デジタイゼーションとは?デジタライゼーションとの違い/具体例を合わせて解説
企業のIT化が進むにつれ、目にするようになった「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」という言葉。
どちらも直訳すれば「デジタル化」という意味ですが、それぞれ指し示す対象は異なります。
では、この2つの言葉には、どのような違いがあるのでしょうか。
この違いを理解することは、企業のデジタル化を進めるにあたって重要なことなのです。
この記事では、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の違いを、具体例と合わせて解説していきます。
そして、このふたつの言葉と合わせて使われることが多い「DX」との違いについても解説します。
デジタイゼーションとは
まずはデジタイゼーションについて、用語の意味と、その目的について解説します。
デジタイゼーション(Digitization)
デジタイゼーション(Digitization)は、業務上で使用されるアナログデータをデジタルデータへ移行することを指します。
業務フローは変更せず、そこで使われるデータのデジタル化が、デジタイゼーションです。
この「業務フローは変更しない」というのが、デジタイゼーションの特徴です。
具体的には、紙の書類をpdfに変換したり、連絡手段にビジネスチャットツールを導入したりすることが、デジタイゼーションに入ります。
業務フローに変更が無いという点で、導入のハードルは低いものの、「根本的な解決」にならないケースもあるでしょう。
デジタイゼーションの目的
デジタイゼーションの目的は、局所的なデジタル化によって業務効率を向上することにあります。
紙の書類の受け渡しや管理などにかかっていたコストを削減することで、より効率的な業務が可能になるのです。
デジタイゼーションへの取り組みでよく挙げられるペーパーレス化には、書類の作成コストと管理コストを削減することで、業務の効率を向上させる狙いがあります。
更に、過去の情報を1つの場所に保管することで、検索性が上がります。
例えば、グーグルドライブを利用すれば、pdfの中身に対しても検索をかける事が出来ます。
これまで紙媒体で保管していた発注情報の控えから、特定の発注に関する情報を探すよりも、グーグルドライブで取引先名を検索して、作成日時から特定していく方が、圧倒的に早いです。
これだけでも、作業効率は良くなります。
しかし、一方で発注書を作る仕組み自体をシステムにしてしまう事は、業務フローそのものが変わります。
これは、後述するデジタライゼーションに含まれます。
デジタライゼーションとは
続いて、デジタライゼーションについても同じく、用語の意味と、その目的について解説します。
デジタライゼーション(Digitalization)
デジタライゼーション(Digitalization)とは、業務および業務プロセスをデジタル化することです。
「仕事のやり方」にデジタル技術を活用する取り組みを指し、個別の業務プロセスがデジタル化されることで、新しいビジネスへと繋がります。
ここで行われるのは個別の業務過程のデジタル化なので、デジタライゼーションが行われた時点で、仕事に関わるすべてがデジタル化されるわけではありません。
デジタライゼーションの目的
デジタライゼーションの目的は2つあります。
まず、デジタル技術を活用することで、仕事の効率を上げることです。
例えば、IoT機器を導入することによって、プロセスの管理を自動化することが挙げられます。
管理の自動化によって、これまでかけていた管理コストを削減することができます。
デジタライゼーションには、このような取り組みが含まれます。
そして、もう1つの目的は、これまでアナログであったものをデジタル化することで、新しいビジネスモデルや、ビジネスにおける新たな価値を創造することです。
動画や音楽のストリーミングサービスや、自動車業界によるカーシェアリングサービスなどは、モノやシステムのデジタル化による、新たなビジネスです。
なので、ストリーミングサービスやカーシェアリングといったビジネスモデルは、デジタライゼーションの例としてよく挙げられます。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違い
ここまで、この2つの用語について解説してきました。
では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
一部被るところもありますが、両者には「取り組み」と「目的」に大きな違いがあります。
取り組みの違い
2つの用語では、それを実行する際に行われる取り組みに違いがあります。
デジタイゼーションは、業務フローのデジタル化のことです。
つまり、業務で使用される書類などをデジタル情報に移行することや、オンライン会議を実施することなどが、デジタイゼーションに入ります。
そして、デジタライゼーションは、デジタル技術を用いて、業務プロセスをデジタル化する取り組みです。
IoTやツールによる管理業務の自動化などが、デジタライゼーションに含まれます。
目的の違い
両者は、それを実施することで達成したい目標にも違いがあります。
デジタイゼーションは、単に業務効率の向上を目的として行われます。
デジタライゼーションにも、業務の効率化というメリットがあります。
業務プロセスそのものにアプローチしていくデジタライゼーションでは、
「今まで目視で検品していた作業を、画像認識を用いて自動化する」
なども含まれます。
これは、単にデータをデジタル化していくデジタイゼーションには無い考え方でしょう。
ですが、デジタライゼーションの最終目標は、新しいビジネスモデルの実現やビジネスにおける新規の価値創造です。
一例として、レンタルビデオ店がストリーミングサービスを開始することは、デジタル技術を用いた新たなビジネスといえるので、デジタライゼーションに入ります。
デジタイゼーションが「経費削減」にだけ焦点を当てているのに対して、デジタライゼーションでは売上UPに繋がる取り組みが含まれていると言うのは、大きな違いでしょう。
デジタイゼーション・デジタライゼーションとDX
ここまで解説してきた2つの用語と合わせて、DXという言葉が使われることが多いです。
このDXという言葉についても、少し解説しておきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital transformation)とは、もともとは
「ITの浸透によって社会がより良いものになる」
という仮説です。
これが転じて、DXは、デジタル技術・デジタル化によってビジネスモデルの変革を目指す取り組みを指す用語として使われています。
企業活動の全体をデジタル化して、新たなビジネスのあり方を求めるチャレンジを「DX化」と呼びます。
つまり、DXは、デジタイゼーションとデジタライゼーションの延長線上にあって、最終的に行われる取り組みであるといえます。
デジタイゼーションの具体例
ここからは、それぞれの用語について、具体的な取り組みを紹介します。
まずはデジタイゼーションの具体例です。
書類のデジタル化・ペーパーレス化
デジタイゼーションへの取り組みとしてまず挙げられるのが、書類のデジタル化、つまり業務のペーパーレス化です。
作業で使用する書類をpdfに変換したり、Excelを用いて作成したりすることで、書類の管理が簡単になり、管理コストの削減、業務の効率化に繋がります。
書類のテンプレートを用意しておけば、書類作成にかかるコストを減らすことができます。
また、近年推進されているテレワークを行う際にも、書類がデジタル化されていて、どこからでもアクセスできるということが重要になります。
近年増えている電子ハンコや電子契約書なども、デジタイゼーションへの取り組みといえます。
オンライン会議
現地に集まることなく、遠隔でミーティングを行うために、ZoomやTeamsに代表されるオンライン会議ツールを導入することも、デジタイゼーションの取り組みです。
テレワークへの移行や、新しい働き方の実現だけでなく、事業継続計画の対策にもなります。
オンライン会議は、遠方へ出向く必要が無くなるため、これまで出張にかかっていたコストを削減することができます。
そして、それまでかけていたコストを別の作業に充てることで、業務効率を向上させることが可能になります。
音声認識による議事録
上記のオンライン会議と共に、多くのツールで導入されているのが音声を文字データにする機能です。
オンライン会議での通話をそのまま文章とし、議事録代わりにする事が出来ます。
また、同時に画面録画も行い、後から確認ができる事も大きな変化と言えるでしょう。
今まであった「言った言わない」という問題の一部が解決すると考えられます。
デジタルデバイスの導入
デジタイゼーションにおいて、デジタルデバイスが活躍する場面は非常に多いです。
オンライン会議を行うためのデバイスや、ビジネスツールを動かすためのコンピューター、出先でも連絡を取り合うためのスマートフォンなど、現代の働き方ではデジタルデバイスが必要不可欠です。
ビジネスの成果を向上させるという点では、タブレットを用いたプレゼンテーションが増えています。
資料の説得力を増すだけでなく、インターネットで本社のチームと連携をとることで、予期せぬトラブルにも対応することができます。
デジタライゼーションの具体例
次に、デジタライゼーションの具体例を見ていきましょう。
RPAを用いて業務効率を向上
RPA(Robotic Process Automation)とは、AIや機械学習などの技術を用いて、これまでは人間にしか出来なかったような作業を代替する取り組みのことです。
高度なIT技術を活用して、さまざまな作業を自動化するという取り組みが、金融業界を中心に広がっています。
実例としては、事務作業や連絡を自動処理するシステムが多くの企業で導入されており、作業コストの削減だけではなく、ミスも減らすことができ、業務効率の向上に繋がっています。
IoTの導入
IoTを導入した作業の自動化も、デジタライゼーションに含まれます。
これは工場などの現場作業では既に一般的になっている取り組みです。
機械の稼働状況を中心に、IoT技術によってリアルタイムでモニタリングすることで、これまで観察にかかっていたコストを削減するだけではなく、故障を予見してメンテナンスを行い、不良品の発生などの事故を防ぐことが可能になりました。
また、IoTだけではなく、センサーによるモニタリングも活用されており、これもデジタライゼーションといえます。
デジタルデバイスの導入
デジタルデバイスの導入は、デジタライゼーションでも主要な取り組みとなっています。
代表的な例として、POS(Points of Sales)レジが挙げられます。
POSレジを通して商品が購入されると、その情報が瞬時に他の店舗の情報と統合され、売上管理や在庫管理を自動化することができます。
また、自動で収集された購買情報を分析するツールが備わっているものもあり、新しいマーケティング戦略の立案に繋がります。
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今回は、デジタイゼーション・デジタライゼーションという言葉について見てきました。
DXは日本の多くの企業の課題となっています。
コロナの影響で、多くの企業でITの導入が進んだ事は事実ですが、まだまだ改善の余地はあるでしょう。
オンライン会議やリモートワークへの移行は出来た企業もありますが、一方で
「売上を上げるための攻めのDX」
が中々進まないという話も聞きます。
確かに、これまでの業務プロセスを変更することには、社内で多くの軋轢を生むかもしれません。
しかし、きちんとした手順を踏んで実践すれば、まだまだ日本の生産性は上がるはずです。
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