SESが闇といわれる理由
「SESという働き方は闇…」 上記のような噂を耳にしたり、ネットの記事で見た方が多いでしょう。確かに、SESを提供している企業はブラック率が高いのは事実です。しかし、全ての企業がブラックという訳ではなく、大手企業と繋がりがあり、高給で働いているSESも多く存在します。 ではなぜ、SESは闇と言われてしまうのでしょうか。この記事で、その背景にある原因を解説します。最初はSESについて解説するので、すでにSESについて知っている方は、「SESが闇といわれる理由」まで飛んで記事を読んでください。
SESとは何か
SESとは、システムエンジニアリングサービスの略称で、簡単に説明しますと、「システムエンジニアを他社に派遣し、その会社が行っているシステム開発のお手伝いをする」サービスです。 多くの案件では、一部の業務しか担当しないため、未経験エンジニアからでも参入しやすい仕事で、文系出身者が多い特徴があります。
SESの給与イメージ
SESとして働く人はどのくらいの年収を稼いでいるのか気になる人も多いでしょう。一般的なSESの年収は以下の通りです。 ・新卒は約300万円程度・2年目から3年目は350万円程度・4年目から7年目は400万円程度・8年目以降から480万円~700万円程度 もちろんこれらは平均値であるため、中には年収900万円の方もいるため、参考程度になりますが、システムエンジニア自体給与が高い職種です。 厚生労働省が発表した『令和元年賃金構造基本統計調査』では、男性のシステムエンジニアの平均年収は540万円となっており、他の職種よりも高い傾向にあります。
SESの契約形態
一般的に言われているSESとは、準委任契約と呼ばれる形態と同じです。準委任契約とは、委任者(SESサービスを利用する企業)が法律行為以外の業務を、サービス提供者(SES派遣を行っている企業)に依頼する契約方法です。 ここで知っておきたいことは、命令指揮権はSESサービスを提供している企業にあり、派遣先企業(クライアント)には命令指揮権がないことです。 上記はよく派遣契約と間違われてしまいます。どういった違いがあるのか、以下で解説します。 【派遣契約】 派遣契約とSESとの大きな違いは、先ほどからお伝えしている命令指揮権の所在です。 SESは、SESを派遣する企業が命令指揮権を持っていますが、派遣契約の場合、派遣社員が派遣される企業、つまり顧客(クライアント)側に命令指揮権があります。 そのため、派遣社員として派遣されたエンジニアは、客先の依頼や命令に従う必要があります。また、派遣に関しては、一般派遣と特定派遣の2種類があるため、それぞれ理解しておく必要があります。 一般派遣は、派遣先の企業が決めた期間で雇用する契約方法ですが、特定派遣は、登録(所属している)企業に正社員として雇用され、そこから派遣先企業に勤務する契約方法です。 特定派遣については、SESとよく誤解されますが、指揮権の違いがあることに注意しましょう。
SESが闇といわれる理由
それでは、本題の「SESが闇といわれる理由」を解説していきます。以下でご紹介する点に注意して企業を探すと、ブラック企業に当たる可能性がグッと減ると思いますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
命令指揮権が分からなくなる
1つ目の原因は、命令指揮権があやふやになってしまい、誰の指示を聞けばいいか分からなくなってしまうからです。 SESの特徴として、派遣と異なり、命令指揮権がSESサービスを提供している企業(ベンダー)側にあることです。派遣の場合は、契約した派遣先企業の命令に従いますが、SESはサービスを提供している企業側に命令権があります。 契約上はこのようになっていますが、多くのSESサービスを利用している顧客(クライアント)は、クライアント側に命令指揮権があると勘違いしています。これにより、所属している企業から「〇〇の業務を行うようにお願いします」との指示がきているのに、客先から「△△の業務をお願いします」と、別の仕事を依頼されてしまい、どちらの指示に従うか分からなくなる問題があります。 こういったトラブルが多くあるため、SESは闇といわれてしまうのでしょう。
給与が低い
2つ目の原因は、SESは企業によって薄給になりやすい傾向があることです。 先ほど、上記でシステムエンジニアの平均給与は高いとご説明しました。もちろん、基本的には給与が高い職種ですが、企業によっては、SESの給与がかなり低い場所もあります。 なぜこのようなことが起きてしまうか、以下で解説します。 SESとして契約して働く社員は、正確には意味が違いますが、派遣社員のような扱いになります。例えば、AさんがSESとしてX社に常駐するとします。X社には、Aさんの派遣料として30万円要求し、支払いをしてもらいました。 プロジェクトが終わり、Aさんに給与を支払います。会社としては、1人派遣するたびに15万円の利益を出す計算で事業を進めているので、売上30万から15万円差し引きます。その残りがAさんの給与となるので、15万円です。 これは極端な例ですが、このように企業が取る利益分(マージン率)が必要以上に高い企業だと、SESとして働く人の給与が低くなってしまいます。
職場が変化する
3つ目は、SESはプロジェクトごとに常駐する企業が変わるため、職場がプロジェクトごとに異なり、環境の変化に対応しなければいけないことです。 例えば、4月から7月まで大手通信企業のプロジェクトに参加し、綺麗なオフィスで数10人規模で開発業務をしていたが、8月からは50人規模の企業のプロジェクトに参加し、3人での開発を開始、9月からは150人規模の会社でテスト作業で1人で黙々と仕事をする、といった、大きな環境の変化を経験するでしょう。 人とのコミュニケーションが得意で、誰とでも仲良くなれる人は問題ありませんが、人付き合いが苦手な人にとっては、かなりのストレスとなり、精神的に苦しいと思います。 こういった、仕事以外のストレスが嫌になり、SESは闇と言われてしまいます。
キャリアアップが難しい
4つ目は、SESは様々なプロジェクトに参加することで、一気通貫した開発に携わることが難しく、PM(プロジェクトリーダー)といった役職に就く可能性が低いことです。 A社では、JAVAを使った設計からシステム構築を担当したが、次のB社のプロジェクトでは、PHPを使ったサーバーの保守・運用業務をする、とのように、一部の仕事を行うことが多く、幅広い言語や技術に触れる機会はありますが、下流工程から上流工程といった、全体の仕事ができるようなキャリアを積むことは難しいでしょう。 また、企業によっては古い技術しか使わない開発もあるため、思うような仕事に就けるか分からないデメリットもあります。 こういった要素があるため、SESは闇と言われがちです。
帰属意識の薄さ
5つ目は、せっかく入りたい企業に入社したのに、会社に立ち寄る機会は月に1度だけしかなく、その会社に所属しているのか不安になることです。 その企業はオフィス自体はあるものの、自社で働いている人は数十人と少なく、自分は派遣先の企業で働く日がほとんど、といったケースも少なくありません。 同期とも会う機会はなく、どこの会社で働いているのか分からなくなり、転職してしまう人も多いでしょう。 この点が気になる方は、SESとして働くのはあまり向かないでしょう。
SESは闇ばかりではない
ここまでで、包み隠さず「SESの闇」というテーマで記事を書きました。しかし、SESは悪いことばかりではありません。 以下では、SESの良い点もご紹介しますので、全ての情報を見て、あなたがSESとして働くか検討すると良いと思います。
未経験からエンジニアになれる
SESの魅力で1番良い点は、未経験からでもエンジニアを目指せることです。SESは大きな開発工程の一部分を担う業務が多いため、比較的技術が無い方でも仕事をすることができます。 また、幅広い技術に触れることができるため、どういった技術で今後進んでいくか探すこともできます。文系出身だったり、別の職種からエンジニアになりたいと考えている人にはおすすめの働き方となっています。
大きな案件に関わることができる
SESの魅力2つ目は、大手企業から受注した大型案件に携わることができる点です。営業力の強いSES企業は、大手企業との繋がりを持っていることから、案件を受注する力があり、大型案件や最新技術を使うプロジェクトに参加できることがあります。 実績をすぐに作りたい方や、最新技術に触れたいと考えている人は、SESとして働くことが、目的達成の近道となるでしょう。
労働時間の管理がされている
SESは所属している企業の指示に従います。そのため、「所属企業が残業をしないようにする」などの社内ルールを設けている場所に入社すれば、客先から「残業してください」と言われても従わないで帰宅することができます。 そういった点で、時間管理がしやすい企業もあるため、ライフワークバランスを重視したい人にも適した働き方となるでしょう。
まとめ
この記事では、SESが闇といわれる理由を隠すことなくご紹介しました。ネットでは様々な噂がされていますが、全ての企業が悪いと言ったことはありません。 特に技術力の高いSES企業では、最新技術だけでなく要件定義といった上流工程を経験することができ、かなり高給になることができる魅力もあります。 この記事で解説したポイントをよく確認して、企業を探すと、ホワイトなSES企業に出会うことができると思うので、ぜひ参考にして頂けたら嬉しいです。 【関連記事】