近年JIS化されたファシリティマネジメントとは?ITとの関連や先進事例も解説

ファシリティマネジメントという言葉を聞いたことがありますか。

簡単に説明すると、
「企業や団体等が施設とその環境を、総合的に企画・管理・活用する経営活動」
のことです。

50年ほど前に米国で提唱されたものですが、国内では近年になるまで注目されておらず、注目を集めるようになったのは10年ほど前からです。

今では、国際規格になりJIS化されました。

今回は、このファシリティマネジメントについてと、ITとの関連について説明していきます。

ファシリティマネジメントとは

冒頭でも触れましたが、ファシリティマネジメント(Facility Management)とは、
「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画・管理・活用する経営活動」
のことです。

対象には固定資産としての施設だけでなく、それによって作られる職場環境も含まれます。

多くの民間企業では、投資家から募った資金を人・モノ・情報などの経営資源に投資し、資産価値を高めて収益を上げる経営活動を行っています。

モノの具体例として、工場などの生産施設やホテル・病院・貸しビル、商業施設などのほか、設備などを挙げることができます。

また、国や地方自治体の場合には道路や橋、学校・公民館などの公共施設が該当し、公益に資するために税金が使われています。

米国生まれの経営活動で100カ国以上に普及している国際規格

ファシリティマネジメントは景気低迷に悩む1970年代後半に米国で生まれました。

オフィス家具メーカーが、大学教授の協力を得てファシリティを有効活用するための研究所を設立したのが始まりです。

この研究所が発展して国際ファシリティマネジメント協会(IFMA)になり、ファシリティマネジャーの職能確立とファシリティマネジメントの普及・認知のため活動を行っています。

この組織は、今では104カ国、会員数24000人を抱える規模になっています。

2018年4月23日には、ファシリティマネジメントの国際規格ISO41001が発行されました。

日本への導入は1980年代半ば

日本にファシリティマネジメントの概念が導入されたのは1980年代半ばです。

1987年にファシリティマネジメントの普及・定着・発展とファシリティマネジャー育成を推進する目的で、当時の建設省と通産省の協力の下に
「日本ファシリティマネジメント協会(Japan Facility Management Association、略称JFMA)」
が設立されました。

JFMAはファシリティマネジメント特化の日本唯一の公的機関で、現在は法人会員約200社を有する公益社団法人になっています。

現在、JFMAは
・ファシリティマネジメントに関する様々な分野の調査研究を行う研究部会の運営
・認定ファシリティマネジャー資格制度の実施
・日本ファシリティマネジメント大会(JFMAフォーラム)の開催
・表彰制度「日本ファシリティマネジメント大賞」の運営
・ファシリティマネジメント関連出版物や書籍の編集・出版
などを行っています。

日本で積極的にファシリティマネジメントに取り組むようになったのは近年

バブル崩壊以前は、日本では建物を長期にわたって使用するという考え方は、一般的ではありませんでした。

「スクラップ&ビルド」という風潮が主流で、老朽化した建物を壊しては新しいものに建て替えていたのです。

このような風潮の背景として、地震や台風などの災害が多く、高度成長期で不動産価格も上がり続けたため、簡単に建設のための資金調達が出来たからとされています。

しかし、バブルは崩壊し、東日本大震災を経験した後では状況が大きく変わりました。

2013年6月14日に政府が閣議決定した骨太の方針
「経済財政運営と変革の基本方針」
の中に公共インフラ(道路、橋梁、上下水道)などを対象にしたファシリティマネジメント的な内容の言及がありました。

ファシリティマネジメントのJIS化

このような政府や民間への導入機運の高まりを受け、ファシリティマネジメントを評価・測定する共通基盤による便益強化を目指して、規格化が進みました。

この結果、2021年8月20日にはファシリティマネジメントのJIS規格「JIS Q 41001」が制定されました。

JIS Q 41001はISOのファシリティマネジメント規格「ISO 41001」と同じ内容のグローバル規格で、
「組織でファシリティマネジメント活動を効果的かつ効率的に実践するにはどのようにしたらよいか」
を示すものです。

組織がJIS Q 41001を取得することで、組織としてのファシリティマネジメント実践力が保証されます。

ファシリティマネジメントを実践することで、企業力・組織力の向上が可能となり、国際競争力の強化にもつながります。

現在では、個人のファシリティマネジメント能力を証明する「認定ファシリティマネジャー資格」もあります。

ファシリティマネジメントの特徴

以上が、歴史的な流れです。

ここからは、具体的にファシリティマネジメントの特徴をまとめていきます。

従来の施設管理との違い

ファシリティマネジメントには、「施設とその環境を・・・」とありますが、従来の施設管理と比較すると、下記のような点で異なります。

1.管理の視点:全固定資産(施設管理は問題施設)
2.活動の目的:運営の最適化や改革(施設管理は維持保全)
3.管理の性格:組織戦略的(施設管理は現場管理)
4.対象時点:ライフサイクルや将来の在り方も対象(施設管理は保有資産の現状を対象)

このために必要な知識や技術のみならず、担当する組織体制も異なります。

5.関連知識・技術:建築・不動産以外に経営・財務・心理・情報・環境なども必要(施設管理では建築・不動産関係に限定)
6.担当組織:部門横断的(施設管理は総務や施設などの単一組織)

全体を通して、過去の施設管理では、範囲が限定的且つ、現状維持が基本となっています。

一方で、ファシリティマネジメントは、単に所有や維持をするだけではなく、それを経営において最適化することが重要視されます。

ファシリティマネジメントの必要性

このような特性を持つファシリティマネジメントがなぜ必要なのか。

最も大きな理由は
「施設関係費は固定費で、人件費に次いで極めて高額」
だからです。

小規模なものでも数億〜数十億、大規模施設の場合には一千億超に達することもあり、日本の企業や組織の多くは景気に関係なく生ずる多額の固定費に苦しんでいます。

2つ目は、
「景気後退期には、資産が浮いてしまう」
点です。

バブル期に急増した施設の中には、多額のコストがかかるものの、余り利用されていないものが多く存在しています。

3つ目は、
「施設依存の事業であるのに経営の視点が欠如している」
ものが多いことです。

病院や学校、公共・公益事業などの施設は「箱物行政」と言われており、不合理・不経済・不適切なものが多く、経営を圧迫しているものが多いのです。

4つ目は、
「省エネルギーや環境問題から改善すべき施設が極めて多い」
という点です。

これらの理由から、ファシリティマネジメントは、重要視されています。

ファシリティマネジメントの効果

ファシリティマネジメントを導入することで、次のような効果が期待できます。

1.経営視点で施設を最適化できる
2.経営の効率化向上とコスト削減ができる
3.顧客・従業員その他の施設利用者にとって快適・魅力的な施設が作れる
4.省エネルギーを実現し、環境問題解決への取り組みができる

ITにおけるファシリティマネジメント事例

ここではファシリティマネジメントの先進事例としてIBMが提唱する
「施設管理」
について紹介します。

IBMでは、施設管理を
「建物・敷地・インフラストラクチャ・不動産の機能性・安全性・持続可能性をサポートするツールおよびサービス」
と定義し、
「施設管理テクノロジー」
によるソリューションを提供しています。

IBM提唱の「施設管理」とは

IBM提唱の「施設管理」はハード・ファシリティマネジメントとソフト・ファシリティマネジメントで構成されます。

1.ハード・ファシリティマネジメント:配管、配線、エレベータ、冷暖房などの物理的資産を管理
2.ソフト・ファシリティマネジメント:管理業務、リース管理、ケータリング、セキュリティ、用地管理などの人手によるタスクを管理

具体的な施設管理の例としては、

・リース事務管理と会計を含むリース・マネジメント
・資本プロジェクトの計画と管理
・メンテナンスと運用
・エネルギー管理
・占有率とスペースの管理
・従業員と入居者体験
・緊急事態管理と事業継続性
・不動産管理

などが挙げられます。

施設管理テクノロジー

このテクノロジーは、施設の状況をリアルタイムで把握でき、施設の予測メンテナンスを可能とし、より生産的で費用対効果の高い施設管理を可能にするものです。

テクノロジーはソフトウェアとシステムの両方で構成され、次のような機能を提供します。

施設データの収集:IOTセンサー、Wi-Fi、メーター、スマートデバイスなどを利用
データの活用:分析や人工知能、統合型職場管理システムを利用

施設管理テクノロジーの効果

施設管理テクノロジーによって、様々な効果が期待できます。

例えば、利用スペースを効率的に使うことにより、これまでに比べて、狭い面積で仕事が可能になります。

不動産に関するコストは、人件費に次いで高いため、大きなメリットでしょう。

次に、テクノロジーの導入によって、管理にかかる無駄な業務が減り、業務効率化だけではなく労働環境改善による離職率の低下も期待できます。

他にも、CO2や光熱費の削減によるコストの減少も期待できるでしょう。

管理システムの導入はAMELAに

今回は、ファシリティマネジメントについて見てきました。

企業において、自社の資産管理は非常に重要です。

また、単なる管理ではなく「最適化」による大幅なコスト削減が期待できることからも、専用のツールを導入する企業は多いです。

AMELAでは、そういった管理システムの導入や、仕組み化のお手伝い、そしてオフショア開発を用いた専用ツールの開発など、多くのサポートが可能です。

是非、今の業務の問題点をご相談ください。