「スループット」とは?IT・ネットワーク・生産管理での意味!計算方法まとめ。スループット会計についても解説

コンピューターの処理能力やネットワークの通信性能などを表す指標として
「スループット(throughput)」
というものがあります。

もともとはITの分野で使われていた指標ですが、現在では製造業や生産管理、さらには広くビジネスシーンでも用いられるようになりました。

近年では、スループットの概念を会計に応用した「スループット会計」というものも登場し、在庫管理や業務コスト削減の手法として注目されています。

スループットの意味は「時間当たりの処理能力」となりますが、実は分野や業界ごとに使い方が異なります。

そのため、用語としては知っているけれど、はっきりとは理解できていないという人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、スループットの意味と定義について見たうえで、各分野での使われ方について解説します。

加えて、製造業を中心に広がる「スループット会計」についても、原価計算との違いや注目される背景と合わせて見ていきましょう。

スループットとは

多くの分野で幅広く用いられるスループット。

ここでは、この用語について、一般的な意味と、IETFが定めるRFCにおける定義をそれぞれ解説します。

加えて、スループットと合わせて重要な用語である「レイテンシ」についても説明します。

スループットは単位時間当たりの処理能力

「スループット(throughput)」とは、単位時間当たりの処理能力を指します。

一定の時間内に、どれだけの仕事ができるかの尺度として、スループットはさまざまな分野で使われる用語です。

また、理論上の数値を
「理論スループット(theoretical throughput)」
実際に処理をおこなって測定した数値を
「実効スループット(effective throughput)」
と呼びます。

例えば、システムによって1秒間に、平均100件のデータ処理をできたとします。

この理論スループットは、1時間あたり36万件になるわけですが、実際に1時間システムを動かしていると
・他のアプリケーションにCPUやメモリが使用されている
・データが別システムから行ロックされている
・通信が一時的に切断されて、その時間データ処理ができなかった
などの影響により、実際には20万件程度の処理しか完了しない。

この場合、実効スループットは20万件ということになります。

スループットは、一般的にはIT用語として使用されることが多く、コンピューターの処理能力や、ネットワークのデータ転送能力を測る際に活用されています。

そのほか、製造業や生産管理でも、売上・在庫処理の効率を考えるためにスループットが用いられます。

近年では製造業を中心に、「スループット会計」と呼ばれる会計手法が広がり、IT業界以外でも目にする機会が増えました。

RFCにおけるスループットの定義

RFC(Request of Comments)とは、IETFというイギリスのNPO団体が定める指標の総称で、おもに通信プロトコルとファイル形式についてまとめられています。

このRFCによると、通信機器の性能は
「機器によって送信フレームが損失しない最大レート」
と定義されています。

送信フレームとは、通信回線を流れるデータのことで、最大レートがスループットに当たる用語です。

 RFCのスループット測定方法は、 あるレートでフレームを送信し、フレームが損失するのならばレートを下げる、損失しないのならばレートを上げる、という二分探索法を採用しています。

レイテンシ(遅延速度)について

処理速度や通信速度は、スループットのみでは決定できません。

そこで重要なのが
「レイテンシ(遅延速度)」
という指標です。

レイテンシとは、命令を出してから実際に処理が完了するまでに発生する遅延速度のことで、場合によってはスループットよりも大きな指標となります。

一般的なネットワークやコンピューターの通信・処理であればスループットで問題ないのですが、通話やビデオ中継のように、双方向で短い処理をおこなうものでは、レイテンシが支配的な指標となります。

計測対象や環境によって、スループットとレイテンシを使い分けることが、性能の把握において大切です。

分野ごとのスループットの意味と計算方法

スループットは、分野ごとに意味と計算方法が異なります。

ここでは、スループットがよく用いられる分野である「データ処理」「ネットワーク」「製造業」の3分野での使われ方を解説します。

データ処理におけるスループット

データ処理におけるスループットは、コンピューターが単位時間あたりにどれだけの命令を処理できるかを表します。

コンピューターの処理能力は、CPUやメモリー、ストレージ、与える処理の内容など、さまざまな要素が複雑に絡み合うため、ひとつの指標だけで性能を測ることはできません。

そのため、目的ごとにさまざまなテスト手法があり、多面的に調べていく必要があります。

実際、データ処理でのスループットは、各業界ごとに団体がテスト用ツール(ベンチマークプログラムと呼びます)を用いて、コンピューターが処理できた回数を記録して、相対的な指標として使用されています。

ネットワークにおけるスループット

ネットワークにおけるスループットは、単位時間当たりに可能なデータ転送量を指します。

無線LANなどのネットワーク機器に「スループット:248Mbps」のような記載がありますが、これはその機器の理論スループット(理論上のデータ転送量)を表しています。

この「bps」という単位は「1秒あたりに転送できる情報量」のことで、スループット速度とも呼ばれます。

つまり「スループット:248Mbps」 と書かれている機器は、理論上、1秒間に284Mビットのデータを転送できる性能を持っていることがわかります。

bpsの測定方法としては、複数の異なるトラフィックを転送させ、それぞれの場合に発生した負荷を比較するものが有名です。

また現在では、スマートフォンなどから簡易的にbpsを計測するWebサービスも登場しています。

ネットワークはいくつもの機器をつないで成り立っているため、機器それぞれのスループット速度に差があると、そこがボトルネックとなって全体の通信速度を低下させてしまいます。

また、回線の混雑度合いや帯域制限、サーバーの状況などで測定値が大きく変化するため、ネットワークのスループットを計測する際には、さまざまな要因を想定しなければなりません。

製造業・生産管理におけるスループット

スループットはIT分野だけではなく、製造業でも処理能力の指標として活用されています。

製造業におけるスループットは「売上高と製造・販売コストの差額」を意味します。

製造業におけるスループットは、大量生産による薄利多売を避け、いかに製造・販売コストを抑えて事業を進められるかという目的のために用いられます。

なお、一般的に採用されるTOCにおいては、製造・販売コストと原価は分けられており、減価償却費や光熱費などは含まれません。

製造業におけるスループットをビジネス全般に応用したのが、後ほど解説する「スループット会計」といえます。

また、生産管理におけるスループットは
「在庫数を生産にかかる時間で割った数値」
を指します。

例えば、300個の在庫を製造するのに6日かかる場合、スループットは50個となります。

ちなみに、製造に必要な材料が納入されてから製造を完了するまでの時間を「スループットタイム」と呼びます。

スループット会計とは

近年、ビジネスシーンに「スループット会計」という手法が広がっています。

まだまだ新しい手法であるため、馴染みのない人も多いでしょう。

ここでは、スループット会計の内容と注目される背景、活用方法について解説します。

管理会計手法のひとつ

スループット会計は管理会計手法のひとつで、製造業を中心に、さまざまな分野で採用されています。

在庫と業務コストにスループットの指標を加えることで、利益最大化のための方針決定をおこないやすくするのが特徴です。

スループット会計におけるスループットは
「売上と直接材料費の差」
で、ここに在庫と業務コストの要素を加えることで、製造効率を上げ、在庫を抱えず、業務コストを削減することに活かします。

スループット会計は、記録が主な目的であった会計に、経営の要素を付け加えたところが特徴です。

製造手法の変更や設備の購入を検討するときに、満足できるスループットを得られるかという視点を持ち込むことで、よりよい選択を実現します。

原価計算との違い

原価計算とスループット会計の違いは、着目する要素にあります。

原価計算が生産をポイントとして利益を算出するのに対して、スループット会計は販売利益とコストに着目した収益を考えます。

スループット会計では、原価計算では扱われない在庫が大きな要素となり、在庫を抱えるほどスループットが低下し、収益も下がります。

また原価計算では業務コストを直接・間接に分けて計算しますが、スループット会計ではこれらの区別をしません。

スループット会計が注目される背景

ビジネスシーンでスループット会計が注目されるようになった主な理由としては、経営実態の把握とキャッシュフローへの関心の高まりが挙げられます。

これまでの会計手法では不良在庫の存在をうまく扱うことができず、会計と経営実態の差が問題でした。

この問題意識には売り手市場から買い手市場への変遷があり、それによって多くの企業には、大量生産ではなく利益最大化が求められるようになりました。

そこでスループット会計を活用することで、不良在庫の影響を明らかにし、現状の把握が可能になりました。

次にキャッシュフローについてですが、ビジネスシーンの移り変わりが激しい現代において、キャッシュフローの改善は企業にとって重要な課題です。

タイミングを逃して不利益を被る機会が以前よりもずっと増えたことで、純粋な損益よりもキャッシュフローへの関心が高まっています。

在庫や業務コストなどを重視するスループット会計は、こうした理由から注目を集めています。

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今回は、色々な業界で利用される「スループット」という単語について解説してきました。

このスループットがあらゆる業界で利用される事になっている背景は、
「生産性を上げることが急務である」
と、多くの企業が認識しているからです。

実態を正確に把握し、速度を測定し、その速度を向上させることで、同じ時間でより多くの商品やサービスを作り上げることが重要とされています。

これは、あらゆる企業に必要な考え方であり、今後も重要視されることと思います。

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