VPoEとは?CTOとの違いは?Webサービスを隆成させ、DX推進でも注目される?

VPoEという言葉を聞いたことがありますか?

Webサービス企業がアジャイル開発の際に設置した役職ですが、今では企業でDX推進を担うキーパーソンとしても注目を集めています。

VPoEはエンジニアリング組織をマネジメントすることで、様々なプロジェクトを成功に導くよう支援する責任者です。

このために、開発体制の構築やエンジニアの採用・育成、プロジェクトへの配置など企業全体の立場から最適化して推進する役目を担います。

今回は、最近注目されているVPoEという役職について紹介します。

なお、エンジニアリング組織についても詳しく解説していますので参考にして下さい。

VPoEとは

VPoE(Vice President of Engineering)は、企業のエンジニアリング組織におけるマネジメントの責任者です。

CIO(Chief  Information Officer)やCTO(Chief Technology Officer)などと同様な立ち位置で、エンジニアの採用や育成、開発組織の運営(事業戦略・チームマネジメント・開発マネジメント)に当たります。

Webサービス企業を中心にVPoEが設置されている

VPoEは欧米では以前からある一般的な役職ですが、最近では日本でもWebサービス企業を中心に設置する企業が増えています。

Webサービスは、黎明期には市場変化の少ない分野に導入され、その後、市場変化の激しい分野にも導入されるようになりました。

VPoEが設置されるようになったのは、市場変化の激しい分野にもWebサービスが導入されるようになってからです。

以降で、もう少し詳しく、この動きを見ていきましょう。

Webサービスの黎明期は市場変化の少ない分野が対象

黎明期は、金融や保険などの市場変化の少ない分野のWebサービスの開発が対象です。

この段階では、Webサービスはビジネスにとって補助的なもので、企業のIT部門はコストセンターの位置づけでした。

開発はSIerが担い、ウォーターフォール型の開発を行っていました。

一般に、ウォーターフォール型開発の場合、「要件定義」が開発プロジェクトの成否を決定づける最も重要なフェーズであると言われています。

このような市場変化の少ない分野では、より良いサービスを提供するために要件定義に充分に時間をかけることができます。

現在は市場変化の激しい分野にもWebサービスが普及

市場変化の激しい分野では、ウォーターフォール型により年単位のスパンで開発していると、リリース時には市場が変ってしまっており、開発したシステムの価値が下がってしまう可能性があります。

なによりもリリースを急ぐ必要があり、要件定義にそれほどの時間をかけずに市場の反応を見ながら方向転換するアジャイル型開発が脚光を浴びるようになりました。

この分野へのWebサービスの導入が盛んになったのは「アジャイル型開発」が登場してからです。

この時期には、Webサービスをビジネスの柱にする企業を中心にIT部門のプロフィットセンター化が進んだのです。

Webサービスをビジネスの柱にしている企業でVPoEの設置が進んでいる

次に、VPoE設置が実際にどのような企業で進んでいるのか現状を見ていきましょう。

まず最初に紹介するのは日本最大のフリマアプリを運営する「メルカリ」です。

VPoEとCTOとの分業体制を敷くことで、組織内でエンジニア個人が強みを活かせる環境を整えることができ、高い開発力を維持しています。

次に紹介するのは「ヤフー」で、VPoEとテクニカルディレクター(技術に関する責任者)の分業体制です。

ヤフーでは、VPoEには本部長に当たる人材が就き、デザイナーを含むエンジニア組織のマネジメント全般に責任を持ちます。

このように、Webサービスをビジネスの柱にしている企業では、IT部門のプロフィットセンター化が進み、これを強力に推し進めるためにVPoEが設置されていることが分かります。

アジャイル開発の伸び悩みを突破するエンジニアリング組織

このように、日本においてもアジャイル型開発が導入されるようになったのですが、その普及率は世界各国と比べて低いです。

アジャイル開発では、不確実性が高い状況で開発をスタートし、仮説検証型でアジャイル開発が行われます。

アジャイル開発が導入されたばかりの頃は、開発チーム(エンジニアで構成される)と仮説検証チーム(エンジニア以外で構成される)に分かれて作業していました。

チーム間の仮説検証作業は週に一回行われていましたが、チームが分かれていることが原因で仮説検証作業は1週間待たされていたのです。

市場変化に素早く対応するためには、開発チームの中で市場の変化を理解し、学習しながら素早く改定されたサービスをリリースする体制が必要です。

そのためには、開発チームに仮説検証の出来るメンバーを加え、主体的・自律的な組織にすることの必要性が認識されるようになったのです。

このようにして、アジャイル開発チームには自律型組織の形態が提唱されています。

VPoEはエンジニアリング組織を率いる

自律型組織の対極にあるのがピラミッド型組織で、これはウォーターフォール開発の際に採られていた組織構造です。

ピラミッド型組織では、事前に綿密に練られた計画に基づいて仕様を決め、上長が指示・命令を出し、部下がそれに従って淡々と仕事を進めるスタイルです。

自律型組織とピラミッド組織では、メンバーの仕事への取り組み方や仕事の進め方が異なることから、両者ではメンバー管理や組織管理などは全く異なったものになります。

エンジニアリング組織を率いるトップには、
・高い専門性を持つ自律したエンジニアを集めてエンジニアチームを作ること
・各エンジニアの自律を重んじ自主的に仕事をするようエンジニアリング組織を運営すること
・市場変化に素早く対応してWebサービスなどを開発すること

が求められます。

これらの役割を1人で担うことに無理を感じ、エンジニアリング組織を率いるVPoEと技術領域のキャッチアップと、展開を担うCTOの二頭体制をとる企業が増えています。

DX推進のキーパーソンとしてもVPoEが今注目されている

今では政府を挙げてDX(ディジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれています。

このような背景の下、Webサービス以外の分野でも、DXを推進したりAIやIoTなどをビジネスに組み込んだりすることで会社の競争力を上げたいと願っている経営者が業種業態を問わず多いです。

また、多くの経営者は
「自社で、最もITスキルの高いメンバーが揃っているのはIT部門なので、その人材を活用してDX推進などに取り組むのが望ましい」
と感じています。

しかし、IT部門がDXに取り組むことには躊躇している経営者が多いです。

その理由として、
(1)IT部門は業務効率化や運用・保守・メンテナンスなどを抱えており、DX推進などに取り組む時間が無い
(2)IT部門のメンバーは業務知識が乏しいので効果的にDXできるか不安
などが挙げられます。

そこで、VPoE導入によるWebサービスの成功事例を見聞した経営者などを中心に、DX推進のキーパーソンとして
「エンジニアリング組織作りと組織運営を任せられる存在」
としてのVPoEが注目されています。

VPoEの役割と仕事内容、CTOとの違いは?

VPoEは、CIOやCTOなどと同様な立ち位置で、エンジニアの採用や育成、開発組織の運営などの面でエンジニアリング領域に責任を持ちます。

ここではVPoEの役割と仕事内容、CTOとの違いについて見ていきましょう。

なお、混乱を避けるために、エンジニアチームとエンジニアリング組織という用語は次のような意味で用いることにします。

・エンジニアチーム:エンジニアの所属する組織
・エンジニアリング組織:エンジニアチームとビジネスチームが連携した自律的組織で、エンジニアリングを担う

VPoEとCTOの違い

「VPoEとCTOの違い」について役割を理解するには、VPoEという役割が生まれた背景を理解するのが手っ取り早いです。

WebサービスやDX、ディジタル技術の活用のためにITエンジニアを採用しても、エンジニアが定着し、力を発揮してくれないなどエンジニアのマネジメントに課題を抱える事例が多々あります。

小さな組織ならば、その会社の技術責任者であるCTOが配下のエンジニアをマネジメントすることが多いです。

しかし、組織が大きくなってエンジニアが増えた場合、CTOの本来業務である新技術開発や製品化などのプロジェクトの推進が疎かになりがちです。

このような弊害を取り除くために生まれたのがVPoEです。

VPoEの役割と仕事内容

VPoEの第1の役割は「エンジニアチームのマネジメント」です。

具体的には、エンジニアチームを構築する役目で、エンジニアの採用・育成・評価・配置などの責任を負います。

このため、採用や育成・評価などの方針を決定したり、チームメンバーを指揮して面接などの実務に当たらせたりします。

エンジニアチームがプロジェクトに参画する場合、プロジェクトが成長するか否かはエンジニアの配置や体制によるところが大きいので、チーム内のメンバーへの目配りが大切です。

また、エンジニアチームを活性化して事業成長に寄与することもVPoEに求められています。

このために、チームメンバーを効果的に動かすことが必要で、
・個々のエンジニアの適性や志向を見定めて、適材適所に配置する
・新人や駆け出しには教育する

という形でそれぞれの人材の才能を発揮させ、チームに最大限貢献させる責任があります。

VPoEの第2の役割は「開発環境を整える」ことです。

エンジニアチームには、ビジネスチームをはじめ様々な部署を連携させて開発環境を整えることで「エンジニアリング組織」を形成し、それを適切に運営してプロジェクトが成功するように支援する責任があります。

エンジニアリング組織のマネジメント

前章でアジャイル開発を担うエンジニアリング組織として、
「開発チームと仮説検証チームを融合した組織であること」

「自律型組織であること」
について述べました。

「エンジニアリング組織」は、アジャイル開発以外の分野にも構築が検討されています。

このような分野でも「エンジニアリング組織」を構築する際には、
「エンジニアチームとビジネスチームとの密な連携など、ビジネスサイドとエンジニアの距離を縮める対策」

「自主性と自律性を重んじたチーム運営」
が求められます。

エンジニアチームのマネジメント

VPoEはエンジニアチームを構築する役目があり、エンジニアの採用・育成・配置・評価などの責任を負います。

エンジニア採用に向けた広報活動と採用活動

求人活動は、広報部門がPR活動し、人事部門が採用活動をするのが従来の姿です。

しかし、昨今ではITエンジニア不足を背景に、エンジニア獲得に向けて各社がしのぎを削っています。

このため、少しでも優秀なエンジニアを求めてエンジニアチームが広報活動や採用業務に乗り出すケースが増えているのです。

そのような背景があり、VPoEとしてエンジニア採用向けの広報活動を行います。

採用活動に当たっても、
・必要な人材要件を人事部に提示
・求人媒体やエージェントに依頼
・候補者に直接アプローチ
などの様々な活動をVPoEが自ら行います。

エンジニアの育成とエンジニアチームの運営

即戦力となるエンジニアを採用するのはなかなか難しいです。

また、ポテンシャル採用した場合には育成に時間をかける必要があります。

このため、採用したエンジニアを定着させるための支援と、エンジニア育成の仕組み作りがVPoEに求められます。

エンジニアチームの運営に当たっては、エンジニアが能力を発揮できる仕組みや文化を作り、それを継続的に運営し発展させることもVPoEに求められます。

例えば、プロとしてのエンジニアが育つような環境にエンジニアチームを整備することも考えられます。

具体的には、自発的にスキルを磨き続けたり、互いに学びあえたりできる環境です。

エンジニアをプロジェクトに配置

これは、エンジニアをプロジェクトに参加させ課題解決に当たらせることです。

当然、エンジニアが働きやすく、プロジェクトを推進し易いようにフォローする役目もあります。

大きなプロジェクトでは、エンジニアを支援するEM(Engineering Manager)も配置させることがあります。

エンジニアを評価

エンジニアのキャリアパスが多様化しているので、評価には注意しましょう。

キャリアパスを意識して、日頃の会議や活動を通じて継続的にエンジニアの成長を評価するように心掛けましょう。

この際、減点主義に陥らないようにすることが肝要です。

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今回は、VPoEについて見てきました。

様々な時代の変化とともに、求められるスキルや人材も変化していますね。

この様な状況の中、IT人材が非常に不足していると言われる日本において、
「適切な人材を確保する」
「優秀な人材を育成する」
というのは、非常に困難です。

また、SNSなどの普及により、
「自分の生活よりも他人の生活の方がよく見える」
といった影響から、若い人の離職も増えていると言われています。

だからこそ、人材の問題はこれからも非常に大きなポイントになります。

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