マーケティングの新手法!?エスノグラフィーのメリット・必要性と難しさ

現在ではプログラムやウェブサービスにおけるユーザー体験(UX)は非常に重要な要素になっています。

時にサービスの内容や得られる価値以上にUXの善し悪しがサービスの成功・失敗を決定することもあり、その重要度は年々増してきています。

一般ユーザーも、一昔前に比べてサービスに求めるレベルが上がってきており、
「これくらいできて当然」
と考えるレベルが上がってきているのです。

そのため、ユーザーがどのようなUXを得られているかの調査や、それに基づいた改善サイクルは、サービスの開発や運用において非常にウェイトの大きいプロセスになっています。

そしてUXの調査法も多角化しており、どのようなサービスによって優れたUXが得られるのか、多くの評価法が乱立しているのが現状です。

そこで、ここでは今特に注目されていて、効果が高いと言われているエスノグラフィーについて紹介と解説をしていきたいと思います。

エスノグラフィーとは?

エスノグラフィー(ethnography)は行動観察調査と訳され、文字通りユーザーの行動を直接観察し、その行動様式から得られる情報やヒントを集積し、内在的なニーズやアイデアを掘り起こす調査法です。

平たくいえば、ユーザー層の人間を現実的に観察して、そこからどのようなサービスを必要とするのか、どのようなニーズがあるのかを汲み取る手法です。

人間観察からビジネスやITサービスのヒントを得ようとは、なんて回りくどいやり方なんだろうと思うかもしれません。

しかし、すでに広く知られているサービスにおけるUXテストが、最適化を重ねることでどれも同じようなものになってきており、差別化が難しくなってきています。

そんな中で、エスノグラフィーから得られる情報はこれまでにない視点からのヒントを与えてくれるとして、多くの企業が力を入れ始めています。

エスノグラフィーの必要性

エスノグラフィーはフィールドワークによって情報を得る手法です。

ですから、そこで得られた情報はノイズ(統計的に意味がない情報)は多いものの、データだけでは見えないものが見えてきます。

個々の行動様式からニーズ・選択・決定が生まれ、それが積もってサービスの成功失敗を形成します。

その源流である個々の行動様式にフォーカスすることが理にかなっているということは、感覚的に理解しやすいのではないでしょうか。

このような人間の生のデータは、これまであまり手付かずの領域でした。

人間の生のデータを収集するのは非常に手間がかかりますし、データの種類が広くなればなるほど、分析が難しくなります。

つまり、データ分析が非効率になるということであり、サービスに対する効果測定の非効率化は許容できるものではないと判断されてきたために、手付かずだったのです。

しかし、後述しますが、それを避けて得られる情報に限界が来たことで、多くの企業が一斉にエスノグラフィーに乗り出しました。

ネット越しに行えるリサーチやテストから得られる情報は飽和状態にあり、従来のUXリサーチから得られる情報は似たり寄ったりになってきているため、差別化のために生に近い情報を分析するエスノグラフィーが必要とされているのです。

従来のUXリサーチの限界

従来のUXリサーチは、サービスについて直接アンケートを行うとか、A/Bテストによる結果を分析するとか、サービスありきで行うものがほとんどでした。

これらのリサーチは長い間分析や改良が重ねられ、すでに大きな効果を上げています。

しかし、この従来型のUXリサーチにも限界が見えてきています。

いろいろな論点がありますが、最も大きいのが
「対象にかかるバイアスを排除できない」
という点で、ネットのリサーチ対象がすでに偏ったグループになってしまうことを解消できないのです。

当たり前の話ですが、オンラインショッピングサイトで従来のUXリサーチを行うと、リサーチ対象となるのは元々オンラインショッピングを積極的に行う層になります。

つまり、どんなに優れた分析方法を用いても、新しいニーズの開拓には中々つながらないという大きな問題を抱えていました。

また、同じような理由で、従来のリサーチで得られる情報はどうしても多数派のネットユーザーに沿ったものになりがちです。

もともと多くのユーザーが選んだ結果、つまり多数派ユーザーの選択を抽出するような手法なので、それを突き詰めれば多数派向けの似たような情報ばかりになるのは当然です。

このように
「新しいニーズが開拓できない」
「改良すればするほど同じような情報しか得られない」
という問題を抱えており、それを打開するためにリアルへと目が向けられ、エスノグラフィーにスポットライトが向けられたのです。

エスノグラフィーによる新しいUXリサーチ

全く新しいUXリサーチとしてのエスノグラフィーですが、基本的にはフィールドワークによるリサーチを行う、ということ以外に細かい定義や手法が定まっているわけではありません。

しかし、従来のUXリサーチが結果的に凝り固まった方向に進んでしまったことを受けて、できるだけリサーチ対象から自発的に出た情報を大事にします。

エスノグラフィーでも、フィールドワークで行うという点を除けば、アンケートやインタビュー・ディスカッションなどでリサーチ対象から意見や情報を得ます。

しかしエスノグラフィーではこちらが欲しい情報を得るための質問を行うような形にはならないように、自発的な意見の交換を促します。

例えば

1.企業に協力を請う
2.ビジネスの現場においてインタビューの場を設けてもらう
3.サービスのビジネスにおける親和性について忌憚のない意見を交わしてもらう
4.サービスの利用状況と合わせてユーザーの生の情報として全て収集し持ち帰る

といった手順で行われます。

そこで得られた情報には、
「このサービスの○○という点は使いやすいか?」
といった定型的な問いに対するスコアからは得られない、多くのアナログな情報が含まれます。

現代的なエスノグラフィーの手法

エスノグラフィーには大きな可能性が眠っていますが、実際にリサーチ対象に張り付くのは非常に手間がかかる行為です。

また、不運にも今はコロナ禍のまっただ中ということもあります。

そこで、最近ではネット会議やビデオチャットを用いたエスノグラフィーが行われるようになってきています。

特にテレワークを導入している企業では、単にネット会議を共有させてもらうことでエスノグラフィーの一歩とすることもできます。

また、ビジネスチャットツールやビジネス用コミュニケーションスイートなどを導入している企業に対しても、これらを活用して会議に参加させてもらったり、インタビューを行ったりするというやり方もあります。

あくまで簡易的な手法であり、あくまでフィールドワークを原則とすべきではありますが、エスノグラフィーのハードルを下げて手軽に行うための一手法としては役立つでしょう。

エスノグラフィーはUXを改善させるか?

エスノグラフィーが従来のリサーチと差別化できるものであるということは確かですし、すでに従来型リサーチより大きな成果を生むと評判になっていますが、ではエスノグラフィーは実際にUXを改善するのでしょうか?

エスノグラフィーのビジネスの現場への導入はまだ始まったばかりであり、まだはっきりと結果を語ることはできません。

しかし、少なくとも「新しいニーズの開拓」という点に関しては明らかに成果が得られているという報告が数多く寄せられています。

リサーチ対象へのバイアスを緩和できていることは間違いありませんので、従来より広い情報が得られていることは疑いようがなく、このことは今後競合に対して大きなアドバンテージとなっていくでしょう。

幅広い情報が得られていると、より広いユーザー層に対してのアプローチを考えることができますので、競合がリーチできない層にアプローチできることになります。

アプローチできる層というものは簡単に開拓できるものではなく、地道な調査と研究の末に少しずつ広げていけるものです。

つまり、その調査と研究の新しい手法がエスノグラフィーに当たるわけです。

このリーチできる層のわずかな差が、後に大きな優位性を生む可能性があるのです。

エスノグラフィーの難しさ

エスノグラフィーを実際に行ってみるまでは、ただのフィールドワークなのだから難しいことなどないだろう、と思われがちです。

しかし、エスノグラフィーは従来型のリサーチ手法から得られない情報を得るという明確な目的の下に行われるものですので、それをリサーチャーが理解していないと何のメリットも得られません。

最も陥りやすい間違いが、
『わざわざフィールドワークを行っておきながら、リサーチ対象に対して定型的な質問を行うに留まってしまう』
ことです。

こちらが用意した選択肢を選ばせるだけならば、従来のリサーチと得られる情報は何も変わらず、やり方が単に面倒になっただけです。

しかし、この間違いに陥らないようにするのは意外と難しく、エスノグラフィーの意義をわかっていたとしても、どうしても自分が想定している答えに誘導するような応対や態度を取りがちです。

エスノグラフィーの経験や技術が問われるところと言えるでしょう。

また、エスノグラフィーから得られた情報の分析もまた大仕事です。

エスノグラフィーを正しく行えていれば、サービスに必要な情報とそうでない雑多な情報が混じった状態で集積するはずです。

ここから多数派に適合するような無難な情報だけ拾えば、結局は従来のリサーチと同じことになってしまいますし、かといって奇抜な情報を拾えばいいというものではありません。

また、そもそも対象サービスに関連する情報なのかそうでないのかと判断が難しいものです。

データサイエンティストや行動心理学などの研究者の腕にかかっていますが、やはり分析側もエスノグラフィーに通じていることが求められます。

データ分析はこれからの重要ポイント!導入はAMELAに相談を

今回は、現在マーケティングでも注目されているエスノグラフィーについて見てきました。

これまでの単純なデータ分析では、ユーザーの『まだ認識されていない需要』を探すのも難しくなってきました。

そのため、こういった手法が注目を集めているわけですが、多くの企業ではこれらの仕組みを導入する際に
「今も仕事に追われているのに、新しいことなんて出来るわけがない」
という問題に直面します。

資金的に余裕のある企業であれば、多少お金をかけて挑戦して失敗しても問題は無いかもしれません。

しかし、多くの企業ではお金をかけるなら、最低限の成果を会社から求められるでしょう。

結果的に、新しい事に挑戦しにくい環境になってしまっているのではないでしょうか。

AMELAでは、オフショア開発を行っており、同じ仕組みを作るなら、比較的安価に開発が可能です。

また、ITコンサルティングも行っておりますので、御社に合った提案が出来ると考えております。

今のままでは、将来的なビジネスに不安がある。

そういった場合は、是非ともご相談いただければと思います。