AIとは違うの?コグニティブ・コンピューティングとは?概要と活用事例

最近になって耳にするようになった「コグニティブ・コンピューティング」という言葉。 具体的にどういったものなのか、いまいち把握できていないのではないでしょうか。 このページでは、コグニティブ・コンピューティングがそもそも何を指す言葉なのか、AIとは違うのか、どういった分野で活用されているのかを解説していきます。

コグニティブ・コンピューティングの概要

コグニティブ・コンピューティングの概要

コグニティブ・コンピューティングの概要[/caption] 活用事例などをみていく前に、まずはコグニティブ・コンピューティングがどういったものなのかを解説します。

コグニティブ・コンピューティングとは

コグニティブ・コンピューティング(cognitive computing)とは、広くは自然言語(私たちが使う言葉)や画像、音声などを理解・学習する技術のことをいいます。 「認知」を意味する”cognitive”という英単語をITの分野で定義したのは、大手IT企業であるIBMで、従来のコンピュータ技術からの飛躍を目指しています。 これまでのコンピュータが苦手としていた、非構造的なビッグデータを学習・解析し、適切な応答をするのが、コグニティブ・コンピューティングのシステムです。 従来のプログラミングでは「毎回同じ動作」をすることが求められます。 プログラムが状況を判断することはなく(閾値を設定し、それによって判断することはありますが、事前に考慮した判断基準と判定内容以外の判断は有りません)、自律的に学び理解していくようなシステムです。 そのため、しばしばAIと混同されてしまいます。 ただし、コグニティブ・コンピューティングという言葉は多くの技術やシステムを指す際に使われるため、いまのところ明確な定義はされていません。 一般的にコグニティブ・コンピューティングというときは、なにが人間の心を刺激し、それに対して人間がどう反応するかを学習し予測することで、新しいシステムやサービスの創造に活かすことを指しています。

コグニティブ・コンピューティングにおける4つの技術的要素

コグニティブ・コンピューティングには、4つの技術的な要素があります。

アダプティブ

研究や興味の対象の状況が刻一刻と変化するにつれて、目標や要件も変化します。 コグニティブ・コンピューティングには、それらをリアルタイムで学習し、曖昧さを解決し、予測不可能性を許すことが求められます。

インタラクティブ

コグニティブ・コンピューティングには、ユーザーとのインタラクティブな(双方向の)やり取りが求められます。 これは、ユーザーの利用しやすさにかかわります。

反復かつステートフル

解決したい問題がはっきりしない場合、問題を抱えている人に質問をしたり、追加情報を提供することで、問題を明確にします。 実際に問題解決へ行動する前の情報を活かすことが、コグニティブ・コンピューティングの強みになります。

コンテキスト

コンテキストを理解するのも、コグニティブ・コンピューティングの特徴です。 このコンテキストには、文脈だけではなく、時間や場所などのシチュエーションも含まれます。 コンテキストの理解は高度な技術であり、これが今までのコンピュータとコグニティブ・コンピューティング、そしてAIとの違いです。

AIとの違い

前述したようにコグニティブ・コンピューティングは、しばしばAIと混同されます。 確かに、どちらも自立的に学習するシステムであるというのは同じです。 しかし、両者は技術的・実用的な目標が異なります。 IBMによると、コグニティブ・コンピューティングの目標は「人間の意思決定の支援」です。 つまり、問題の明確化など、人間の行動を手助けするための技術ということができます。 AIは「特定のゴール(例えば売上が上がる)」に対して、自ら学習して最適解を求めるようなシステムです。 たとえそこに倫理的に欠ける要素があったとしても、合理性を求めて実行していくことでしょう。 一方で、コグニティブコンピューティングは、先程の定義から言うなら意思決定を支援するために ・急激な環境変化がデータ的に見られるが、AとBのどちらを選ぶか ・過去の推移からであれば、目標値はこのあたりが妥当と考えられるがどうするか ・販売個数が急激に落ちている商品があり、原因は〇〇であると分析できるがどの様に対処するか こういった形で、自ら決めるのではなく人間に最終決定を促すような仕組みであると考えられます。 ここが、人間以上の知能を目指すAIとの大きな違いです。

コグニティブ・コンピューティングは人間の仕事を奪うのか

結論から言うと、コグニティブ・コンピューティングが人間の仕事を大きく奪うことはないでしょう。 確かに、のちに紹介する製造業への活用事例のように、人員削減につながる場合もあります。 しかし、先ほど解説したように、コグニティブ・コンピューティングの目的は、人間の仕事や生活などの行動を手助けをすることです。 日本IBMの武田浩一氏は、IBMのコグニティブ・コンピューティング・システムであるWatsonが「医師を不要にする」ことはないと話しています。 患者の調子を慮ったり、生活環境やQOLを考慮するなどの能力は、人間のほうが優れています。 (出典:IBM Watsonプロジェクトは「医療」から始まった https://xtech.nikkei.com/dm/article/FEATURE/20150316/409350/?P=4) ですので、そうした人間であるからこそできる分野の仕事を、コグニティブ・コンピューティングがとってかわることはないと言えます。

コグニティブ・コンピューティングが活用されている分野

コグニティブ・コンピューティングが活用されている分野

コグニティブ・コンピューティングが活用されている分野[/caption] さて、コグニティブ・コンピューティングはどういった分野での活躍が想定されるでしょうか。 現在すでに多くの場面でコグニティブ・コンピューティングは活用されていますが、ここでは、教育・医療・ビジネスの3分野を紹介します。

教育

教育分野では、学習環境の改善にコグニティブ・コンピューティングの活用が期待されています。 学校の授業において、AIが教師を目指すと仮定すれば、コグニティブ・コンピューティングは副担任を目指す・・・といったイメージでしょう。 人間の講師がクラスの生徒全員に気を配るのは難しく、負担も大きいです。 そこで、コグニティブ・コンピューティングがチューターの役割を担うことで、人間の負担を減らすことができます。 また、コグニティブ・コンピューティングが生徒の学習データや環境を学習・分析し、より良い学習環境を提案することも期待されます。

医療

IBMによるコグニティブ・コンピューティングの実社会への活用のための研究は、医療分野での活用を目指して開始されました。 医療現場での活用として、診療・研究によって得た情報を、インターネット上にある膨大な医療データや論文などと照合し、より有効な治療方法の確立が期待されます。 これは特にがん治療の分野でのゲノム解析など、特に複雑で、まだまだ全容が解明されていない疾患の治療・研究で活用され始めています。 また、医師が患者へ処方する薬を選ぶ際に、その患者の健康状態や過去の病歴、薬へのアレルギー反応のデータなどを解析し、適切な処方を行うというのが、欧米ではすでに実現されています。 「人間の意思決定の支援」という理念が最も活かされるのが、医療分野なのです。

ビジネス

コグニティブ・コンピューティングの活用が最も期待されるのが、ビジネスシーンです。 特にマーケティングでは、SNSなどのビッグデータを分析し、新たな計画を立案することが可能になります。 マーケティングは、コグニティブ・コンピューティングのアダプティブな特性が活かされる分野ですね。 また、コグニティブ・コンピューティングのインタラクティブな特性は、駅や観光施設の顧客対応や、Webサービスの応答チャットなどのオペレーティングシステムに活かされています。 さらに、製造業では、工場内で得られたビッグデータをコグニティブ・コンピューティングが学習することにより、様々なプロセスを改善・自動化することが期待されます。 例えば製造工場での検品は、製品の画像データを学習することにより、人間が行うよりも制度の高い検査が実現できます。 また、コグニティブ・コンピューティングによって、工場でのIoTの運用もスムーズに行うことが可能になります。

企業によるコグニティブ・コンピューティングのサービス

企業によるコグニティブ・コンピューティングのサービス

企業によるコグニティブ・コンピューティングのサービス[/caption] 次に、企業による具体的なコグニティブ・コンピューティングの活用事例として、IBM による「Watson」と、Microsoftによる「Azure Cognitive Services」という2つのサービスを紹介します。

IBM

“cognitive”を提唱したIBMによるコグニティブ・コンピューティング・システムが「Watson(ワトソン)」です。 IBMは早くからこの分野に目を付けており、10年以上前からWatsonの開発が始められています。 「コグニティブ・コンピューティング」という言葉も、2011年にWatsonが、アメリカのクイズ番組である「Jeopardy!」で優勝者に勝利したことで、Watsonと共に一躍知られるようになりました。 Watsonはコグニティブ・コンピューティング・システムであると同時に、IBMのコグニティブ・コンピューティング・サービスの名称でもあります。 現在は「IBM Watson」として、ビジネスシーン向けのAPIとして提供されています。 IBM Watsonには、言語解析や音声認識、画像認識などのコグニティブ・コンピューティングの技術を活かした様々なサービスがあります。 運用の一例として、JR東日本のオペレーティングシステムをIBM Watsonが担っています。 顧客対応をはじめ、医療や人材教育など幅広い分野をカバーしています。 Watsonには、照会応答・知識探索・データ分析・健康管理など、多くの種類があります。 (IBM Watson公式: https://www.ibm.com/jp-ja/watson)

Microsoft

Microsoftによるコグニティブ・コンピューティング・サービスに「Azure Cognitive Services」があります。 Azureとは、Microsoftが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称で、200種類以上のサービスが展開されています。 「Azure Cognitive Services」はWatsonと同じくAPIで、システム開発やデータ解析のためのサービスで、開発している製品に、高度な意思決定のためのシステムを組み込むことができます。 (Azure Cognitive Services製品ページ: https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/cognitive-services/#overview)

コグニティブ・コンピューティングを始め、DXならAMELAに

コグニティブ・コンピューティングを始め、DXならAMELAに

コグニティブ・コンピューティングを始め、DXならAMELAに[/caption] 今回は、コグニティブコンピューティングについて見ていきました。 将来的に、こういった技術によって人間の判断が「より早く・より正確に・より安全に」できるようになれば、ビジネスにおいても非常に良い影響があるでしょう。 AMELAでは、日々最新技術の研究を行い、より良いシステムをオフショア開発により安価で提供しています。 「これからDXを始めたい」 「DXをしなければいけないのはわかっているが出来ていない」 という企業様は、是非ご相談いただければと考えています。