オムニチャネルのメリットとデメリット!ビジネス活用のヒント

オムニチャネルという言葉を聞いたことのある読者は多いのではないでしょうか。

このサイトでも、以前成功事例などを取り上げています。

オムニチャネル戦略の成功事例5選!やるべき理由・注意点まとめ

オムニチャネルとは、顧客・商品・在庫に関するオンラインショップや実店舗のデータを統合して、
「顧客が求めるものを好きな場所で好きな時間に受け取ることが出来るようにする」
など、多様な活用が可能な販売戦略のことです。

今回は、オムニチャネルが確立した後は多くの「メリット」が生まれることや、オムニチャネル化推進中は「デメリット」があることについて触れていきます。

また、メリットをビジネスに活かした「オムニチャネルで得られる情報のビジネス活用事例」についても紹介します。

オムニチャネル化のメリット

まず、オムニチャネルのメリットについて見ていきましょう。

新しい顧客体験の発掘

オムニチャネルでは、店舗とネットが連携することにより、これまでになかった需要を満たす事が出来ます。

例えば、「ネットで購入して近隣店舗で受け取る」という方法。

これまでの考え方であれば、
「ネットで購入したなら、配送してもらえばいいじゃないか」
と感じる人も多いでしょう。

しかし、中には
・今日必要な日用品
・買い忘れの防止
・店舗で見つけるのに時間がかかるのを解消する
・買いにくい商品(生理用品など)を事前に梱包してもらっておく
など、意外な部分でのメリットがあったりします。

こういった新しい顧客体験や需要を生み出すことが出来るのが、オムニチャネルなのです。

顧客満足度の向上

多くの人が、わざわざ実店舗に足を運んだものの
・品切れ
・別の店舗の取り扱い商品であることが分かった
・教えられた別の店舗に行った
という経験をしたことがあるでしょう。

オムニチャネルであれば、実店舗でもオンラインショップや他店舗の在庫を確認し、その場で決済することも可能です。

最初に訪れた実店舗でオンライン注文し、早ければ翌日配達してもらうこともできますから、品切れによって顧客満足度を下げる心配もありません。

「個客」中心のマーケティング

ここで「個客」としたのは顧客の行動パターンが多様であり、顧客へのマーケティングにはこの多様性を踏まえて個々の顧客に合った有効な施策を打つ必要があるからです。

従来は、ある顧客がオンラインショップと実店舗などの販売チャネルを利用していても、チャネル毎に集めた情報にしかアクセスできませんでした。

オムニチャネル化により、
「顧客・商品・在庫に関するオンラインショップや実店舗などの販売チャネルのデータを統合して、ユーザー単位で情報を得る」
ことが出来るようになったのです。

マーケティングの立場からは、特定の顧客についての購入や受け取りの履歴を追うことで、平日や休日の行動パターンや購買性向が分かるようになります。

また、クーポン券などを実施していれば、会員登録時に顧客のプロフィールや家族構成などを収集できます。

これらの情報を結合して分析することによって、顧客に効果的なアプローチをすることが可能となります。

チャネル毎に収集できる顧客情報は必要な情報の一部だけですが、オムニチャネルにすることで今までよりも多くの多様な顧客情報にアクセスできるようになるのです。

この結果、「個客」中心のマーケティングが可能になります。

例えば、
・普段買い物に行く時間帯に合わせてクーポンを発行する
・興味のありそうなクーポンだけを配るようにする
・普段見ている商品の棚が移動になった際に通知する
・駐車券の出し忘れが無いかを通知する
など、様々な仕組みが考えられます。

機会損失が減る

先ず、
「消費者がオンラインショップと実店舗を使い分けている実態」
を確認しておきましょう。

ここで紹介する内容は、記事
「実店舗とECサイトで購入する理由、使い分け方法、商品購入までの消費行動を1000人に聞いた【買い物調査】」
を参考にしたものです。

参考:https://netshop.impress.co.jp/node/9147

実店舗とオンラインショップのどちらで購入するかの判断基準は「価格」が最も多く、「緊急性」が続いています。

なお、実店舗を選択する理由として、
「その商品を生で見たい」
「すぐに手に入れたい」
「陳列棚にある商品全体を見たい」
も挙げられています。

一方、オンラインショップを選択する理由として、
「接客を受けずに大量の商品をゆっくり比較したい」
が衣料やファッション小物を中心に多いです。

次に、
「消費者がオンラインショップでとる行動の実態」
を確認しておきます。

消費者行動で、最も多いのは
「口コミサイト・掲示板を見る」
で、
「ブラウザを検索して商品自体の詳細を見る」
「複数のオンラインショップをはしごして商品を比較する」
がそれに続きます。

最後に、
「実店舗での消費者行動の実態」
を確認します。

消費者行動で、最も多いのは
「販売員に相談する」
で、
「その場でスマホからオンラインショップの値段と比較」
「その場でスマホから店舗商品の口コミを見る」
がそれに続きます。

このように、
「消費者は実店舗とオンラインショップでは異なる役割を期待している」
「実店舗・オンラインショップとも、訪れて商品を手にしても購入を取りやめることがある」
という実態がありますから、これらの実態に対応出来ていない従来の販売チャネルでは「販売の機会損失」が多量に発生していることが分かります。

オムニチャネル化することで、このような機会損失が減少するものと期待されているのです。

オムニチャネル化のデメリット

次に、オムニチャネル化によるデメリットについて見ていきましょう。

準備と初期コスト

オムニチャネルの準備としては、
「ブランドイメージを統一し、全社的に取り組んで、各チャネルの役割を明確にし、必要ツールを精査する」
ことが必要です。

手順としては、
1.業務やシステムを改革するためのロードマップの策定
2.顧客が商品やサービスを検討して導入するまでの流れを可視化
3.オムニチャネル化する各チャネルの位置づけや役割を明確にし、システム統合
の順に進めます。

更に、オムニチャネル化の成果を出すためには、準備が終わり実務を行う中で「PDCAを回す」必要があります。

このように、オムニチャネル化は極めて大規模で成果が出るまでに時間のかかる改革です

準備段階では、既存のチャネル毎に作られた業務フローやシステム、物流体制、アプリ、クーポン配信などをオムニチャネル用にすべて置き換える必要があります。

大規模な改革ですから、慎重かつ大胆に進める必要があります。

また、システム統合などには初期費用も発生します。

効果が表れるまでに時間がかかる

オムニチャネルは顧客満足度を向上させ、企業に対するロイヤリティを高める効果がありますが、即効性はありません。

上でも述べましたが、オムニチャネルで成果を出すためには運用に入ってからもPDCAを回す必要があります。

そのため、成果が出るまで資金的にも労力的にも余裕を持って進める必要があります。

これだけのリスクを負えるのは規模の大きな企業に限られるのが現状と言えるでしょう。

オムニチャネルのビジネス活用事例

オムニチャネルから得られる情報は、
1.オンラインショップのネット顧客を実店舗に誘導
2.スマートフォンアプリやパソコンを利用して、得た情報を商品開発やマーケティングに反映
3.ファッション産業のDX推進
などに活用されています。

また、生鮮食料販売の分野では「レシピから注文」はオンラインショップのDX推進に役立ちましたが、実店舗でもDX推進に役立っています。

オンラインショップのネット顧客を実店舗に誘導

ここでは皆様が日頃利用する機会の多いイオンやイトーヨーカドーの事例を紹介します。

「テレビCMで商品を紹介し、CMを見た人がネットで予約し、店頭に行って購入する」
という連携でシームレスにつなぎ、お客様を店舗に誘導して販売機会を増大しています。

また、実店舗にはタブレット端末が設置されており、その店舗で扱っていない商品の取り寄せ・代金の清算・配送手続きまで行うことができます。

なお、イオンが展開中の
「AEONおトク!e予約サービス」
は、イオンの商品をネット上で予約し仕事帰りなどに自宅近くの店舗で商品を受け取ることができるものです。

イトーヨーカドーでも類似のサービスを提供していますが、取扱商品や店舗に違いがあります。

商品開発やマーケティングに活用

ここでは、ユニクロの事例を紹介しましょう。

ユニクロのアプリは買い物のアシスタントをするもので、
「チャットによるコーディネート相談」
「商品の実店舗での在庫の有無」
「注文・キャンセル・配送・返品などの質問への自動応答」
を、AIチャットボットによって行うものです。

このサービスを通じて、顧客の性別や年齢などのデータ、商品などの購入データを収集・分析を行い、新たな商品開発やマーケティングに役立てています。

また、チャットボットを使うことで、ユーザーの要望を効率的に収集することができます。

さらに、店頭受け取りの場合は送料無料としており、顧客の実店舗への来店を促すことで、別商品に触れてもらうことで購入機会を増やしています。

データ活用でファッション産業のDXを推進

「ファッション産業におけるオムニチャネル戦略に関する考察―DX推進に着目してー」
の中にオンワードのオムニチャネルの記載がありますので、ここで紹介します。

参考:https://obirin.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2398&item_no=1&page_id=13&block_id=38

オンワードはオーダーメイドスーツの店舗「KASHIYAMA」の首都圏のオフィス街への出店を加速中ですが、オンラインショップ
「オンワードパーソナルスタイル」
も展開中です。

また、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」でもオーダーメイドセットアップアイテムを販売しています。

KASHIMIAとZOZOTOWNに蓄積された体型ビッグデータを活用して、幅広いサイズのバリエーションに対応した
「オーダーメイドファッション」
の注文をオンラインで完結することを可能にしました。

生鮮食材販売でDXを推進

ネットスーパーはコロナ禍で需要が急伸していますが、イオンとイトーヨーカドーが小売りDXとして取り組んでいるのが「レシピから注文」の取り組みです。

従来、ネットスーパーでは注文完了までの所要時間は平均で30〜40分といわれ、食材販売の足かせになっていましたが、「レシピからの注文」で問題が一挙に解消しました。

「レシピからの注文」が登場する以前は、消費者が何か料理を考えて食材を揃えようとすると、食材毎に注文する必要があり、大変手間が掛かっていました。

このような売り方は消費者の負担が大きく、店にとっても大変売りにくいものでした。

しかし、消費者が「レシピから注文」することができるようになったことで、消費者の手間が大幅に縮小されたのです。

このように、ネットスーバーでは献立の写真とレシピを掲載することで、単品では売り難い食材の販売につなげることに成功しているのです。

イオンが運営する
「おうちでイオン イオンネットスーパー」
では、クラシルアプリで写真とレシピが表示されます。

写真を見て献立を決め、レシピに載っている食材をネットスーパーで手軽に買うことができます。

同様なサービスはイトーヨーカドーでも行っています。

なおイオンの場合、実店舗でクラシルアプリを使って売り場設置のPOPやチラシを読み取ってレシピや食材を表示させることもできます。

オムニチャネルの設計・開発はAMELAに

今回は、オムニチャネルのメリットやデメリット・ビジネスでの活用方法について見てきました。

本文中では、デメリットの部分で、
「現状は主に大企業向けの仕組み」
ということをお話してきました。

効果が出るまでに時間がかかることや、費用的な問題を挙げました。

しかしAMELAでは、オフショア開発を用いて一般的な開発よりも安い金額でシステムの開発が出来ます。

直近では費用対効果が悪かったとしても、長期的に見れば多くの企業でオムニチャネル化というのは、効果を発揮すると考えています。

ですので、是非興味のある方はご連絡いただければと思います。