オープンイノベーションとは?定義や事例の紹介、実践手法について解説
昨今のビジネスはスピード感が求められていることから、
「自社で一からノウハウを考えたり技術を編み出す」
という機会は減少しつつあります。
それよりも、他社との業務連携を通じて自社の弱みを補う(または強みを活かす)ことで、最短最速で市場への参入を図るという戦略が取られています。
オープンイノベーションは、企業や組織が内外の異なる情報源やアイデアを活用するという手法です。
本記事では、オープンイノベーションの基本概念から、実際の導入事例の紹介、実践手法について解説します。
オープンイノベーションとは
オープンイノベーションとは、企業や組織が内外の異なる情報源やアイデアを活用してイノベーションを推進するアプローチです。
オープンイノベーションの目的は、企業や組織がより迅速に、効果的に新しい製品やサービスを市場に投入することです。
従来の閉鎖的なイノベーションモデルとは異なり、オープンイノベーションは外部のアイデア、技術、市場ニーズを積極的に取り入れることで、内外のパートナーシップやネットワークを通じて共同で価値を創造することを重視します。
オープンイノベーションの主な特徴としては、内外のアイデアを活用することで、新しい視点やアプローチを取り入れることができるという点です。
他の企業や組織と提携し、共同で研究開発をおこなったり、製品やサービスを共同で開発することで、お互いの強みを活かしたイノベーションが実現します。
また、自社で果たせない活動やプロセスを外部の専門家や企業に委託することで、内部リソースを集中的にイノベーションに活用したり、新しいアイデアの発展や評価が可能です。
チェスブロウ氏は著書「Open Innovation -The New Imperative for Creating and Profiting from Technology」で、オープンイノベーションについて下記のように定義しています。
組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである。
オープンイノベーション普及の背景
オープンイノベーションが普及した背景には様々な要因があります。
大きな要因の1つが「グローバル化と情報通信技術の進化」です。
インターネットやデジタル技術の発展により、世界中の情報が瞬時に共有されるようになりました。
これによって、異なる地域や文化のアイデア・知識・技術にアクセスできるようになり、オープンイノベーションが促進されました。
例えば、地方に住んでいるフリーのエンジニアに対して、東京から仕事の依頼を出すことも可能になった様に、住んでいる地域に関係なく仕事を依頼することが可能になったのです。
ビジネスの複雑化と専門化なども理由の1つです。
ビジネスはますます複雑化し、特定の分野での専門知識が求められるようになりました。
例えば、昔は生産管理システムは「あらゆる業種向け」のような形で作られていました。
しかし、後発企業が生産管理システムを作るとなると、「すでにある商品との差別化」が重要になってきます。
結果として
・多品種少量生産に特化した生産管理システム
・オーダー品/セミオーダー品の生産に特化した生産管理システム
・食品製造業界特化型生産管理システム
などのように、特定のジャンルや業界に特化したシステム開発が行われています。
企業は外部の専門家や研究機関と連携することで、必要な専門知識を補完し、競争力を維持する必要性に駆られています。
市場の変化による競争の激化も背景にあります。
消費者のニーズや市場トレンドが迅速に変化している現代では、企業はより迅速かつ柔軟に新製品やサービスを開発する必要があります。
外部のアイデアや技術を取り入れることで、スピーディーなイノベーションが可能となるだけでなく、複数のパートナーシップや外部のアイデアを取り入れることで、失敗リスクを軽減する戦略としてオープンイノベーションが採用されています。
以上の理由により、オープンイノベーションは企業や組織の競争力向上や革新的な成果を実現する手段として普及しています。
従来のイノベーションモデルでは得られない多様な視点やアイデアを取り入れることで、革新的なソリューションが生まれるという共創の価値が広く認識されるようになりました。
オープンイノベーションのメリット
オープンイノベーションは従来のイノベーションモデルに比べて多くのメリットを持っています。
以下に、オープンイノベーションの主なメリットを解説します。
事業推進の高速化
事業を推進するためには、アイデアの創成や推進チームの設立など、組織体制を構築することから始めなければなりません。
オープンイノベーションを活用することで外部のアイデアや技術を取り入れることができれば、新製品やサービスの開発を迅速におこなうことが期待できます。
これにより事業をスピード感を持って推進することができ、競争の優位性を迅速に築くことが可能です。
開発コストの削減
新しく事業を始めるには相応のコストが発生します。
特に新製品開発などは研究開発費など多大なコストを要します。
研究開発費は、何度も失敗を繰り返し、一時的な損失が大きくなるのです。
オープンイノベーションを活用すれば他社の技術を取り入れることができるため、開発にかかるコストを大幅に抑えることが可能です。
新たな知見の導入
ビジネスにアイデアは必須ですが、ノウハウがなければ良いアイデアは生まれません。
オープンイノベーションによって外部の異なる組織や個人からアイデアを取り入れることで、より多様な視点やアプローチを取り入れることができます。
これにより、自社のみでは成し得ないであろう創造的な解決策や革新的な製品が生まれる可能性が高まります。
オープンイノベーションのデメリット
オープンイノベーションはメリットだけではありません。
情報を共有することで以下に示すようなデメリットがあります。
情報の流出
外部のパートナーとの協力によって、知的財産権の侵害や情報漏洩のリスクが高まります。
例えば競合他社との情報共有がおこなわれる場合、自社の技術やアイデアだけでなく、戦略や計画などが漏れる可能性もあります。
特に、既存のシステムやデータを活用した新しい仕組みを作るような場合。
パートナー企業としても、既存のシステムの仕様を把握する必要性があったり、データを渡す必要性が出てくる事があるので注意が必要です。
利益の低下
オープンイノベーションを活用して得た利益は自社だけのものではありません。
関わったパートナー企業と利益配分をしなければなりません。
また、開発に要した費用などについても分担して負担をする必要があります。
これにより想定よりも利益率が減少する可能性が考えられます。
独自性の喪失
オープンイノベーションはオリジナリティを喪失させる危険性もあります。
外部のパートナーが提供するアイデアや技術に過度に依存することで、自社のイノベーション能力が低下する可能性が高まります。
これらのデメリットは、オープンイノベーションを実施する際に注意を払う必要がある点です。
企業はパートナーシップの選定や知的財産権の保護、効果的なコミュニケーション手段の確立など、これらの課題に対処する戦略を構築することが求められます。
他社への依存の可能性
特定の技術や知識を他社に依存して製品を作った場合、仮にそのビジネスが上手くいった際には、そのパートナー企業に依存する可能性が出てきます。
また、これらの知識や技術を扱える自社の社員は育たないため、場合によっては長期的に依存し続ける結果になるでしょう。
オープンイノベーションの導入事例
オープンイノベーションの導入事例として、NTTデータが運営するオープンイノベーションフォーラムを紹介します。
このフォーラムでは、スタートアップ企業や個人のアイデアを受け入れ、それを基に新しいビジネスを展開する場を提供しています。
オープンイノベーションフォーラムは、新しいテクノロジーやサービスを求める企業とスタートアップ企業との架け橋として機能しています。
これはあくまでも一例です。
オープンイノベーションは多様な業界や企業規模で実施され、新しいアイデアやビジネスモデルを生み出す可能性を示しています。
オープンイノベーションの実践手法
オープンイノベーションを実践する際には、適切な手法を選択し、効果的に活用することが重要です。
オープンイノベーションの実践手法は様々であり、例えばクラウドソーシングの活用が挙げられます。
クラウドソーシングのプラットフォームを活用して、外部の専門家や一般の人々からアイデアや意見を集め、特定の課題に対しての解決案を募るという方法です。
クラウドソーシング同様、意見を募るという点では他にも様々な手段があります。
その1つにオンラインイノベーションプラットフォームという仕組みが挙げられます。
オンラインイノベーションプラットフォームとは、社内外の従業員やパートナーとアイデアを共有し、意見交換をおこなう場です。
これによって、大規模なアイデア収集と評価が可能になります。
また、ハッカソンというイベントもその類です。
ハッカソンとは、プログラマーやデザイナー、ビジネスマンなどが集まり、短期間で新しいプロダクトやサービスを開発するイベントです。
外部の参加者と連携し、短期間で集中的なアイデア創出とプロトタイプ開発をおこなうことができます。
他にも、アクセラレータ・プログラムという、スタートアップ企業に対して資金、メンターシップ、ネットワーキングの機会を提供するプログラムもあります。
企業はアクセラレータ・プログラムに参加することで、革新的なスタートアップ企業と連携し、新しいアイデアを取り入れることが可能です。
上記に示したような例とは別に、研究機関との連携やパートナーシップの構築という方法もあります。
例えば大学や研究機関との連携を強化し、研究成果や専門知識を活用することで、新しい技術や製品の開発を促進できます。
また、他の企業や組織との戦略的なパートナーシップを構築し、共同で研究開発をおこなったり、新製品を共同開発したりすることで、相互のアイデアやリソースを活用できます。
これらの手法は、オープンイノベーションを実践する際に選択できる方法の一部です。
企業やプロジェクトのニーズや目標に合わせて適切な手法を選定し、効果的なイノベーション活動をおこなうことが重要です。
オープンイノベーションの課題
オープンイノベーションには多くの利点がある一方、解決すべき課題も多く存在します。
まず挙げられるのが知的財産権の問題です。
外部のパートナーシップやクラウドソーシングを通じて情報を共有する際、知的財産権の侵害や情報漏洩のリスクが高まります。
重要情報の漏洩は企業の競争力低下に直結しかねない内容であることから、これらのリスクを管理するための適切な法的手段や契約を用意する必要があります。
次に挙げるのが、適切なパートナーシップの維持です。
組織の風土や価値観の不一致など、長期間にわたって持続的なパートナーシップを維持することは簡単なことではありません。
パートナーシップの選定や適切なマネジメントだけでなく、効果的なコミュニケーションや調整力が求められます。
資金とリソースの面についても考慮が必要です。
オープンイノベーションには多額の資金とリソースの確保が必要です。
企業が適切な予算と人材を割り当てない限り、効果的なオープンイノベーションの実現は難しいでしょう。
これらの課題について企業は注意を払う必要があるため、オープンイノベーションを導入するにあたり、あらかじめ戦略の構築が求められます。
IT戦略の相談はAMELAに
今回はオープンイノベーションについて見てきました。
ビジネスにスピード感が求められる現代では、いかに早くプロダクトを市場に出せるかは、非常に大きな問題です。
更に、顧客の価値観も多様化しており、顧客が満足する製品開発を行うのは、非常に難しい時代となってきました。
そんな中で、製品開発だけではなく
・マーケティング
・社内業務効率化
・人材育成
など、様々な分野でITを活用することが求められています。
今の社内の問題の多くは、システムの導入によって解決するものです。
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