ペネトレーションテストとは?テストの目的と種類、メリットデメリットについて解説

セキュリティは現代のデジタル世界において極めて重要な要素です。

情報漏洩や不正アクセスなどのセキュリティ侵害は、企業や個人に様々なリスクをもたらす可能性があります。

こうした脅威に対抗するため、ペネトレーションテストが注目されています。

本記事では、ペネトレーションテストとは何か、その目的と種類、さらにメリットとデメリットについて解説します。

ペネトレーションテストとは

ペネトレーションテストとは、情報システムやネットワークのセキュリティ強度を評価するためにおこなわれるテストです。

ペネトレーションテストは、組織や企業が自身のシステムのセキュリティを評価し、脆弱性を特定して修正するための重要な手法です。

日本語では「侵入テスト」と訳される事もあり、ホワイトハッカー(悪意のないIT知識のある人)が、攻撃手法を再現してセキュリティレベルを判断します。

システムのセキュリティレベルを向上させ、潜在的な攻撃への対策を強化することが可能です。

ペネトレーションテストは以下のような手法で実施されます。

1:ドメイン名やIPアドレス、ネットワーク構成など、対象となるシステムの情報を収集します。

2:対象システムに対して脆弱性スキャナを使用することで、既知のセキュリティ脆弱性を特定します。

3:脆弱性スキャンで見つかった脆弱性を確認し、本当に悪用可能な脆弱性かどうかを判断します。

4:脆弱性を悪用して意図的にシステムへの侵入を試みます。これにより、攻撃者がどのようにシステムに侵入するのか、侵入後に取得できる情報やアクセス権の範囲を評価します。

5:システムへの侵入後、攻撃者が長期的にアクセスを維持できるかどうかを確認します。これにより、悪意のある攻撃者がシステム内で活動し続けることができるかどうかを判断します。

ペネトレーションテストの目的

ペネトレーションテストの主な目的は、組織やシステムのセキュリティレベルを評価し、潜在的な脆弱性や攻撃経路を特定することです。

詳細な目的を順に解説します。

1つ目は脆弱性の特定と修正です。

ペネトレーションテストは、システムやアプリケーションに存在する潜在的な脆弱性を特定するために実施されます。

これにより、セキュリティの欠陥や脆弱性を修正し、攻撃者が悪用できるリスクを低減することができます。

2つ目はセキュリティポリシーと規約の遵守です。

ペネトレーションテストは、組織のセキュリティポリシーや規約の遵守状況を確認するために使用されます。

これにより、セキュリティ基準や規制要件に準拠し、法的な義務を果たすことができます。

3つ目はセキュリティ意識の向上です。

ペネトレーションテストは、組織内の関係者に対してセキュリティ意識を高める役割を果たします。

テストの結果や脆弱性の実証によりセキュリティの重要性を強調することで、関係者に理解浸透させます。

4つ目は信頼性と顧客満足度の向上です。

ペネトレーションテストを定期的に実施することにより、組織の信頼性と顧客満足度を向上させることができます。

セキュリティに対する積極的な取り組みは、顧客やパートナーに対して信頼を築き、ビジネスの継続性を確保する上で重要です。

以上のように、ペネトレーションテストはセキュリティ強化のための貴重な手法です。

ペネトレーションテストは多くのサービスで実施されています。

例えばAWSではセキュリティ強化の一環としてペネトレーションテストを採用しています。

AWSでは、顧客が自身のAWS環境に対してペネトレーションテストを実施することを奨励しており、セキュリティの強化や脆弱性の特定に役立てています。

脆弱性診断との違い

ペネトレーションテストと脆弱性診断は両方ともセキュリティ評価の手法ですが、異なるアプローチと目的を持っています。

脆弱性診断とは、システムやアプリケーションに存在する既知の脆弱性を特定するためのプロセスです。

脆弱性スキャンはセキュリティの脆弱性を検出し、その結果を報告します。

脆弱性診断の主な目的は、既知の脆弱性を特定し、セキュリティパッチやアップデートを適用することでシステムのセキュリティを強化することです。

一方、ペネトレーションテストは、攻撃者の視点からシステムやアプリケーションをテストするための総合的な手法です。

テストの実施者は、様々な手法や技術を使用してシステムに対する攻撃を実施します。

これにより、未知の脆弱性や攻撃経路を特定できるのです。

つまり、脆弱性診断は既知の脆弱性の検出に重点を置くものであるのに対し、ペネトレーションテストは攻撃シナリオの実施と攻撃者の視点からの総合的なテストをおこない、未知の脆弱性を見つけることに重点を置きます。

更に、実際の攻撃手法を模倣してテストを行うため、
・脆弱性スキャンで漏れていた部分
・互いのアプリケーションが相互作用した結果生まれた脆弱性
などに関しても、対処することができるのです。

ペネトレーションテストの種類

ペネトレーションテストには大きく2つの種類が存在します。

それぞれの内容について解説します。

内部ペネトレーションテスト

内部ペネトレーションテストは、組織内のネットワークやシステムに対して、内部からの攻撃者の視点でテストをおこなうセキュリティ評価の手法です。

組織の内部ネットワークやシステムにアクセス権を持つ者が、悪意のある攻撃者の役割を果たしてシステムに対する攻撃を実施します。

内部ペネトレーションテストでは、組織の内部における脆弱性やセキュリティの問題を特定することが主な目的です。

テスト対象となるのは、内部ネットワーク、システム、アプリケーション、データベースなど、組織内部の各要素です。

テストの範囲は通常、従業員が利用するサーバー、内部ネットワーク、アクセス権やパスワードなどが該当します。

内部ペネトレーションテストを実施することで、システム内の重要な資産やデータの保護状況を評価したり、内部のセキュリティポリシーやユーザーの行動に関する問題を明らかにできるなど、組織内部のセキュリティを評価し改善するための重要な手法として利用されます。

また、悪意のある攻撃以外にも、操作ミスなどのヒューマンエラーに関しても対処できると言えるでしょう。

外部ペネトレーションテスト

外部ペネトレーションテストは、組織やシステムへの外部からの攻撃者の視点でテストをおこなうセキュリティ評価の手法です。

組織の外部からの攻撃を模擬し、システムの脆弱性やセキュリティの問題を特定することが主な目的です。

外部ペネトレーションテストでは、一般的にはインターネットを介してアクセス可能な対象システムやアプリケーションがテスト対象となります。

攻撃者の視点から、ネットワークのスキャン、脆弱性の評価、Webアプリケーションへの攻撃など、様々な攻撃手法が模倣されます。

外部ペネトレーションテストは組織のセキュリティポリシーに準拠し、外部からの脅威に対する実際の防御力を評価する上で重要な手法です。

組織の外部に公開されているシステムやアプリケーションのセキュリティを確保するために積極的に活用されます。

ペネトレーションテストのメリット

ペネトレーションテストの1つ目のメリットは脆弱性の特定です。

ペネトレーションテストは、システムやアプリケーションに存在する脆弱性を特定するために効果的な手法です。

攻撃者の視点からテストをおこなうことで、未知の脆弱性やセキュリティの欠陥を発見し、具体的な対策を講じることができます。

2つ目のメリットは実践的な評価ができることです。

ペネトレーションテストは実際の攻撃シナリオを模倣するため、システムが実際にどのように対応するかを評価できます。

これにより、理論的なセキュリティ対策だけでなく、実践的なセキュリティ強化策の策定が可能です。

3つ目のメリットはリスクの低減です。

ペネトレーションテストにより、システムやアプリケーションに潜在するリスクを特定し、対策を講じることでリスクを低減できます。

既知の脆弱性や攻撃経路の修正、セキュリティポリシーの改善をおこなうことで、悪意のある攻撃に対する耐性を高めることができます。

4つ目のメリットはセキュリティ意識の向上です。

ペネトレーションテストは組織内の関係者にセキュリティ意識を高める効果があります。

テスト結果や報告を通じセキュリティに関する重要性やリスクを明確にすることで、セキュリティ対策の遵守が促進されます。

ペネトレーションテストのデメリット

一方でデメリットもあります。

1つ目はコスト面です。

ペネトレーションテストは専門的な知識やスキルを持つセキュリティの専門家によって実施される必要があります。

そのため、テスト実施に伴う専門家の雇用には高いコストを要します。

2つ目は時間に限りがあることです。

ペネトレーションテストを実施するにあたり、特に複雑なシステムやアプリケーションに対しては相応の時間とリソースが必要となります。

短期間でのテストをおこなう場合、十分なカバレッジや深い評価ができない可能性があります。

3つ目はテスト対象が制約されていることです。

ペネトレーションテストは実際の環境やシステムに対して実施されることもあります。

そのため、テストが本番環境に影響を及ぼす可能性や、システムの可用性に制約が生じる可能性があることから、事前の計画や調整が求められます。

4つ目は検証結果の抜け漏れリスクです。

ペネトレーションテストは実施者の知識やスキル、テストの範囲などによって結果が左右されます。

テスト中に特定された脆弱性や攻撃経路については正確に報告されますが、テスト中に見落とされた脆弱性や攻撃経路も存在する可能性があります。

ペネトレーションテストの注意事項

システムを安定稼働させる上でペネトレーションテストは重要な要素です。

しかし、実施の際には以下の注意事項を遵守することが求められます。

1つ目は合法性と許可です。

ペネトレーションテストは許可を得た範囲内でおこなわれるべきです。

法的な要件や関係する規制に準拠し、対象組織やシステムの所有者から正式な許可を取得してからテストを開始する必要があります。

2つ目は影響の最小化です。

ペネトレーションテストが対象とするシステムやアプリケーションが本番環境である場合、テスト中にシステムの可用性やパフォーマンスに影響を与えないように注意する必要があります。

テストの計画と実施において、予期しないシステム障害やデータ損失のリスクを最小限に抑えるための対策を講じることが重要です。

3つ目はデータの機密性の保護です。

ペネトレーションテストにおいては、機密情報や個人情報などのデータへのアクセスに対する注意が必要です。

テスト対象にアクセスする際には、機密データが不正に流出したり第三者にアクセスされないように、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

4つ目は結果の適切な共有と報告です。

ペネトレーションテストの結果は関係者と共有しなければなりません。

テストの目的や範囲、発見された脆弱性やリスクについては正確な報告をおこなうことが重要です。

5つ目は継続的な改善です。

ペネトレーションテストは単発のイベントではなく、継続的な実施が求められます。

テスト結果から得られた内容を基にセキュリティ対策やポリシーの改善をおこない、システムやアプリケーションのセキュリティを継続的に向上させることが重要です。

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今回は、ペネトレーションテストについて見てきました。

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