2030年のITエンジニア不足問題とは?人手不足の理由や将来性の高い分野を解説
あらゆる業界で問題となっている人手不足ですが、IT業界におけるエンジニア不足は、より深刻なものとして受け止められています。
経済産業省が2019年の報告書で
「2030年には国内で約79万人ものITエンジニアが不足する」
と発表したことで、IT業界の人手不足は大きな話題となりました。
IT業界にとって、エンジニアの確保と育成は緊急の課題となっており、行政も問題解決に取り組んでいます。
この記事では、日本におけるITエンジニア不足について、その実情と原因、企業・行政の対策について解説します。
合わせて、IT業界で危惧されている「2025年の壁」や、IT業界の中でも将来性の高い分野についても見ていきましょう。
日本はITエンジニアが不足している?
現代は少子高齢化の影響で、さまざまな業界が人手不足に頭を悩ませていますが、国内において特に問題視されているのが、ITエンジニア不足です。
多くの媒体でIT業界の人材不足が採り上げられていますが、詳しい内容を知らないという人も多いのではないでしょうか。
ここではITエンジニア不足の現状と対策、そして業界を問わず危惧される「2025年の壁」について解説します。
2030年には約79万人のITエンジニアが不足
2019年、経済産業省が「IT人材需給に関する調査」という報告書を公表しました。
これは国内におけるIT需要と労働生産性の推移から、需要と供給にどの程度の差が生まれるかを試算したものです。
経済産業省は報告書の中で、最悪のシナリオとして
「2030年に約79万人のITエンジニアが不足する」
と予測しています。
IT需要がさらに増していく一方で、エンジニアの高齢化などによって生産性が低下することで、このような深刻な人材不足が発生するとされます。
また、IT需要があまり伸びなかった場合でも、少子高齢化による人手不足は深刻になるため、最低でも約16万人のITエンジニアが不足することも報告されています。
(参照:「IT人材需給に関する調査」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)
エンジニア不足が特に深刻な分野
ITにはさまざまな分野がありますが、人手不足の深刻度は、分野ごとに異なります。
「IT人材需給に関する調査」の中で特に問題視されているのが、AIを初めとする先端分野での人材不足です。
一般的な人手不足は少子高齢化が主な原因であることが多いですが、IT業界の先端分野においては、AI・ビッグデータ活用といったトピックによって需要構造が大きく変化したことが、ITエンジニア不足に拍車をかけています。
また、ここ数年で需要が激増したことで深刻な人手不足が発生している分野として、ITインフラやアプリケーション開発が挙げられます。
加えて、どのような形であれ、ITサービスが広がるとセキュリティ対策が必要になります。
ネットワークやアプリケーションなど、各分野におけるセキュリティエンジニア不足も深刻です。
行政・企業の対策
こうした予測に対して、行政・企業はどのような対策をしているのでしょうか。
まず行政の対策として挙げられるのが、学校におけるIT教育の普及です。
文部科学省は、2020年度から小学校の義務教育にプログラミング教育を取り入れたように、早期からのIT教育を推進することで、将来的にさらに深刻になるエンジニア不足を解決しようとしています。
企業による人材確保としては、待遇の改善と雇用年齢の上限を緩和するなどが挙げられます。
また、外国人労働者の雇用やオフショア開発など、海外の人材を活用する動きも活発です。
このように、行政・企業は人材育成と確保について、さまざまな取り組みをしています。
なお、経済産業省は「IT人材需給に関する調査」の中で、こうした人材育成の取り組み以外にも、ITシステムを活用することで、労働者ひとりひとりの生産性を高めていくことが重要であると指摘しています。
「2025年の崖」とは
2030年に予測される深刻な人手不足の前に、「2025年の壁」と呼ばれる問題があります。
経済産業省が「DXレポート(2018年発表)」という報告書の中で使用した言葉で、2025年以降の国内では、システム障害によって巨額の損失が発生すると警告する内容となっています。
いま現在の日本で運用されているITシステムの多くは、開発から長い年月を経たことで保守・改修が困難な「レガシーシステム」です。
こうしたレガシーシステムは、改修の難しさからシステム障害の要因となり、場合によっては甚大な被害を引き起こします。
「DXレポート」では、2025年にはシステム障害の発生件数が2018年の3倍になることによって、年間で最大12兆円の経済損失が発生すると予測しています。
「2025年の壁」には、システム障害による経済損失の他に、レガシーシステムの運用・保守に多大なコストが発生するという問題があります。
現在、レガシーシステムを抱えている企業は、運用に多くの人員を割いており、保守業務を担うベンダーも受託型の業務から抜け出せていません。
しかしレガシーシステムを捨てて新たなシステムを開発するのには、時間・金銭・人手すべてについて膨大なコストをかける必要があります。
「2025年の壁」で指摘されている事柄が、人手不足の大きな要因ともなっているのです。
(参照:「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html)
国内でITエンジニアが不足している理由
日本国内でITエンジニアが不足しているのには、さまざまな理由があります。
ここでは、IT業界における人手不足の要因について、主要なものを解説します。
少子高齢化
まず、少子高齢化はすべての業界で人手不足の原因となっています。
総務省によれば、日本の労働人口は2020年代の10年間で1割ほど減少することが予測されています。
多くの企業で定年延長や再雇用などの対策をしていますが、抜本的な解決には至りません。
そのほかの対策としては、企業のDX化によってひとりあたりの生産性を向上することが、行政主導で推進されています。
IT市場の急成長
IT市場は、国内では1990年代から現在まで成長を続けている分野ですが、ここ10年ほどで急成長を遂げたことで、供給が追いつかないという問題があります。
急成長の要因としては、スマートフォンの普及や企業のDX化などが挙げられ、今後、需要はさらに増していくことが予想されます。
こうしたニーズに対し、ITエンジニアの教育や採用が間に合っていないのが現状です。
要求スキルの上昇
新たなIT技術が多数登場した現代において、ITエンジニアとして活躍するためには、かつてよりも高いスキルが求められるようになりました。
高度な能力を持つ人材を育てることは難しく、必然的に人材不足に陥ってしまいます。
合わせて、採用においても企業の求めるスキルは年々上昇しています。
どれだけ人手不足が深刻でも、事業に見合うスキルがない人材は採用できません。
IT分野の変化に対応できない
IT分野は変化が激しく、日々、新しい技術や製品が生み出されています。
それによってニーズも変化しますが、国内では対応が進んでいないのが現状です。
要因の1つとして、「2025年の壁」でも指摘されるレガシーシステムがあります。
レガシーシステムの運用・保守に多くの人手を要するため、欧米ではメイン市場となっているクラウドサービス・AI・IoTといった分野へ十分なコストを当てられないのです。
このように一言にITエンジニア不足といっても、さまざまな要因が複雑に絡んでいるため、とにかくITエンジニアを増やせば良いといった、人海戦術は有効ではありません。
教育制度が整っていない
次に、教育に企業及び政府が投資をできていない事も大きな要因です。
多くの企業では、今の売上を確保することに精一杯で、新しい事をするための時間や費用をかけられていません。
更に、パワハラなどが問題視される現代社会では、プライベートでの勉強を義務化することも難しいでしょう。
そのため、業務時間外に自発的に勉強をする一部の人を除いて、新しい事を学ぶことができていません。
仮に、企業が業務時間中に研修を行い、その勉強のために多額の資金を投じれば、
「非IT部門がローコード、ノーコード開発によって業務改善を行う」
などのような事が可能になりますが、それも難しいでしょう。
業種や業界を変えることのハードルが高い
転職を考えた際に、業種や業界を変えること自体に、大きなリスクを負う可能性があるのが、今の日本社会です。
IT業界未経験の人がIT業界に入るとなると、新卒程度の給料に下がることも多いでしょう。
また、自分に合うかわからない業界への挑戦で、企業選びなどに失敗してしまうと、次の転職は更に厳しくなります。
これらの理由から、IT業界へ気軽に挑戦する事が難しく、IT人材不足が加速していると考えられます。
経験者でも転職が気軽ではない場合もある
IT業界で経験を積んできた人でも、転職が容易ではないケースがあります。
例えば、WEB開発をメインにしてきた人が、データサイエンティストやAI開発の分野に行こうとした時。
実務経験がないと判断されてしまうので、転職する際には給料が下がる可能性が高いです。
新しい分野で数年働けば、もしかしたら前職の給料を超える可能性もあるかもしれません。
しかし、生活に直結する給料を考えた際に、その選択をリスクに感じる人も多いでしょう。
こういった理由から、新しい分野に経験のあるエンジニアが入りにくいため、前述したようにAIなどの先端技術では、人材不足が深刻になっているのです。
IT業界で将来性の高い分野は?
ITにはさまざまな分野があり、そのどれもが成長を続けているわけではありません。
そこで最後に、IT業界の中でも特に将来性が高い分野を紹介します。
ネットワークエンジニア
ネットワークをはじめ、通信インフラを担うエンジニアは常に高い需要があります。
どのようなサービスであっても、基盤となるのはネットワークであるため、今後も不必要になることはありません。
また、ネットワークエンジニアは通信の保守業務も担うため、多くの人員が必要とされます。
Webエンジニア
スマートフォンの普及によって、アプリケーション開発の需要が非常に高くなっています。
また、ECサイトやSNSなどのニーズが高まったこともあり、Web開発は特に将来性のある分野です。
またフリーランスの参入も活発で、案件も年々増加しています。
Web開発の分野は開発サイクルが速いという特徴があり、多くの人手が必要とされています。
IoTエンジニア
さまざまな製品をネットワークと接続して新たな価値を生み出すIoTは、IT業界の中でも大きな注目を集めている分野です。
そんなIoTの開発に携わるエンジニアは、プログラミングスキルだけでなく、ネットワークやガジェット開発についての知識も求められます。
要求スキルが高く、新しい分野であるため、国内のIoTエンジニアはまだまだ少ないのが現状ですが、行政がIoTを活用する動きも活発になっているため、今後さらに需要が増していくことが予想されます。
IT人材の派遣はAMELAに
今回は、IT業界の人材不足についてお話してきました。
多くの業界・企業でIT人材が不足していると言われていますが、その詳細を把握できたのではないでしょうか。
企業においても、できるだけ早く
「今できる範囲でのシステム化」
は大切になります。
IT人材が不足するということは、今後は更にシステムを開発する際の費用が高くなる事が予想されます。
きちんと業務のDX化ができている企業は、労力を最小限に売上を上げることができ、そうでない企業はDX化がより困難になる。
このような状況を変えるためにも、是非業務のシステム化や、IT人材派遣を活用してみてはいかがでしょうか。
AMELAでは、オフショア開発によって一般的なシステム開発よりも、費用対効果の高いシステム開発ができるだけではなく、IT人材派遣により、必要な人材を用意することが可能です。
場合によっては、IT人材派遣で社内システムの内製化を行うのも、1つの手段でしょう。
企業の問題を、中長期的な視点で解決していく。
そのためのお手伝いをさせていただきます。