「24365」とは?ITシステム運用・保守について解説
スマートフォンが普及したことにより、ECサイトやWebサービスなどを用いて、業務時間外であっても売上を作れるビジネスモデルが多くの企業で実現可能となりました。
その反面、システムを24時間安定して稼働させる必要が生じ、多くの企業が対応に苦戦しています。
IT業界ではこのように、いつでも安定してシステムを稼働させることを、「24365運用」と呼び、さまざまな取り組みがなされています。
この記事では、「24365」がどのようなものなのかについて、そもそもシステム運用・保守とは何か、どのような工程があるのか、そして「24365運用」の問題点などを解説します。
「24365」とは
24365は、一般的にはITシステムの運用サービスとして利用されることが多い言葉です。
では、ITシステムの運用における「24365」とは、何を指すものなのでしょうか。
ここでは、そもそもシステム運用とは何か、運用と保守の違いと合わせて、「24365」について解説します。
そもそもシステム運用とは
そもそもシステム運用とは、単純にシステムを利用することではなく、
「システムを正常な状態に保ち、安定して稼働させる」
業務を指します。
ここでいうシステムには、ネットワークやサーバ、業務に使用するソフトウェアなどが含まれます。
ネットワーク機器は精密機械であるため、ある日いきなり故障することがあります。
また、システムを長時間稼働させていると、トラフィックなどが要因となってさまざまなトラブルが発生します。
システム運用に携わるエンジニアは、障害を未然に防ぐだけでなく、バックアップや代替案の用意など、被害を広げないための対策をしていきます。
システム運用は、トラブルが発生してシステムが正常に動作しないという事態を回避することを目的として、システムの監視をします。
システムの稼働については、運用と同じく重要な業務にシステムの保守がありますが、両者の違いについては後ほど解説します。
24時間365日、システムを安定させる
「24356」(あるいは「24/356」「24・356」)は
「24時間365日」
という意味で、業界ごとにさまざまな場面で使われます。
IT業界における「24365」とは、24時間365日、システムを安定的に稼働することを指します。
いつ発生するかわからないシステムトラブルを未然に防ぐ、あるいはトラブルをすぐに発見するためには、稼働状況を常に監視しておく必要があります。
一般的な業務システムは、業務時間だけ稼働していれば良いのですが、企業HPやECサイトなど、インターネット上のコンテンツは常に正しく動作しなければなりません。
(業務システムにおいても一部の機能は、夜間に処理を実行する必要性があります)
特にECサイトなど、一般ユーザー向けのコンテンツは、業務時間外の夜間に利用数が増えるため、万が一この時間帯にシステムがダウンすれば、大きな機会損失になる恐れがあります。
また、大規模な障害が発生すると、単なる機会損失だけでなく、企業の信用低下にも繋がります。
そのような事態を避けるため、企業は24365運用に取り組まなければなりません。
システムの「運用」と「保守」の違い
システムの「運用」と「保守」は、システム稼働の重要な要素ですが、両者はそれぞれ、携わる場面が異なります。
まず「運用」は、システムの正常な稼働を維持することが目的なのに対して、「保守」は運用にトラブルが発生した際に、システムを復旧させることが目的となります。
システム保守を担当するエンジニアは、障害発生時にトラブルシューティングをして、システムを復旧させ、同じトラブルが起こらないように、対策を立案します。
このようにシステム運用・保守は異なるものですが、同じエンジニアが兼任することが多く、エンジニアの中でも負担の大きい業務となります。
企業にもよりますが、24365という観点で見ると、保守担当よりも運用の担当者が業務に当たる可能性が高いです。
24365運用で実施すること
システムの24365運用を実現するためには、具体的にどのような業務が発生するのでしょうか。
ここでは、24365運用の主要な内容を解説します。
システム監視
システム障害がいつ発生するかの予測は難しいため、システムの稼働状況を常に監視している必要があります。
具体的には、ネットワークやサーバ、アプリケーションなどの動作をチェックします。
また、障害発生時には通知が出るようにして、トラブルをすぐに発見できるようにしなければなりません。
CPUやメモリなどの容量不足がシステムトラブルを発生させることもあるため、適切な監視リストを作成することが大切です。
障害対応
システムにトラブルが発生した際には、素早く対応する必要があります。
障害対応はシステム保守に含まれますが、24365運用における重要な業務です。
障害対応時の具体的な業務は、システムの性質や公開範囲、エンジニアチームによって異なりますが、事前に想定されるトラブルについては対策を練っておき、復旧が難しいと判断した場合は外部と連携します。
システムの復旧後には、同じトラブルが発生しないよう、原因調査から再発防止策を立てることも業務に含まれます。
特に、業務システムではデータの集計など、色々な処理を営業時間外の夜間に行う事があります。
これを、「夜間バッチ」などと呼んだりしますが、次の日の業務開始までに終了している必要性があるものです。
特に店舗を持つようなビジネスモデルの場合には、オープンまでに処理完了が絶対条件であり、夜間に発生した障害対応の速度が重視されます。
バックアップ業務
システムトラブルや改修時のミスなどによって、データが破損する事態が想定されます。
その際、システムを迅速に復旧できるよう、バックアップをとり、適切に管理することが重要です。
サーバやファイルに保存されたデータを複製しておくことで、万が一の場合にもスムーズに復旧できます。
また、小規模なものであれば、システムに関わるすべてのデータのバックアップを作成することもあります。
システム改修・改善
システムを安定して稼働させるためには、不具合を未然に発見して対処することが大切です。
24365運用に携わるエンジニアは、システムの状況分析を通して、設計の問題から、将来的にリソースが不足するといった問題点を発見し、システム運用の改善点を報告します。
このプロセスでは、トラブルを未然に防ぐだけでなく、システムのパフォーマンス向上のための提案もおこないます。
また、定期メンテナンスについても、この工程に含まれます。
24365運用の問題点
24時間365日、システムを安定して稼働させられるのは魅力的ですが、さまざまなデメリットも存在します。
ここでは、24365運用の問題点を解説します。
エンジニア不足
24365運用では、文字通りシステムを24時間監視する必要があります。
しかし、IT業界は深刻な人手不足が問題となっており、2030年には約80万人ものエンジニアが不足すると予測されています。
システム運用・保守にまつわるスキルを持つ人材を確保したり教育したりするのも難しく、そこに割く人的リソースが足りないのが現状です。
24365運用は、シフトの兼ね合いもあり、特に多くの人員を確保しなければならず、どのようにエンジニア不足を補うかが課題となっています。
また、多くの人にとって
・夜勤が発生する
・夜勤と日勤の両方がある
という状況は、心身ともに疲弊する可能性が高いです。
そのため、一般的な日勤に比べると人材が集まりにくいため、さらに人材不足が深刻となります。
膨大なコストがかかる
24365運用は、人的・金銭的に膨大なコストがかかります。
引継ぎの時間も考慮すると、一か月で約750時間の業務が発生し、一時間分の人件費を2,000円とした場合、システム運用だけで、一か月に150万円の人件費が必要となります。
また、深夜業務を含むため、深夜手当などの人件費が加わることも大きな問題です。
高いスキルを持つエンジニアはその分だけ給与が高くなるため、より多くの人件費がかかるでしょう。
一方で、夜勤の場合は何かしらの問題が起きた際に「基本的に一人(もしくは少人数)で対応できるスキルレベル」が必要になるため、給与の高い人材を入れざるを得ないのが実情でしょう。
さらにエンジニア確保・教育のコストも加わるため、24365運用の実施には、多大なコストを覚悟しなければなりません。
業務の属人化
システム運用・保守の業務は属人化しやすいと言われます。
24365運用はチームでおこないますが、チーム内のスキルに差があると、運用や障害対応がスムーズに進められないことがあります。
例えば、WEBサイトに繋がらないという状況では
・ネットワークが利用可能な状態か
・DNSサーバーの名前解決がきちんとできているか
・WEBサーバーはきちんと動いているか
・クライアント端末の問題がないか(セキュリティソフトやブラウザ関連)
・トラフィックが増えすぎていないか
など、様々な可能性が考えられます。
これらの「何をどの順で、どのような調べ方をするのか」を、全てマニュアル化することは難しく、どうしても人によって対応のレベルが異なってくるのです。
また、属人化が進むと、その人にしかできない業務が発生し、引継ぎが困難になってしまいます。
特に多くの時間とスキルを投入する24365運用は、業務の属人化をどう解消するかが大きな課題です。
マネジメントの問題
システム運用は、部分的には自動化が進んでいますが、まだまだ人力による24時間業務が必要です。
当たり前ですが、同じ人を24時間働かせるわけにはいかないので、シフト調整などのマネジメントが重要となります。
しかし慢性的な人手不足のため、エンジニアを確保することは難しく、さらに、特定の人員に多くのタスクを割り振ると、離職リスクも高まります。
このように、24365運用のマネジメントは多くの問題を抱えています。
24365運用は外注するべき?
24365運用を実現するため、システムの運用・保守を外注する企業も増えています。
ここでは、24365運用を外注すべきかどうか、メリット・デメリットを解説します。
外注するメリット
まず外注のメリットとしては、コスト削減・安定性の向上、マネジメントの心配がなくなるなどが挙げられます。
24365運用の外注を受ける企業は、専用の体制を持っており、高いスキルを持つエンジニアが多数所属しています。
そのため、自社で採用から教育、体制整備をするよりも、はるかに少ないコストでシステム運用が可能となります。
また、システム運用は「自社の社員にさせるには非効率的な仕事」という認識の企業は多いです。
誰にでもできる仕事は外注し、自分にしかできない仕事に注力する。
その上でも、24365の運用を外注することには大きなメリットがあります。
外注するデメリット
一方で、システム運用を外注することには、トラブル発生の認知が遅れる、責任の所在があいまいになるといったデメリットも存在します。
契約内容によりますが、システム運用に関するすべての業務を外注することは少なく、ある程度は自社で対応しなければならない業務が残ります。
外注先の企業からトラブル発生の報告を受けることになるため、自社で運用している場合よりも、トラブル対応に時間がかかります。
また、契約時に保守業務の内容を細かく決めていない場合、障害発生・対応にまつわる責任の所在が分からなくなってしまいます。
他にも、自社で人員を用意する場合に比べて、費用自体はどうしても高くなる傾向にあります。
メリットの部分で、コスト削減を挙げましたが、自社の社員で人員を配置する場合には、
「同じ人に複数の仕事を兼務させる」
ということが可能です。
そのため、システムが正常に動いている間は他の仕事をするなど、人件費の有効活用ができます。
一方で、外注する際には契約内容として業務範囲が明確に決められています。
安定してシステムが動いている間に、他の仕事を依頼する事は基本的にできません。
そのため、同じ人件費でも自社の社員を使うよりも効率が悪くなるケースもあるのです。
特に、ある程度自分で問題解決ができるレベルのスキルを持った人員を用意してもらうことになる場合には、1人月で100万円前後の費用がかかることもあります。
そうなると、単純計算で24時間勤務は8時間の3交代制と考えると、月に300万円+夜勤分の費用が発生する可能性が出てきます。
そのため、24365運用を外注する場合は、企業の選定から契約内容まで、十分に検討することが大切です。
IT運用の相談はAMELAに
今回は、24365について解説してきました。
24365のシステム運用は、大きな企業になればなるほど重要になります。
多くのシステムが動いている状況では、1つのシステムが止まることで他のシステムへの影響が多数発生し、業務がストップしてしまう危険性もあります。
その結果の被害額も大きくなるため、システム運用は慎重に設計する必要性があります。
現状、自社のシステムに対して
・24365運用がしたいけど、何をするべきかわからない
・システムの安定稼働をする上で必要な事がわからない
・今のシステム運用を効率的にしたい
・運用を外注するための準備が知りたい
という悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
AMELAでは、専任のITコンサルタントが御社の悩みを解決するための提案をさせていただきます。