デマンドコントロールとは?デマンド監視装置とデマンドコントロールシステムを解説
2020年代に入り、エネルギー問題への関心はさらに増しています。
そうした中、
「デマンドコントロール」
という言葉を、省エネへの取り組みや省庁のリリースなどでよく目にするようになりました。
「デマンドコントロール」が何なのか、いまいちピンと来ていない人も多いのではないでしょうか。
そもそも、電力関係に明るくなければ、「デマンド」という用語も聞いたことがない人が多いかもしれません。
実は、省エネに取り組む企業だけではなく、電気料金を抑えたいと考える一般家庭にも、デマンドコントロールは関わりの深いシステムです。
この記事では、「デマンドコントロール」がどのような取り組みなのか、そして、デマンドコントロールの2つの手法を解説します。
デマンドコントロールとは
デマンドコントロールとは一体どのようなものなのでしょうか。
それを理解するには、日本の電力会社における、電気料金の算出方法を知る必要があります。
少し専門的な用語を使っていますが、それについても簡単に解説しますので、気負わずに読んでみてください。
そもそも「デマンド」とは
まず、「デマンド(demand)」とは、「需要・要求」などを意味する英単語です。
電気工学の分野では、使用した電気量の指標として、「デマンド値」というものが使われています。
デマンド値は、日本語では「最大需要電力」とも言われ、一般には使用している電力の瞬時値(ある時点での電力量)を指します。
ですが、日本の電力会社で用いられるデマンド値は意味が違います。
電力会社では、一区切りの時間(デマンド時限)における使用電力の平均を「デマンド値」と呼びます。
デマンド値の単位はkW(キロワット)で、通常、デマンド時限は30分に設定されており、一定期間内(多くは一年間)で最も高いデマンド値を「最大デマンド値」といいます。
この「最大デマンド値」が、電気料金に大きくかかわっていきます。
一般的な電気料金の算出方法
ここで、一般的な電気料金の内訳を確認しましょう。
電気料金は「基本料金」と「電力量料金」を合計したものです(さらにここに消費税が掛かります)。
「電力量料金」は単純な使用料ですが、「基本料金」はどうやって計算されているのでしょうか。
この「基本料金」の計算に、最大デマンド値が関わります。
「基本料金」は、その電気の単価に「最大デマンド値(=契約電力)」と「力率割引」を掛けたものです。
「力率割引」を簡単に説明すると、届いた電力のうち、どれくらいが有効に活用されたのかという指標です。
電力会社から送られた電力のうち、有効に使用された電力の割合を「力率」と呼び、力率が高いほど、「力率割引」の値は低くなります。
この「基本料金」の計算で問題となるのが「契約電力」すなわち「最大デマンド値」で、契約電力は一年単位であるため、電気料金に大きく影響してきます。
「最大デマンド値」が電気料金を決める
このように、電力会社は、「最大デマンド値」という指標を用いて使用料金を算出しています。
最大デマンド値の定義上、短時間で多量の電気を使用するほうが、少ない電気量を長時間使用するより、電気料金が高くなります。
では、短時間での電気使用量が多くなってしまった場合は、どうすればいいでしょうか。
答えは、デマンド時限内での残りの時間に、使用電力を絞り、最大デマンド値を下げることです。
このとき、デマンド値を監視し、最大デマンド値を押さえる仕組みが必要になります。
その仕組みこそが、「デマンドコントロール」なのです。
デマンドコントロール
デマンドコントロールは、消費電力量をコントロールし、電気料金を下げる為の仕組みです。
デマンドコントロールは、過剰な電力消費を押さえることが目的です。
主に高電圧契約者や事業者にとって効果のある仕組みですが、近年は一般家庭で使用される電化製品等にも、デマンドコントロールは広がっています。
省エネの推進として、デマンドコントロールは特に空調設備や照明でよく用いられています。
デマンドコントロールの実現方法は様々あり、人感センサーを初め、太陽光発電パネルや蓄電池による手法がよく知られています。
前者は局所的なデマンド値の抑制、後者はデマンド値の上限を押さえることで、消費電力をコントロールしています。
また、初めからデマンドコントロールのためのシステムを搭載した電化製品も登場しています。
デマンドコントロールの方法
デマンドコントロールの方法には、大きく分けて、「デマンド監視装置」と「デマンドコントロールシステム」の2つがあります。
一番の違いは、デマンドコントロールを手動で行うか、自動化するかです。
それぞれの方法について、メリット・デメリットまで含めて解説します。
手動:デマンド監視装置
手動で行うデマンドコントロールに「デマンド監視装置」があります。
これは、あらかじめ定めた目標デマンド値を超過しそうになったときに、監視装置が知らせてくれるシステムです。
デマンド監視装置は、常に使用電力を監視し、予測デマンド値を計算しています。
見方を変えれば、業務オペレーション内での稼働制限のミスを知らせてくれるシステムでもあります。
メリット
デマンド監視装置のメリットとして、以下のことが挙げられます。
まず、導入コストが他のシステムと比べて低いことです。
簡易的に導入できる機器もあり、それによって、業務形態の変化に臨機応変に対応することができます。
また、デマンド監視装置は自動システムではないので、予期しない動作が起こりにくく、保守性が高いといえます。
さらに、常に使用電力を監視しているので、使用電力の状態を表示板に映すことによって、節電意識の向上にも繋がります。
デメリット
デマンド監視装置のデメリットは、やはり手動であるがゆえのものが挙げられます。
状況によって目標デマンド値などの設定を変更する必要があり、それらを検討し実行するための人員を用意しなければなりません。
この作業、特に監視装置の細かい設定変更には専門の工員を派遣してもらうこともあります。
また、実際に目標デマンド値の超過を検出したという通知が届いてから、使用電力の調整を行うまでの間にはある程度の時間がかかります。
そのため、デマンドコントロールの効率はあまりよくありません。
デマンド監視装置は、人力で対応できる小規模な施設での運用が適切であると言えます。
自動:デマンドコントロールシステム
自動で行うデマンドコントロールとして「デマンドコントロールシステム」があります。
これは、使用電力を監視し、契約時の最大デマンド値の超過が予測された場合、自動で使用電力を調整するシステムです。
調整方法としては、空調の出力の抑制や、優先度の低い機器の一時停止などがあります。
デマンドコントロールシステムは、デマンドコントロールの手法としてはデマンド監視装置よりもメジャーで、一般企業から行政機関まで、広く採用されています。
メリット
デマンドコントロールシステムの最大のメリットは、やはり自動で使用電力を監視しコントロールすることです。
工場をはじめとした大規模な施設では、手動で対応することは難しいため、デマンドコントロールを自動化することは、大きなメリットになります。
また、最大デマンド値の超過を自動で抑止するため、デマンド監視装置のデメリットであった、対応するまでの時間で発生してしまう電力浪費を失くすことができます。
加えて、自動システムは手動による操作ミスを防ぎますし、デマンドコントロールのために人員をさく必要も無くなります。
デメリット
デマンドコントロールシステムは、その機能ゆえに、デマンド監視システムと比べ導入コストがかなり高くなります。
導入の際には、コストを上回る効果を得られる環境であるか、よく検討する必要があります。
そのほかのデメリットとしては、自動化による融通の利きにくさが挙げられます。
デマンドコントロールシステムという仕組みでは、最大デマンド値の超過が確認された場合、あらかじめ設定した優先順位に基づいて、電子機器の稼働を停止または押さえます。
これにより、急に空調が止まってしまうなど、予期せぬ電子機器の停止が発生します。
さらに、こうした緊急停止は電子機器を痛め、稼働寿命を縮めます。
デマンドコントロールシステムに対応する電子機器
近年は、空調機器などを中心に、デマンドコントロールシステムに対応した製品が発売されています。
例えばPanasonicからは、デマンドコントロールシステムをあらかじめ搭載した空調機器が発売されています。
これは事前にユーザーが設定した目標デマンド値の超過が予測された場合、自動で運転を制御することができます。
超過抑制には、設定温度の自動変更などで対応しています。
デマンドコントロールシステムを運用するには、こうした電子機器の導入も検討する必要があります。
デマンドコントロール導入に補助金が出る自治体がある
エネルギー問題の解決に向けて、再生可能エネルギーの開発のように、行政は様々な取り組みを行っています。
その中で、デマンドコントロールの推進のために、事業者に向けて積極的に補助金を出す自治体が多数あります。
多くはデマンドコントロールシステムの設置費用を一部補助する形で、金沢市による
「金沢市事業者用デマンドコントロールシステム設置費補助制度」
はその代表例です。
この制度では、
設置費用×1/4 (限度額20万円・千円未満切り捨て)
が補助金として支払われます。
要件としては、下記の用に記載されています。
① パソコン上でデマンドや電力使用量のデータ管理ができること。
(ただし、パソコン、プリンターは補助対象外)
② デマンドの監視機能と目標値超過を予測した場合の警報機能があること。
③ 未使用のシステムであること。
④ 既存の設備の更新ではないこと。
すでに導入している場合には使えない補助金になりますが、そうでない場合には是非活用したい制度です。
これからデマンドコントロールシステムの導入を検討する場合は、各地方自治体などに制度があるのかを調べてみてください。
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今回は、デマンドコントロールについて見てきました。
SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」が注目されていることからもわかるように、
「自社だけの利益を求めていてはいけない」
というのが常識になってきています。
デマンドコントロールは、環境面からも非常に重要な課題であり、いち早く導入することで、企業としての良い意味でのブランディングの一つとなるでしょう。
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