個人事業主向けの資金調達方法・開業にかかる費用などを解説
事業形態には法人と個人事業主がありますが、適した資金調達方法は異なります。 もし個人事業主として事業を展開される場合は、個人事業主に有利な資金調達方法を活用しましょう。 この記事では個人事業主向けの資金調達方法、融資を受けるための要件とコツ、開業にかかる費用や必要な自己資金、資金調達にあたっての注意点について解説します。
個人事業主向けの資金調達方法
個人事業主向けの資金調達方法には、実にさまざまなものがあります。 それぞれメリットやデメリットが異なるため、あなたに合った資金調達方法を選びましょう。
日本政策金融金庫の融資
日本政策金融公庫とは政府が100%出資をする金融機関のことです。 主に個人事業主や中小企業などのスモールビジネスを対象にさまざまな融資制度を提供しています。 日本政策金融金庫の特徴は、金利が1~2%低く、返済期間が5年以上と長いことです。 1回の返済額が少なくて済むため、資金繰りがしやすくなります。 その一方で、審査が厳しく、返済能力を説明するための資料が多く求められることがデメリットです。
信用金庫の融資
信用金庫とは、地域の人々が利用者・会員になってお互いに地域の繁栄を図る協同組織の金融機関である信用金庫から受ける融資のことです。 信用金庫の主な取引先は個人や中小企業であるため、個人事業主にとっては比較的ハードルが低いです。 また、融資担当者が気軽に融資の相談に乗ってくれることもメリット。 ただしその反面、銀行などよりも金利が高く、かつ融資金額の上限も低めな傾向があります。
銀行融資の融資
銀行融資とは、メガバンクや地方銀行から受ける融資のことです。 ノンバンクのビジネスローンよりも金利が低く、融資金額の上限も高いです。 その一方で審査は厳しく、詳細な事業計画や、高い信用力が必要となります。 そのため、日々の取引から信用を積み重ねることが大切です。
地方自治体の補助金や助成金
地方自治体の補助金や助成金には、さまざまなものがあります。 地方時自体の補助金や助成金のメリットは、基本的に返済の必要がないことです。 ただし、支給されるための条件が厳しい傾向があります。 また、給付までに時間がかかることが多いため、すぐに資金が必要な場合には向いていません。 では、地方自治体の補助金や助成金の例を見ていきましょう。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、高齢者や障碍者など、就職が困難とされる人を継続的に雇用した際に支給される助成金のことです。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、個人事業主や法人が商工会・商工会議所のアドバイスをもとに事業拡大に取り組む時に利用可能な補助金もことです。 小規模事業者持続化補助金の募集は年数回ありますが、毎回締め切りが設けられています。 また、申請方法も電子方法など形式が決まっているため、見本などを参考に申請しましょう。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金とは、雇用している労働者のキャリア形成のための資金や、教育訓練休暇制度などを適用した際に支給される補助金のことです。 人材開発支援助成金はコースが7種類に分かれており、建設関連や障害者の訓練などの特定の業種や対象者に絞ったコースもあります。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、雇用の機会を創出することを目的とした助成金です。経験や知識から就職が困難な人を雇用した際に利用できます。 支給対象者の人数によって助成金額は変わり、最長3カ月間、月額の合計額が支給額となります。
創業補助金
創業補助金とは、開業時に必要な経費の一部を地方自治体が補助してくれる制度のことです。 募集は毎回春頃におこなわれますが、毎年期間が異なるため確認が必要です。 基本的には返済の必要はありませんが、創業補助金を受給してから一定期間内に一定の収益を上げた場合、返還を求められる可能性があります。
信用保証協会の制度融資
信用保証協会の制度融資とは、信用保証組合と自治体、金融機関の3者が連携して提供する融資のことです。 個人事業主などの小規模事業者の支援を目的としているため、比較的審査に通りやすく、金融機関融資を断られた場合でも融資を受けられる可能性があります。 制度融資の内容や金利は各自治体によって異なるため、事前に条件などを確認しましょう。
商工中金の危機対応融資
商工中金の危機対応融資とは、新型コロナウイルス感染症による影響で売上高の5%以上が減少した事業者向けにおこなわれる融資のことです。 危機対応融資は運転資金設備資金に使えて、無担保かつ金利は信用力に関わらず一律です。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、クレジット会社や消費者金融などのノンバンクが提供する、法人・個人事業主に向けた無担保ローンのことです。 銀行融資や日本政策金融金庫よりも審査がやさしく、最短即日融資が可能なことがメリットです。 担保や保証人も必要ないことがほとんどなので、お気軽に利用できます。 ただし金利は高めであるため、返済計画はしっかりと立てる必要があります。
不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、文字通り所有している不動産を担保として融資を受けるタイプのローンのことです。 不動産担保ローンは、銀行や銀行の関連会社、ノンバンクが提供しています。 不動産担保ローンの審査基準としては、事業の信用力よりも不動産の担保価値の方が重視されます。 そのため、担保価値の高い不動産を市所有している場合は低金利での融資を受けられるチャンスもあるため、事業がまだ軌道に乗っていない場合でもおすすめです。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、事業立ち上げなどの際に、出資者を募集する方法のことです。 元々は寺院などの造営・修復のための寄付金を集めるために使われていた手法ですが、現在ではビジネスや公共事業のための資金集めにも用いられるようになりました。 クラウドファンディングは、資金を集められるだけではなく、宣伝効果も期待できることがメリットです。 その一方で、資金を集めても商品やサービス提供の期日を守らなければ、信用が大きく損なわれる危険性があります。 クラウドファンディングには、次の3種類があります。
- 購入型
- 寄付型
- 金融型
では、それぞれについて見ていきましょう。
購入型
購入型は、ビジネスでクラウドファンディングをする際によく用いられる型です。 クラウドファンディングで集めた資金は返済の必要がありませんが、その代わりに支援してくれた人たちにリターンとして物やサービスなどを提供します。 支援者とのつながりが生まれるため、事業を始めた後も利用客になってくれることが期待できます。
寄付型
寄付型は、主に公益的な活動を行う団体が利用できる型です。 そのため、ビジネスでの資金調達には向いていません。
金融型
金融型は、株式やファンドの仕組みを利用したタイプの型です。 支援者は、投資目的で資金を出し、それに対し事業者側は配当を支払います。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング業者に売却して現金化する資金調達方法のことです。 ファクタリングの魅力は即金性の高さや、売掛金の未回収リスクを回避できることです。 特に最近はWebだけで手続きが完結するファクタリング業者が増えてきたため、利用のハードルが低くなってきています。 ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があります。 2社間ファクタリングとは、自分とファクタリング業者の間のみで完結させるファクタリング方法のことです。 2社間ファクタリングのメリットは、取引先にファクタリングを実施したことがバレないことです。 その一方で2社間ファクタリングは、手数料が高い傾向があります。 3社間ファクタリングは取引先からの合意を得る必要がありますが、その代わり手数料は安いです。 ファクタリング業者は世の中に多く存在しますが、中には悪質なものもあるため注意しましょう。
ビジネスカード
ビジネスカードとは、個人事業主や経営者を対象としたクレジットカードのことです。 ビジネスカードは、事業経費の支払いに特化しています。 資金繰りがしやすくなるだけではなく、決済をすると自動で取引履歴が会計ソフトに取り込まれるため、経理がしやすくなることもメリットとです。 ビジネスカードにはさまざまな種類があるため、年会費やポイント還元率、付帯サービスなどを基準に選びましょう。
親族や知人等からの借入
もし当てがあるならば、親族や知人から資金を借り入れるのもありでしょう。 普段から信頼関係が築けているのであれば、資金調達はしやすいです。 ただしどれだけ親しい間柄であったとしても、資金を借りる際はきちんと契約書にて利息や返済期日などを定めましょう。 そうしないと、トラブルに発展し、人間関係が壊れてしまう恐れもあります。
個人事業主が融資を受けるための要件
個人事業主でも融資を受けることは可能ですが、そのためには次の要件を満たす必要があります。
- 開業届を出している
- 確定申告をしている
では、それらについて解説します。
開業届を出している
個人事業主は開業届を出さなくても事業はできますが、融資を受ける際には必要です。 開業届は原則的に、事業の開始から1ヵ月以内に提出します。
確定申告をしている
融資を受ける際は、確定申告をしておきましょう。 なぜなら融資審査では、確定申告書類や決算書などで、きちんと納税しているかや利益を出しているのかが確認されるためです。 もし黒字できちんと納税しており、融資資金の用途や返済計画をきちんと示せれば、融資してもらえる可能性は高まります。 そのため普段から経理作業をきちんとおこない、確定申告と納税を滞りなく進めておきましょう。
個人事業主が融資を得るためのポイント
個人事業主が融資を得るためのポイントは、次のとおりです。
- 資金の用途を明確にする
- 必要書類は余裕を持って用意する
- 複数の機関に申し込む
では、それぞれについて解説します。
資金の用途を明確にする
個人事業主が融資を得るためには、資金の用途を明確にしましょう。 なぜかというと、融資担当者は審査の際に、融資した資金がどのように使われるかを重視するためです。 融資資金の用途は明確にし、事業の継続や拡大には融資が必要であることを融資担当者に納得させなければなりません。
必要書類は余裕をもって用意する
融資を申し込む際は、必要書類の用意は余裕を持ってしましょう。 なぜなら融資を申し込む際の必要書類は、融資申込書や決算書など多くの書類が必要となり、準備に時間がかかるためです。 また融資の審査は2~3カ月かかることが通常であるため、資金が必要な場合は早めに対応する必要があります。 そのため、必要書類は余裕を持って用意することが大切です。
複数の機関に申し込む
融資を申し込む際は、複数の機関に申し込みましょう。 なぜかというと、期間にとって審査基準や厳しさが異なるため、ある機関で融資が受けられなくても他の機関から受けられる可能性があるためです。 また何度も融資申し込みをしていくごとに、事業計画が洗練されていき、融資を受けやすくなることも理由のひとつです。 そのため、ひとつの機関から融資を断られても、諦めずに他の機関に融資を申し込みましょう。
個人事業主が開業にかかる費用は、約1,000万円です。 ただし500万円未満で開業する人が増えているため、開業のハードルのイメージは低くなってきているといえます。 それでは、開業にはどのような費用がかかるのか、その内訳を見ていきましょう。
賃借物件の敷金・礼金・保証料
もし開業にあたって店舗やオフィスを借りる場合は、その敷金・礼金・保証料を負担する必要があります。 ただし自宅開業の場合は、これらの費用はかかりません。
リフォーム費用
もし借りる物件の状態が良くない場合は、リフォームをする必要があります。 また、自宅開業をする場合でも、業務を行うのに適した環境にするためのリフォームをおこなうことがあります。
通信回線などの工事費用
事業用の物件を借りる場合や、自宅で家庭用とは別に通信回線などを用意する場合は、そのための工事費用がかかります。
備品購入費用
開業をする場合は、さまざまな備品を購入しなければならないことがあります。 たとえばパソコンやプリンター、事務用デスクなどです。 ただしこれらは購入するだけではなく、リースでの調達も可能です。
チラシやホームページなどの広告媒体の制作費用
集客のための広告媒体を用意する場合は、こちらにも費用がかかります。 たとえばチラシを作る場合は紙代や印刷代、ホームページを作る場合はサーバー代たドメイン代などです。 これらを専門業者に依頼する場合は手数料がかかります。
個人事業主が開業する際の自己資金はどのくらい必要?
開業に必要な資金は先述のとおり約1,000万円ですがそのうちの自己資金は約200万円程度が平均です。 あくまで平均であるため、これより自己資金が少なくても開業はできますが、自己資金が多い方が融資などの審査で有利な傾向があります。 もし少ない自己資金で開業したい場合は、自宅開業をしたり、低資金で始められるフランチャイズ加盟などを検討したりするのも良いでしょう。
個人事業主が資金調達する際に気をつけるべきこと
個人事業主は、資金調達をする際に気をつけなければならないことがあります。 そうしないと融資が受けられなかったり、補助金がもらえなかったりする可能性があるため、必ず押さえておきましょう。
個人用途の資金と事業用資金を分ける
資金は必ず個人用と事業用で分けましょう。 なぜなら、融資や補助金は用途が定められているケースが多いためです。 もし資金を定めた用途以外に用いてしまうと、使途違反として今後の審査に悪影響を及ぼしたり、最悪の場合資金を一括返済するよう求められたりします。 また資金を個人用と事業用でわけないと、経理の処理も大変です。 そのため、資金を個人用と事業用で分けることは必須です。
資金が必要なタイミングによって手段が異なる
資金調達方法によっては、適切なタイミングがあります。 たとえば募集期間が短くタイミングが合わないと利用できなかったり、「事業開始後税務申告を2期終えていない方」のように事業年数が決められていたりすることがあります。 そのため、個人事業主が資金調達する際は、こうしたタイミングによって使える制度を探すことも必要です。
制度の対象に個人事業主が含まれるかどうか確認する
全ての制度が個人事業主を対象としているわけではありません。 中には法人のみを対象としているものもあります。 そのため、個人事業主でも利用可能な制度なのか事前に確認しましょう。
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