SAPコンサルタントとは?将来性や転職、フリーランスとして独立、導入コンサルも可能?
SAPというシステムをご存知でしょうか。
非常に有名なソフトで、多くの企業で導入されています。
このSAPは
「世界標準のERPソフトウェア」
で、SAPを導入するためにはSAPコンサルタントの支援が不可欠です。
SAPコンサルタントは高収入であることは良く知られていますから、SAPコンサルタントへの転職やフリーランスとして独立に魅力を感じる人も多いでしょう。
しかし、現在SAP社は
「2027年問題」
「ERP事業からRise with SAPソリューション事業へシフト」
などに取り組んでいます。
そのため、日本におけるSAPの導入状況もよく理解した上で、転職などに取り組む方がよいでしょう。
今回は、導入時コンサルに役立つ知識や、SAPコンサルの将来性・転職やフリーランスとして独立を考え際に役立つ情報を解説します。
SAPコンサルとは
SAPとはSAP社が提供するERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェア製品のことです。
SAPコンサルはSAPを活用して企業が抱える経営課題や業務課題を解決することを指します。
SAPの概要
SAPは世界標準のERP(企業資源計画)ソフトウェアで、企業経営に革新をもたらすものとして有名です。
SAPは、1973年にドイツのSAP社(正式にはSAP SE)で開発されました。
SAPが日本で使われ始めたのは、大企業向けのSAP R/3が発表された1992年です。
世界標準となったのはこのSAP R/3で、その後SAP ECCに名称が変わりました。
この最新版はSAP S/4HANAで、旧版に比べ機能・性能とも大幅に強化されています。
さらに、2027年に旧版のサポートを終了し、現在SAP S/4HANAへの切り替えを進めている最中です。
なお、中堅・中小企業向けにはSAP Business OneやSAP Business ByDesignが提供され、現在も販売中です。
従って、現在新規で導入できるのはクラウドとオンプレミスが選択可能なSAP S/4HANAとSAP Business One、クラウド限定のSAP Business ByDesignです。
SAPコンサルタントが活躍する機会
SAPコンサルタントが活躍するのは、
・SAP以外の既存システムや他社ERPからSAPに乗り換える場合
・SAP R/3やSAP ECCなどからSAP S/4HANAに移行する場合
です。
前者の場合は、数多いERPの中からSAPを選んだ背景には、何らかの経営課題や業務課題を抱えており、それをSAPで解決したいと考えるからでしょう。
SAP S/4HANAへの移行に当たっても、せっかく多額の費用をかけて移行するのですから、これを機会に積年の経営課題や業務課題を解決したいと願う企業は多いです。
このように、SAPコンサルタントが活躍するのはSAP導入や移行時が多いですが、その後も
・SAPのバージョンアップ対応
・追加のシステム開発
・他システムとの連携
でコンサルティングを依頼されることもあります。
最近では、「〇〇に特化したシステム」というのが多数出てきています。
そのため、複数のシステムを導入し、データの連携を行うことも珍しくありません。
そういった際にもSAPコンサルタントは、重要な役割を担います。
SAP社の動向
次に、SAPコンサルの需要を見通すために、日本及び世界におけるSAPとSAP社の動向を見ていきましょう。
SAPのERPは伸び悩んでいる
SAP R/3で世界を席巻しましたが、ERP市場が飽和状態になったことや、クラウド化に乗り遅れたことで、SAP社の業績は一時低迷しました。
そこで、今までのSAP ERPではカバーされていなかった
・人事
・調達購買
・経費精算
・マーケティング
などのSaaSを買収し、SAP ERPを導入し易くしました。
2020年11月30日のWebニュースの記事
「これから生き残る知的資産経営に必要な、最強メソッド」
の中で、SAP社全体の売り上げは直近の10年間で2.5倍以上に伸びたが、ERPはその中の4割であるとしています。
現在では、SAPのクラウドサービスも行われていますが、国産や海外のERPが多く出まわっており、国内の中堅・中小企業の分野ではSAPは低迷しています。
具体的には、2022年4月版のERP資料請求ランキングでは24製品の中で20位以下で厳しい状況が続いています。
2027年問題を抱え逼迫するSAP S/4HANA移行
SAP社が公開している
「2021年第3四半期の業績発表」
によれば、下記のようにSAP S/4HANAへの移行が逼迫していることが分かります。
(1)SAP S/4HANAの導入社数が前年度比で16%増
(2)SAP S/4HANAのバックログは60%増
ERP事業からRise with SAPソリューション事業へシフト
同じく「2021年第3四半期の業績発表」と、先に掲げた2020年11月30日のWebニュースの記事から、Rise with SAPソリューション事業の需要と導入が好調に推移し、今では売り上全体の半分以上を占めていることが分かります。
DX化とSAPコンサルタントの役割
以上のようなSAP ERPの動向を見ると
「SAPコンサルタントの仕事が今後どのようになるか」
心配に思う方がいるかも知れません。
しかし、「DX化」という切り口で見ると、これとは違った見方ができます。
以下で、それを見ていきましょう。
DX化に対するSAP社の取り組み
SAP社が現在最も力を入れているのは、、企業がインテリジェントエンタプライズ化するのを後押しするサービスです。
インテリジェントエンタープライズとは、
「AIやIOTなどの最新テクノロジーを業務プロセスの中に埋め込んで業務の生産性を上げる企業」
を指し、DX時代を勝ち抜くための企業モデルだとしています。
先に紹介したRise with SAPはDX化のためのソリューションでもあります。
このソリューションは、SAP社や国内のSAPパートナー企業が提供しています。
このような動きがある一方で、国内ベンダーにはSAP S/4HANAなどを使って、独自のDX化を推進しているところもあります。
DX化でもSAPコンサルタントにしできない役割がある
このように、SAP S/4HANAやRise with SAPではDX化を推進中がですが、この中でSAPコンサルはどのような役割があるのでしょうか?
多くの場合、DX化推進は「DXコンサル」が担っています。
DXコンサルの役割は、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、IOTなどの新しいテクノロジーを用いて
・革新的なビジネスモデルや新しいサービス・顧客体験を創出
・業務プロセスや業務システム、組織構造、企業文化を変革
の手助けをすることとされています。
DXコンサルには「IT」と「新規事業」の要素が絡みます。
SAPでDX化を推進する場合、SAPに詳しいコンサルタントである必要があります。
SAPコンサルタントには、
「企業の諸課題をSAPで解決するノウハウとスキルを持ち、SAP S/4HANAを深く知り、導入プロジェクトを率いる専門家」
としての役割があるからです。
このことから、SAPS/4HANAを核にしてDX化する場合も、SAPコンサルがその役を担うのではないかと思われます。
SAP導入コンサルの概要
まず、SAPを導入する際のコンサルについて説明しましょう。
SAP導入支援の必要性
様々な経営課題を解決できるポテンシャルを持つSAPは、極めて複雑で大規模なシステムです。
利用企業の担当者がSAPの全容を正しく理解して、使いこなすのは不可能と言えます。
そこで、SAP専門のコンサルタントに導入を支援してもらい、自社の経営課題や業務課題を解決してもらうことが不可欠です。
何故、そのような支援が必要か理解してもらうために、以下ではSAPの仕組みについて説明します。
SAPの基本構造
SAP ERPは
・調達/購買
・生産/在庫管理
・営業/販売管理
・財務/会計
・人事
などの業務ソフトウエアで構成され、それらのソフトウェアで扱う人・モノ・金・情報の全てを一元管理するものです。
SAPは様々な国で色々な業種業態で使われています。
国によって法制度や商習慣が異なりますが、SAP ERPは標準機能としては必要な機能を網羅的に備えています。
パラメータ設定で必要な機能だけを動作させる
このような網羅的な機能の中から、導入企業に必要な機能だけを選択して利用できるようにしているのです。
これがパラメータ設定で、カスタマイズとも呼ばれています。
SAPは国や業種業態毎にデフォルト設定されていますから、実際のパラメータ設定は導入企業に依存する「会社名」や「組織情報」などが対象となります。
それ以外に、「勘定コード」や「伝票タイプ」など企業毎に異なり業務に利用する上で欠かせないものが多数ありますから、それらを細かく設定する必要があります。
アドオン開発して機能を拡張する
多くの企業は、競合他社との差別化のため独自の製品を作ったり、独自のサービスを提供したりしています。
この独自製品を製造するためのシステムや、独自サービスを提供するためのシステムをSAPに接続する必要が生じることがあります。
アドオンはSAPの機能を拡張したり、独自システムに接続する際に行われます。
SAPコンサルタントの仕事
SAPを導入したり、SAP S/4HANAに移行する際は、SAPコンサルタントとSAPエンジニアの助けが必要ですが、両者の違いは何でしょうか。
SAPコンサルの役割
SAPコンサルタントの役割は、企業の経営課題や業務課題をヒアリングし、分析してSAPで解決することです。
このため、自ら解決策を提案してシステムを導入することが求められます。
具体的には、
・課題解決に必要なシステム要件の定義
・システムの設計・開発・本番移行
・プロジェクトマネジメント
などを行います。
SAPエンジニアの役割
パラメータ設定やアドオン開発を担当します。
パラメータ設定の項目は膨大で、ベテランのSAPエンジニアでも全項目を熟知できない程の量です。
このために専門知識をもったSAPエンジニアが必要となります。
経営課題や業務課題をSAPで解決
先に、SAPコンサルタントの役割は
「企業の経営課題や業務課題をSAPで解決する」
ことだと言いました。
SAPの各業務ソフトウエアが連携し、データが一元管理されていることが、どのように課題解決に役立つのでしょうか。
以下で、幾つかの例について見ていきましょう。
不良在庫を無くし、欠品も防ぎたい
このような悩みは、システム間連携がとれていない企業に多く見られます。
従来の販売管理や生産管理などのシステムは、たとえ在庫管理の機能があったとしても、システム間で在庫データが連携されておらず、バラバラに管理されていることが多いです。
例えば、製品を販売する場合、見積書を作成する時に
「注文書が届いて出荷する段階になって確実に出荷できる」
ように、その商品を押さえておく(在庫引き当てと呼ぶ)必要があります。
これは、倉庫には製品はあるのですが、既に買い手が決まっている状態です。
また、製造中の製品が完成すれば倉庫の在庫は増えます。
このように、倉庫に現存する製品の数量だけを見ても、「新規の注文に対応可能か否か」判断ができません。
このため、
「販売機会の逸失を防ぐために、余裕を持たせて多めな在庫を抱える」
ことが多くの企業で日常的に行われ、過剰在庫を持つ原因になっていました。
しかし、これらの在庫は販売シーズンを過ぎると資産価値のない不良在庫になってしまいます。
ERPを導入すれば、出荷時期や生産が終わって入庫される時期を考慮した在庫を正確に把握できます。
このようにして、不良在庫を無くし、欠品を防ぐことも可能になります。
資金繰りの予測を立てたい
次に、「お金の動き」という観点で見ていきましょう。
企業で、モノの売り買いをする場合、現金のやり取りは無く、多くの場合「掛け売り」や「手形」などによることが普通です。
製品を売った場合、会計上は売掛金や手形として計上されるだけで、実際にお金として企業に入ってくるのは何か月も後で、入金時期はお客様毎に異なります。
逆に、材料などを買った場合、会計上は買掛金として計上されるだけで、実際にお金を支払うのは何か月も後で、支払い時期は取引先に依存します。
これ以外に、従業員への給料支払や様々な経費支払いが定期的に発生しますから、お金の動きは極めて複雑です。
また、支払い時期にお金が不足すると「倒産」など大変なことになりますから、そのような事態に陥らないように銀行からの融資を受けます。
このため、企業では販売管理システムや購買管理システム、人事給与システムから会計システムにデータを流し込んで、定期的にキャッシュフローをチェックすることが行われてきました。
ERPを導入すれば、データが一元管理されていますから、いつでも最新のキャッシュフローをチェックできます。
タイムリーな経営判断ができるようにしたい
これは、社長はじめ多くの経営者から聞かれる要望です。
月次決算では遅いので、週次決算や日次決算にすることで要望に応えることができます。
このような悩みは、システム間連携がとれていない企業に多く見られる例です。
具体的には、販売管理システムや購買管理システム、人事給与システムなどから経理システムへのデータ連携がUSBメモリーやメール添付などを介して行われる場合です。
このようなシステム間連携は月次の締め処理にあわせて毎月一回行われますが、手間暇が掛かるためそれ以上に頻度を上げることは困難でした。
ERPを導入すれば、データは一元化されていますから、必要に応じていつでも週次決算処理や日次決算処理ができます。
SAPコンサルタントの将来性および転職、フリーランス
SAPコンサルタントの役割は
「企業の経営課題や業務課題をSAPで解決する」
ことと述べましたが、そのような役割の将来性はどうなのでしょうか?
このような役割を担うSAPコンサルタントとして転職したり、フリーランスとして活躍するにはどうしたら良いでしょうか。
日本におけるSAPコンサルタントの将来性
2027年までは、「2027年問題」による移行特需でSAPコンサルタントの逼迫が続くでしょう。
このため、現在はSAPコンサルタントは売り手市場ですから、転職で年収アップが期待できます。
しかし、このような特需が過ぎた後は、冒頭の「SAPのERPは伸び悩んでいる」が現実となって迫ってくるという見方があります。
「2027年問題」は大企業向けのSAP R/3やSAP ECCで起きた問題ですが、これをきっかけにSAPから他社ERPに乗り換える会社もあると考えられ、日本におけるSAPのシェアは一層落ち込むと予想する人もいます。
その一方で、SAP社が中堅・中小向けに対策を強化する見方もあります。
また、SAP社ではERP事業からRise with SAPソリューション事業にメイン事業を移しています。
Rise with SAPソリューション事業は企業のDXを推し進めるもので、SAPコンサルタントの守備範囲は今まで以上に広がるでしょう。
このように、日本におけるSAPコンサルタントの将来性については、さまざまな見方があります。
現在は、SAP社は色々な意味で転換点の渦中にありますから、SAP社の動きを注視する必要があります。
SAPコンサルへの転職
ここでは、SAPコンサルタントとして転職を目指す方に役立つ情報をお伝えします。
転職先と年収
SAPコンサルタントの年収は、経験や企業によって差がありますが、500~1200万円程度です。
プロジェクト全体を担当する大手企業やコンサルティングファームの年収の多くは600~1200万円ですが、1500~2000万円の人もいます。
一般的に、2次下請けや3次下請けで4~5年経験を積んでから転職した場合、年収は100~200万円増えています。
求められるスキル・経験
SAPコンサルタントとして転職するには、SAPエンジニアとして3~4年間の経験が求められます。
また、業務知識やSAPの各種モジュールについての知識のほか、SAPの開発・導入の経験やSAPのプログラミング言語「ABAP」の知識も求められます。
プロジェクトの上流工程である構想策定や要件定義などの経験が、設計・開発などの下流工程の経験よりも高く評価されます。
転職に役立つ資格
「SAP認定コンサルタント資格」
はSAPに関する知識を持っていることを証明するもので、これがあれば書類選考の段階で有利です。
SAP認定コンサルタント資格は、モジュール毎に分かれており、次の3つのジャンルに分類されます。
(1)アプリケーションコンサルタント:業務システムの知見を証明
(2)デベロップメントコンサルタント:SAPアプリケーション開発スキルを証明
(3)テクノロジーコンサルタント:インフラエンジニアが対象
資格に有効期限はありませんが、新しいバージョンのものが高く評価されます。
今取得できるのは、SAP S/4HANA またはSAP S/4HANA Cloudに関する資格です。
SAPコンサルタントとして独立しフリーランスへ
ここでは、SAPコンサルタントとして独立する場合について説明します。
フリーランスの需要は多い
SAPコンサルタントの高収入は以前より知られていました。
現状でもSAPのパートナー企業の中には、人材不足で新たな注文を断っている企業もあります。
特に、現在は2027年問題があり、SAP S/4HANAへの移行案件が多く、人手不足が顕著になっています。
このため、フリーランスのSAPエンジニアは引く手あまたです。
単価相場は高額
SAP導入コンサルタントの単価相場は極めて高額です。
月収は、未経験でも90~120万円、1年以上の導入コンサル経験者は130~200万円、プロジェクトマネージャ経験のあるベテランなら200~300万円程度とされています。
このため、会社に在籍している時と比較すれば大幅な年収増が期待できます。
独立のデメリット
収入増は魅力ですが、独立に伴うデメリットもしっかり押さえておきましょう。
1つは、ある程度の経験とスキルが必要で、SAPの実務経験が最低でも1年以上ないとSAP案件の獲得が難しいということです。
そして2つ目が、仕事が途切れたり、トラブルなどで契約解除になることがあるので、無収入になるリスクがあるという点です。
収入が比較的高いとは言え、より安定性を重視する場合には、別途プログラミングスキルを持つなどが必要になるでしょう。
独立前の準備
このようなデメリットへの対策として、 以下のような事前準備をしてから独立するようにしましょう。
(1)信頼のおけるSAP案件紹介サービスに2~3社登録し、活用しましょう。
自身の経験やスキルが、どの程度フリーランスとして通用するのか、どの程度の報酬が期待できるかを知ることができます。
このようなフリーランス向けのサービス会社には、得意領域や不得意領域があるため、2~3社登録することをお薦めします。
(2)1年間働かないでも生活できる程度の資金の準備が必要です。
これは、独立直後から安定した収入を得ることが難しいからです。
(3)フリーランスとして独立することの意味と目的を明確にしておきましょう。
エリートのフリーランスSAPコンサルタントを目指す方や、SAP関連のビジネスモデルで起業を目指す方など、フリーランスとして独立した後の展開はさまざまです。
独立後の日常の些事に紛れて、目的を見失うことのないようにするためです。
システム導入やデータ連携はAMELAに相談を
今回は、業界でも非常に需要のあるSAPコンサルタントについて見てきました。
SAPというシステムの特性上、経験や知識が重要視される職種ですが、世の中的な需要はまだまだ大きいので、これから転職を検討される方の参考になれば幸いです。
SAPを導入している企業様の中には、
「他のシステムを導入したいけど、データの管理が面倒になりそう」
などの不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
AMELAでは、多くのIT人材を抱えており、また専門のITコンサルタントも在籍しています。
SAPに関しての相談も含めて、今後どのように社内をDX化していくのかなど、お気軽に相談いただければと思っています。