CXとは?DXやEXとの関係は?2種類の意味を解説

CXという言葉を聞いたことがありますか。

CXは2つの意味があり、最も多いのは「カスタマー・エクスペリエンス」の略です。

余り多くないですが「コーポレート・トランスフォーメーション」を指すこともあります。

前者は「顧客体験」を、後者は「企業を根幹から変革すること」を意味します。

どちらの意味でもCXはDXと深い関係がありますが、それはどのような関係でしょうか。

また、CXはEX(エンプロイ・エクスペリエンス)との関連で語られることが多いですが、それはどのような関連についてでしょうか。

今回は、CXについて解説し、それとDXやEXとの関係についても解説します。

CXとは

CXは2つのビジネス用語の略称で、使われる頻度の最も多いのものの正式名称は「カスタマー・エクスペリエンス」です。

使われる頻度は減りますが、もう一つの正式名称は「コーポレート・トランスフォーメーション」です。

この章では、後者のコーポレート・トランスフォーメーションについて触れますので、カスタマー・エクスペリエンスとしてのCXを知りたい方は読み飛ばして頂きたいです。

CX(コーポレート・トランスフォーメーションとして)の概要

次に、コーポレート・トランスフォーメーションとしてのCXについて見ていきましょう。

コーポレート・トランスフォーメーション(Corporate Transformation)は、「企業を根幹から変革する」ことで、企業の持つ価値観や考え方を最適化してから組織戦略の改革を実行するものです。

「企業を根幹から変革する」が叫ばれる背景

コーポレート・トランスフォーメーションの必要性を示す例として、
「DVDプレーヤーやウォークマンがかつては一世を風靡しましたが、今ではNetflixやAmazon Primeなどのサブスクリプションサービスに席巻され、見る影もない」
ことが引き合いに出されます。

コーポレート・トランスフォーメーションは2020年6月に経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦氏が著した書籍
「コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える」
で広く知られるようになったビジネス用語です。

この中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上で、コーポレート・トランスフォーメーションが必要なことが述べられています。

また、後で詳しく紹介しますが、長年DXに取り組んできた日本電気株式会社(NEC)が2022年4月にコーポレート・トランスフォーメーション部門を新設したことは注目すべきです。

「企業を根幹から変革する」とは

経営共創基盤は、新規事業開発や構造改革、M&A、企業再生、ものづくり改革、AI・DXソリューション分野のコンサルティング事業を展開する会社で、
・経営から現場まで組織総体でトランスフォーメーションを起こすこと
・企業の大小や産業分野、企業成長段階を問わず組織は変わり続けること
・経営の最前線の課題に対峙してトランスフォーメーションを起こし続けること

によって、「企業を根幹から変革する」という「理念」に基づいて企業の変革を促す活動をしています。

CX(コーポレート・トランスフォーメーション)は同社の取り組みの一つで、
そのキャッチフレーズは
・破壊的イノベーション時代を生き抜く会社の形へ転換する
・企業の根幹を大変容し、産業・会社・事業・組織・人材等の視点で新しいモデル・アーキテクチャを創造する
となっています。

CX(カスタマー・エクスペリエンスとして)

この章ではカスタマー・エクスペリエンスとしてのCXについて詳しく解説します。

CX(カスタマー・エクスペリエンスとして)の概要

カスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience)は、
・顧客体験
・顧客経験
・顧客経験価値
・顧客体験価値
などと呼ばれているもので、2000年ごろから注目されています。

カスタマー・エクスペリエンスは製品やサービス自体が持つ価値ばかりでなく、顧客が製品やサービスの検討や購入、利用、その後の問合せ等のフォローアップなどで感じる「価値全体」を指すものです。

マーケティングや経営戦略のコンセプトで、顧客満足度や企業ロイヤルティを向上させるためにはCXを意識することが大切とされています。

購入行動の現状

ここでは、2021/10/11に掲載された記事
「実店舗とECサイトで購入する理由、使い分け方法、商品購入までの消費行動を1000人に聞いた【買い物調査】」
から気になる点をピックアップして紹介しましょう。

この調査は食品や雑貨、衣料などの日用品や高額商品まで幅広い商品を対象に行ったものです。

また、「購入時に情報収集手段としてのWebの利用状況」について2011年にNTTレゾナント株式会社の調査「購買行動において口コミが与える影響」もご紹介します。

ECサイトと実店舗を使い分けて購入する

普段の買い物は、本・CD・DVDは拮抗していますが、それ以外は実店舗での購入が多いです。

実店舗で購入する理由として、
・その商品を生で見たいから
・すぐに手に入れたいから
・陳列棚にある商品全体を見たいから
が挙げられています。

オンラインショップで購入する理由として、「接客を受けずに大量の商品をゆっくり比較したい」が衣料やファッション小物を中心に多いです。

また、「実店舗より安いから」がパソコンや周辺機器、カメラ、TV、家電に多いです。

実店舗とオンラインショップのどちらで購入するかの判断基準は「価格」が最も多く、「緊急性」が続いています。

この点に関しては、「衣服・ファッション小物」の場合の判断基準は「購入するものが高級品かどうかで分ける」となり、クーポンの有無も重要な判断基準となっています。

商品購入までの行動

実店舗の場合、
「販売員に相談する」
の割合が全体の1/4強と最も多く、それとほぼ同数で
「その場でスマホからオンラインショップの値段と比較」
が続き、更に
「その場でスマホから店舗商品の口コミを見る」
も一定数あります。

オンラインショップの場合、最も多いのが
「口コミサイト・掲示板を見る」
の割合が全体の1/3弱で、それとほぼ同数で
「ブラウザを検索して商品自体の詳細を見る」
「複数のオンラインショップをはしごして商品を比較する」
が続きます。

口コミの影響

口コミを気にしている人が全体の8割で、
「普段から商品やサービスの購入時に口コミを参考にする人」
が全体の4割、
「口コミを読んで購入を決めたり止めたりした人」
が7割です。

また、女性の方が男性よりも口コミの影響を受ける割合が高いです。

「良い口コミより悪い口コミの方が影響大」
「口コミを信じる人は8割」
「信じるポイントとなるのは、文章がしっかりしていること」
などもマーケティングを考える上では重要なポイントとなるでしょう。

CXは「合理的な価値」と「感情的な価値」を加味したもの

前節の「購入行動の現状」から、消費者が購入を決める際に「商品そのものの価値」以外に「口コミやクーポンの有無」なども影響することが分かります。

マーケティングの言葉で言えば、CXは商品やサービスの機能・性能・品質・価格といった従来から重視されていた「合理的な価値」以外に、顧客の経験や体験から産み出された「感情的な価値」も加味したものとなります。

感情的な価値は、顧客接点(購入から使用、アフターフォローまで)を通して顧客が感じる「満足度」や「喜び」といったものですが、具体的にどのようなものがあるのでしょう。

感情的な価値(Webサイトやアプリ、実店舗などで購入する過程で)

Webサイトやアプリ、実店舗などで購入する過程で生じる感情的な価値には、次のようなものがあります。

・Webサイトに訪れた時の印象、品揃えやサイトの分かりやすさ
・商品の広告を初めて見た時の印象
・商品レビューの多さや内容(品質や価格相応かを確認するため)
・店舗やモデルルームに入った時の感覚
・店員の説明を受けた時の印象・知識の評価
・試用した時の印象

感情的な価値(使用する過程で)

使用する過程で生じる感情的な価値には次のようなものがあります。

・期待していた通りの機能・性能・品質であることの満足感
・組み立てやセットアップなどの分かりやすさ(説明書の分かり易さ)

感情的な価値(購入後のフォローアップなどの過程で)

購入後のフォローアップなどの過程で生じる感情的な価値には次のようなものがあります。

・カスタマーサービスに連絡した時(つながりやすさ、親切さ)
・ユーザーコミュニティで他のユーザーとのやりとり(楽しさなど)
・商品レビューなど(使い勝手やトラブル、購入店の対応など)

CXが「今」注目される背景

CXが重視される背景には購入行動があることは勿論ですが、何故「今」注目されるようになったのでしょうか。

消費者が購入を決める際に、豊富な情報を手軽に入手できるようになった

前述したように、消費者が購入を決める際に、豊富な情報を手軽に入手できるようになったことが挙げられます。

消費者は実店舗・ECサイトに関わらず競合店の販売価格や口コミに敏感です。

また、実店舗・ECサイトに関わらず消費者と接する際の印象は、そのまま会社の印象となります。

このように、様々な情報を顧客が簡単に得られるため、CXが重要度を増してきているのです。

消費者行動が変わった

最近、音楽配信や動画、ソフトウェア、自動車など様々な分野で「サブスクリプション」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。

サブスクリプションは、長期的に継続使用してもらうことで企業にメリットが生まれるビジネスモデルです。

顧客体験が良くないと途中解約されるため、企業は顧客体験を高めることに注力する必要があります。

サブスクリプションという言葉が使われるようになる暫く前には、「欲しいモノがない」という人が先進国では増えていたのです。

ちなみに、2016年にGfK社が行った「GfKグローバル意識調査」によれば、世界17カ国を調査していますが、日本については次のような結果が報告されています。

「お金があるより、時間がある方が良いか」という質問に対し、若い世代では肯定否定はほぼ拮抗し肯定する人の方が僅かに多いですが、50代以降は年齢が増すほど否定する人が多いです。

「何を所有するかより、何を体験するかの方が大切」という質問に対しては、世代に関係なく肯定するひとが圧倒的に多いです。

このような時代の変化に併せて、企業はサブスクリプションという販売方法を取るようになり、同時にCXの重要性が増したのです。

CXはDXやEXとの関連で話題になることが多い

CXはDXやEXとの関連で話題になることが多いです。

CXとDXの関連

最初に取り上げるのはCXとDXの関連です。

冒頭でも述べましたが、CXの正式名称はカスタマー・エクスペリエンスまたはコーポレート・トランスフォーメーションです。

何れの場合も皆様お馴染みのDXと深い関係がありますので、ここではそれらの関係を見ていきましょう。

CX(カスタマー・エクスペリエンス)とDX

CXでいう価値を高める顧客体験とは、
「美味しかった/使いやすい」「今までにない驚き・感動」
などのようなもので、DXとの関係性を考えると、掴みどころがないと感じるでしょう。

そこで、CXを先に行い、様々な顧客体験の中から「DXで解決可能なニーズ」を顕在化させることが必要となります。

例えば「ECサイト運営会社のDX」。

この運営会社のECサイトに、アパレル関係の店がテナントとして出店していたとします。

この店はECサイト以外に実店舗も持っており、実店舗では
「サイズや色の違う商品の有無」
などの質問が多く、丁寧に顧客対応することが売り上げ増に役立っていたとしましょう。

そのため、ECサイトでも「丁寧な顧客対応」ができることを希望しています。

ECサイト運営会社は、DXに先立ってCXを行うとすると、一連のCX活動の中で、テナント店舗から様々な
「困りごと」
を集め、DXでの実現可能性を検討し、テナント店のニーズとしてまとめます。

このようにしてまとめたニーズを基に、ECサイトの運営会社がECサイトのDXを進め、オンライン接客やチャットなどが出来るようになれば、先ほどのアパレル関係のテナント店はこれらの機能を使って「丁寧な顧客対応」をできるようになります。

このように、CXを行う上で、DXの重要性は非常に高いのです。

CX(コーポレート・トランスフォーメーション)とDX

コーポレート・トランスフォーメーションは、先に述べましたが「企業を根幹から変革する」という「理念」に基づいて企業の変革をするもので、その真の目的は
「ビジネス環境の変化に対応できるように変革を続ける力」
を企業が身に付けることです。

ここでは、先進事例として日本電気株式会社(NEC)の事例を紹介しましょう。

同社では、DXという言葉が一般化する2016年以前からDXに取り組んできましたが、2022年度から社内DXに関するリソースを集約したコーポレート・トランスフォーメーション(CX)部門を新設し、さらなるDXの推進に取り組んでいます。

NECのCX部門は「働きがいを感じられる仕組みでDXをさらに加速する」ことを目指し、次の6つの考え方に基づき運営されています。

1.働き方のDX:さまざまな働き方を実現し、従業員の働きがいにつなげる
2.基幹業務のDX:業務プロセスの最適化とデータドリブン経営を推進
3.運用のDX:運用などオペレーション業務の高度化・効率化
4.エクスペリエンス:従業員のIT体験を高度化
5.One DATAプラットフォーム:データの標準化・一元化
6.モダナイゼーション:クラウド化、グローバル化に最適なシステムの実現

CXとEXの関連

次に取り上げるのはCXとEX(エンプロイ・エクスペリエンスの略)の関連です。

CXは「カスタマー・エクスペリエンス」と「コーポレート・トランスフォーメーション」の2つの意味を持ちますが、それとEXとはどのような関係があるのでしょうか。

EX(エンプロイ・エクスペリエンス)とは

EXは「従業員の体験」という意味ですが、従業員に高い報酬や手厚い待遇を与えれば、積極的・意欲的に取り組むのでEXの改善に繋がると言われています。

また、企業の報酬や待遇以外に、組織文化もEXに影響するとも言われています。

組織文化は、「官僚主義的なプロセス中心なもの」とその対極にある「起業家精神にあふれた消費者中心もの」まで様々ありますが、多くの企業は前者です。

前者は、スピードよりも信頼性を重視しているのが一般的な特徴です。

前者の企業文化に染まった企業がCXの向上を目指すには、従業員がCXに力を注ぐのを企業が支援する必要があるとしています。

CX(カスタマー・エクスペリエンス)とEX

先に、アパレル関係の店で「サイズや色の違う商品の有無」などの質問が多く、丁寧に顧客対応しており、それが売り上げ増に繋がっているという話をしました。

また、PwCコンサルティング合同会社は「世界の消費者意識調査2019」の中で、
「知識豊富な従業員は顧客にとって重要である」
としています。

この調査は、実店舗でのショッピング体験を大幅に向上させると思われる要因について、リストの中から該当する項目を選択してもらう方式で行われました。

「知識豊富な従業員は顧客にとって重要である」という結果は上から2番目に位置しています。

1.店内で商品をスピーディーかつ便利に探せること
2.取扱商品について店舗スタッフが深い知識を持っていること
3.支払いが短時間で簡単に済むこと

CX(コーポレート・トランスフォーメーション)とEX

先のNECの事例で、
「働きがいを感じられる仕組みでDXをさらに加速する」
ことをミッションとするCX部門について紹介しましたが、そこで紹介した部門運営に関する「6つの考え方」の項目3
「運用のDX:運用などオペレーション業務の高度化・効率化」
を進める事で、従業員の働き方は大きく変わってきます。

このように、EXはコーポレート・エクスペリエンスにとっても極めて重要な役割を果たすのです。

正しい業務改善はAMELAに

今回は、CX/DX/EXという近い言葉の違いや意味について見てきました。

ITやマーケティングの用語には、省略して同じつづりになる事もあるため、混乱したかもしれません。

しかし、どちらも重要な考え方であるため、詳細に説明してきました。

顧客の体験を向上させるにも、企業を根本的に改善するにも、ITの力は欠かせません。

一方で、単にシステムを導入すれば解決するかと言われると、そうでも無いのです。

それは、顧客も従業員もあくまでも「人」だからです。

そこにはそれぞれの考え方や価値観があり、文化や歴史があります。

このような状況の中で、
「〇〇をすれば成功できる」
という方法を探すのは非常に困難です。

そのため、是非一度AMELAにご相談ください。

AMELAでは、様々な業界を見てきたからこそ、御社の仕事を客観視し、最適な提案が出来ます。