ランチェスター戦略とは?『弱者が強者に勝つ』ための理論徹底解説

ランチェスター戦略とは?『弱者が強者に勝つ』ための理論徹底解説

ビジネスにおいて大切な「戦略」。

どのような戦略を持って、製品を開発するのか、どのようなユーザーに販売するのかで、結果が大きく異なってきます。

そんなビジネス戦略として昔から利用されているものの1つに
「ランチェスター戦略」
というものがあります。

このランチェスター戦略は、「弱者の闘い方」とも言われており、中小企業が多い日本では特に重要であると考えられます。

今回はこのランチェスター戦略について解説していきます。

ランチェスター戦略とは

まずは、ランチェスター戦略そのものについて解説していきます。

ランチェスター戦略は、戦闘力の理論的なモデルであり、戦闘の勝敗を予測するための数学的なアプローチです。

この戦略は、20世紀初頭にイギリスの数学者フレデリック・ウィリアム・ランチェスターによって開発されました。

元々は軍事戦略として作られたものですが、現代ではビジネスの戦略に用いられる様になりました。

ランチェスターの法則

ランチェスター戦略では、基本的に相手の勢力と自身の勢力を数値化し、その比較をする必要性があります。

その中で、ランチェスターの法則は、この勢力を
「武器効率(質) ✕ 兵力数(量)」
で表します。

この勢力において、「第一法則」と「第二法則」の基本法則があり、前者は弱者の、後者は強者の闘い方として解いています。

第一法則(接近戦・局所戦)

第一法則は、一騎打ちの接近戦を前提とし、局所戦を仕掛けることで勝利するための法則です。

勢力は前述したように「武器効率 ✕ 兵力数」で表されます。

仮に同じ武器を利用し、10人 対 20人の場合には、接近戦においては20人の兵力側が10人を残して勝利するのが普通です。

しかし、この20人の兵を何らかの形で
「5人 + 15人」
に分断し、5人の方を攻めることができれば、局所的に勝利する事が可能です。

これが弱者の戦い方です。

ビジネスにおいて一般的なのは、下記のようなケースがこの第一法則に当てはまります。

兵力(営業マン数)が多い大企業に対して、自社(中小企業)は
「地域密着型」
の戦略を取ります。

全国に1000人の営業マンがいたとしても、
「鳥取県鳥取市」
に対しては5人の人員を割くのが限界だったとします。

そうすると、仮に10人の営業マンが鳥取市に集中していれば、大企業よりも鳥取市内では高い成績を得られる可能性があります。

特に小さい企業では、
「全国でシェア1位」
を目指す必要性はなく、特定の分野・特定の地域で高いシェアを獲得できれば、ビジネスでの生存競争に生き抜くことが可能です。

このような闘い方がランチェスターの第一法則による戦略です。

第二法則(広域戦)

第二法則は、1対多で戦うような広域戦を想定した法則です。

第二法則では、
「武器効率(質) ✕ 兵力数(量)」
この公式の2乗が戦闘力となります。

例えば100人 対 500人の広域戦の場合、各々の戦力は
100人:100✕100 = 1万
500人:500✕500 = 25万
となります。
(こちらも武器効率が同じである場合)

結果、強者は24万の戦力を残して勝利します。

これを兵力数に戻すと
「√240000 ≒ 490人」
となり、消耗したのは約10人分の兵力であることになります。

仮にこれが局地戦の場合には、100人消耗している事を考えると、
「戦闘力(兵力数及び武器効率)が高いほど局地戦よりも広域戦の方が良い」
という計算になります。

これをビジネスに応用すると、
「資金力があり、多くの人員がいる大企業(強者)ほど、1商品での勝負ではなく幅広い商品を取り扱うべき」
という事になります。

マーケットシェア理論と7つのシンボル目標値

次に、マーケットシェア理論と7つのシンボル目標値についてお話します。

マーケットシェア理論とはビジネスや経済学で利用される概念であり、
「一企業がどのくらいのシェアを持っているか」
という一般的にビジネスで利用される用語の元になる理論です。

このシェアという考え方は、「業界シェアNo.1」などのような単純な順位比較ではなく、
「シェアのパーセンテージにより、自身の今の競争状況を客観的に把握する」
事ができます。

ランチェスター戦略では、「自社と他社との比較」が重要であり、客観的に自社が強者か弱者かで、戦略が変わってきます。

また、多くの場合最初は自社が弱者である可能性が高く、そうなった際に
「いつ頃に、どのくらいのシェアを獲得するのか」
は、重要な戦略の判断基準となります。

これらの理由から、ランチェスター戦略と一緒に用いられる事が多いため、ここではそれぞれのパーセンテージとその状況を簡単に解説していきます。

シェア73.9%…独占市場シェア(上限目標値)

シェアを73.9%以上獲得できれば、その市場を独占したと判断できます。

同じ市場に競合他社は存在しない状態で、企業が最終的に目指すべきシェアと言えます。

逆に言えば、すでに73.9%のシェアを持っているのに、それ以上シェアを伸ばす事に注力するよりも、その他の戦略を考える方が有意義であることを表しています。

シェア41.7%…相対的安定シェア(安定目標値)

次に、シェア41.7%。

これは、相対的安定シェアと呼ばれ、ビジネスを安定させるために目指すべきシェア率です。

競合他社は存在するものの、比較的売上が安定している状態。

最近でこそ、格安携帯などが流行っていますが、少し前までは大手3キャリアしかないような状況でした。

こういった状況が、相対的安定シェアと言えるでしょう。

シェア26.1%…市場影響シェア(下限目標値)

次に、26.1%のシェアを市場影響シェアと呼びます。

この段階では、自社の影響が市場に大きな影響を与えるレベルです。

例えば新商品や新サービスを出せば、競合他社にもチェックされ、業界内で話題になるようなレベルです。

その業界でも、大手と言われるような企業との競争が必要となります。

シェア19.3%…並列的上位シェア(上位目標値)

次に、並列的上位シェア。

このレベルでは、競合他社とともに、自社がトッププレイヤーとして業界をリードするような立ち位置になります。

単純計算で、業界で5本の指に入る企業であるとともに、それ以下の企業からもマークされるような立ち位置です。

シェア10.9%…市場的認知シェア(影響目標値)

市場的認知シェアでは、ある程度市場で認知される事を目指すフェーズです。

例えば、新商品を出した際に、他業界では話題にならなくても、競合他社製品を使っているユーザーに対して
「あの企業が、新しい製品を出したらしい」
という認識をされるくらいには知名度がある状態です。

シェア6.8%…市場的存在シェア(存在目標値)

市場的存在シェアでは、認知はそれほど高くないものの、一定の市場シェアを獲得するとともに、ある程度の売上や利益を上げられるようなポジションです。

シェア2.8%…市場橋頭堡(きょうとうほ)シェア(拠点目標値)

市場橋頭堡では、認知度は低いものの、市場への参入の最初の壁と言えるパーセンテージです。

新しい業界へ挑戦する場合などは、まずこのシェア率を目指す必要があります。

ランチェスター戦略の3つのルール

さて、ここからはランチェスター戦略の基本になる3つのルールについて解説していきます。

No.1主義

最も重要なのが、この
「No.1主義」
です。

ランチェスター戦略では、このNo.1になることが大切です。

ここでの注意点は、
「No.1 = 業界1位」
ではないということ。

2位と圧倒的な差をつけた上での1位。

これが、ランチェスター戦略で言うNo.1なのです。

具体的な数値としては、局地戦で2位と3倍の差、広域戦で2位と1.7倍の差をつけるというのが基本です。

前項のシェアの話で言うと、41.7%のシェアを取ることが重要とされています。

足下(そっか)の敵攻撃の原則

この原則で重要な点は、
・競争目標
・攻撃目標
を分けて考えること。

競争目標は、自分よりも上位のシェアを持つ企業を競争目標とするものの、実際に攻撃を仕掛けるのは、自分よりも下位の企業である事が重要です。

更に具体的に言うと、
・上位の企業に対しては差別化戦略
・下位の企業に対してはミート戦略
を使うのが良いとされています。

自分よりもシェアの高い企業に対しては、同じ土俵で戦わずに、向こうにないメリット(差別化)をすることに注力します。

反対に、自分よりも下位の企業に対しては、その差別化ポイントを消すような戦略を取ります。

例えば、下位の企業が出した新商品に対して、自社も同じような特徴の商品を出す事が、ミート戦略です。

一点集中

最後は、一点集中です。

企業にとって、ヒト・モノ・カネというリソースには限りがあります。

これを、攻撃目標を1つに絞った上で、集中させることが重要です。

特に軍事目的で考えられてきたランチェスター戦略では、このリソースの分散は、そのまま死に直結する大きな問題です。

それを、企業に置き換えたとしても、このリソースの重要性は変わらないのです。

ランチェスター戦略におけるビジネスへの応用

さて、これらのランチェスター戦略の基本を踏まえた上で、具体的にビジネスに応用するためには、どのような戦略を取るべきなのでしょうか。

セグメンテーション

まずは、セグメンテーションをすることが重要です。

セグメンテーションとは、区分を意味しており、マーケティングにおいて
「顧客を色々な切り口で分けた分類」
のことを意味しています。

例えば、下記のようなセグメントが考えられます。

・年齢
・性別
・住んでいる地域
・年収
・購入頻度
・行動
・家族構成

など、様々な切り口で分ける事ができます。

その結果
「このセグメントで勝負する」
ということが、局所戦を意味しています。

更に、このセグメントは一般的に複数のものを組み合わせることで、より細かい局所戦が可能になります。

例えば「東京都に住んでいる30代一人暮らしの男性」のようにすれば、かなり細かいセグメントと言えそうです。

ただし、そもそもの母数が少なすぎるとビジネスが成立しない可能性があるので注意が必要です。

局所戦でNo.1を獲得する

次に、この局所戦で、No.1を目指します。

具体的には前述したように、マーケットシェアの41.7%を目指します。

例えば、
「30代子育て女性人気No.1の〇〇」
などのように、小さい分野での圧倒的No.1を目指します。

他のセグメントを攻めるか、セグメントを拡げるか

次に、局所戦でNo.1を得た上で、他のセグメントを攻めるのか、セグメントを拡げるのかを選んでいきます。

例えば、30代女性がターゲットだったのを、少し若い世代もターゲットにしていくのか。(セグメントを拡げる)

それとも、30代女性に人気の商品を、男性がプレゼントし易い形で攻めるのか。(他のセグメントを攻める)

この様に、同じ商品やサービスでも、セグメントを増やしていくことが可能であり、徐々にこの範囲を拡げていくのが重要となります。

ランチェスター戦略のIT活用

ここからは、このランチェスター戦略を「IT」を活用することで行っていく方法を見ていきましょう。

WEBマーケティングとランチェスター戦略の相性は良い

まず初めに知っていただきたいのは、ランチェスター戦略とWEBマーケティングは、非常に相性が良いことです。

その理由は、
・誰もがスマホを持って、日常的に検索などを行うから
・ネットから商品を買うのが当たり前になっているから
ということです。

これらの理由により、ネットでマーケティングを行い、ネットで集客をし、ネットで販売する事が可能なのが現代です。

このような
「全てネットで消費行動が完結する」
というのは、ランチェスター戦略を行う上でも非常に重要な要素となっています。

低コストで何度も戦いを挑む

更に、WEBマーケティングがランチェスター戦略に向いている理由は、
「施策のコストが非常に安くてできる」
ということです。

例えば、テレビCMを作るとなると、何百万・何千万という金額が必要になります。

一方で、自社サイトを作り、そこで商品の宣伝をするなら、サイトの制作費用だけでよくなります。

数万円もあれば可能です。

更に、広告宣伝費としても、Google広告などであれば、1クリック数円から可能であり、予算に応じて規模を選ぶことができます。

この様に、安い金額で施策が打てるということは、それだけ局所戦を仕掛ける回数を増やせるということ。

これが、WEBマーケティングとランチェスター戦略の相性が良い1つの理由です。

ニッチなセグメントもWEBを使えばビジネス規模のマーケットになる

これまでのビジネスでは、ニッチなセグメントを狙う際には
「実際に費用をかけたけど、回収できるほどニーズがあるのか」
が非常に重要でした。

例えば、100人に1人しか興味のない商品を作ったとして、人口1万人の街で販売すれば、最大で購入してくれる人が100人しかいない計算になります。

そうなると、商品単価を非常に高くしなければ、ビジネスとして成立しません。

一方で、WEBを活用することで、この物理的な距離のハードルがなくなりました。

同じく100人に1人しか興味のない商品でも、全国を対象にすれば、1億2000万人の1%で、120万人が興味を持つ商品であると言えます。

それを世界に向ければ、更に大きなユーザーが対象になります。

そのため、WEBマーケティングが発達したことにより、
「非常にニッチな商品で、これまではビジネスとして成立しなかった」
ような商品にも、ビジネスチャンスが生まれるようになったのです。

SEOもランチェスター戦略に有効

WEBサイトから集客する上で「検索上位に表示するための施策」であるSEOも、ランチェスター戦略では非常に有効です。

広告などを使わずに、検索順位を上げるSEOでは、
「ニッチなキーワード」
で、検索上位を取る戦略が取られる事があります。

これも1つの局所戦であり、ランチェスター戦略を活かした戦い方です。

マーケティングオートメーション

商品やサービスの差別化が、ランチェスター戦略でも大きなポイントとなりますが、差別化する上では
「ユーザーに対して興味を持ってもらう必要性」
があります。

どれだけ優れた付加価値があっても、それにユーザーが気付かないままでは、良い結果は得られません。

そのための方法の1つが、マーケティングオートメーションです。

マーケティングオートメーションは、各ユーザーが
1.自分で検索してサイトを見つけてくる
2.自分で会員登録をする
3.そのユーザーのために定期的に情報発信を自動でする
4.ユーザーが気になるタイミングで適切なオファーを自動で発信する

などを、「自動的に行う」事を目的にしたシステムです。

前述のSEOによる集客やメルマガの自動配信などの複合的な仕組みで、ユーザーの興味を人の手を介さずに高めていきます。

これらの仕組みも、ランチェスター戦略に非常に有効と言えるでしょう。

情報収集ツール

ランチェスター戦略で重要な「攻撃目標」に対する情報収集は、システムによって自動化できる可能性があります。

WEBスクレイピングツールといって、自動的にWEBサイトの情報を収集する仕組みを作れば、競合他社のサイトから新着情報を常にチェックし、重要そうな情報が出たときには、自動的にメールで教えてくれる・・・などの仕組みが作れます。

他にも、新商品が出たタイミングや、特定の商品やカテゴリでセールを行った時に、いち早く反応できる様になるなど、仕組みの作り方次第で、多くのリサーチが自動で行なえます。

システムのマーケティング活用はAMELAに

今回は、マーケティングにおいて非常に重要な「ランチェスター戦略」について見てきました。

また、弊社はIT企業であるため、それに伴ったITの活用についても説明していきました。

多くの企業様を見てきましたが、まだまだマーケティングにシステムを導入している所は少ない様に思います。

どちらかと言うと、会社的にも営業マンの人件費などにお金を割く傾向があり、上手くITを活用しきれていない印象を受けます。

これから先、
「効率的にマーケティングを行いたい」
というお客様は、是非一度AMELAにご相談ください。

自社サービスの開発から、マーケティングシステムの導入まで、幅広い提案をさせていただきます。