「MaaS」とは?意味やメリット・デメリットをわかりやすく解説

次世代の交通サービスとして、実現に取り組まれている「MaaS(マース)」。

「サービスとしての交通」という意味のMaaSは、公共交通機関だけでなく、観光スポットや医療機関、行政機関といった、生活におけるあらゆる要素を取り込んだ、包括的なサービスです。

MaaSが普及することで、交通の利便性が向上するだけでなく、地域活性化や交通弱者の救済、さらには環境問題の解決が期待されています。

この記事では、ヨーロッパを中心に世界中で取り組まれているMaaSについて、言葉の意味や背景、メリットなどをわかりやすく解説していきます。

合わせて、日本におけるMaaS実現の課題や、部分的に実現したMaaSの事例についても紹介します。

MaaSとは

まずはMaaSがどのようなものかについて、サービスの内容と背景、そしてMaaSで重要なキーワードである「統合レベル」について解説します。

Maas(マース)

MaaS(Mobility as a Service)は、複数の公共交通機関を「ひとつのサービス」として捉え、検索や手配、予約を一括でおこなうことのできる交通サービス全般を指します。

MaaSの例としては、目的地までのルート検索からタクシー・レンタカーの手配、料金の支払いまでをアプリケーション上でまとめて済ませるサービスが挙げられます。

MaaSはまた、観光スポットや医療施設など、交通機関以外の情報と連携することで、地域活性化や地域住民の暮らしやすさに繋げる取り組みでもあります。

MaaSの歴史

MaaSという考え方は以前からありましたが、言葉として定義されたのは2015年のITS世界会議です。

そこでMaaSは
「さまざまな形の交通機関や関連するサービスを、需要に応じてひとつのモバイルサービスに統合したもの」
と定義されています。

MaaSの実現には、ビッグデータの活用や交通機関の連携、さらには法整備などが不可欠なため、必然的に国家レベルの事業になります。

早い段階でMaaSの実現に向けて動いたのはフィンランドで、2016年には世界初のMaaSサービスである「Whim(ウィム)」が発表されました。

このアプリケーションは、ヘルシンキの交通機関が月額で乗り放題になるもので、システム上で利用状況が管理されているため、公共交通機関の混雑や渋滞といった問題を解消することに成功しました。

「Whim」は国際的なサービスに成長し、現在は日本でも、本格的な導入のための実証実験をおこなっています。

MaaSの「統合レベル」

MaaSは大規模なプロジェクトとなるため、実現へのプロセスはいくつかのレベルに分けられています。

これを「統合レベル」と呼び、レベル0からレベル4までの5段階で表されます。

レベル0は未着手の状態なので、次のレベル1から内容を説明します。

レベル1は「情報の統合」で、目的地までのルート検索ができる状態を指します。

最近では、iPhoneで目的地を検索すると、
・徒歩で駅までの分数を計算
・電車での時刻表を計算して、発着時間を計算
・バスを利用する際には、バスも計算
など、複数の手段をまとめて計算してくれます。

それがこのレベルになります。

レベル2は「予約・支払いの統合」で、ルート検索ができ、かつ交通機関の予約と決済が一括でおこなえるレベルです。

レベル3の「サービスの統合」では、ここまでの内容を踏まえた上で、あらゆる交通手段を横断したMaaSの実現が示されます。

最後のレベル4は「政策の統合」として、レベル3までの内容が都市計画にも組み込まれて実現された状態を指します。

2023年現在、日本のMaaSはレベル1の状態にあり、国土交通省によってMaaSのレベルアップが取り組まれています。

MaaSのメリット

MaaSは単純な利便性を超えて、さまざまな課題を解決することが期待されています。

ここでは、MaaS実現によって得られる具体的なメリットを解説します。

混雑の緩和

MaaSには、都市の交通における混雑の緩和が期待されています。

公共交通機関の利便性が高まることによって、自家用車以外による移動が活発になり、都市部の渋滞を解消できるという予測があります。

また、MaaSはひとつのシステムによって交通機関の利用状況を把握できるため、公共交通機関の混雑緩和にもつながります。

高齢者への配慮

近年は政府の働きかけもあり、自動車免許を返納する高齢者が増加しました。

しかし地方には公共交通機関が少なく、自家用車以外の移動が難しいという問題があります。

MaaSはこうした交通弱者への配慮としても注目されています。

MaaSによってバスのルート検索やタクシーの手配が手軽になることによって、運転が難しい高齢者でも、交通手段を手に入れられます。

環境問題の解決

MaaSは、環境問題への取り組みとしても注目されています。

MaaSが実現されることによって、公共交通機関やカーシェアリングの利用者が増加します。

それによって、自家用車による排ガス問題の解消が期待されています。

脱炭素社会を実現するうえでも、MaaSが大きな役割を担うのです。

地域の活性化

フィンランドにおける「Whim」がそうであったように、MaaSでは交通機関の月額乗り放題を採用することが多いです。

交通機関の利便性が高まるだけでなく、定額料金制によって、地域の活性化が見込まれています。

日本でも定額乗り放題の施策がおこなわれており、静岡県富士市は「市内共通定期券」を実施したところ、高齢者を中心に、外出機会が増えたことが報告されています。

外出回数と消費機会が増加することによって、経済の発展と健康増進に繋がり、地域活性化が実現されます。

スマートシティの実現

MaaSはまた、スマートシティ実現の基盤となっています。

スマートシティでは、交通機関だけでなく、公共施設や医療施設、レジャー、物流など、都市を動かすあらゆる要素がITによって統制される社会を目指しています。

このスマートシティを実現するためには、統合レベル4(政策の統合)のMaaSが不可欠です。

現在、トヨタ自動車が開発を進める実験的なスマートシティ「Woven City」は、MaaSを基盤とした代表的な実現例です。

MaaSのデメリット

十分な実現には国家単位での働きが求められるMaaS。

北欧を中心に、ヨーロッパではすでに部分的なMaaSが実現されていますが、日本においては多くの障壁があり、現時点で統合レベル1(情報の統合)の段階にとどまっています。

ここではMaaSのデメリットとして、MaaS実現の課題を解説します。

運用の難しさ

まずはなんといっても、MaaSシステムの運用が困難であるという点です。

ヨーロッパの多くの国家において、公共交通機関は国営です。

そのため、そうした国家では政府主導でMaaSを推進することができたのですが、日本の公共交通機関は民営であるため、民間主導にならざるをえないのが問題とされます。

民間企業によるMaaS推進の問題点としては、事業者を横断したシステム整備が難しい、運賃の変更には国土交通省の許可が必要である、赤字路線などの不採算サービス維持が困難といったものが挙げられます。

このように、MaaSの実現のためには、官民一体となった働きが不可欠なのですが、いまだ多くの問題を抱えているのが現実です。

法整備の問題

次に、法整備の問題があります。

日本では、IT技術の導入を想定した法整備が遅れており、IT以前の法律がMaaS実現を妨げています。

例えば、アメリカでは一般人が自家用車を用いてタクシーを運営する、いわゆる「白タク」が認められていますが、日本においては道路運送法第78条で禁止されています。

現在の日本は不景気で、どの団体も自分たちの既得権益が脅かされる事を良しとしません。

そういった動きからも、白タクを始め、Uberなどの個人タクシーの配車サービスなどは、導入が難しいとされています。

そのほかにも、道路運送車両法における手続きが煩雑であるといった問題もあり、法規制の緩和が急がれています。

データ共有の難しさ

交通機関の事業者どうしがデータを共有・公開することは、MaaS実現において不可欠です。

ですが、日本におけるMaaSの課題として、事業者の垣根を超えたデータ共有の難しさがあります。

日本の事業者は外部との連携に消極的で、この閉鎖的な性質が、MaaS推進を妨げていることが指摘されています。

新規参入や国家による後押しもあり、徐々に企業間の連携が進んでいます。

しかし、実現のためにはセキュリティを初めとした法整備も必要であるため、多くの時間がかかることが予想されます。

MaaSの具体例

日本国内ではいまだ発展途上のMaaSですが、部分的なMaaSの実現例は登場しています。

ここでは、国内におけるMaaSの具体例を紹介します。

S.RIDE(タクシー手配)

「S.RIDE」は都内タクシー事業者とソニーが連携して提供するMaaSアプリです。

スマートフォンアプリひとつで、タクシーの手配と利用料金の事前確定がおもなサービスです。

かんたんな操作で近くにいるタクシーを呼ぶことができるため、今後のタクシー利用者の増加が見込まれます。

上士幌町のオンデマンドバス

北海道の上士幌町では、MaaSの社会実験として、利用者の予約状況にあわせて運行する「オンデマンドバス」を導入しました。

高齢者が多く、公共交通機関の乏しい上士幌町では、いわゆる交通弱者の日常生活の問題を抱えています。

そこで、自宅と町内を廻るオンデマンドバスを運行することで、高齢者の買い物や通院にかかる負担を軽減することに成功しました。

上士幌町ではまた、このオンデマンドバスを利用して、行政主導のネットスーパーを運営しています。

インターネット上で品物と配達時間を指定することで、自宅の近くまで輸送してもられるサービスで、MaaSの実現例として注目されています。

新しい仕組みを実現するならAMELAに

今回は、新しい取り組みであるMaaSについて見てきました。

「きちんと仕組み化ができれば、生活が良くなる」

こういった取り組みを実現するのは、非常に困難です。

本文中にも、法整備の点でデメリットを記載しました。

MaaSに限らず、こういった法律の影響で実現できていない新しいサービスは多いでしょう。

また、そういったサービスは、開発する上で非常に大きなコストが必要になります。

もしも現在、自社の業界に対して、
「この部分がクリアできれば、業界が良くなるのに」
という考えがあれば、是非AMELAにご相談下さい。

オフショア開発により、安価な開発が可能なので、
「開発後の運用保守・バグ修正」
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