パレートの法則とは?意味とビジネスでの活用方法について解説
ビジネスをするにあたって、売上に大きく貢献してくれる顧客、疎遠な顧客など、その関係値は様々です。
また、組織においても、優秀な社員と優秀ではない社員では貢献度合いに大きな違いがあります。
このような環境下でビジネスを拡大するにあたっては、限られたリソースをどうやって活用するのかを考えなければなりません。
そこで役に立つのがパレートの法則です。
パレートの法則とは、ビジネスや社会現象において、少数の要因が大部分の結果を生み出すという法則です。
この法則を活用することができれば、効果的なリソース管理や戦略立案、最も価値のあるタスクや顧客への集中など、リソースの最適化を図ることが可能です。
本記事では、パレートの法則の基本原則について説明し、ビジネスでの具体的なアプローチ手法を解説します。
パレートの法則とは
パレートの法則とは、多くの現象において
「少数の要因が結果の大部分を生み出す」
という原則です。
一般的には、80%の結果が20%の原因によって生じるとされ、この法則は「80対20の法則」としても知られています。
具体的な例を挙げると、ビジネスにおいて、20%の顧客が全体の80%の売上を生み出す、または製品の20%が80%の利益を生む、などといった状況です。
この法則は、効率的なリソースの配分や問題解決において重要な気付きを提供することが期待できることから、ビジネス戦略やリソース管理の観点においてパレートの法則は広く応用されています。
262の法則とは
パレートの法則に類似したものとして、262の法則といわれるものがあります。
262の法則とは、あらゆる組織や集団はパフォーマンスの高い上位層2割、パフォーマンスが低い下位層2割、その真ん中に位置する中間層6割という割合で構成されるという考え方です。
仮に下位の2割を除いて仕事をしたとしても、元の8割の中から上位2割、中間6割、下位2割に分類されるといわれています。
パレートの法則と同様、戦略立案などに幅広く活用される定義です。
必ずしも80対20になるわけではない
ここで、1つ注意点があります。
このパレートの法則、一般的に「80対20の法則」などと呼ばれることから、この比率が常に一定であると勘違いしている人もいますが、厳密には「極端に偏る」という法則です。
そのため、企業によっては「90対10」や「70対30」などのように、その比率は変わります。
そのため、重要となってくるのは、
「より大きな影響を与えるものに対して、アプローチを集中させる必要がある」
という部分になります。
パレートの法則を活用するメリット
パレートの法則を活用することは、ビジネスにおいて多くのメリットをもたらします。
優先順位の選定
問題解決時において、パレートの法則はどの問題が最も影響を及ぼしているかを特定するのに役立ちます。
影響度合いの大きい課題を特定することで、優先順位を設定するなど、主要なタスクに集中して生産性を向上させることができます。
例えば、社員全体の中で
・優秀な2割の社員
・そうでない8割の社員
がいたとします。
通常は、優秀ではない8割の社員に対して教育や改善策を練るでしょう。
しかし、実際売上の8割を作っているのは、優秀な2割の社員であることを考えると、その優秀な社員が更に優秀になれば(もしくは優秀な社員が働きやすい環境を整えれば)、より効率的に売上を上げることができるかもしれません。
実際、同じ教育をするにしても、8割の社員に行うよりも2割の社員に行う方が、人数が少ない分、労力もかかりません。
この様に、戦略を考える上で非常に重要になってきます。
活動リソースの最適化
パレートの法則を理解することで、限られたリソースを最適に活用し、ビジネス戦略の競争力強化が可能です。
効果的なリソース配分によって、大部分の成果を最小の努力で達成したり、重要な要因に集中することで、効果的なマーケティング戦略や製品戦略を展開できます。
例えば、最初は男女とも全年代をターゲットにビジネスを展開していたとします。
その中で、売上の大部分を30代女性が担っている事が分かれば、その層にターゲットを絞って商品開発をする方が効果的でしょう。
そうすると、商品開発や宣伝費をそれだけ集中させることができ、より性能の高い商品開発やマーケティングが可能になると考えられます。
この様に、「限られたリソースで売上を出す」事が求められる現代社会では、リソースの最適化が重要になります。
パレートの法則はリソース管理、戦略立案、問題解決など、さまざまな側面で効果的に活用できるため、ビジネスや個人の成果を最大化するのに役立つとされています。
パレートの法則を活用するデメリット
パレートの法則にはメリットがある一方でデメリットもあります。
詳細なデータ分析が必要
パレートの法則を適用するには詳細なデータ分析が必要です。
十分なデータがない場合、法則が正確に適用できない可能性があるため注意が必要です。
例えば、30代女性が利用するようなアクセサリーが、自社の売上の8割を占めていたとします。
そこで、その層に絞ったマーケティングに費用を投じるとしましょう。
しかし、実際には30代女性向けの商品であるものの、購入するのは
「30代女性にプレゼントをする30代男性」
だった場合、マーケティングの方法がガラリと変わります。
この様に、間違ったデータの分析をしてしまうと、商品が売れないだけでなく、広告費用などの赤字が出る可能性があるのです。
過度な簡略化リスク
パレートの法則は複雑な現実を単純化したモデルです。
現実の状況は通常、もっと複雑で多様です。
パレートの法則を信用して過度に簡略化することで、実際の問題の本質を見落とす可能性があります。
パレートの法則はリソースの最適化や戦略の設計に役立ちますが、全ての状況に必ず当てはまるわけではないため注意が必要です。
適切に適用するためには、詳細なデータ分析と状況判断が求められます。
ITを活かしたパレートの法則の活用方法
パレートの法則では大量のデータをグルーピング化して分析することから、ITの活用が必要です。
ITを活かしたパレートの法則の活用方法を紹介します。
マーケティング
パレートの法則はマーケティングとの相性がいいです。
パレートの法則を適用して売上の大部分を生み出す顧客層に焦点を当てることで、ニーズを理解し、顧客満足度を向上させるための戦略を展開できます。
顧客層を分析してマーケティングキャンペーンやプロモーションを設計、戦略の最適化を図ることで、ニーズに合わせた提案をおこなうことが可能です。
特に最近は、「ネットで集客してネットで販売する」という事が簡単にできる時代です。
これらのツールやモールを活用して、データの集積・分析をすることが可能でしょう。
マーケティングオートメーション
マーケティングでのシステム活用として、「マーケティングオートメーション」も注目されています。
マーケティングオートメーションとは、顧客に適切なタイミングで適切なアプローチを自動的に行うためのシステムです。
これまでのマーケティングでは、新規顧客と既存客で送るメールを切り分けるだけでも大変でした。
しかし、IT技術が発達するに連れて、
・新規顧客用のメッセージを作る
・購入履歴に基づいたメッセージを送る
・購入頻度と購入時期に合わせたタイミングでメッセージを送る
・消耗品が前回購入時から、切れそうなタイミングでメッセージを送る
などを、自動で行えるようになってきたのです。
こういったマーケティングオートメーションを活用することで、パレートの法則における「優良顧客」に適切にアプローチをすることや、通常の顧客から優良顧客になってもらうためのプロセスを適切に組むことができるようになりました。
セグメント分析
パレートの法則を活用することで、製品やサービスの中で売上の大部分を占める商品カテゴリに注力が可能です。
製品やサービスの中で最も売れ筋が良く、かつ利益を上げているカテゴリを選別し、そこに集中することで製品ラインの最適化と資源の集中を図ることができます。
上位2割層へのアプローチ
パレートの法則で分類された層に対しては、それぞれにアプローチすべき方法が異なります。
ここでは上位2割層へのアプローチ手法について解説します。
個別対応とカスタマイズ
上位の顧客には個別の対応やカスタマイズされたサービスを提供することが重要です。
彼らのニーズや要望を把握し、それに合わせた製品やサービスを提供することで、顧客満足度を向上させることができます。
特別なプロモーションと特典
上位層の顧客に対しては、特別なプロモーションや割引、特典を提供することで信頼性を高めることができます。
会員限定のセールや特別なイベントへの招待など、独自の特典を提供することが効果的です。
継続的なコミュニケーション
定期的なニュースレターやメールマーケティング、SMSなどを活用して、上位顧客層とのコミュニケーションを図ります。
新製品情報や特別イベントのお知らせなどを通じて、彼らを常に関与させることが大切です。
優先的なサポート
上位顧客には優先的なカスタマーサポートを提供します。
迅速な対応や問題解決への迅速な対応をおこなうことで、顧客の信頼を築きます。
関連サービスの提案
既存の上位顧客に対して関連する製品やサービスを紹介することで、販売の促進を図ります。
また、彼らにグレードの高い商品やサービスを提案することで、売上の増加を図ります。
これらの手法は、パレートの法則に基づいて上位の顧客層に対して効果的なアプローチをおこなうための具体的な方法です。
各ビジネスは自身のニーズや顧客層に合わせて、これらの手法をカスタマイズして活用することが重要です。
下位8割層へのアプローチ
上位層だけでなく、下位80%の顧客層に対して効果的なアプローチをおこなうことは、ビジネスの成長と継続的な収益を確保する上で非常に重要です。
以下に、下位80%の顧客層に対してアプローチする際の手法をいくつか紹介します。
ニーズの理解とカスタマイズ
下位80%層のニーズを理解し、製品やサービスを彼らのニーズに合わせてカスタマイズを図ります。
市場調査やフィードバックの収集を通じて、顧客の要求を把握し、それに対応した提案をおこなうことを心掛けます。
特に、下位80%の層は売上こそ上位層よりも小さいものの、顧客数という意味合いでは非常に大きなマーケットとなります。
ということは、それらのニーズを満たす別の商品を作るなどで、新たな市場の開拓ができる可能性があるのです。
教育と情報提供
商品やサービスに関するコンテンツを継続的に提供することで、顧客のニーズに合った製品の選び方や最適な使い方を提案します。
最初は優良顧客でなかったとしても、長期的にな情報提供によって、徐々に信頼度が高まり、優良顧客になる可能性が十分にあります。
優れたカスタマーサービス
下位80%層にも丁寧かつ迅速なカスタマーサービスを提供します。
問題解決に迅速に対応したり、質問に詳細に答えることで顧客の満足度を向上させます。
これは、下位80%の層は企業の熱狂的なファンではないため、ちょっとした不満で離れてしまう可能性が高いからです。
熱狂的なファンほど、不満があればクレームに発展し、それが解決すればより企業への好意が増します。
一方で、熱狂的なファンとまではいかないこれらの顧客は、何も言わずに離れてしまうか、ネットで悪い評判を書くようなアクションへと繋がる可能性があり、将来的なブランディングにも関わってきます。
そのため、カスタマーサービスには力を入れる必要があります。
リピート購入の促進
購買履歴を元に、関連商品や再購入を促す特別なオファーやプロモーションを提供することでリピート購入を促進します。
リピート率を高めて顧客単価を上げることが重要です。
前述したように、売上こそ小さいものの、顧客数が多い下位80%の層は、少しでも顧客単価の平均が上がれば、大きな売上アップに繋がる可能性があります。
優良な上位顧客に対して、更に高価な商品を購入してもらうよりも、時には効果的に売上を上げられる可能性があるのです。
パレートの法則の注意点
パレートの法則は多くの場面で成り立つ法則ですが、適用する際にはいくつかの注意点を考慮しなければなりません。
以下に、パレートの法則を使用する際の注意点をいくつか紹介します。
データの信頼性
パレートの法則を適用するためには信頼性のあるデータが必須です。
正確なデータがない場合、法則が適用できない可能性があります。
コンテキストの理解
パレートの法則を理解する際には、状況やコンテキストを正しく把握することが重要です。
例えば、80対20の切り分け方を
・男女
・年代
・過去の購入回数
・住んでいる地域
など、分け方を変えれば見え方が変わってきます。
特定の業界や市場において、どの要因が重要であるかを理解する必要があります。
長期的な視点
パレートの法則は一時的な視点ではなく、長期的な視点で適用することが効果的です。
長期的なデータを分析し、持続可能な戦略を立てることが重要です。
過度な簡略化の回避
パレートの法則は複雑な現実を単純化したモデルです。
現実の状況は通常、もっと複雑で多様です。
法則を過度に簡略化することで、実際の問題の本質を見落とす可能性があります。
絶対的な法則ではない
パレートの法則は一般的な傾向を示すものであり、必ずしも全ての状況に当てはまるわけではありません。
個々の状況や業界によって異なるため、絶対的な法則として扱わないよう注意が必要です。
これらの注意点を考慮しながら、パレートの法則を適切に活用することで、ビジネス戦略やリソース管理の最適化に役立てることができます。
マーケティングのシステム化はAMELAに
今回は、パレートの法則について見てきました。
多くの企業では、まだまだマーケティングよりも営業マンを重視している様に見受けられます。
そのため、きちんとマーケティング戦略を練り、システム化をしている企業は、それだけで強いと言えるでしょう。
しかし、これまで営業マン頼りのビジネス拡大をしてきた企業にとって、いきなりマーケティングシステムを取り入れることは、抵抗もあるでしょう。
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