生産管理システムを内製するためには?内製するメリットや開発時のポイント

生産管理システムを内製するためには?内製するメリットや開発時のポイント

生産管理にまつわる一連の業務をDX化する生産管理システムの導入には、業務効率の向上やヒューマンエラーの防止、現状把握による課題解決など、多くのメリットがあります。

しかし既製品の導入や外注には、システムの導入・運用に多大なコストが発生することも事実。

そこで生産管理システムを内製してコスト削減を目指す企業も多く、既に多数の成功事例があります。

しかしシステム開発の経験が少ない場合、内製のためにはどのような取り組みが必要なのかイメージしづらいでしょう。

また、生産管理システムを内製することには、コスト削減以外にどんなメリットがあるのか疑問に思う方も多いかもしれません。

この記事では、生産管理システムの内製を検討する方に向けて、内製する方法や開発の流れ、内製に取り組む際に注意すべきポイントなどについて解説します。

生産管理システムを内製する方法

生産管理システムを内製する方法としては、大きく分けて「表計算ソフト」「外部ツール」「自社開発」の3通りがあります。

それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。

表計算ソフトを使用する

おそらく生産管理システムとしてもっとも広く活用されているのが、Excelをはじめとする表計算ソフトでしょう。

専門的なシステムとは異なり、表計算ソフトは運用コスト・要求スキルともに低く、多くの人にとって扱いやすいのが大きな特徴です。

例えば販売管理や購買管理をおこなう際、あらかじめ表に関数を設定しておけば、あとはデータを入力するだけで計算結果を得られます。

またExcelにはバーコードを作成・出力する関数も備わっており、在庫管理・出荷管理に役立ちます。

その他、プロジェクトの進捗を確認できるガントチャートや、プログラミングで機能を拡張するVBAなどもあり、複雑な生産管理業務も可能です。

少し詳しい人がいれば、マクロを組んでファイルサーバーに置かれている別ファイルを読み込んだり、集計結果をサーバーに出力するなど、色々な使い方が考えられます。

外部ツールを活用する

データ管理システムなどの外部ツールをカスタマイズして、生産管理をおこなうという方法もあります。

生産管理業務においては、Microsoftが開発した「アクセス(Access)」が有名です。

アクセスは、大量のデータを集計・管理するためのツールで、Excelよりもデータ管理に適しています。

このツールには基本となるフォーマットが用意されており、さらに多様なテンプレートが備わっているため、自社環境に合わせたカスタマイズを容易におこなえるというメリットもあります。

アクセスはExcelと同じく、VBAによる機能拡張が可能です。

例えば、Accessによりデータをデータベースとして管理し、それらを使った画面フォームを作ることも可能です。

他にも、
「データの管理はAccess、普段の入力はExcel」
などのような用途によった仕組みの分け方も可能です。

自社でいちから開発する

最後に、自社でいちからシステムを開発する方法です。

自社開発のメリットは、現場のニーズに合致したシステムを用意できることです。

表計算ソフトやアクセスのような外部ツールは、どれだけテンプレートが備わっていようとも、カスタマイズには限界があります。

自社で開発することで、より柔軟なシステムを構築することが可能です。

なお生産管理システムの開発には、PythonやJava、PHPなどのプログラミング言語がよく用いられ、運用・保守についても、開発と同程度のプログラミングスキルが必要です。

生産管理システムを内製する流れ

生産管理システムの内製には、基本となる5つのプロセスがあります。

ここでは、システム開発の流れを解説していきます。

導入目的の確認

まずは、生産管理システムを自社に導入する理由・目的を明確にしましょう。

「プロジェクトの進捗をより詳しく把握したい」
「在庫管理を最適化させたい」
「生産管理にかかる業務コストを削減したい」
など、導入目的をできるだけ言語化することが大切です。

システムを導入する目的によって、搭載すべき機能は変わってきます。

ゴールが明確でないと、不要な機能を開発してしまったり、後から必要と判明した機能を追加したりと、内製コストが肥大する事態を招きます。

現場が抱えている課題やニーズを把握して、導入目的・達成目標を設定することが、システム開発の基盤となるのです。

搭載機能の洗い出し

システムの導入目的や達成したい目標などから、システムにどのような機能を搭載するのかを決定します。

ここでは、搭載予定の機能が現場のITスキルで扱えるかどうかも考慮する必要があります。

とにかく多機能にすれば良いのではなく、本当に必要な機能を見極めないと、かえって現場に混乱が生じる事態になりかねません。

特に生産現場の人は、PCやスマホに慣れていない事も多く、若い人が少ない現場もあるでしょう。

そういった現場で、当たり前の様に画面切り替えにスワイプを使ったりすると、使いこなせない可能性が出てきます。

また、この段階でシステム設計をおこなうことが多く、操作画面やレイアウトなどの基本設計から、プログラマーへの指示となる詳細設計までを決定します。

予算・スケジュールを設定

システムの内容がある程度決まったら、予算とスケジュールを設定します。

システムを内製する場合、開発だけでなく運用・保守についても、人件費やサーバー代といったコストが発生するため、費用対効果を得るには適切な予算の算出が必要です。

また、開発につぎ込む予算と期間によって、内製する方法が異なります。

導入目的と予算・スケジュールの兼ね合いは、システム運用を成功させられるかどうかに大きく関わることに注意しましょう。

システム実装

システム設計と開発手法が決定したら、実際に担当プログラマーがシステムを実装します。

基本的に、システム開発はチームで進めていきます。

ここでの業務は開発手法によって異なりますが、次の工程に進むためにも、プロジェクトの進捗管理が重要になります。

特に開発・実装の長期化は膨大な開発コストを発生させるため、避けたいところです。

テスト

実装を終えたら、そのまま現場に導入するのではなく、開発したシステムが正常に動作するか、必ずテストを実施しましょう。

システムのテストは「動作テスト」と「実地テスト」に分けられます。

まず動作テストでは、設計どおりの機能が実装されているかを詳細にチェックしていきます。

特に、開発中に仕様変更が発生した箇所は入念なテストが必要です。

実地テストでは、現場の人員が問題なく扱えるのかどうかを、生産管理を担当する人員に、実際に操作してもらうことが重要です。

また、現場で稼働させる場合、膨大なデータ処理や長時間の利用といった負荷に耐えられるのかも確認しましょう。

テストの実施によって発見された問題点は実装段階に戻って解決させて、再度テストをおこないます。

生産管理システムを内製するメリット

生産管理システムには数多くの既製品が存在しますが、それでもシステムを内製することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、システムを内製することで得られる主なメリットを解説します。

自社の目的・業務環境に適応できる

システムを内製する最大のメリットは、システムを導入する目的や、自社の現場ニーズに合致したシステムを運用できることです。

既製のシステムは低いコストでの導入が可能ですが、やはりカスタマイズには限界があります。

自社の業務環境にぴったり合ったシステムを運用したいのであれば、オリジナルのものを作成するしかありません。

また、業務環境や企業方針は時が経つにつれ変化していきますが、内製システムであれば変化に対応することができます。

導入・運用コストを抑えられる

システムを内製することには、導入・運用にかかるコストを抑えられるというメリットもあります。

既製のシステムは、物によっては数百万円の導入コストが発生しますし、また月ごと・年ごとに利用料金を支払うものもあります。

ベンダーに外注した場合でも、高額な開発費と運用・保守費用がかかります。

生産管理システムを内製すれば、発生するのは人件費やサーバー代などで、既製品を利用するよりも低いコストで導入・運用が可能です。

競合他社との差別化ポイントがある場合は内製化がおすすめ

会社の独自の運用ルールや体制が、他社との差別化の根本的な理由だった場合、一般的なツールを利用した結果、効率が下がってしまう可能性があります。

一般的に、システムを「導入するか」「内製するか」の大きな差は

導入する:ツールに合わせて自分たちの運用を変える
内製する:自分たちの運用を最適化した上で、ツールを運用に合わせる

ということが出来るか否かです。

そのため、自社の運用方法が特殊で、結果として競合他社よりも競争優位に立てているのであれば、ツールに合わせて運用を変えるよりも、運用に合わせてツールを作るほうが良いでしょう。

仕様を完璧に把握した上で運用保守が可能

生産管理システム内製化のメリットとして、
「仕様を完璧に把握できる」
という点も挙げられます。

パッケージソフトの場合には、使ったことがない画面が多かったり、完璧に使いこなせないケースが多いですが、内製化する場合には、仕様をきちんと自分たちで把握することが出来ます。

ちょっとしたツールの使い方の問題が出た際に、ベンダーへの問い合わせ等は必要なく、自社で解決するので、間接的な運用コストが下がりやすいのもメリットでしょう。

生産管理システムを内製する際に気をつけたいポイント

自社環境に適応し、低いコストで活用できる内製システムですが、内製に失敗する事例も少なくありません。

最後に、生産管理システムを内製する際に注意すべきポイントを紹介します。

なぜシステムを導入するのかを明確に

システム開発においては、なぜそのシステムを内製するのか、導入の目的と達成したい目標を明確にすることが重要です。

これらが曖昧なまま内製を進めると、開発コストが肥大するうえに、ニーズに合わないシステムが出来上がり、現場に混乱が発生してしまいます。

また、せっかくシステムを導入しても、定着しなければ意味がありません。

現場での利用を促すためにも、目的を明確にして、周知することが大切です。

システムの導入・移行は段階的におこなう

開発したシステムの導入・移行は、一気におこなうのではなく、段階的に進めましょう。

一斉にシステムを変更してしまうと、現場が混乱する恐れがあります。

生産管理システムにはさまざまな機能が搭載されますが、機能ごとに優先順位を付け、少しずつ導入していくことが重要です。

特にすでに別のシステムを導入している場合には、並行稼働期間を設けるなどの運用上の工夫が不可欠です。

実際に現場で稼働してからシステムの問題が見つかることもあるため、部分的に導入して、稼働状況や現場の声を把握することも大切です。

システム導入後の体制を整備する

システムを導入するのと同時に、運用のための体制を整備しなければなりません。

導入しただけでは利用が定着せず、内製システムの目標を達成することは難しいです。

また、不適切な操作によって情報流出などのリスクもあります。

さらに、専門的なシステムほど業務が属人化しやすいため、スキルの継承や教育にも注力しなければなりません。

システム定着と企業コンプライアンスのために、運用ルールの策定や社内教育の充実などが必要です。

システムの内製化はAMELAに

今回は、生産管理システムの内製化について見てきました。

システムを内製化することには、多くのメリットもあり、長期的な運用を考えると内製化するべき企業は多いでしょう。

しかし、一方でパッケージソフトを導入する方が良い企業というのも存在し、規模や業務内容、費用対効果によって変わってきます。

AMELAでは、開発だけではなく専任のITコンサルタントがしっかりとヒアリングを行った上でシステム開発の提案をします。

現状の把握や実際に導入後をイメージしてみるためにも、是非お気軽にご相談ください。