企業に潜むレピュテーションリスクとは?原因や対応策は?
企業を運営するためには、様々なリスクを回避したり、事前に対処法を考えたりする必要があります。 10年以内に9割の企業が潰れるといったデータは有名ですが、しっかりとリスクを回避することで、企業生存率を高めることができるでしょう。 今回は、そんなビジネスの継続に不可欠な 「レピュテーションリスク」 について見ていこうと思います。
レピュテーションリスクとは
レピュテーションリスクとは レピュテーションとは、企業などに対する評価のことで、他者からの評価によって経営状況が左右される危険性のことをレピュテーションリスクと言います。 わかりやすいのが、SNSなどで悪い評判が流れたり、炎上することで、売上が激減してしまう・・・などです。 昨今は、SNSを誰もが行なっていたり、企業側も様々な内容をマーケティングのために発信したりと、ネット上での関わりが増えてきたからこそ、より広く・より早く情報が拡散し、それがレピュテーションリスクにも繋がっています。 経済産業省「2003年事業リスク評価・管理人材育成システム開発事業」では、レピュテーションリスクは11あるリスクの内、技術・製品要因リスク・市場リスク・信用リスク・情報システムリスクに次いで5番目に重要なリスクと認識されています。 製品の故障や市場の変化によって経営難になることは、容易に想像ができるかと思いますが、そんなリスクに次いでレピュテーションリスクも上位にランク付されていることからも、このレピュテーションリスクがいかに重要なものであるかが伺えるでしょう。
レピュテーションリスクで意識したい6つのポイント
レピュテーションリスクで意識したい6つのポイント では、どのような点に注意をすれば良いのでしょうか。 ここでは、レピュテーションリスクを考える上で重要な視点についてみていきましょう。
製品・サービス
当然ですが、製品やサービスは最も重要な物です。 製品開発に手を抜いていると消費者に伝われば、それだけで悪い評判が流れる可能性があります。 自社で商品を作っていない場合でも、商品を販売して故障していた場合などは、消費者心理としては 「購入店が悪い」 と考えるケースが多いです。 そのため、万が一故障などがあった場合には、しっかりと返品・返金対応をするなど、誠実な対応が求められます。 また、意識が薄れがちになるのが、接客態度や空間の清潔感などでしょう。 店舗が汚いことや、挨拶ができない店員がいると、それだけで星を下げてクチコミする人も多く、少なくとも 「一般的に求められるレベル」 に達している必要性があります。
企業理念との相違
企業理念と実際の業務に相違があるケースも、レピュテーションリスクが高いと言えます。 例えば、安さを売りにしている企業が暴利を貪るようなビジネススタイルを取っていたり、顧客第一主義を謳っているのにサポートが悪いなど。 言っている事とやっている事が違うというのは、人間関係においても悪い印象を与えるのと同様で、企業理念と社員の行動を一致させることも重要になるのです。
職場環境
職場の空気感というのは、お客様に伝わってしまう事が多々あります。 売上ノルマが高いために、執拗に即日購入を促す企業など、顧客として心地よいものではありません。 しかし、意外とそういった顧客の精神面に寄り添えている企業は少なく、それが元で悪い評判に発展するケースもあるのです。
社会通念
社会通念的に 「〇〇するべきだ」 という考え方に反する場合も悪い評判に繋がります。 例えば、環境破壊。 環境保護の観点から、梱包は最小限にするというのが現在の社会通念であり、それに反して過剰な梱包をしている場合などは、悪い評価に繋がる可能性があります。 数年前に、Amazonの過剰梱包が話題になりましたが、作業効率や梱包資材の種類を減らすことでコストカットになっていた可能性もありますが、評判としては悪かったですよね。 このように、実際に会社としてメリットがある場合でも、社会通念に反している場合にはレピュテーションリスクが高くなります。
リーダーの人格
マーケティングの業界ではしばしば言われる事ですが、 「何を買うかも重要だが、誰から買うかも重要だ」 という心理があります。 例え良い商品であっても、経営者が気に食わないから買わない。 それでも購入する人もいるため、大衆心理とは言い難いですが、購入を避ける人も少なくありません。 強烈なインパクトで賛否が分かれるような経営者でも、商品力で圧倒的な成果を出している企業も存在しますが、レピュテーションリスクという点だけで見るなら、リーダーの人格も大きく関係してきます。
顧客の期待
商品やサービスの販売において 「期待値」 というのは非常に重要です。 多くの人が日常的に ・思ったよりも良い商品で感動した ・思ったよりも安くて嬉しかった ・思ったよりも品質が悪くてガッカリした ということを経験していると思います。 この「思ったより」という基準が期待値です。 期待値が高ければ高いほど、それを下回った時の落胆も大きくなります。 反対に、期待値が低い状態で相乗以上に良い商品を提供することで、クチコミが期待できます。 ここで注目したいのは、基本的にマーケティングでは、買ってもらうためにも 「期待値を上げる」 ような施策を打つということです。 芸能人を起用したり、写真にこだわったり。 期待値を上げることが基本的なマーケティングになりますので、それに見合うだけの商品・サービスでない場合にはクレームに繋がる可能性があります。 そのため、過度なマーケティングは、レピュテーションリスクが高くなるとも言えるでしょう。
レピュテーションが起こる原因
レピュテーションが起こる原因 単に個人が良い・悪い評価をしたとしても、それがレピュテーションリスクとして判断されることはありません。 その情報が多くの人に拡散され、会社のイメージを左右する事がリスクなのです。 では、どうしてレピュテーションが起こるのでしょうか。
企業の法令違反
企業の法令違反は、かなり大きなレピュテーションリスクと言えます。 不正会計や脱税・表示偽装など、これまで多くのニュースで取り上げられていますが、こういった事件はメディアでの反響が大きいです。 若者のテレビ離れが言われている昨今でも、まだまだメディアの影響力は大きく、一気に拡散されてしまいます。
社員の不祥事
社員の不祥事もレピュテーションが起こる大きな原因です。 仕事に関係のない所で、仮に社員が犯罪で捕まった場合、多くのケースではその会社にも風評被害が出ます。 特に、ネット上には個人情報を探して制裁をしようとする個人もおり、それ自体も問題視されていますが、勤め先が公開されてしまうケースも少なくありません。
SNSやサイト・ブログでの酷評
商品やサービスの質に関しては、SNSやサイト・ブログなどの個人メディアで酷評されるケースが多いです。 特に、最近はインスタグラマーなどのインフルエンサーが大きな影響力を持つ時代です。 個人によって趣味嗜好が異なるだけの場合でも、案件としてお金を支払っていない限り、個人的な感想ネットにあげられ、その結果自社製品の評価が下がると言う可能性は避けられないでしょう。
モラル・教育不足
社員やアルバイトのモラルや教育不足による悪評も非常に多いです。 わかりやすいのは、ツイッターにバイト中の悪ふざけをアップしているようなケース。 他店舗経営をしている店ほど、管理は難しくなりますが、一部の人間の軽率な行動により、経営状況が悪化するという例もあるのです。
情報漏えい
個人情報に過敏になっている現代では、個人情報の流出は非常に大きな社会問題になります。 特にネットショップをはじめとするクレジットカードなどの決済情報を扱っている企業や、マイナンバーを取り扱う企業では、この情報漏えいが命取りになる可能性も高いです。
内部告発
企業の法令違反が、発覚しておらず、長年にわたって継続されているケースもありますが、その中には内部告発によって露呈する場合があります。 他にも、解雇された社員が逆恨みをして有る事無い事言ってしまうケースも少なからずあるでしょう。
レピュテーションリスクによる損失
レピュテーションリスクによる損失 では、悪評が出てしまうと、どのような損失が考えられるのでしょうか。
収益低下
売上が低下することは避けられないでしょう。 中には 「そこまで悪評が出ているなら逆に試してみよう」 という怖いもの見たさの顧客も存在するかもしれませんが、売上が低迷する可能性の方が圧倒的に高いでしょう。
ブランドイメージが下がる
事態が終息するまでの短期間の売上の影響だけではなく、ブランドイメージそのものを下げてしまうケースもあります。 例えば、高級品ブランドが産地や原材料を偽装していた場合、どれだけブランドイメージ回復に努めたとしても、元のイメージ以上になることは難しいでしょう。 もちろん、キャンペーンや今後の対応次第では、多少の回復は見込めますが、経営者が変わるなど、抜本的な改革が行われなければ難しいでしょう。
事態の終息にかかるコスト
もしも深刻な悪評になってしまった場合には、ネット上での憶測による投稿などの削除依頼や、謝罪会見、クレーム対応など、様々な部分に人を使うでしょう。 また、イメージを回復するためにCMを打つなど、施策にコストを使うことも考えられます。 このように、金銭的に見れば売上が下がる以上のダメージがあるのです。
商品の回収コスト
商品の重大な不具合などの場合には、商品を回収するコストもかかります。 大きな商品ほど配送料がかかりますし、返金処理などにも大きな金額が必要でしょう。 さらに、戻ってきた商品を廃棄するコストを考えると、かなりのコストになるでしょう。
対応策導入のコスト
今後同じようなミスが起きない様にしようと思った時に、システムの導入を強いられるケースがあります。 例えば、配送業において荷物の紛失があった場合。 在庫管理や配送管理のシステムを新しくして、同じような問題が起きない様にする必要があります。 このシステム導入のコストがかかってきます。
レピュテーションリスクを下げるための手法
レピュテーションリスクを下げるための手法 では、このレピュテーションリスクを下げるためには、どのような対策をしておけば良いのでしょうか。
商品・サービスに対する企業努力
商品やサービスの日常的な改良は、企業にといって非常に重要です。 一気に改良することも重要ですが、日々少しずつ改善していくことも重要です。 この企業努力を行うことで、よほどの事が無ければ商品が酷評される事は少なくなるでしょう。
一貫した情報発信
情報発信は、多くの企業が行なっていると思います。 特にSNSや自社メディアは、マーケティングとして行なっている企業も多いでしょう。 その際に、一貫した情報発信ができているかが重要になります。 例えば、ネットではキャンペーンと書いていたのに、店舗に来たらキャンペーンはやっていないと言われた。 よくよく聞けば、〇〇店だけのキャンペーンだった・・・ と言うような話はどの企業でも起こりえます。 そのため、 ・キャンペーンの内容をわかりやすくする ・キャンペーン期限を明記する ・対象商品、店舗をわかりやすくする ・重要事項は短い文でわかりやすい配置にする ・気軽にキャンペーンについて問い合わせられる環境を作る など、顧客の誤解を招かない情報発信を大切にしましょう。 更に、各店舗ごとにSNSアカウントを作っている様な企業の場合は、本社である程度発信内容を把握しておく必要があるでしょう。 一部店舗がアルバイトにSNS運用を任せて、社外秘の情報を発信してしまった・・・ というようなことが無い様に注意しておきましょう。
顧客に対する誠実なビジネス
顧客に対して誠実な対応をする事がビジネスの基本になります。 ・返品や返金の条件をわかりやすくしておく ・価格や注意点などを見やすい場所に記載する ・問い合わせがしやすい様にしておく ・適正な価格で提供する ・配送などの状況がわかる様にしておく など、顧客にとって誠実なビジネスを行う事で、レピュテーションリスクを下げることができるでしょう。
社員教育
社員の教育は、レピュテーションリスクから考えても非常に重要です。 バイトテロや接客態度の悪さによるクレームは、教育がしっかりとしているだけでも、回避できる可能性が高いです。 また、商品知識や社内のルールを明確化して、社員全員に周知する事で、 ・顧客対応品質の向上/統一化 ・知識不足によるクレームの軽減 を図れます。
ネット情報の管理
次に、ネット情報を定期的にチェックすることも重要です。 例えば、 ・Googleマップの評価で低評価されていないか ・自社メディアにアンチコメントやバッドをされていないか ・ネットショップに低評価されていないか といった内容を確認します。 この時に、自社に問題があるような内容であれば、きちんと誠実に対応する必要があります。 しかし、ネット上では匿名での記載が可能なケースも多いため、根も葉もない噂程度の悪評が記載されている事も少なく有りません。 完全に不当な内容であれば、掲載元への削除を求める・掲載者への削除を求めるといった手段を取ることが出来ます。 あまりにもひどい場合には、名誉毀損で訴訟を検討する必要もあります。 また、メーカーの場合には、自社の製品は良いのに、卸先・小売店の対応が悪いために、自社の商品のレビューに低評価がされていることがあります。 特に楽天市場などのネットショップでは、評価が大きく売上を左右します。 そのため、仮に卸先や小売店で自社商品に低評価がされているようであれば、そちらに対する注意をし、改善が見られないようであれば取引を停止する・・・という形でレピュテーションリスクを下げることが出来るでしょう。
社内規定の明確化
社内規定や契約書を、日本企業はアメリカなどに比べると重視していないと言われています。 わかりやすい例としては、日本人は「営業」として入社し、その内容も契約書に書いてあるのに、実際に入社した後に経理や総務に近い仕事などを押し付けられる・・・というパターンです。 この場合、契約書には無いため、労働者もそれが不当であることを抗議出来ますが、それをしている日本人はほとんどいません。 この様に、契約書があるものの、実際の労働環境とはかけ離れたものになっているのは、多かれ少なかれあるのではないでしょうか。 日本社会では、「融通が効く社員」というのが評価されやすいですし、中小企業の割合が多い日本では、それが当然といえば当然なのかもしれません。 お互いに納得した上での融通は良いですが、問題になるのは労働者側が「嫌」と言えない環境だった場合です。 仕事を頼んでいる側は、当然と思っていても、頼まれた側が精神的に苦痛を感じている場合など、退社後に悪い口コミになることもあります。 最近では、就活の際に企業に対する口コミを見て応募先を決めている学生も多いです。 そのため、そういった不当に扱われたと感じていた社員が悪い口コミを書くことにより、将来的な新卒の採用活動への影響も出てしまう可能性があります。 そうならないためには、きちんと社内規定や契約書にルールを明記して、その内容をきちんと守ることが大切になります。
業務の見える化
業務の見える化をすることで、どの部署がどのような仕事をしているのかを確認します。 そうすることで、レピュテーションリスクの潜んでいる部署(主に顧客との接点がある部署やマーケティング部門など)が見えてきます。 また、具体的な業務内容に関しても 定期的な業務:見える化でレピュテーションリスクを確認 不定期な業務:稟議にてレピュテーションリスクを確認 という形で、チェックしていくことが重要です。
定期的なアンケート調査
顧客が自社に対してどのような印象を持っているのか。 これをアンケートなどで定期的に確認することが、将来的なレピュテーションリスクを下げるための対策になります。
CMやメディアのキャスティング
CMやメディアでのキャスティングも、レピュテーションリスクに大きく関係してきます。 極端な話、印象の良い有名人をキャスティングするだけでも評判は良くなり、評判の悪い有名人をキャスティングするだけでも会社の評価は下がります。 特に、最近ではSNSでの集客に力を入れている企業も多いですが、インフルエンサーの中には、事務所に所属していない人もいるため、そういった人に仕事を依頼してしまうと、事務所の監視が無い分、評価を下げるような発言の危険性が伴います。 そのため、キャスティングには十分に注意が必要でしょう。
レピュテーションリスクを避けるためにはシステム化が重要!AMELAに相談を
レピュテーションリスクを避けるためにはシステム化が重要!AMELAに相談を 今回は、レピュテーションリスクについてお話していきました。 レピュテーションリスクをきちんと対策しておかなければ、思わぬところから売上の低迷が考えられます。 そのため、事前に対策をしておくのが良いでしょう。 また、レピュテーションリスクを下げるために、システムの活用をするのがお勧めです。 例えば、AIの発達により、徐々に自然言語(人間が話す・書く文章)を解読できるシステムが作られていますが、出てくる単語などを元に、ネット上の情報を定期的に監視し、自社に対する悪評を書いているサイトを特定するシステム。 そういった物を作れば、毎日監視していなくても、自動的に調べてくれます。 他にも、複数アカウントで運用している自社のSNSに対して、投稿をまとめてDB管理するようなシステムを作れば(API連携によりある程度簡単に作成可能)、全国に拠点が有り、店舗ごとにそれぞれアカウントを持っているようなケースでも簡単に監視ができます。 この様に、システムによって ・売上アップ ・経費ダウン はもちろんのこと、レピュテーションリスクを下げるなど、経営課題を解決するためにもシステムの導入は非常に重要です。 AMELAでは、様々なシステム開発を行っておりますので、是非ご相談頂ければと思います。