距離ワイヤレス接続に関する国際標準規格で、複数のデバイス間をメーカーに依存しない汎用的な短距離無線通信で接続するものです。 様々な機器との接続を固定することなく、およそ10mの範囲なら無線で機動的に繋ぐことができるため、低コストなソリューションとして普及が進んでいます。 Bluetoothは、プリンタやデスクトップパソコン、キーボード以外にも、自動車や検査機器、計測機器などにも採り入れられ、IOT機器やショッピングセンターなど広い場所での通信手段としても注目されています。

Bluetoothの特徴

Bluetoothはどのような特徴を備えているのでしょうか。

近距離無線通信技術

Bluetoothは、2.4GHz帯の無線周波数を利用した近距離無線通信規格です。 パソコンやスマートフォン、カーナビなどとプリンターやキーボード、デジカメ、ビーコンなどに接続する標準的なワイヤレス技術となっています。 今では、多種の機器間でネットワークを構築して、ショッピングセンターなどの広い施設内の通信手段としても考えられるようになっています。

接続のための設定が不要

一度ペアリングすれば、その後は電源をONするだけて自動接続してくれます。 例えば、無線のマウスを一度接続すれば、パソコンの電源を落としても、次回利用する時に設定は必要ありません。 最近では一台のBluetooth機器に複数の機器を自動接続するマルチペアリング機能を搭載した機器も登場しています。 常時接続ではなく、通信したい時にだけ接続することも可能です。

グローバル認証された規格

グローバルな認証機関があり、Bluetoothロゴの付いた製品の互換性を保証しています。 このため、認証機関は製品分野ごとの仕様を定めたプロファイルを公開し、ロゴの付いた製品の互換性の維持に努めています。

他の近距離通信手段との違い

Bluetoothは他の近距離通信手段と比較してどのような違いがあるのでしょうか。

赤外線通信との違い

赤外線は電磁波が直進するので指向性が高いです。 赤外線リモコンなどは操作対象に対してまっすぐ向けないと操作できません。 しかし、Bluetoothは指向性が低いため機器の方向を意識する必要はありません。 また、赤外線は最大1mの範囲でしか届かず、途中に障害物があれば通信できません。 これに対し、Bluetoothなら最大10mの範囲で、途中に障害物があっても通信できます。 加えて、通信速度は赤外線は最大で4Mbpsですが、Bluetoothは24Mbpsですから動画や写真データも送受信できます。 一方で、赤外線通信にはペアリングの必要性がないことや、電波の干渉がないため電子レンジやWiFiと同時利用することができるメリットがあります。

WiFiとの違い

Bluetoothは2.4GHzの電波を使うのでWiFiと共通する所が多いです。 ただし、Bluetoothの技術は1対1での通信を想定して、 「WiFiに比べて通信速度はやや遅く、通信距離も短いが、消費電力が少ない」 ところにフォーカスしていいます。 通信するデータ量が少なくて、消費電力が少なく長時間使用する用途、例えばキーボードやマウスなどの分野にBluetoothを使うならば、前節で述べた特徴を活かせます。

Bluetooth規格の概要

Bluetooth規格の概要

Bluetooth規格の概要[/caption] ここでは、Bluetooth規格とはどんなものか概を説明します。

Bluetooth規格の用語

Bluetoothの機能は 「バージョン」 「クラス」 「プロファイル」 の3つで指し示すことができます。 それぞれの用語が何を意味するのか見ていきましょう。

バージョン

Bluetooth規格は、1999年にVer. 1.0が公開されて以来、バージョンアップを繰り返し、現在はVer.5.2です。 ・Ver1.0:ワイヤレスヘッドホン、携帯電話、プリンタ、マウスなどに採用 ・Ver2.0:データ通信速度の拡張機能が追加 ・Ver3.0:データ通信速度の高速化で、大容量の動画データなどの送信が可能に ・Ver4.0:新しい通信規格により低消費電力化され従来の1/10に ・Ver5.0:IOT対応

クラス

電波の到達距離によって3つのクラスがあり、クラス1および2は私たちが日常使うものです。 ・クラス1:100m以内 ・クラス2:10m以内 ・クラス3:1m以内

プロファイル

Bluetoothは様々な製品に使われていますが、製品分野ごとの互換性を保証しているのがプロファイルです。 プロファイルには「標準プロファイル」と「カスタムプロファイル」があり、前者は業界団体のBluetooth SIGが定義して公開しています。 カスタムプロファイルはメーカーが自社固有の機能を実装した独自のものです。 次に、Bluetoothの規格とプロファイルの関係について説明していきましょう。 Bluetoothの規格については後で詳しく説明しますが、「Bluetooth Classic」と「Bluetooth Low Energy」に大別されます。 Bluetooth Classicの主なプロファイルは次のものです。 ・A2DP:オーディオデバイスと音声データのやりとり ・BPP:プリンタへデータを転送・印刷 ・HFP:ハンズフリーを使用 ・HID:マウスやキーボードなどの入力デバイスと接続 ・HSP:ヘッドセットと接続 Bluetooth Low Energyの主なプロファイルは次のものです。 ・BLP:血圧値測定用 ・CGMP:連続血糖値モニタリング用 ・FMP:置き忘れ防止用 ・HRP:心拍数測定用 ・IPSP:Bluetoothテザリング用 ・PXP:近接判定用

規格の種類および名称

Bluetoothには用途別に次の3種類の規格があり、「Bluetooth Classic」のように呼ばれています。 発表順は次の通りですが、これらの規格は現在も使われています。 ・Bluetooth Classic:Ver1で登場、高速 ・Bluetooth Low Energy(BLE):Ver4で登場、省電力 ・Bluetooth Mesh:Ver5で登場、IOT対応

規格の種類とブランド名

Bluetooth対応デバイスに表示されているブランド名と規格との対応は以下の通りです。 ・「Bluetooth」:Bluetooth Classicのみに対応 ・「Bluetooth Smart」: BLEのみに対応 ・「Bluetooth Smart Ready」:Bluetooth ClassicとBLEの両方に対応

各Bluetooth規格の概要と用途

各Bluetooth規格の概要と用途

各Bluetooth規格の概要と用途[/caption] 次に、Bluetoothの3つの規格について概要と用途を説明します。

Bluetooth Classic

2つの機器間をピアツーピアで通信します。 Bluetooth Classicには複数機能を持つプロファイルが多くあります。 中には、スマートフォンやカーナビなどとハンズフリー通話できるようにするものもあります。 HFPはハンズフリー用のプロファイルで、スマホとヘッドセット間で電話の発着信や通話などを行うためのものです。 これ以外に、Bluetooth Classicはスマートフォンやパソコンをヘッドホンやスピーカー、プリンターなどに接続するのにも利用されています。 このようにBluetooth Classicはプロファイルが充実していますから、プロファイルが適合すればBluetooth Classicを活用することをお薦めします。

Bluetooth Low Energy(BLE)

BLEはピアツーピア通信以外に、「1対多」のブロードキャスト通信も可能です。 BLEには単一機能でメモリをあまり必要としない用途のプロファイルが多いです。 主な用途はウェアラブル端末や体温計、体重計などです。 ブロードキャスト通信を利用した用途の一例としてビーコンがあります。 カーナビの場合、道路上に設置されたビーコンから電波を受け取り渋滞や通行止めなどの情報をキャッチしています。 この場合、ビーコンは電波でパケットを送り続け、カーナビはスキャンしていることでパケットを確実に受信できます。 BLE用のチップは安価のものが多くありますから、用途が適合するならBLEを選択することをお薦めします。

Bluetooth Mesh

Ver5はBLEにMesh専用のプロファイルを実装したもの。 Bluetooth Ver.5.0ではBLEの「1対多」を「多対多」に拡張したメッシュネットワーク機能が追加されました。 照明や空調などさまざまなモノ同士をつなげたスマートホームやスマートビルディングを可能にするものです。 ネットワーク構成はプロファイルで指定し、1つのネットワークに最大32,000台のデバイスが収容できます。 電波の到達距離は短いですが、網目のように張り巡らせたノード(デバイスのこと)からノードへ情報を中継させることで、電波が直接届かないところにまで信号を届けることができます。 このようにして、製造施設やショッピングセンターなど広い場所でもカバーできます。

各Bluetooth規格の仕組み

各Bluetooth規格の仕組み

各Bluetooth規格の仕組み[/caption] ここでは、Bluetoothの3つの規格の仕組みについて概説します。

Bluetooth Classicの仕組み

周波数帯は2.4GHzの79チャネルを使用し、周波数ホッピングスペクトラム拡散方式で変調しています。 最大パケットサイズは1024Byteで音声に対応しています。 Bluetooth Classicはピアツーピア通信で、マスター(親機)とスレーブ(周辺機器)とにペアリングして動作させ、このペアリング認証は必須です。 マスターが同時に接続できるスレーブは7台までです。 常時接続方式で、大容量データを効率化よく転送できますが、消費電力は大きいです。

Bluetooth Low Energy(BLE)の仕組み

BLEはプロトコルがもう少し複雑になりますので、整理して説明しましょう。

物理的なプロトコルなど

周波数帯は2.4GHzの40チャネルを使用し、GF5K方式で変調しています。 最大パケットサイズは251Byteで音声には対応していません。 ペアリング認証はオプションになっています。 同時接続できるデバイス数は無制限です。 BLEは接続と切断を繰り返すことで消費電力を押さえたもので、Bluetooth Classicとの互換性はありません。 消費電力はボタン電池1個で寿命は約1年間です。 Bluetooth Classicよりも大幅にバッテリー寿命は長いですが、通信速度は低く10kbps程度で利用されていることが多いです。

論理的なプロトコル

BLEが提供する「1対多」通信は、例えば ・ビーコンが不特定多数に向けて定期的に自身の情報を発信し続ける ・カーナビが発信されてきた電波をスキャンして、近くのビーコンを認識して通信する という具合に行います。 この例では、カーナビとビーコンの間で、 ・接続要請信号:カーナビ → ビーコン ・接続確立信号:カーナビ ← ビーコン ・データのやり取り:カーナビ ← ビーコン ・接続切断信号:カーナビ → ビーコン というやり取りが行われます。 これらのやり取りをするためのプロトコルには、「コントローラ層」と「ホスト層」、「アプリケーション層」があります。 コントローラ層では、 ・デバイス間のペアリング実施やデータの送受信の方法 ・通信周波数・制御などのハードウェア などが定義されます。 「ホスト層」では、 ・通信の多重化 ・セキュリティ・マネージャー をはじめ、Bluetoothの標準的な機能を実装します。 アプリケーション層は、各種APIを使って、利用目的に合わせて開発者が個別に実装・定義します。

Bluetooth Meshの仕組み

MeshではBLEに「多対多」のメッシュネットワークの仕組みが追加されました。

メッシュネットワークを構成する諸機能

メッシュネットワークを構成する主要な機能は次の3つです。 第1の機能は「通信領域拡大」で、 ・網目のようにつながったネットワークのノードで、 ・デバイスが通信を中継して隣のノードに送信 ・このようなバトンタッチが次々行われる ことで広い範囲の通信を可能にするものです。 第2の機能は「ネットワーク拡張」で、新しいデバイスをネットワークに追加する際に、ルートの再設定を不要とするものです。 第3の機能は「耐障害」で、ネットワーク内のデバイスが故障しても別ルートで通信を維持できるようにします。

諸機能を実現する仕掛け

メッシュネットワークの仕組みを構成する諸機能を実現するのに次の2つの仕掛けを使います。 第1の仕掛けは、ノードのメッセージ中継に関するものです。 各ノードは、 ・無線が届く範囲内からメッセージを受け取る ・受け取ったメッセージをブロードキャストする ・自身がブロードキャストしたメッセージを記憶しておき受け取らない などの様に制御します。 第2の仕掛けは、このようなノードの動作を可能とするデバイス機能に関するものです。 各デバイスは下記の何れかの機能を持っています。 ・Proxy機能(Bluetooth Meshスタックを持たないデバイスとのメッセージ送受信) ・Relay機能(受信したメッセージを他のノードへ転送する) ・Low Power機能(通常はスリープ状態、定期的に目覚めてメッセージを受け取る) ・Friend機能(常に励起状態) Friend機能のデバイスは幾つかのLow Power機能のデバイスと密接な関係を持ち、 ・Low Power機能のデバイスに電気を供給したり ・Low Power機能のデバイス宛のメッセージを預かったり という機能を持ちます。

技術的な相談ならAMELAに

技術的な相談ならAMELAに

技術的な相談ならAMELAに[/caption] 今回は、一般的に利用されるBluetoothの仕組みについて見てきました。 普段何気なく使っている技術にも、様々な機能や用途があり、場合によっては自社のビジネスを助ける大きな武器になる可能性もあります。 しかし、多くの企業がそれらの記述や仕組みを活用できずに苦しんでいます。 AMELAは、様々な業界のシステムを開発し、日々最新技術を学んでいます。 ちょっとしたITに関する相談から、大規模なシステム開発まで、是非ご相談下さい。