「年末調整のシステム化」とは?メリットやシステムの選び方などを解説

従業員にとっても、人事にとっても大きな負担となっている年末調整。

工程や書類の多さから、デジタル化に取り組まれてきた分野ですが、平成30年度の税制改正によって、一連の工程をすべてデジタル化することが認められました。

また、政府主導でマイナンバーを活用した申告も進められており、将来的にマイナポータルに一元化する方針を打ち立てています。

いまのところ義務化はされていないものの、企業は年末調整のシステム化へ対応することを迫られています。

この記事では、国税庁による取り組みとしての「年末調整のシステム化」について、その内容やシステム化のメリット、そして年末調整システムを選定する際のポイントを解説していきます。

「年末調整のシステム化」とは

「年末調整のシステム化」とは、そもそも何を指しているのでしょうか。

ここでは、これがどのような取り組みなのか、システム化が求められる背景や対象、業務の流れについて解説していきます。

国税庁による取り組み

年末調整のシステム化およびデジタル化は、国税庁による制度改革の一環として取り組まれているものです。

平成30年度の税制改正によって、令和2年度の年末調整から、デジタルデータによる書類提出が認められるようになりました。

これまでは紙の書類やハガキといったアナログデータでおこなわれていた年末調整手続きを、デジタル化するために、周辺制度や環境の整備が進められています。

年末調整のシステム化にあわせてさまざまなシステムが登場しており、国税庁も「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(通称:年調ソフト)」を配布しています。

この取り組みは、調整業務の効率化がおもな目的となっており、現在のところ、デジタルデータによる提出は義務化されていません。

(参考:国税庁「年末調整手続の電子化に向けた取組について」https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho.htm)

システム化が求められる理由

年末調整は人事業務のなかでも、工程の多さから負担が大きく、それゆえに入力の自動化やフォーマットの統一といったシステム化を、企業・行政双方から進めてきた分野です。

しかし一部の業務についてはデジタル化が認められておらず、紙の書類とデジタルデータが混在するという状況でした。

また、書類からシステムに転記する必要があり、申告データと申請書の内容をつきあわせて確認する業務が発生していました。

この問題を解消するために、税制改正という形で、これまでデジタル化が認められていなかった分野でも、電子データによる提出が可能になったのです。

こうした流れに対応するために、人事業務における年末調整システムの整備が求められています、

システム化が認められたもの

平成30年の税制改正によって、令和2年度の年末調整でデジタルデータによる申告が可能になったものは、
・生命保険料控除証明書
・住宅借入金等特別控除申請書
・残高証明書
などです。

これまでは、紙の書類による提出のみが可能でしたが、国税庁が配布する「年調ソフト」でデジタルの申請書類を作成して勤務先に提出することで、システム上で処理をして申告することができるようになりました。

なお、従業員から必要な情報をデジタルで受けとって年末調整申告書を作成する場合は、あらかじめ税務署へ
「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請」
を提出する義務があります。

また、マイナンバー等を従業員から収集する際にも、事前に利用目的などを説明したうえで、個人の了承を得る必要があります。

とくにマイナポータルを利用して申告をおこなう場合は、前もって準備をしておくことが重要です。

システム化された年末調整の流れ

次に、システム化された年末調整手続きの流れを、簡単に説明します。

まず、対象者が保険会社などから控除証明書をデジタルデータで受けとります。

次に、国税庁がホームページで配布している「年調ソフト」をダウンロードして、必要事項を記入したうえで証明書等を添付することで、デジタル書類を作成します。

控除額等の計算は、証明書添付時に自動でおこなわれます。

こうしてできあがったデータを勤務先に提出し、システムに取り込んで必用な計算をします。

このように、ある程度フォーマットが統一されており、面倒な計算も必要なく、またデジタルデータは紙の書類のような保管の煩わしさがないため、年末調整にまつわる業務の負担を軽減することができます。

年末調整をシステム化するメリット

年末調整をシステム化することによるメリットは、企業・従業員双方にあります。

それぞれの立場からのメリットを、いくつか解説します。

企業のメリット

企業にとってのメリットは、年末調整にかかるコストを削減することができる点です。

まず、控除額の計算については、従業員がソフトウェアを用いて報告書を作成するため、計算自体を行う必要がなくなります。

計算や一部入力もツールが自動で行ってくれるため、ミスがないか確認して、修正するといった作業もなくなります。

また、紙による申請書類は7年間の保管義務が発生しますが、デジタルデータであれば、保管にかかるコスト(紙代・場所代など)を抑えられます。

さらに、年末調整のシステム化には、申請書類をデータベース上で一元管理できるというメリットもあります。

書類を整理したり内容を確認したりといった業務から解放され、さらに、従業員ごとに必要な申請書が提出済みか否を、一目で確認できるようになります。

従業員のメリット

年末調整のシステム化によって従業員が得られるメリットとしては、
「申請書類の作成・提出にかかわる面倒な手続きを簡略化できること」
や、
「必要書類の発行・保管にかかる負担を軽減できること」
などがあります。

控除額などの計算はツールが自動でおこないますし、書類の紛失による再発行の手間も省けます。

また、マイナンバーと連動して、マイナポータルを活用することで、さまざまな必要書類をまとめて入手することも可能です。

デジタル化で想定されるデメリット

年末調整をシステム化することで想定されるデメリットについても、少し解説します。

まず、システム導入後、業務における混乱が発生することです。

従業員がどのようにシステムを扱えばよいのかを理解していなければ、かえって申請に時間がかかるだけでなく、システムの定着と業務のデジタル化から遠のいてしまうことになりかねません。

システムの取り扱いについては、ルールやフォーマットを決定したうえで、従業員に周知し、サポート体制を整えることが大切です。

次に、ソフトウェアなどのシステムを運用していくうえでは、定期的な保守業務や改修業務が発生するという点です。

そのコストをかけられるかは、システム導入前に検討しておく必要があります。

年末調整システム選びのポイント

ここまで、年末調整をシステム化することの概要やメリットを解説してきました。

これまで大きな負担になっていた年末調整にまつわる業務を、デジタルデータでの申請によって簡略化できるのですが、それを実現するためには、企業による環境整備が必要です。

ここでは、数多くの製品が存在する年末調整システムから、導入するものを検討する際のポイントを紹介します。

政府が推奨する要件を満たしているか

国税庁は、年末調整のシステム化について「すべてのプロセスをスムーズにデジタル化する」ことを求めています。

政府の取り組みとして、マイナンバーとの連携による一括申請を進めており、将来的には、すべての手続きをマイナポータルで統括的に実現することを目指しています。

現在はまだ制度構築の途上ですが、いずれにしても政府が推奨する要件に対応する必要があります。

とくに、マイナポータルとの連携機能が備わっているかは、導入システムを検討する際に重要なポイントとなります。

自社の事業・環境に合っているか

さまざまなタイプのツールが存在する年末調整システムですが、そのツールに備わっている機能が、自社の環境に対応できるかを確認する必要があります。

現在すでに業務で使用しているシステム(勤怠管理システムや労務システムなど)との連携が可能か、求めている機能が備わっているか、自社の業務体系にフィットするかなどをチェックしましょう。

また、年末調整システムには、年末調整にまつわる業務に特化したものから、給与システムや労務管理システムと連携して機能するものまであります。

どのような形でシステムを導入すれば、一連の工程をデジタル化できるか、よく検討しておくことが大切です。

社内の技術で扱えるシステムか

年末調整システムには、シンプルな操作性を持つものから、高度な処理が可能である一方で、扱うのにはそれなりの知識が求められるものまで存在します。

社内の人員が技術的に扱えるレベルのシステムであるかは、試験的な導入などによってチェックしましょう。

また、ITに不慣れで、紙の書類でしか提出できないといった従業員の事情も考慮することが重要となります。

システム上での操作を苦手とする従業員が多い場合は、比較的扱いやすく、ヘルプ機能などが充実しているものを選んだうえで、講習会などを実施することも効果的です。

システムを導入したら、フォーマットや利用に関するルールを手早く整備しておくことも重要です。

社内環境が適応できるか不安な場合は、カスタマイズ性に優れたシステムを選ぶとよいでしょう。

他システムとスムーズに連携できるか

年末調整は、その年に天引きした税金の過不足を補います。

そのため、給与や賞与の金額によって、ここに計算が必要になります。

ということは、給与システムと連携できる事も重要です。

「給与システムと同じ会社が提供する年末調整システムを選ぶ」
もしくは
「csv取り込みなどのインポート機能がある(給与システム側にもアウトプットできる仕組みがある)」
などのシステムを選ぶとスムーズに業務が行なえます。

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今回は、年末調整のシステムについて見てきました。

人事業務は、特定の時期に業務過多になることが多く、システムの導入によって負荷を軽減することができれば、人材の流出を防ぐことにも繋がります。

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