LPWAとは?IoTに欠かせない通信技術の仕組みを解説

LPWAとは?IoTに欠かせない通信技術の仕組みを解説

2023年の時点で、世界には150億台ものIoT製品が存在します。

日常生活だけでなく、様々な産業で活用されているIoT製品は、少ない消費電力で広範囲の無線通信を実現する技術によって支えられています。

「LPWA」は、IoT製品の活用を可能にする無線通信技術として、登場から多くの企業・製品に採用されました。

「Low Power Wide Area Network」という名称の通り、現在の無線通信に不可欠な技術であるLPWAは、その活用によって様々な課題を解決しています。

この記事では、広域無線通信技術「LPWA」について、どのような技術なのか、注目される背景や具体的な規格、活用事例等と共に解説します。

LPWAとは

省エネで広域通信を実現するLPWAとは、どのような技術のなのでしょうか。

ここでは、LPWAの概要と、この技術が注目される背景を解説します。

少ない電力で広範囲の無線通信を実現する技術

LPWA(Low Power Wide Area Network)は、少ない消費電力で広域(数km~数十km)の無線通信を実現する通信技術です。

LPWAは通信技術の総称であり、LoRaやSIGFOXなど、複数の規格が存在します。

次世代の広域通信規格としては5G通信がまず挙げられますが、LPWAはIoTやM2M(Machine to Machine)により適した規格として知られています。

LPWAはまた、消費電力の少なさにより、4G通信等と比べて通信料が低いという特徴もあります。

LPWAが注目される背景

LPWAが注目される背景には、IoTの普及が挙げられます。

IoTは2023年現在、世界で150億台を超え、国内市場も2022年時点で5兆円を突破するなど、世界的に普及しています。

数十m~数百m程度の比較的狭い領域での通信には、以前より消費電力の少ない無線PANや無線LANが使用されていますが、IoTで要求される広域通信では、多くのエネルギーが必要となり、また通信精度の面でも課題を抱えていました。

そこで、従来の通信規格よりも低エネルギー・低コストで、広域の無線通信を実現する技術として、LPWAに大きな期待が寄せられています。

2022年には50億台ものIoT製品がLPWAに接続されるとされており、今後さらにIoT製品が広がる社会において、LPWAは不可欠な技術なのです。

LPWAの特徴

LPWAには、広域無線通信・低コスト・同時接続という大きな特徴があります。

それぞれのトピックについて、解説していきます。

広域・長距離の無線通信が可能

LPWAは名前の通り、接続環境などによってに左右されますが、数kmから数十kmの広範囲での無線通信が可能な技術です。

広域での無線通信が可能なため、工場や都市部だけでなく、山間部、農地などでのIoT制御を実現できます。

低コストで運用できる

LPWAは、低コストで運用できるという特徴があります。

スマートフォン等の通信に利用されている4G LTEや5Gでは、数百Mbpsから数Gbpsという膨大な通信量が発生しますが、IoTの制御に必要なデータサイズは250kbps程度と、遥かに小さいのが大きな特徴です。

さらに、LPWAでは通信頻度・通信速度を抑えることで、省エネルギーでの運用を実現しています。

稼働状況にもよりますが、LPWAモジュールは同じバッテリーで10年程度稼働できます。

また、IoTデバイス自体を改良することで、低価格での提供も可能です。

多くのデバイスを同時に接続できる

LPWAは4G LTEやWi-Fiなどと比べて通信速度が低い反面、多くのエンドデバイスを同時に接続させられるという特徴があります。

大手通信キャリアによる調査では、LPWAによって、同時に100台ものデバイスをインターネットに接続できることが報告されています。

なお、多量の同時接続が可能なのはLPWAのビットレートが他の通信規格よりも低いことが理由なため、通信速度を上げると、その分だけ同時に接続できるデバイス数は少なくなります。

LPWAの種類

LPWAは、使用する周波数帯域によって「セルラーLPWA」と「非セルラーLPWA」の2種類に分けられます。

それぞれについて、概要を簡単に解説していきます。

セルラーLPWA(ライセンスバンド)

「セルラーLPWA」は、使用に無線局免許が求められる周波数帯域を用いた通信規格で、大手通信事業者が提供しています。

具体的には、LTE帯域周波数(5MHz~15MHz)というものがあり、この帯域を使用して通信をおこなうのには、無線局による設置許可の取得が必要です。

日本国内で提供されるセルラーLPWAの規格としては、LTE-MとNB-IoTがあり、非セルラーLPWAよりも通信速度が速い反面、消費電力も大きくなります。

非セルラーLPWA(アンライセンスバンド)

セルラー系とは異なり、無線局免許が必要ない周波数帯域を使用するものを「非セルラーLPWA」と呼びます。

非セルラーLPWAの規格としてはSigfoxやLoRaWANが有名で、個人や企業が自由に使用できるのが特徴です。

非セルラーLPWAの帯域は920MHz~928MHzで、セルラー系と比べて消費電力は少なく済みますが、通信速度は低くなります。

IoTに活用される無線通信規格の種類

LPWA以外にも、IoTの通信に活用されている規格があります。

ここでは、代表的な通信規格を紹介します。

BLE

BLE(Bluetooth Low Energy)は、家電製品の接続にも使用される通信規格Bluetoothを、小型化、省エネルギー化した規格です。

LPWAと同じく、低コストでの運用が可能なため、IoTの通信に数多く採用されています。

BluetoothはPCやスマートフォン、ワイヤレスイヤフォンなど、身近な製品に普及しており、当初からIoTへの活用が進んでいます。

しかし当初のBluetoothは、通信範囲が数十mと狭く、ビットレートに対して消費エネルギーが大きいなど、IoT活用にはいくつかの問題がありました。

2009年に登場したBLEは数度のアップデートがなされ、こうした課題はある程度解決されました。

SmartHop

通信規格の中には、ベンダーが独自に開発したものも存在します。

中でも、SmartHopは国産の通信規格として、既に多くの企業が採用しています。

SmartHopの周波数帯域は920MHzであるため、運用に無線局免許が必要ありません。

ビットレートが低いため、通常のインターネット通信には向きませんが、IoT機器の制御には十分に対応できます。

SmartHopの特徴としては、低消費でありながら、広域での通信が可能で、都市部のように障害物の多い環境でも通信できるところにあります。

また、多数のデバイスと同時接続できるのもSmartHopの強みです。

RPMA

アメリカのエネルギー産業で普及が進む通信規格として、RPMA(Random Phase Multiple Access)が注目されています。

こちらは2012年リリースと、比較的新しい規格でもあります。

RPMAの周波数帯域は2.4GHzですが、障害物に強く、非常に広範囲での通信が可能であり、数万台との同時接続を実現できる高規格であるため、大規模な工場での活用が進められています。

日本での導入事例はまだまだ少ないですが、今後、規模の大きい産業ではメジャーな通信規格になるかもしれません。

LPWAの活用事例

最後に、LPWAの具体的な活用事例をいくつか紹介します。

簡易的な基地局として活用

広域無線通信には無線局免許が求められた時代は、都市部でのIoT普及が進む一方、山間部や都市から外れた地域では、広域通信のために有線LANを通す必要がありました。

そのため、山間部の農地や洋上でのIoT活用は、技術的・コスト的に現実的ではありません。

LPWAが登場したことによって、免許を取得することなしに、低コストで広域無線通信が可能になりました。

低コストで運用でき、複数のデバイスと同時接続できるLPWAを、簡易的な基地局として活用することで、これまでIoTの導入が難しかった環境でも、IoTによる作業やモニタリングが実現しました。

農作物の盗難被害防止

多くの農地において、農作物の盗難は大きな問題となっています。

しかし、広大な農地をリアルタイムで監視するには多くのコストがかかります。

そこで、多様な農作物の産地として知られる山梨市は、NTTと協力して、LPWAによるネットワーク基盤を構築し、人感センサーと連携しました。

これにより、農地の状況をリアルタイムで把握できるため、少ない人手で農作物を守ることが可能になります。

移動デバイスによる電子決済

スマートフォンやICカードを用いた電子決済には、専用のデバイスが必要です。

しかしイベントや移動販売など、屋外で決済デバイスを使用する際、通信状況の問題が発生します。

例えば、デバイスの通信にWi-Fiを使用している場合、電波がうまく届かず、決済が完了しないことが少なくありません。

また、4G LTEなどの強力な通信規格を用いると、膨大な通信料がかかってしまいます。

デバイスとネットワークの接続にLPWAを活用することで、少ないコストで十分な通信を確保することが可能です。

なお、電子決済にはある程度の通信量が発生するため、大手キャリアが提供するセルラーLPWAが活用されています。

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今回は、通信技術であるLPWAについて見てきました。

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「今の業務の中に、不要な業務が含まれていないか」
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