【個人事業主必見】インボイス制度とは?いつから始まる?なんのためにやるの?

現在、話題になっている「インボイス制度」。

色々な書籍で解説されており、SNSなどでも取り上げられる事が多いです。

しかし、何となく難しそうに感じるものの
「具体的にどういう制度なの?」
「自分にどう関係してくるの?」
など、理解できていない人も多いのではないでしょうか。

今回は、このインボイス制度をできるだけ簡単に説明し、実際にどのような影響を受ける可能性があるのかを含めて解説していきたいと思います。

インボイス制度とは?簡単に解説

まずは、インボイス制度とは何かを簡単に説明します。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、
「インボイス(適格請求書)を用いて仕入税額控除を受けるための制度」
です。

簡単に言うなら
「きちんとした請求書に書くべきことが変わります」
ということです。
(きちんとした請求書か否かで、得られるメリットが変わりますが、その内容は後述します)

適格請求書とは、商品やサービスを売る人が、買う人に対して、適用税率や消費税額等を伝えるためのものです。

現在は、「区分記載請求書」という請求書でやり取りをしていますが、これに加えて
・登録番号
・適用税率
・消費税額等
を含めた形式での取引の事を指します。

このインボイス制度の大きなポイントとしては、
「登録番号を取得している事業者か否か」
という事です。

ビジネスにおいて下記の様な取引があったとします。

1.10万円の材料を仕入れる(税込みで11万円)
2.材料を加工して、100万円で売る(税込みで110万円)

この時、売上は税込みで110万円ですが、その内10万円は、国に納める税金です。

しかし、材料費を購入するときには、10万円分の材料を買うのに、11万円を支払っています。

つまり、1万円分の消費税を既に他の業者に支払っている事になります。

そのため、本来10万円の消費税を国に納める所を、既に事前に支払った1万円分を差し引き、9万円を国に納める。

これを、「仕入税額控除」と言います。

この制度が無ければ、
・仕入れた時に支払う消費税
・販売した後に国に納める消費税
を二重で支払ってしまう可能性があります。

インボイス制度がスタートすると、この「仕入税額控除」を受けるためには、登録番号などの記載された「適格請求書」が必要になるということなのです。

そして、この適格請求書の作成に必要な登録番号は、消費税を国に納めている事業者だけが発行することが出来るのです。

インボイス制度が大きく取り上げられている理由

さて、このインボイス制度が大きく取り上げられている理由としては、フリーランスや個人事業主・売上の小さな零細企業に大きな影響を与えるからです。

通常、商品やサービスの売買で受け取った消費税は、国に納める必要があります。

国に支払う消費税を、消費者は国に直接支払わず、企業に支払っています。

結果として、国に変わって預かっている形になり、後から企業から国に納めるのです。

しかし、この国に納める消費税を免除されている企業があります。

それが、
「課税売上高が1,000万円以下の事業者」
です。

つまり、売上が少ない企業は消費税の納税義務がなかったのです。

しかし、前述したようにインボイス制度が始まると
「適格請求書を発行しようとすると、登録番号が必要」
になります。

そして、登録番号は消費税を納税している事業者だけが発行できます。

結果として、
「今まで税金を免除されている人は、消費税を支払うようにしないと適格請求書を発行できない」
という状況になります。

これが、世間的にも大きく話題になっている理由です。

なんのためにやるのか

では、なんのためにインボイス制度を導入する必要があるのか。

前項でお話したように、大きく関わってくるのは、今まで消費税の納税を免除されていた
「課税売上高が1,000万円以下の事業者」
の企業や個人事業主です。

インボイス制度が始まった時に、これらの事業者は、2つの選択肢を迫られます。

1つめは、
「消費税の免除対象の企業だけど、自分の意志で消費税の納税を行い、適格請求書を発行できるようにする」

2つめは、
「これまで同様に、消費税の納税を免除され続ける」
という事です。

当然、消費税を免除される方が、事業者としては喜ばしいです。

その分、利益として会社に残る金額が多くなるのです。

しかし、それをせずに
「敢えて消費税の納税を行い、適格請求書を発行できるようにする」
と言うのには、理由があります。

それは、
「適格請求書を発行しないと、取引先からすると、仕入税額控除を受けられない」
という事です。

先程の例で挙げた様に、
1.10万円の材料を仕入れる(税込みで11万円)
2.材料を加工して、100万円で売る(税込みで110万円)

この場合には、国に納める消費税は9万円で良かったです。

これは、「仕入税額控除」があるからだと説明しました。

しかし、適格請求書を発行できない企業(消費税の納税を免除され続けることを選んだ事業者)から商品や材料を購入した場合、この仕入税額控除を受けられません。

結果として、消費税を10万円、国に納める必要が出てきます。

本来、消費税を二重取りしないために存在する仕入税額控除が、インボイス制度で登録番号を得ていない事業者から購入すると、二重に取られる事になるのです。

結果、商品や材料を購入する会社からすると、登録番号を持っている事業者から購入する方が、良いと考える可能性があるのです。

だからこそ、今までは免除対象であった事業者でも、積極的に消費税を納税して、登録番号を得ようとします。

国がこれを行う理由としては、実質的な「増税」という見方が出来るでしょう。

いつから始まるのか

さて、このインボイス制度はいつ始まるのか。

現状、2023年10月1日からスタートする予定です。

とは言え、現在非常に反対の声も大きく、いきなり完全に施行されるかはわかりません。

段階的な導入の可能性もあります。

インボイス制度の対象外の取引

とは言うものの、この適格請求書の発行が難しい取引も存在します。

・自動販売機で商品を購入する
・手紙などをポスト投函する
・3万円未満の公共交通機関を利用した場合の乗車券
・出入り口で回収される入場券
・従業員が支給される日当・宿泊費など
・古物商等が的確請求者発行事業者でないものから購入した棚卸資産
・適格請求書発行事業者でないものから購入した再生資源など

こういった取引も、会社の経費で落ちる事があります。

しかし、適格請求書を発行するのが難しいため、これらに関しては、適格請求書がなかったとしても、仕入税額控除として、消費税の控除を受けることができます。

インボイス制度導入の影響

さて、制度としてのインボイスを見てきましたが、実際にはどの様な影響が考えられるのでしょうか。

商品やサービスを発注する側と、受注する側に分けてその内容を見ていきます。

発注側の影響

商品やサービスを発注する側としては、
「適格請求書での仕入れ」

「それ以外の仕入れ」
では、経理的な処理が変わります。

その後に、国に納める消費税額も変わってくるので、明確にする必要があります。

これらの事務処理が多くなることが懸念されています。

受注側の影響

受注側は、発注側よりも大きな影響を受けます。

その理由は、実質的な増税だからです。

消費税の納税免除は、
「売上が少ないから、免除されている」
という事なのですが、こういう人の中には、消費税が免除されても、経営がギリギリの所も多いです。

特にフリーランスなどは、この不景気も相まって、どれだけ頑張ってもギリギリの経営状況である可能性があります。

以前メディアでも、日本のアニメーターには、個人事業主も多く、しかも低賃金で重労働だという話が放送されていました。

アニメーターの職種は、大きく6つに分かれており、それぞれの平均年収は、下記の様になっています。

原画:150万円〜200万円
仕上げ:270万円〜290万円
キャラクターデザイン:500万円〜530万円
背景美術:230万円〜250万円
作画監督:550万円〜600万円
監督:600万円〜700万円

原画・仕上げ・背景美術は、年収で300万円を切るような状況です。

個人事業主としてやっているこれらの人が、仮にこのインボイス制度の導入によって、実質1割の増税になると考えると、20~30万円これまでよりも手残りが少なくなります。

元々生活が厳しい人は、これによって更に状況が悪化し、場合によっては仕事を辞めざるを得ない状況になるでしょう。

また、事務処理の影響も個人事業主など、人を雇う余裕が無い事業者にとっては、非常に大きな問題になるのではないでしょうか。

この適格請求書は、発行する側の事業者に保管義務があります。

下記は、国税庁のサイトに記載されている内容です。

適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁 的記録の保存義務があります(新消法57の4⑥)。 この適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期 間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所 その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません(新消令70の13①)。 

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-10.pdf

これも、受注者としては非常に大きな影響と言えそうです。

個人事業主はやるべき?インボイス制度導入のメリット・デメリット

では、個人事業主はこのインボイス制度導入(登録番号の取得)をするべきなのでしょうか?

メリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

インボイス制度導入のメリットとして最も大きいのは、
「仕事を取りやすくなる可能性がある」
ということです。

仕事を発注する側としては、インボイス制度を導入している個人事業主の方が、依頼をしやすくなります。

例えば、クラウドソーシングサイトなどで、仕事を発注する場合、同じ1万円で仕事を発注する場合には、インボイスを導入している事業者から購入する方が得です。

そのため、登録番号を取得している人としていない人がいるような市場では、インボイス制度を導入している事業者の方が、有利になる可能性があります。

その他のメリットとしては、
・郵送や印刷が不要となることによるコスト削減
・紙での保管が不要となるため、保管場所の確保が不要
・請求書発送にかかる手間が無くなることで、業務の効率化
が考えられます。

デメリット

デメリットとしては、前述したように
・売上の実質的なダウン
・事務処理の増加
に加えて、2つのデメリットが考えられます。

1つめは、売上に関して。

例えば、力関係の差がはっきりしている業界の場合。

これまで継続して月に10万円分の仕事を依頼されていたとします。

しかし、インボイス制度が始まり、登録番号を取らずに免除対象として仕事をしていた場合、発注側の企業から
「登録番号を取らないなら、単価をその分下げる」
などの圧がかかる可能性があります。

結果として、
インボイスを導入した場合:消費税の納税により、利益額が下がる
インボイスを導入しない場合:発注者からの発注金額(売上金額)が下がる

という状況になり、どちらにしても手元に残るお金は減少する・・・という状況が考えられます。

2つめは、「個人情報が掲載される」事です。

国税庁のホームページに、登録番号を検索する画面があります。

このサイトでは、下記の様な情報が公開されます。

・法人名または個人名
・所在地
・登録番号
・登録日
・登録事項(法人の場合は、法人種別、事業内容、役員の情報など)
・履歴情報(変更日、変更前の情報、変更後の情報など)

これらの情報を公開されることがデメリットでしょう。

インボイス制度に合わせたシステム導入はAMELAに相談を

今回は、インボイス制度について見てきました。

大きな法律的な変化であり、あらゆる企業において、少なからず影響が出ます。

また、きちんと準備をしておかなければ、業務効率が落ちたり、ミスが発生する可能性もあるでしょう。

また、受注側としてもより効率的な仕事をしなければ、ビジネスの継続が難しい可能性もあります。

発注側の企業様も、受注側の企業様も、今の業務をシステム化により効率化することは、今後ますます重要になると考えられます。

「最低限の人員で最大限の収益を得る」

そのためにも、一度業務のシステム化を検討してみてはいかがでしょうか。