デジタル免疫システムとは?必要性やメリット、活用事例を解説

デジタル免疫システムとは?必要性やメリット、活用事例を解説

様々な手口のサイバー攻撃が増加し、多くの企業がセキュリティリスクへの対応に迫られています。

こうした状況を受け、数多くのセキュリティシステムが登場していますが、中でも注目を集めているのが
「デジタル免疫システム」
です。

また、日本国内で近年問題視されている「2025年の崖」そして「DX化への対応」においても、デジタル免疫システムが大きな役割を担うとされています。

デジタル免疫システムは、単純なセキュリティ対策を超えて、企業のガバナンス、DX化推進、レガシーシステム克服など、多くの面で抑えておきたい用語です。

この記事では、デジタル免疫システムについて、
・そもそもどのようなものなのか
・システムの必要性
・導入するメリット
などを解説します。

あわせて、システムの最先端の活用事例についても紹介していきます。

デジタル免疫システムとは

デジタル免疫システムとは、どのようなものなのでしょうか。

通常のセキュリティ対策との違い、そしてシステムを実現している技術についても見ていきましょう。

デジタル免疫システム (Digital Immune System)

デジタル免疫システム(DIS = Digital Immune System)とは、セキュリティシステムの構築に、生物における免疫の仕組みを応用したシステムです。

生物の免疫機能は、身体にウイルスや細菌などが侵入した際、これらから身体を守り、正常な状態への回復を目指します。

同様に、デジタル免疫システムは、システムやサーバー、コンピュータに何らかの異常が確認された場合、適切な処置を施すことで、被害の拡大を防ぎ、システムやデータを早期に復旧させる役割を担います。

デジタル免疫システムには、サイバー攻撃からの防衛だけでなく、システム内部の不具合にも対応する目的があります。

近年、企業を標的とした新たな手口のサイバー攻撃が激増し、それまでのセキュリティ対策では十分な防衛が難しいというのが現状です。

そのため、現代のセキュリティ対策では
「いかに攻撃を受けないか」
と同じく
「いかに被害を最小限に留めるか」
が重要となりました。

また、24時間稼働させなければならないシステムも一般的となり、システムに不具合が生じた場合、早急に問題を発見し、対処する必要があります。

こうした状況に対応するため、通常のセキュリティ対策に加えて、デジタル免疫システムが注目されているのです。

通常のセキュリティ対策との違い

デジタル免疫システムはセキュリティ対策の一手法ですが、通常のセキュリティ対策とは区別されます。

一般的なセキュリティ対策は、外部からのサイバー攻撃を防ぐことが目的です。

デジタル免疫システムはそれとは異なり、システム全体の安全性・安定性を保つのが役割となります。

そのため、デジタル免疫システムはウイルスの侵入対策が目的ではないことに注意が必要です。

デジタル免疫システムは、ウイルス対策システムではなく、RASIS(信頼性・可用性・保守性・保全性・安全性)を向上させるシステムなのです。

デジタル免疫システムを実現する技術

デジタル免疫システムは、システムにまつわるあらゆる領域を横断するシステムであるため、様々な技術によって実現されています。

ここでは、このシステムを動かす技術について、簡単に見ていきましょう。

まず、テスト自動化を進歩させた「AI拡張型テスト」があります。

機械学習を用いてテストを自動化することで、より精度の高いテストを少数の人員で実現可能です。

次に「オブザーバビリティ」は、システムの稼働状況をリアルタイムで監視するシステムです。

不具合があれば迅速に発見し、どのような事態が想定されるか、復旧にはどのような手段があるかを提示します。

システムに不具合が発生した際、即座に復旧させる上で「自動修復」が大きな働きをします。

システムを監視し、自動でトラブルシューティングをおこない、復旧を目指すのが「自動回復」機能です。

これらの技術によって、少人数、あるいは無人での運用・保守が実現できます。

そのほか、システムに疑似的な攻撃をすることで脆弱性を発見する
「カオスエンジニアリング」
システム運用に開発者が参加することで製品の品質を保つ
「サイト信頼性エンジニアリング」
があります。

また、ソフトウェアの開発から運用までのサイクルを横断してセキュリティ対策を実施する
「ソフトウェアサプライチェーンセキュリティ」
など、デジタル免疫システム実現には多くの技術・手法が活用されています。

デジタル免疫システムの必要性

デジタル免疫システムが必要とされるのには、「2025年の崖への対策」という、大きな目的があります。

ここでは、デジタル免疫システムの必要性として、「2025年の崖」回避のために、システムが果たす役割について解説します。

「2025年の崖」について

2018年、経済産業省の「DXレポート」中で報告されたのが「2025年の崖」という問題です。

これは日本国内の企業がIT分野について抱える問題を取りまとめたもので、中でも「レガシーシステム」にまつわる課題が注目されています。

レガシーシステムとは、古い技術で構築されたシステムのことで、レガシーシステムの多くはブラックボックス化しており、改修や移行が困難という問題があります。

例えば、昔ベンダーに頼んで作ったシステムがあったとします。

その設計思想や設計書をしっかりと残していないケースや、何度も改修を加えていく上で、その内容が変わってきているものがあります。

しかし、それらのシステムを最初に作った担当者は年数が経って、すでに引退済み。

ベンダーも引き継ぎをしっかりと行っておらず、今の人員で正確な仕様を把握するためにはソースコードを読み込むしかない。

こういう状況になることがあるのです。

特に大企業で、大きな費用をかけて開発してきたシステムは、そのシステム自体を「資産」と考え、新しいシステムに置き換える事自体に反発があるというケースもあります。

現在、国内で運用されているITシステムにはレガシーシステムが多く、それらのほとんどが2025年には耐用の限界を迎え、膨大な経済損失が発生すると予測されています。

あらゆる企業にとって、企業成長のためにはDX化が避けられないものとなってる現代において、レガシーシステムは企業活動の足かせとなってしまっているのです。

デジタル免疫システムは「2025年の崖」回避に不可欠

「2025年の崖」を回避するためには、DX化を推進していく必要があります。

DX化は、社内システムを改善するだけではなく、IT技術の利活用による新たなサービスの創出も含まれます。

こうした企業活動を実現するためには、デジタル免疫システムが不可欠です。

デジタル免疫システムを導入することで、様々なトラブルからシステムを守り、より高度なサービスを顧客へ提供することができます。

デジタル免疫システムを導入するメリット

デジタル免疫システムを導入することによって、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

ここでは、システム運用で発生する具体的なメリットを解説します。

セキュリティリスクの低減

デジタル免疫システムを導入することで、セキュリティリスク、ひいては問題発生時の企業活動への損害を低減させることができます。

侵入検知、モニタリング、アクセス制御システムなどの技術を用いてシステムの稼働状況を常に監視することで、サイバー攻撃や内部的な不具合、あるいは内部人員による不正操作がすぐに見つかります。

そして自動修復機能が働き、人員を投入することなしにシステムを復旧させることが可能です。

また、災害で企業が被害を受けた場合でも、自動バックアップ機能によって遠隔地にバックアップを作成しておけば、迅速に事業を再開させられます。

このように、デジタル免疫システムを導入することには、様々なシステムトラブルに直面した際に、企業が受けるダメージを軽減するメリットがあるのです。

顧客満足度の向上

デジタル免疫システムによってシステムを保護することは、顧客満足との向上にも繋がります。

ECサイトなどに代表されるように、現在は24時間稼働が前提のITサービスが数多くありますが、システム障害によってサービスが利用できない時間が長くなると、顧客満足度が低下し、多大な機会損失が発生します。

デジタル免疫システムによってシステム障害を迅速に見つけ、自動で復旧できれば、機会損失を最小限に抑えることが可能です。

また、個人情報を扱う際にも、デジタル免疫システムでセキュリティを強化しておくことで、顧客は安心して個人情報を用いてサービスを利用できます。

人手不足の解消

多くの企業が深刻なエンジニア不足という問題を抱えていますが、デジタル免疫システムを導入することで、システムの運用・保守にまつわる人手不足を解消することができます。

例えば、オブザーバビリティによってシステムの稼働状況を観測すれば、無人で恒常的なシステム運用が可能です。

もし不具合が発見されても、自動修復機能の対応範囲であれば、トラブル対応に人員を投入せずともシステムを自動で復旧できます。

また、AI拡張型テストを用いることでテスト工数を圧縮できるため、テストに割くエンジニア削減にも繋がります。

デジタル免疫システムの活用事例

最後に、デジタル免疫システムの具体的な活用例として、「AI精度の修復」と「自己修復型RPA」を紹介します。

AI精度低下の修復

AIには、機械学習の期間が長くなるほど、外部環境の変化や学習データの劣化などによって判定精度が低下するという問題があり、定期的な再学習が求められます。

しかし、判定精度の監視と再学習には多大なコストがかかるのも事実です。

そこで、デジタル免疫システムの技術を用いて学習データの劣化度合を判定し、精度低下の自動発見が可能になりました。

これによって、AIの精度低下を抑制し、安定したシステム運用が実現できます。

自己修復型RPA

コンピュータ上の作業を自動化するRPAは、障害の起こりやすいシステムでもあります。

プログラム内で処理を完了させる通常のプログラムと比較すると
「実際に画面での操作をしていく」
というのが基本のRPAでは
・使っている画面のレイアウトが変わった
・ボタン配置が変わった
・ちょっとしたネットワーク障害が起こった
・他のプログラムとCPUを取り合って処理が動かなかった
などの問題が起こることがあります。

RPAのメリットは
「ノーコード(ローコード)で、現場の人でもプログラムが作れる」
ということですが、上記のようなデメリットもあるわけです。

特にRPAでアクセスしたサイトのボタン配置が変わっているなどは、一度起これば、RPAの修正がされるまでは、常にエラーになり続ける様なものです。

このようにRPAに障害が発生すると、一時的に業務が停止し、機会損失に繋がります。

そこで、デジタル免疫システムをRPAに搭載することで、システムの不具合発見から修復までを自動でおこなう「自己修復型RPA」が登場しました。

これにより、RPAの稼働を安定させ、業務効率の向上に繋がります。

システムの安定稼働はAMELAに相談を

今回は、デジタル免疫システムについて見てきました。

まだまだ聞き慣れない言葉かもしれませんが、
「常に正常に稼働している」
ことが重要なシステムに関しては、こういったシステムを導入することも、非常に重要でしょう。

AMELAでは、オフショア開発を始め、システム導入サポートやITコンサルティングを行っています。

システムの安定稼働や長期的なIT戦略にも、高い知見を持っており、クライアント様からは高い評価を頂いております。

今のシステム運用に関して、少しでも不安がある場合には、是非一度ご相談いただければと思います。