ネットゲームの評価を決めるゲームクライアントエンジニアとは

PCゲーム・スマホゲームともに、現在は多くのゲームがネット対応です。

一昔前は、「MMORPG」などの一部のネットゲーム開発にのみ求められた技術やノウハウが、現在の開発現場では広く求められています。

ネット対応のゲーム制作プロジェクトは規模が大きいため、役割が細分化することが多いですが、重きを置くべき点を見誤るとプロジェクトの出来が大きく変わります。

そこで、大変重要ながらあまり重視されないことも多い、
「ゲームクライアント」
の開発やそのエンジニアの重要性について解説します。

ゲームクライアントの重要性

ネットゲームの開発となると、サーバーサイドのプログラマーが大活躍というイメージがあるかもしれません。

確かにゲームのロジックはサーバーサイドに記述しますし、アクセスが集中するゲームサーバーではプログラムの効率化が求められるため、プログラマーの腕の見せ所といえるでしょう。

しっかりとチューニングしたコードで、ゲームサーバーへの大量のアクセスを捌くことができれば、エンジニアとしてこれほど嬉しいことは無いでしょう。

しかし、ゲームサーバーと通信を行いながら実際にゲーム画面を描画するゲームクライアントの開発もまた重要です。

ゲームクライアントはユーザーが直接触れるソフトウェアとなり、いわばユーザーとの窓口になるわけですから、ユーザーからすればゲームクライアントから得られる体験が全てです。

いくらゲームデザインが秀逸でも、サーバー側のロジックコードが効率的でも、ゲームクライアントの出来が悪ければ全て台無しだということは容易に想像できるでしょう。

ゲームクライアント開発の特殊性

ゲームクライアント開発は、通常のソフトウェア開発とは異なる点が多く、総合的な開発力を要求されます。

ゲームクライアントはユーザーが直接触れる部分ですから、ユーザーの操作感が何よりも重視されます。

もちろんある程度以上の規模のプロジェクトならばUI/UXデザイナー等が付くでしょうが、それでもゲームクライアントを開発するプログラマーにもデザインやUI/UXに関するセンスが要求されます。

プログラミングスキルとデザイン的なスキル・センスは方向性が大きく異なりますので、両方求められるゲームクライアント開発は特殊であり、開発者に求められるハードルも高いのです。

また、直接ユーザーが触れるクライアントを作成するという点から、ゲームクライアントの特徴はその開発チームを印象づけるものとなりがちです。

ゲームクライアントエンジニアを総入れ替えすると、他のメンバーが同じであってもユーザーから
「これまでとゲームの感触や雰囲気が異なる」
などと言われるほど、チームの顔として機能するのです。

ですから、ゲームクライアント開発はセンスも求められますし、担当エンジニアもできるだけ固定し長く育てていく必要があるなど、他のプログラマーとは違った扱いが必要になります。

ゲームクライアントエンジニアという役割

そこで、ゲームクライアントの作成に特化し、ノウハウを多く抱えるゲームクライアントエンジニアの出番です。

ユーザーにとって良いUXを提供できるという知識・経験を持った上でコーディングに当たることができれば、自然と手触りの良いクライアントが作られるでしょう。

また、デザイナーとの意思疎通もスムーズに行え、デザイナーの意見の細かい部分まで掬い上げてコードに落とし込むことができるため、開発チームで高いシナジー効果が得られます。

ですから、クライアント開発において、このようなUIはユーザーに受けが良い、このようなギミックは反感を招きやすい、などを肌で理解しているエンジニアがいることは非常に重要です。

ユーザーからの反応の温度感は、開発と成果物へのユーザーの声に耳を傾けることのサイクルを長く続けることで初めて理解できるようになるものであり、短期間で手に入るものではありません。

ゲームクライアント開発の重要性を理解しないチームでは、サーバーサイドやロジック側に優秀なプログラマーを集め、ゲームクライアントには若手や派遣をあてがい適当に開発させてしまいがちです。

しかし、それではいつまでたっても優秀なゲームクライアントエンジニアは育たないのです。

ゲームクライアントエンジニアに求められるもの

ゲームクライアントエンジニアには総合的な資質が求められますが、特に挙げるとすれば、やはりセンスと、ユーザーのニーズを汲み上げる能力、そして実装力です。

センスがあるクライアントエンジニアはユーザー体験の良いコードを自然と書くことができ、客観視しながらクライアント開発を行え、飲み込みも早く、即戦力として活躍できます。

それと両輪をなすのがユーザーのニーズを汲み上げる力で、この能力に優れるエンジニアは経験から多くのことを学ぶことができ、ベテランに育てば欠かせない人材になってくれるでしょう。

この二つはいずれもユーザー視線を持つことができるという点につながります。

ゲームが好きでなければ良いゲーム体験を与えるという概念もピンとこないでしょうから、ゲームが好きであって、ユーザー目線に立って好ましいと思える設計を行う能力が必要だということです。

そして、それらを実際にコードに落とし込む実装力ももちろん重要です。

UI/UXデザイナーとの違いは、実際にコードに落とす必要がある点ですので、エンジニアであるならば実装力も欠かすことはできません。

ゲームクライアント開発はサーバー・クライアント通信を行うネットワークプログラミングが求められること、UI/UXのコーディングも求められることなど、かなり複合的な開発になります。

これを高いレベルでこなすには、純粋な実装力や十分な開発の経験も必要になってきます。

最初から全てをできるエンジニアはいませんし、ベテランのゲームクライアントエンジニアは流動性が低いですので、長い目で見てじっくりと育てていく必要があるでしょう。

ゲームクライアントエンジニアがもたらすメリット

では、ゲームクライアントエンジニアは、ゲームに対してどのようなメリットを生むのでしょうか?

優れたゲーム体験

優れたゲームクライアントはゲーム体験を引き上げるだけでなく、デザイナーの意図を正確にユーザーに提示します。

UI/UXがイマイチでスムーズにゲームプレイに没頭できない作りでは、ゲームデザインやレベルデザインが秀逸であっても、そういったゲームの面白さよりも先にクライアントの粗の方が目立ってしまい長所が隠されてしまいます。

これではいくら優秀なデザイナーを集めても意味がありません。

一方で優れたクライアントはデザイナーの意図を引き立たせるようなユーザー体験を与えられるので、デザイナーの優れた設計をフルに生かすことができます。

チーム開発ではどこかの役割がうまく機能しないと、そこがボトルネックとなってプロダクトの出来が悪くなることはよくありますが、ゲームクライアントエンジニアはその傾向が強いといえます。

逆に経験豊富でセンスのあるゲームクライアントエンジニアがいれば、それだけでプロダクトの出来は常に底上げされることになるのです。

スムーズなチーム開発

ゲームクライアントエンジニアはゲームデザイナーともサーバーサイドプログラマーとも隣り合った位置にいます。

クライアントのデザインではゲームデザイナーと入念に打ち合わせをする必要がある一方、ネットワークの仕様についてはサーバーサイドプログラマーとも話を詰めなければなりません。

場合によっては、サーバー側とゲームデザイン側で、意見が真逆になる事もあるかもしれません。

そんなとき、ベテランのゲームクライアントエンジニアがいれば、クライアント開発の経験からよりよい意見を提案できるでしょう。

実際にネット対応ゲーム開発においては、サーバー側のハード的な制限などによって実現できることとできないことが出てきます。

これによってサーバー側の人間とデザイナーで意見がまとまらないことがよくあるのですが、クライアントエンジニアはサーバー側の技術的な要件も理解できる立ち位置のため、どちらの話も聞けるというポジションにいるために重要なのです。

再利用性の高いゲームクライアントの開発

専任のゲームクライアントエンジニアが開発を続けていると、クライアント開発における提携コードやライブラリなどが集積されていきます。

そして汎用的なゲームクライアントのテンプレートやフレームワークが作られると、以後の開発の効率は大きく向上します。

テンプレートベースで開発することができるため、新しいシステムなどに挑戦するにしても、形ができるまでの開発期間を大幅に短縮できます。

また、使い続けたテンプレートは使うほどにデバッグがなされ、品質も安定していきトラブルも少なくなっていくでしょう。

ゲームクライアントエンジニアを育てることで、ゲームクライアントのコード資産も育っていき、その実りは開発チームの大きな財産となります。

通常のシステム開発でも、自社専用のフレームワークを作る・・・という話は、よくありますが、ゲーム業界でも、開発効率を高めるために開発ソースの蓄積は非常に重要なのです。

ゲームクライアントの良し悪しが評価を決める

このように、ゲームクライアントの出来がプロダクトの出来を左右する、最も重視すべき点の一つであることがご理解いただけたかと思います。

ゲームクライアントエンジニアは、ただデザイナーなどの言ったとおりにUIを作成して意図を再現するだけの役割であると考える方も多いのですが、決してそんなことはなく、ゲーム制作における要と言っても過言ではありません。

ゲームクライアント開発の重要性に加えて、ゲームクライアントエンジニアの育成には時間がかかり多く経験を積ませる必要があること、またセンスも求められることから、積極的にエンジニアの育成を行う必要もあります。

IT業界全体で人材不足が叫ばれていますが、ゲーム業界も人材不足が深刻です。

特にコミュニケーション能力の高いエンジニアは、希少性が高い一方、プロジェクトを進める上で非常に重要な能力になります。

そのため、現在の技術力が多少求めるレベルよりも低かったとしても、中長期的な育成を視野に入れた採用が重要になります。

IT人材の派遣はAMELAに

今回は、ゲームクライアントエンジニアについて見てきました。

様々なシステムが登場する一方で、開発・保守をする人材の確保が非常に難しい時代になってきました。

いかにIT人材を確保・育成出来るかで、5年後10年後のビジネスの継続性は大きく変わってくるでしょう。

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