インシデントレスポンスとは?その目的と重要性、運用ステップについて解説
ITの利用は便利である反面、悪意のある攻撃から身を守るためのセキュリティ対策が必須です。
この記事で解説するインシデントレスポンスは、現代のデジタル環境におけるセキュリティ対策として極めて重要な役割を果たします。
セキュリティに関するインシデントが発生する可能性は高く、それに対処するための適切な計画と対応策を持つことは組織や個人にとって不可欠な要素です。
本記事では、インシデントレスポンスの重要性、具体的なインシデントの種類、基本的なフロー、トレーニングに焦点を当てて解説します。
インシデントレスポンスとは
インシデントレスポンスとは、組織がセキュリティインシデントやサイバーセキュリティの侵害などの緊急事態に対処するための計画とプロセスのことをいいます。
セキュリティインシデントとは、不正アクセス、データ漏洩、マルウェア感染など、情報セキュリティに関連する様々な種類の問題をさします。
インシデントは、意図的に引き起こされたものを指し、操作ミスや偶然起こったような事象とは区別されることが多いです。
インシデントレスポンスは、組織がセキュリティリスクに適切に対処し、事後的な被害を最小限に抑えるために非常に重要なプロセスです。
前述したように、インシデントは意図的に起こされたものであり、攻撃者は基本的に被害の規模の拡大を目論む事が多いです。
そのため、被害を最小限に抑えることが、アクシデントやミスなどに比べても、重要視されます。
定期的な訓練やテストを通じて、組織全体でのインシデント対応の準備と能力を向上させることが求められます。
インシデントレスポンスの重要性
インシデントレスポンスは組織にとって非常に重要なセキュリティ対策として、以下に示す多種多様な面でその役割を果たすことが期待されています。
セキュリティの維持と向上
セキュリティインシデントは避けられないものであり、組織はそれに対処するための計画を持たなければなりません。
インシデントレスポンスは、セキュリティを維持し、さらに向上させるための手段として用いられます。
適切な対応をおこなうことで、今後のインシデントを防ぐための学習と改善が可能です。
被害の最小限化
インシデント発生時に迅速かつ適切に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。
適切な措置を講じない場合、被害は拡大し、組織や顧客に重大な損害をもたらす可能性があります。
多くの場合、意図的なサイバー攻撃は
・情報を抜き取る
・金銭の要求
・売上低下
・サービス妨害
などの目的があります。
単に自分の知的好奇心を満たすためだけの攻撃は、少数派と言えます。
そのため、被害が大きくなればなるほど、攻撃者にとっては利益が多くなります。
その被害を最小化する事が重要なのです。
法的要件と規制への遵守
多くの地域や業界では、セキュリティインシデントに対する法的要件や規制が存在します。
これを遵守することは、法的なトラブルや罰則を回避し、組織の評判を保護するために重要です。
信頼性と顧客満足度
インシデント発生時に迅速かつ効果的に対応することは、顧客や取引先に対する信頼を築き、顧客満足度の維持につながります。
逆に、インシデントに対する適切な対応がなければ、信頼を失い、顧客離れが起きる可能性があります。
信頼性のあるインシデント対応は、ビジネス関係を維持し、新しい機会を創出するために不可欠です。
特に最近は、多くのサービスで
・メールアドレス
・氏名
・クレジットカード情報
・銀行口座
などの情報が保管されています。
これらを扱う企業では、インシデントレスポンスの重要性は高まります。
情報資産の保護
組織は重要な情報資産を保護しなければなりません。
セキュリティインシデントが発生した場合、情報資産へのアクセスや盗難を防ぐために対応する必要があります。
未然のセキュリティ脅威への対策
インシデントレスポンスのプロセスを通じて、セキュリティインシデントの発生原因や脆弱性を特定し、今後のセキュリティ対策の方針を立てることが可能です。
これにより、未然のセキュリティ脅威に対する対策を強化できます。
インシデントの種類
インシデントには様々な種類があり、一言で表すことはできません。
ここでは実際に起こり得るインシデントにはどのようなものがあるのかを解説します。
フィッシング
フィッシング攻撃とは、悪意のある攻撃者が、ユーザーから個人情報、資格情報、金融情報などの機密情報をだまし取るために、偽のウェブサイト、電子メール、メッセージ、またはソーシャルメディアなどの手段を用いて詐欺的に情報を収集しようとする詐欺行為です。
フィッシング攻撃の特徴としては、
「正規のサイトに偽装した不正サイトへの誘導」
「ソーシャルエンジニアリング」
「電子メールによる不正ファイルの送付」
「機密情報の要求」
などが挙げられます。
攻撃者は、個人ユーザーから大手企業、政府機関までさまざまな対象を選び、詐欺行為をおこないます。
フィッシング攻撃に対する一般的な防御策としては、警戒心を持つことと、信頼性のある情報ソースを確認し、不審なリンクや要求に注意を払うことです。
マルウェア
マルウェアとは、悪意のあるソフトウェアの総称で、コンピュータシステムやネットワークに対して害を及ぼす目的で作成されたプログラムやコードのことを指します。
マルウェアは様々な形態や目的で存在し、コンピュータセキュリティに対する重大な脅威となっています。
マルウェアには多くの種類があり、代表的なタイプとしては
「トロイの木馬」
「ランサムウェア」
「ルートキット」
「バックドア」
などが挙げられます。
これらのマルウェアは、個人、企業、政府機関など、あらゆる種類の組織に対して脅威をもたらす可能性があるため、セキュリティ意識の高い環境で適切なセキュリティ対策とマルウェア対策を実施することが重要です。
DoS攻撃
DoS攻撃とは、攻撃者がターゲットとするシステム、ネットワーク、ウェブサイトなどに、意図的に過度のトラフィックやリクエストを送信することによって、正規のユーザーのアクセスを妨げる攻撃です。
DoS攻撃の主な目的はサービスを利用できない状態にして、サービス提供者やユーザーに混乱や損害をもたらすことです。
DoS攻撃の特徴としては、アクセス妨害やリソースの枯渇による処理の妨害などがあり、主な種類としては、
「単純型Dos攻撃」
「分散型Dos攻撃」
「リフレクション攻撃」
などが挙げられます。
DoS攻撃はネットワークやウェブサービスの可用性を脅かし、組織やサービス提供者に重大な影響を及ぼすことがあるため、適切なセキュリティ対策を講じて攻撃からシステムを保護する必要があります。
インシデントレスポンスのフロー
発生したインシデントに適切に対応できるよう、インシデントレスポンスには定められたフローがあります。
セキュリティインシデントが発生した際に組織が取るべきステップやプロセスについて解説します。
検出と評価
異常なアクティビティを検出し、インシデントの性質を識別します。
セキュリティツールやログのモニタリング、侵入検知システム(IDS)などを使用することで異常な振る舞いを検知します。
異常の検知後、そのインシデントを関連するステークホルダーやチームに通知することで、影響やリスクを評価します。
インシデントの深刻度や範囲を確認し、迅速な対応が必要かどうかの判断につなげます。
対応と復旧
インシデントに対処することで不正な攻撃を制御し、被害を最小限に抑えます。
これには被害を拡大させないための措置や、マルウェアの除去、攻撃者の排除などが挙げられます。
また、適切なデータのバックアップや復旧手順を実行してシステムを元の状態に戻す作業なども含まれます。
分析と改善
ログやネットワークトラフィックの解析をおこない、インシデントの原因や攻撃方法を特定します。
インシデントがどのようにして発生したのか、その経緯を詳細に分析することで、類似のインシデントが再発しないようにするための対策を講じます。
また、システムの脆弱性を特定することで、今後のセキュリティポリシーや手順の改善につなげたり、スタッフの訓練や意識向上活動を通じて、組織全体でセキュリティ意識を高めます。
報告と記録
インシデントの対応手順、結果、復旧作業などを適切に文書化します。
また、インシデントレポートを作成するなどして、関係者に報告、共有を図ることで、今後のインシデント対応のために経験を組織内に浸透させます。
インシデントレスポンスは、組織がセキュリティリスクに適切に対処し、事後的な被害を最小限に抑えるために非常に重要なプロセスであり、組織全体でのインシデント対応の準備と能力を向上させることが必要です。
インシデント対応訓練
組織のチームや関係者がセキュリティインシデントに効果的に対処できるよう、インシデントレスポンスに則り適切な手順とスキルを習得するための対応訓練が必要です。
ここではインシデントの実際の発生を踏まえ、訓練をして備えておくべき内容を紹介します。
手順の確認
インシデントレスポンスのフローと各段階の手順を理解します。
どのようにしてインシデントを検出、対応をするのか、復旧までの具体的手順を学ぶことが必要です。
役割と責任の明確化
各メンバーの役割と責任を明確にし、チーム全体での連携強化につなげます。
レスポンスチームのリーダーシップやコミュニケーションの重要性を学ぶことも必要です。
シミュレーションによる演習
シミュレーションを通じて、実際のインシデントを想定した訓練をおこないます。
緊急事態での冷静な判断力やチームワークを養うことにつながります。
コミュニケーションによる協力体制の構築
チーム内外との効果的なコミュニケーション方法を学び、情報共有の体制強化を図ります。
また、外部の関係者や第三者との連携についての重要性を理解することも必要です。
適切なレポートライン
インシデントの詳細な報告書や文書化の方法を学び、情報を正確かつ適切に記録するスキルを向上させます。
適切なレポートラインを確立することで、内部統制を図ることにつながります。
評価と改善
訓練後に実際の演習やシミュレーションを評価し、強化や改善すべきポイントを特定します。
場合によっては訓練のプログラム自体も定期的に見直し、改善することが求められます。
インシデントレスポンスのトレーニングは、実際のインシデントが発生する前に、チームメンバーや関係者が適切なスキルと知識を習得し、迅速で効果的な対応ができるようにするための重要な活動です。
適切なインシデント管理はAMELAに
今回は、インシデントレスポンスについて見てきました。
インシデントを最小限に抑える上で、
・どのようなシステムを導入するか
・どの様にシステムを開発するか
・どのように管理/運用するか
は、非常に重要な課題となります。
バグだらけのシステムやサービスを作ってしまえば、その分攻撃される隙を与えることになります。
そのため、現在のインシデントレスポンスに不安がある企業様は、是非AMELAにご相談ください。
AMELAは、高い技術力を持つ海外エンジニアによるオフショア開発を得意としており、セキュリティに強いシステム開発が可能です。
また、専任のITコンサルタントも在籍しており、運用監視などに関しても最適なシステム導入をご提案することができます。