従業員エンゲージメント調査とは?測定方法や注意点・アンケート例まとめ
企業にとって「人材」は非常に重要です。
特に日本では、あらゆる業界で人材不足が叫ばれています。
少子高齢化の影響を受け、今後も人材不足は加速すると考えられています。
そんな中で、
「優秀な人材を確保する」
のと同時に
「今いる人材を流出しないようにする」
ということに力を入れる企業も増えてきました。
そんな時に役立つのが、
「従業員エンゲージメント調査」
です。
今回は、このエンゲージメント調査の必要性やメリット・注意点などをまとめていきます。
従業員エンゲージメント調査とは
従業員エンゲージメント調査とは、従業員に対して
「どれくらい自発的に会社に貢献したいと思っているか」
を調査することです。
元々エンゲージメントとは、「婚約」「誓約」「約束」「契約」という意味合いを持つ英単語であり、
「親密な関係性」
を表す時に用いられる事が多いです。
そのことから、従業員と会社との親密性を測る意味合いが強く、従業員エンゲージメントを高めることが、健全な組織を作る上で重要視されています。
健全な組織とは
従業員エンゲージメントの意味合いは、比較的広い意味合いを持ち、明確な定義がありません。
しかし、一般的に「健全な組織」と言えるのは、
1.従業員が会社の方向性や経営理念に共感している
2.個人がいきいきと働ける
3.悩みがあっても相談することができる
4.従業員が会社に貢献したいと思っている
5.自ら考えて動くことができる
という状況を指します。
こういった企業を目指す上でも、従業員エンゲージメントは重要になってくるのです。
従業員のエンゲージメントを計測する必要性
では、従業員エンゲージメントを測定することには、どのような意味があるのでしょうか。
組織課題を見える化する
従業員エンゲージメント調査は、従業員が組織の目標や価値観にどれだけ共感し、その目標達成にどれだけ関与しているかを可視化します。
組織の目標に共感していない従業員が、本気で組織の目標達成を目指すことは難しいですし、個人の目標設定と組織の目標がズレている事もあります。
これらを可視化することにより、組織の課題や改善ポイントを特定し、戦略的な施策の立案に役立てることができます。
課題を見える化しなけければ、
「待遇に不満があるのに、企業理念を教え込む」
など、不満と対策が合致しない施策を取ってしまう危険性があります。
そのため、まずは課題を明確にする必要があるのです。
人事施策の費用対効果を確認する
従業員エンゲージメント調査は、人事施策の効果を評価する手段として重要です。
人事施策は、一般的にすぐに効果が現れるものではありません。
例えば待遇に不満がある従業員に対して、給料アップをしたとしても、その効果は一時的になることがほとんどです。
中長期的にきちんと効果があるかを確認するためには、
「いつどのような施策を打ったのか」
の記録と
「定量的な調査」
が欠かせません。
これらの費用対効果を確認する上でも、従業員エンゲージメント調査は重要なのです。
離職率の測定
従業員エンゲージメント調査は、従業員の満足度や関与度を測定することで、離職率の予測にも役立ちます。
従業員が組織に満足し、積極的に働く場合、離職率が低下する傾向があります。
また、単に離職率の高さ・低さを確認するだけではなく、その傾向を確認することで
「どういう点に不満が多いのか」
「離職前に対策を取れるのか」
という部分が明確になります。
従業員エンゲージメント調査のメリット
続いて、従業員エンゲージメント調査を行うことのメリットを解説します。
能動的に動ける社員が増える
企業において、「能動的に動ける社員」は非常に重要です。
転職セミナーなどでも、企業が重要視している点として
・自主性
・ポジティブシンキング
・コミュニケーション能力
などは、常に上位に挙がってきます。
従業員エンゲージメント調査を行い、適切な人事施策を行うことで、能動的に動ける社員が増えると考えられます。
離職率の低下
離職率を計測するだけではなく、それを改善する上でも従業員エンゲージメント調査は役に立ちます。
海外では、顔認証により従業員の精神状態を把握するような例も見られ、様々な情報から
「従業員が働きやすい会社」
を目指すことができます。
それにより、離職率が低下する可能性があります。
適切なチームビルディングができる
従業員の働き方やモチベーションは、チームに大きな影響を与えます。
エンゲージメントが低い人ばかりのチームや、チームリーダーのエンゲージメントが低い場合には、他のメンバーもそれに流されてしまう可能性があります。
特に若手社員は、先輩社員の影響を大きく受け、将来のキャリアプランを左右することも少なくありません。
そんな中で、従業員エンゲージメント調査の結果でチームビルディングを適切に行えば、社員のモチベーションが上がる可能性があります。
生産性の向上
従業員エンゲージメントが高い状態は、
「積極的に会社に貢献しようとする人」
が多い状態です。
そうなると、自然と作業効率は上がり、売上・利益率が向上する可能性があります。
エンゲージメントが低ければ、タバコ休憩や雑談が多くなりますが、エンゲージメントが高ければ、
・積極的にアイデアを出す
・集中力高く仕事をする
・売上を意識して動く
・無駄な残業をしない
など、会社のためにできることを各々が考える事ができます。
結果として、生産性が向上する可能性が高いです。
サービスのレベルが向上する
会社に貢献したいと考えている従業員が多くなれば、
「後輩の徹底的な指導」
「マニュアル化の徹底」
「マニュアル以上のホスピタリティの向上」
ということも、現場レベルで起こってきます。
その結果、同じ事業内容でもサービスレベルが向上することが考えられます。
従業員エンゲージメントを測定する方法
では、具体的に従業員エンゲージメントを測定するには、どのような方法があるのでしょうか。
アンケート調査
最も簡単な方法が、アンケート調査です。
質問項目と回答方法(自由記述もしくは選択形式など)を決め、アンケートに回答してもらうだけです。
最近は、Googleやマイクロソフトのグループウェアを使うことで、簡単にアンケートフォームを利用することができますので、比較的簡単に調査を行うことができます。
更に、グループウェアを利用したアンケートは、ログインアカウントから個人を識別できますので、各自の状況がわかる点がメリットです。
フォーカスグループインタビュー
フォーカスグループインタビューとは、特定のグループに対してインタビュー形式で行うワークのことで、商品分析などにも利用されます。
従業員エンゲージメントで利用する場合には、質問内容やグループ分けを考慮しないといけない点は難しさがあります。
しかし、アンケートでは聞けない深い話が出てくる可能性が高いのが特徴です。
例えば、アンケート形式ではなんとなく答えてしまっている部分も、グループでの会話の場合には高い集中力を持って回答をする可能性が高くなります。
その他にも、人の意見を聞いて思いつく話も多いため、アンケートとは別に行うのが良いでしょう。
定量的データ分析
定量的データ分析とは、数値データを用いて分析を行う方法です。
前述のアンケートでの回答を利用する場合もありますが、専用のツールを利用することも多いです。
海外の事例などでは、前述の顔認証以外にも、キーボードのタイピングスピードなどから仕事中の集中力を測定するようなケースもあります。
今日の気分や調子を簡単に入力できる仕組みを導入するなど、専用ツールの場合には入力方法やアンケートのタイミングを工夫できるのがポイントです。
従業員エンゲージメント調査の注意点
続いて、従業員エンゲージメント調査の注意点を解説していきます。
質問項目の偏りと回答方法に注意する
質問を選定する際には、質問の偏りや回答方法に注意する必要があります。
例えば、
・今の働き方について
・上司について
・同僚について
・社内のコミュニケーションについて
・キャリアについて
・待遇/人事評価について
など、様々な項目を調査することになりますが、「上司について」で10項目の質問、「同僚について」は20項目の質問など、項目ごとに質問数が大きく異なる場合、集計した際にデータに偏りが出てしまう危険性があります。
回答方法では、誘導尋問のようにならないような質問を作る必要があります。
例えば、
「会社に貢献しなければいけないという意識はありますか?」
という質問。
質問の仕方が、「会社に貢献するのが当たり前」というスタンスで書かれており、質問を受けた側からすると、「No」と答えにくい質問です。
非対面のアンケートだったとしても、Noと回答する際には罪悪感を覚える人も多いでしょう。
そのため、こういった誘導尋問のような質問方法を避けるべきです。
また、オープンクエスチョン(回答に自由度があるもの)とクローズドクエスチョン(Yes/Noで答えられるもの)の工夫も必要です。
例えば、
「今の職場環境に満足していますか?」
という質問は、質問の意図が大きすぎて、全体のざっくりとした印象しか答えられません。
一方で、
・今の職場環境において、上司とのコミュニケーションの取りやすさに満足していますか?
・今の職場環境において、設備面で満足していますか?
など、状況を細かく質問することで、
「この点は満足だけど、この点は不満」
ということを詳細に調査することができます。
頻度はアンケートの方針次第
アンケートの頻度は、得たい情報によりますが、一般的には下記の2種類に分かれます。
・パルスサーベイ:週1回や月1回などの頻度で、5問程度の簡単なアンケートを繰り返す方法
・センサス:年1回程度で、多くの質問を行う方法
メリットや目的の部分でお話したような「施策の費用対効果を見る」などを目的としている場合には、パルスサーベイが良いでしょう。
ただ、通常業務の合間に行う事が多いこういったアンケートは、従業員負荷が高い状態で、質問項目が多ければ、従業員としても適当な回答になってしまう可能性が高くなります。
そのため、頻度や質問数は十分に検討するべきでしょう。
従業員エンゲージメント調査の質問例
では、具体的に従業員エンゲージメント調査をする際の質問例を挙げていきましょう。
職場環境
・自分が働く職場の雰囲気や空気感をどのように感じていますか?
・チームメンバーとの関係やコミュニケーションが良好だと感じますか?
・会社は協力とチームワークを重視し、奨励していると感じますか?
・会社の多様性と包括性に関する取り組みや雰囲気に満足していますか?
・部門間や役職間のコミュニケーションが円滑に行われていると感じますか?
・新しいアイデアやイノベーションを提案しやすい環境だと思いますか?
・会社のミッションやバリューに共感し、それを実践していると感じますか?
・上司や同僚からのフィードバックやアイデアが尊重されていると思いますか?
・職場全体のエネルギーやモチベーションについてどのように感じていますか?
・新しく入社した人々へのサポートや指導が十分に行われていると思いますか?
仕事の意義/やりがい
・仕事に対するやりがいを感じていますか?
・仕事を通じて、自分のスキルや能力を活かせていると感じますか?
・自分の仕事が会社の目標達成に貢献していると感じますか?
・仕事において、自分が成し遂げるべき目標や使命感を感じますか?
・あなたの仕事が社会やコミュニティにプラスの影響をもたらしていると感じますか?
・仕事を通じて、自分自身の成長や発展を実感していますか?
・あなたの仕事が、他の人々の生活に良い影響をもたらしていると感じますか?
・仕事において、自分の専門知識やスキルを活かす機会を得られていますか?
・自分の仕事が、将来の展望やキャリアの方向性につながっていると感じますか?
・あなたの仕事が、自分の価値観や興味に合致していると感じますか?
報酬/評価
・自分の給与と報酬に満足していますか?
・あなたの業績に応じた報酬が適切に与えられていると感じますか?
・給与やボーナスの透明性についてどう思いますか?
・自分の貢献や努力が適切に評価されていると感じますか?
・会社からの認知や表彰が適切に行われていると思いますか?
・技術的なスキルや専門知識の向上に対する報酬制度がありますか?
・給与面や報酬に関するフィードバックの機会が提供されていますか?
・昇進や昇給のプロセスに満足していますか?
・技能や成果に基づいてキャリアの発展が可能だと感じますか?
・自分の業績や貢献が、会社の成功や目標達成にどの程度影響を与えていると考えますか?
ワークライフバランス
・仕事とプライベートのバランスを取るのは難しいですか?
・フレキシブルな労働環境が提供されていますか?
・余暇や趣味に時間を割くことができていますか?
・長時間労働が頻繁に求められると感じますか?
・仕事によってプライベートな時間が犠牲になることがありますか?
・リモートワークやテレワークのオプションがありますか?
・仕事のストレスがプライベートの生活に影響を与えることがありますか?
・オーバータイムや急な業務に対する適切な対応が行われていますか?
・仕事と家庭の両面で満足度を感じていますか?
・ワークライフバランスの改善に向けた提案はありますか?
リーダーシップ
・上司やマネージャーのリーダーシップに満足していますか?
・リーダーは従業員の成長をサポートしていますか?
・フィードバックや指導が適切に提供されていますか?
・リーダーは透明性を保ってコミュニケーションを行っていますか?
・リーダーはチームのビジョンや目標を明確に伝えていますか?
・リーダーはチームメンバーの強みを活かし、適切に配置していますか?
・問題解決や決定づくりにおいてリーダーのサポートを感じますか?
・リーダーはチームメンバーの意見やアイデアを尊重していますか?
・リーダーはエンゲージメントやモチベーションを向上させる取り組みをしていますか?
・リーダーがチームのコミュニケーションを促進していますか?
チーム
・チームメンバーとの協力は円滑ですか?
・チーム内のコミュニケーションが改善できると思いますか?
・チームは共通の目標に向かって努力していますか?
・チームメンバー同士の信頼関係は築けていますか?
・チーム内での仕事の分担や役割分担は適切ですか?
・チームは適切な情報共有や知識の共有を行っていますか?
・問題が発生した際、チームは協力して解決に取り組んでいますか?
・チームは多様なバックグラウンドやスキルを持つメンバーで構成されていますか?
・チームメンバー同士のコミュニケーションがオープンであり、率直ですか?
・チームが成果を達成するために必要なリソースやサポートが提供されていますか?
人事のシステム化はAMELAに
今回は、従業員エンゲージメント調査について見てきました。
従業員エンゲージメントを高めることは、長期的に見た時に売上や利益の安定に繋がります。
そのため、定期的な実施が望ましいですが、それができない状況の企業様も多いことでしょう。
人事部は間接部門であるため、人件費を割けない事が多く、業務量の割に人数が少ない企業も多いです。
今回のような従業員エンゲージメント調査を行うのが困難な企業様も多いです。
そういった場合には、是非AMELAにご相談ください。
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