エッジコンピューティングとは?IoT時代に必須技術のメリットや事例を解説

私達の周りにあるシステムの多くは、様々なデータ通信が行われています。

特に最近では、IoTなども注目されており、データの通信が家電などでも当たり前の世の中になりつつあります。

そんなデータ通信において
「エッジコンピューティング」
という技術があります。

この技術は、どのようなもので、どんなメリットが有るのでしょうか。

今回はこのエッジコンピューティングについて見ていきます。

エッジコンピューティングとは

エッジコンピューティングとは、サーバーにデータをそのまま送るのではなく、利用デバイス(スマホやIoT機器など)の周縁(エッジ)部分でデータ処理をする技術です。

昨今は、ビッグデータを始め大量のデータを処理する必要性が出てきています。

しかし、それらのデータをそのまますべてサーバーに送ってしまうと、サーバーの負荷が大きくなります。

そのため、必要な情報だけに加工した物を、クラウドサーバーに送るという方式が出来たのです。

注目される理由

エッジコンピューティングが注目されている理由は、前述したように
「情報量が多くなってきた」
ことが大きな要因です。

多種多様なセンサーなどにより、多くの情報を取得できる様になった一方で、これらのデータを全てクラウドサーバーに送信すると、データ容量が重く、サーバーに負荷がかかります。

更に、誰もがスマホを持つ時代になり、ウェアラブルデバイスも利用者を増やしつつあります。

1人がいくつものデバイスを所有する様になり、送信するべき情報量も更に増えていくことが予想されます。

また、一般利用だけではなく、ビジネスの現場でもデータの送受信は頻繁に行われます。

例えば、生産現場などでは、カメラ映像による製品の品質チェックが行われているところもあります。

そういった場合、24時間毎日映像が保存されることもあり、品質がわかるくらいの画質の映像を常に送信してしまうと、非常にデータ量が多くなります。

こういった場合でも、エッジコンピューティングが有効になります。

そしてもう一つの要因として
「端末が高性能・小型化・安価で手に入る様になった」
ということです。

これまでは、エッジ側のデバイスの処理速度と、クラウドサーバーの処理速度に大きな差がありました。

結果的に、エッジ側でデータを処理するよりも、クラウド側でデータ処理をする方が、圧倒的に効率的だったのです。

しかし、先程も述べた様に、送られてくるデータ量は、どんどんと増えている。

そして、エッジ側のデバイスも処理速度が上がり、価格も安価になっている。

更に、データ量が増えるのに対して、通信速度が間に合っておらず、大容量のデータを送る際は通信が遅くなる。

これらの条件が合わさった結果
「重たい処理をクラウドでやるよりも、エッジでやる方が、効率的なのではないか」
と考えられ、注目されているのです。

明確な定義は無い

とは言うものの、この「エッジコンピューティング」という形は、明確に定義されておらず、多種多様な形式があります。

例えば、一般的にスマホやウェアラブルデバイス、ドローンなどは「エッジデバイス」と言われます。

工場や支店などにサーバーが置かれ、そこから必要な情報をクラウドサーバーなどに上げるような場合、「ロケーションエッジ」などと呼ばれることもあります。

他にも、利用者に近い場所にあるデータセンターをエッジコンピューティング代わりに利用する事もあるなど、多種多様な形式が取られます。

エッジコンピューティングのメリット

次に、エッジコンピューティングのメリットを説明していきます。

レイテンシーの低下/処理の高速化

レイテンシーとは、データ送信のリクエストを送ってから、実際にデータを受け取るまでのタイムラグのことを言います。

レイテンシーが低下するということは、それだけ瞬時に情報が返ってくる事を意味します。

エッジコンピューティングでは、エッジ側で情報を処理して、必要があれば最小限のデータをクラウドに送信します。

クラウド側で処理を行うのに対して、物理的にも近いエッジで行うことで処理の高速化が可能です。

例えば、生産現場でロボットが導入された場合。

もしもそのロボットに、人が入ってきて危険に晒されたとします。

その際に、緊急停止までにタイムラグがあれば、人命に関わる可能性があります。

そういった場合は特に、このレイテンシーの低さが重要視されます。

ネットワーク負荷の軽減

次に、ネットワーク負荷の軽減です。

エッジ側で情報を処理し、必要な情報だけをクラウドに送る。

そうすると、大容量の不要なデータは、クラウドへ送られることがありません。

その分、ネットワーク帯域を圧迫することはなく、他の通信がスムーズに行えるようになります。

セキュリティの向上

次に、セキュリティの向上です。

例えば、スマホの画像。

写真を撮って、自分の端末にだけ保存されている状態だと、他者がその情報を見ることは不可能です。

一方で、クラウドに画像を上げれば、そのサーバーを管理している会社からは、内容が確認できる可能性もあります。

この様に、
「端末側(エッジ側)だけに情報があり、その中で処理される」
というのと
「クラウドに情報をアップした後に処理をする」
というのでは、エッジコンピューティングの方が、セキュリティレベルが高いと言えます。

サーバーの影響が少ない

次に、サーバーの影響を受けにくい点もメリットです。

例えば、スマホゲームなどでも、毎回サーバーにアクセスするようなゲームだと、
・自分のスマホが通信制限がかかっている時
・多くの人がアクセスしている時間帯
に利用すると、ローディングに時間がかかります。

更に、サーバーがメンテナンスに入ると、その時間帯は利用することが出来ません。

一方で、通信をしないアプリの場合は、サーバーの状況に関係なく端末側だけで処理ができます。

「サーバーの状況に関係なく、利用したい時に使える」

というのは、エッジコンピューティングのメリットでしょう。

エッジコンピューティングの活用例

次に、具体的にエッジコンピューティングの活用例を見ていきましょう。

生産現場

工場などの生産現場では、多種多様なセンサーが利用されます。

例えば、エッジデバイスにセンサーを搭載し、機械の稼働状況や異常情報をリアルタイムで収集することで、メンテナンス計画の最適化や機械の故障予知を行うことができます。

他にも、エッジデバイスにカメラやセンサーを搭載して、作業員が危険なエリアに立ち入った場合には自動的に警告が発せられるようにすることができます。

このような24時間稼働している様なセンサーに対して、その全ての情報をクラウドサーバーに送信してしまうと、大量のデータが送られることになります。

これを回避するために、エッジコンピューティングが利用されます。

自動車

自動車における自動運転技術にも、エッジコンピューティングが利用されています。

前の車との車間距離や、ガードレール・障害物との距離。

これらを時速数十キロで走っている中で、常にクラウドに情報を投げると、大量の通信が必要です。

更に、仮にネットワークの影響で数秒のレイテンシーが発生すれば、その間に大きな事故になる可能性が非常に高いです。

だからこそ、エッジコンピューティングが必要になります。

小売業

小売業などの身近な業種でも、エッジコンピューティングは活用されています。

例えば、防犯カメラにより、顧客の動向を監視する場合。

動画として全ての情報をクラウドに上げると、大量のデータを送る必要があります。

しかし、エッジコンピューティングにより、動画の解析を行い、顧客の位置情報だけをクラウドに送ることで、通信の容量を格段に下げてくれます。

また、通信する容量が小さいことは、通信にかかる費用も安くなる可能性が高いです。

AWSやGCPなども、保存するデータ容量や通信量で料金が変動する事も多いので、費用面でもメリットがあります。

顔認証機能付きの入館ゲート

多くの企業に、顔認証付きの入館ゲートがありますが、これにもエッジコンピューティングが利用されます。

ICカードでの入館証の場合は、カードの貸し借りが出来るなど、いくつかのセキュリティ的な懸念点があります。

そのため、顔認証を導入している企業もあるのですが、顔認証をする際に、クラウドに情報を送って処理をすると、タイムラグがあります。

多くの人が通るような場所や、人がある程度早い速度で通る場合などに備え、エッジコンピューティングで処理するのが適切です。

そうすることで、処理の高速性が高まり、よりスムーズな利用が可能になります。

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今回は、エッジコンピューティングについて見てきました。

多くのシステムが開発される中で、この
「データをどう処理して、どう送信するか」
は、非常に重要な問題です。

システム開発においても、その企業の技術力によって、速度や利用時の快適さが大きく変わってきます。

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