組み込みソフトウェアとは?開発に必要な技術や将来性について解説

家電製品や産業系の機器など、身の回りには様々な電子機器の類が流通しています。

これらの機器はもはや日常の一部と化し、日々の生活を送る上で欠かすことのできないものとなっています。

これらの機器は組み込みソフトウェアといわれるプログラムにより稼働しているのをご存知でしょうか。

今回の記事では組み込みソフトウェアについて取り上げ、その特徴や開発手法、将来性について解説をします。

組み込みソフトウェアとは

組み込みソフトウェアとは、コンピューターの動作制御をするために、あらかじめ家電製品などに搭載しておくプログラムソフトのことをいいます。

電気で動く機器には組み込みソフトウェアが内蔵されており、その機器に求められる目的に特化したプログラム設計がなされています。

組み込みソフトウェアは単体で利用されるものではありません。

そのソフトウェアを組み込む機器があってこそ目的を達成できます。

組み込みソフトウェア搭載機器

組み込みソフトウェアは電力で稼働する機器のほぼ全てに搭載されているといっても過言ではありません。

例えば家電用品であれば、冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機やエアコンに掃除機などが挙げられます。

どこの家庭でも必ず1つは置いてある家電ばかりです。

また、産業系の機器であれば、プリンターや自動車、自動券売機やエレベーターなど、こちらも多くの電子機器に組み込みソフトウェアが使われていることがわかります。

組み込みソフトウェアはユーザーの挙動に応じて各種処理が実行される仕組みです。

エレベーターを例に挙げると、

1.ボタンを押す
2.押した階にエレベーターが止まる
3.扉が開く
4.行きたい階のボタンを押すと点灯する
5.扉が閉まる
6.押した階に向かってエレベーターが動く

といった一連の流れの処理に対応したプログラムが設計されています。

組み込みソフトウェアの特徴

組み込みソフトウェアには以下のような特徴があります。

1つ目はクロス開発をおこなうことです。

クロス開発とは、実際のプログラムを稼働する環境と異なる環境でプログラムを開発することをいいます。

組み込みソフトウェアの場合、稼働環境は家電製品などの電子機器内です。

一方で、組み込みソフトウェアの開発環境は、その機器内ではなくパソコン上でおこないます。

なぜこのように開発環境と稼働環境を分ける必要があるのでしょうか。

その理由は、組み込み機器内に十分な開発環境が整っていないためです。

先程と同様にエレベーターを例に挙げると、エレベーターは人やモノを輸送することを目的に、上下運動を繰り返すという動作に特化した機器です。

そのため、エレベーターというハードウェアの中にはプログラムを開発するために必要な基本性能が備わっていません。

このことから、ソフトウェアの開発はパソコン上でおこなわなければなりません。

なお、このクロス開発とは逆に、プログラムを稼働する環境と同じ環境で開発することをセルフ開発といいます。

例えばパソコン上で起動するアプリケーションなどの開発をおこなうのはセルフ開発に該当します。

2つ目は即効性が求められることです。

組み込まれたプログラムの処理が遅れることは、安全性だけでなくユーザー満足度が低下する原因になりかねません。

エレベーターの場合であれば、ボタンを押してからエレベーターが動き出すまでにタイムラグがあることは許容されません。

特に、扉に挟まった時に、自動的に開いてくれる処理や、重量制限を監視するプログラムは、安全性を守る上で欠かせません。

ユーザーの操作に対し、いかにスピーディーに対応できるかを設計の段階で見きわめる必要があります。

3つ目は高い信頼性が求められることです。

組み込みソフトウェアに不具合があることで重大な事故に繋がる恐れがあります。

過去にエレベーターで扉が開いているにも関わらず、そのまま動き出し、人が扉の間に挟まれて死亡するという痛ましい事故がありました。

また、3階のボタンを押したのに4階に止まるなどといったトラブルが発生した場合、重大な過失となります。

このような事故やトラブルは到底許されるものではなく、一度でも発生すると社会的信用を瞬く間に失ってしまいます。

4つ目は高い技術が求められることです。

即効性と信頼性に繋がる部分になりますが、組み込みソフトウェアの開発には高度な技術が必要です。

例えば家電の場合、家電量販店などで大量に取り扱いをすることから、特注品ではなく大量生産が前提になります。

大量生産をするにあたっては、組み込みソフトウェア1つ1つのコストを抑えなければなりません。

そのため、低スペックの素材で高いパフォーマンスを出す必要があります。

上述した事故を未然に防ぐためにも、システム設計やプログラミングの高度なスキルがなければ組み込みソフトウェアの開発は難易度が高いといえます。

組み込みソフトウェアの開発

組み込みソフトウェアの開発には高度な技術が求められることを解説しました。

ここでは開発をするにあたって具体的に求められる知識やスキルがどのようなものかを解説します。

プログラミング言語

1つ目はプログラミングのスキルです。

組み込みソフトウェアの開発に用いるプログラミング言語はいくつかあり、C言語、Java、Pythonなどが挙げられます。

その中でも最も利用されているのがC言語です。

C言語が選ばれるのにはいくつかの理由があります。

その最大の理由は、C言語はハードウェアを直接制御するプログラムを設計しやすいというメリットがあるからです。

組み込みソフトウェアは、組み込み機器に搭載をすることで、直接的に動作の制御をするという特性があります。

また、これ以外の理由として、プログラムの処理速度が速いことや仕組みがわかりやすいなどといった理由があります。

以上のことから、組み込みソフトウェアはC言語との親和性が高く、強みを活かすことができます。

電子機器の知見

2つ目は電子機器の知見の有無です。

作成したソフトウェアは最終的に組み込み機器と連携をする必要があるため、実際のハードウェアの構造を理解していなければなりません。

例えば、どれだけハイスペックなソフトウェアを開発したとしても、組み込み機器側のスペックが足りない場合はソフトウェアを実装することができません。

ソフトウェアの開発知識やスキルだけでなく、ハードウェア側の構造や設計についての知識と経験が求められます。

組み込みソフトウェアの開発フロー

組み込みソフトウェアを開発する際の実際のフローについて解説します。

組み込みソフトウェアの開発は、一般的なソフトウェアの開発フローと大きな違いはありません。

ただし、開発したソフトウェアを最後にハードウェアに組み込む必要があるという違いがあります。

開発をするにあたり、まず始めにおこなうのが要件定義です。

この時点で実現したいこと、費用、納期などを関係者全員で擦り合わせをおこないます。

要件定義の次はパソコン上の開発環境で早速プログラムの記述をしていきます。

記述後はコンパイルをおこない、開発環境上でプログラムが期待通りに実行されるかどうかの確認をおこないます。

ソフトウェアの完成後は、そのソフトウェアを実際に組み込み機器に搭載して動作確認をおこないます。

開発するソフトウェアは最終的に本番用のハードウェアに組み込むため、動作確認で問題がないと判断されれば、実際の取り付けをおこなっていきます。

なお、組み込み機器であるハードウェアはソフトウェアと並行して開発を進めるケースが多いです。

組み込みソフトウェアの展望

組み込みソフトウェアはアプリケーションなどと違い、組み込み機器ごとの機能に特化した処理を実行します。

しかし最近ではスマート家電とよばれる、組み込み機器自体の性能向上に伴い、組み込みソフトウェアに求められる役割にも変化が起きようとしています。

組み込みソフトウェアには今後どのような役割が求められるのか、解説をします。

IoT技術の実装

組み込みソフトウェアに対し、IoT技術を導入することに関心が寄せられています。

IoTとは『internet of things』の略で、モノのインターネットと訳されます。

通信技術を駆使することで、モノをインターネットに接続することを意味します。

これまでインターネットに接続することができたのは、パソコンやスマートフォンなどの通信端末に限られてきました。

しかし、IoT技術を使うことで家電製品などもインターネットと繋がることができます。

これにより、離れた場所にいても電源のオンオフをするといった遠隔操作が可能になります。

この他にも一定時間操作がない場合はスマートフォンに通知が飛ぶなどといった、安否確認としての役割を果たすこともできます。

IoT技術を用いた代表的な機器の例としては、スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスが挙げられます。

AI技術の実装

組み込みソフトウェアをAI技術に活用することにも注目が集まっています。

IoT技術によりインターネットに接続することができれば、組み込みソフトウェアから得られる情報をデータベースに保存することが可能です。

蓄積されたデータを増やしていくことで、それはビッグデータになります。

ビッグデータを活用することができれば、新たな気付きやビジネス機会を広げることが可能です。

データを蓄積するためには先にも述べたウェアラブルデバイスを活用します。

スマートウォッチは時計としての機能だけでなく、体温や脈拍をリアルタイムで計測できます。

例えば人の体内データとAI技術を掛け合わせることで、脈拍に異常を感知したら医療関係者に自動で連絡が届くなどといった、日々の健康管理や予防医療といった対策を講じられます。

医療以外にも、家電が普段使われている時間帯などの情報を学習し、

・朝起きる時間になると自動でカーテンが開く
・起きる時間にコーヒーが出来る
・自分のスマホのGPSと連動し、帰ってくる頃に自動でお風呂が沸く

などなど。

様々なビジネス展開が考えられます。

組み込みソフトウェアもAMELAに

今回は、組み込みソフトウェアについて見てきました。

一言でプログラミング言語と言っても、その機能や使い所はバラバラで、言語ごとに向き・不向きがあります。

また、開発する環境も違えば、それぞれのプログラムで独自の考え方などもあります。

記事中で説明した電子機器でのプログラムには、「インターネットへの接続」が考慮されていません(IoT機器は別にして)。

そういった機器の開発ばかりをしてきたエンジニアの中には
「WEBサイトを作る際のセキュリティに詳しくない」
という人もいます。

環境が違っていたので、これまで考慮する必要がなかった事象があるのです。

そのため、システム開発においても、その企業に自分が作りたいシステムの専門家がいるのかは、きちんと把握しておく必要があります。

AMELAでは、ベトナムに多数の優秀なエンジニアを抱えており、開発の幅が非常に広いです。

是非一度、ご相談頂ければと思います。