リファラル採用とは?メリットとトラブルの回避方法についてご紹介

現在、多くの企業が人材不足に悩まされています。 日本の少子高齢化社会は長年問題視されていますし、労働人口は徐々に減少しています。 また、転職が当たり前になりつつある昨今では、よほど自社に魅力がなければ、能力の高い人を採用するのが難しくなっています。 そんな中で、「リファラル採用」というものが、徐々に注目を集めています。 今回は、そんな採用担当者が知っておきたい「リファラル採用」についてお話していきます。

リファラル採用とは

リファラル採用とは

リファラル採用とは[/caption] 一般採用、縁故採用、ヘッドハンティング。 自社に新たな人材を採用する方法は、複数あります。 その中でも、今特に注目されているのがリファラル採用です。 リファラル採用を取り入れている会社は、年々増加しており、2020年には大手の自動車メーカーである、株式会社トヨタ自動車が取り入れました。 これからさらに注目を浴びることが予想される採用方法、リファラル採用について解説します。

リファラル採用は社員による人材紹介制度

リファラル採用とは、『自社の社員による、採用候補者の紹介制度』による採用方法です。 ・自社をよく知る社員が紹介するため「社風に合った人材を発掘しやすい」 ・早く会社に馴染むことができるため「採用された人材の定着率が高い」 などのメリットがあるため、リファラル採用を取り入れる会社が増えています。

リファラル採用のこれまでと現在

リファラル採用は、アメリカのIT企業を中心に始まりました。 Googleなど大手の企業も取り入れており、2012年ですでにアメリカの大手企業50社の85%が取り入れていました。 アメリカでは過去10年間で最も多い採用方法です。 日本では、2015年頃から徐々に広がり、2021年ではIT、通信、インターネット関係の業種を中心に、企業全体の56.1%が導入しています。 上場企業は、未上場企業に比べ1.6倍導入しており、株式会社トヨタ自動車の他にも ・株式会社メルカリ ・富士通株式会社 ・株式会社NTTデータ ・株式会社セールスフォース ・株式会社串カツ田中ホールディングス ・株式会社スカイラークホールディングス など、大手企業も導入しています。

縁故採用との違い

社員による紹介制度という点では、いわゆる「コネ入社」とも言われる縁故採用と同じです。 しかし、リファラル採用と縁故採用は、異なる採用方法です。 縁故採用が、紹介した社員と候補者の関係を重視している採用方法である一方、リファラル採用は候補者のスキルや経験が重視される採用方法です。 そのため、縁故採用に比べ、リファラル採用では一般採用と同じく不採用となることも考えられます。

リファラル採用のメリット5点

リファラル採用のメリット5点

リファラル採用のメリット5点[/caption] リファラル採用のメリットは大きく分けて5点あります。 それぞれについて、解説します。

自社に適した人材が発掘しやすい

自社をよく知った社員が候補者を紹介するため、自社の社風、価値観への適性が高い人材を発掘できます。 アメリカで行われた調査では、69.8%の企業が、リファラル採用での採用者は、他の採用方法で採用した人材に比べ、企業の文化や価値観への適性が高いと答えています。

採用後の定着率が高い

リファラル採用で採用した人材は、他の採用方法で採用した人材に比べ離職率が低いことが分かっています。 これは、 ・社内に知り合いがいるため、新しい職場に比較的早く馴染める。 ・企業側も、採用者と信頼関係を築きやすい。 ことが理由であると考えられます。 また、面接などでは 「落とされたくないから、踏み込んだ質問が出来ない」 という場面もよく見られます。 例えば、 ・給料 ・実際の社内の雰囲気 ・入った後に自分がやる具体的な仕事内容 ・本当は残業があるのか ・社内での問題社員が居ないか こういった事は、中々聞きにくいとともに、 「聞いたとしても本当のことを答えてくれるのか」 という点で疑問が残ります。 一方、既に働いている自分の知人であれば、細かい部分も色々と確認が取れますし、聞いても面接の可否には影響がありません。 そのため、採用後のミスマッチが非常に低くなるケースが多いのです。

採用コストが削減できる

人材紹介業会社を介する採用では、手数料が発生します。 手数料は、ひとり採用ごとにいくらという場合や、採用した人材の年収の何%としている場合が多いです。 多くは年収の3割から4割としているため、年収600万円の人材を採用すると180万円から240万円の手数料が発生します。 リファラル採用では、社員に報酬を設定することもありますが、人材紹介会社に支払う手数料に比べると、採用コストは大きく削減できます。 それ以外にも、求人サイト自体が「1週間当たりいくら」という形で支払いが必要になるケースや、求人サイトに載せる写真や文章を考える人件費など、様々なコストが必要になります。 これらのコストが不要になることは、単なるコスト削減ではなく、人事部への負担の減少にも繋がります。

転職市場にいない人材が発掘できる

社員が紹介する人材は、積極的に転職活動をしていない知り合いなど、他の採用方法では発掘することのできない人材である場合があります。 また、過去に勤めていた会社や大学の知人など、他にはないスキルを持った人材であることも多いです。 というのも、多くの人は 「今の会社に居ながら転職活動をする」 という事をしません。 していたとしても、その人自身が既に転職すると心に決めている場合のみです。 しかし、他の会社の条件や内容・環境などを知らないだけで、知ってみると転職したい気持ちが高まることも多いです。 そういった人材は、一般の転職市場には出てこないものの、リファラル採用では見つかるケースがあります。

社員の意識改革ができる

社員は、自社の特性を考えて、採用する立場で人材を紹介します。 労働者側ではなく、使用者側の視点から組織を考える経験をすることで社員の仕事への意識がより高いものになります。 また、紹介した本人自身も、紹介する以上その人をきちんと育てる・教えるということをする可能性が高いです。

リファラル採用で起きるトラブル3点

リファラル採用で起きるトラブル3点

リファラル採用で起きるトラブル3点[/caption] リファラル採用には、大きなメリットがあります。 しかし、リファラル採用を導入することで起きる可能性があるトラブルもあります。 リファラル採用で起きるトラブル3点について解説します。

人材の画一化

紹介者となる社員は、自分と同じ価値観、同じバックグラウンドを持つ人材を紹介します。 そのため、既存の社員と同じ価値観の人材が自社に集まることになり、人材が画一化する可能性があるでしょう。 同じ価値観からは新たな発想や新たな技術が生まれることが少なくなることが考えられます。 人材の画一化は、組織にとって大きな問題となります。

紹介者と候補者の関係悪化

リファラル採用の採用基準は、一般採用と同じです。 スキルや経験を見極め、自社に必要な人材であれば採用になるため、不採用となることが考えられます。 不採用となれば、紹介者と候補者の関係は悪化することが考えられます。 不採用となった場合にフォローする方法を考えておかなければ、社員からの協力は得られません。

紹介者への報酬の違法性

人材を自社に紹介する社員に報酬を与えることが、違法になる場合があります。 職業安定法40条では、 「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事する者又は募集受託者に対し、報酬を与えてはならない。」 とされています。 簡単に言うと、 「人材を紹介した人に、報酬を与えてはいけない。」 ということです。 これに違反すると、65条により6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。 ただし、40条には例外が記載されており、 「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き」 とされています。 こちらも簡単に言うと、 「賃金、給料で支払う場合又は認可を受けている場合は報酬を与えて良い。」 となります。 人材紹介は厚生労働省の需給調整課が担当している、国の認可事業です。 40条に記載されている認可とは、国に人材紹介をするための認可を受けることになります。 全ての社員が認可を受けることは非現実的ですので、人材を自社に紹介をするためには、賃金、給料で支払う必要があります。

リファラル採用でのトラブルを回避する方法

リファラル採用でのトラブルを回避する方法

リファラル採用でのトラブルを回避する方法[/caption] リファラル採用を導入している企業は、リファラル採用で発生するトラブルについて理解し、回避するために対策しています。 前章で解説したトラブルの回避方法について、実際に行われている対策を解説します。

募集人材の明確化

人材の画一化を防ぐためには、社員に対して、募集している人材に求めている条件を明確にすることが有効です。 候補者に求めるスキル、経験などを詳細に示すことで、自社ではすでに充足しているスキルやこれまでと同じ価値観の人材を回避できます。 さらに、具体的に条件を把握できるので、社員の協力も得やすくなります。 2011年にアメリカで行われた調査では、リファラル採用によって多様性が低下したと回答した企業は少数派でした。 多様性が低下した、と回答した企業には、 ・人口構成に偏りがある田舎に拠点がある。 ・採用の大半を、ブルーカラー職が占めている。 ・ほかの地域からの採用が、ほとんど行われていない。 などの特徴があります。 業種や環境などによる影響は避けられないですが、リファラル採用による人材の画一化は防止できることが分かる調査です。

他の採用方法と併用する

他の採用方法と併用することも、人材の画一化を防止する手段として有効です。 リファラル採用の本場と言っても良いアメリカでも、複数の採用方法で人材を集めている企業がほとんどです。 リファラル採用には、人材面、コスト面など多くのメリットがあります。 しかし、複数の採用方法で幅広く人材を確保することも、多様性を維持することにつながります。

採用基準の明確化

リファラル採用の採用基準を明確に示すことで、社員と候補者の関係悪化の防止につながります。 縁故採用とは違い、リファラル採用の採用基準は、一般採用と同じであることが多いです。 そのため、社員の紹介とはいえ、自社で求める人材でなければ不採用となります。 採用基準が明確であれば、あらかじめ不採用となる場合もあることを社員、候補者共に事前に把握できます。 社員は候補者に対して、必ず採用となる、という過度な期待をさせることなく紹介ができます。

就業規則•賃金規則へ報酬について規定する

紹介をした社員への報酬を違法なものとしたいためには、就業規則・賃金規則に人材紹介時の報酬について規定しておく必要があります。 職業安定法40条では、「賃金、給料その他これらに準ずるもの」で報酬を与えて良いとされています。 労働基準法では、賃金について「労働の対償として、使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」のこととされています。 給料は、賃金とほぼ同じ意味として捉えられます。 一般に、組織が社員に対して、賃金を支払う条件は就業規則・賃金規則に規定されます。 そのため、リファラル採用の条件を就業規則・賃金規則に規定することで、違法な報酬とはなりません。

報酬金額を正しく設定する

職業安定法に違法とならないためには、紹介に対する社員への報酬額を正しく設定する必要もあります。 紹介料があまりに高額となる場合、職業安定法30条を根拠とする国の認可が必要となる可能性があります。 職業紹介会社の手数料の相場が、紹介した人材の年収の3割から4割程度であることから、その額を上回らない報酬額とする必要があります。 2017年に、リファラルリクルーティング株式会社が、東京都内の中小・ベンチャー企業に行ったアンケート調査では、平均報酬額は133,519円で高い企業では35万円、低い企業では1万円でした。 ちなみに、アメリカでは日本とは法律が異なるため、30,000ドルという高額の報酬を支払う企業もあるようです。 リファラル採用には、それだけの価値があることが分かります。 また、アメリカでは報酬を休暇や商品や、野球の観戦チケットなどの形で与える企業もあるようです。

採用活動のシステム化はAMELAに

採用活動のシステム化はAMELAに

採用活動のシステム化はAMELAに[/caption] 今回は、リファラル採用について見てきました。 リファラル採用は、多くのメリットが有る一方で、一定数のトラブルの可能性もあります。 また、社員が自社のことをどう思っているか・・・にも依存する部分があります。 例えば、 「ウチの会社楽だから来なよ」 という形で知り合いに声をかけていた場合。 その社員は、楽がしたいから入ってくる可能性が高くなりますし、反対に 「ウチの会社、エンジニアとして成長しやすい環境がある」 という話で声をかけていれば、成長意欲のある人が面接に来る可能性が高くなります。 つまり、普段から社員とどの様に接し、社員がどの様に会社のことを見ているのか・・・が、このリファラル採用では重要になってくるでしょう。 リファラル採用に限らず、様々な採用方法がある中で 「どのように採用活動を行うのか」 は、企業としても重要なポイントの一つと言えます。 例えば、自社のことをWEBでPRしていくのも一つの手段ですし、AIを活用して自社に適した人材を書類・テスト段階で判断する方法もあるでしょう。 この様に、IT技術の導入によって採用活動の効率化や質のアップを目指すことも出来ます。 是非、現在採用活動に不満や不安があれば、ご相談下さい。