タレントマネジメントとは?実施する目的やメリット、事例などを解説
少子高齢化による人材不足や、働き方改革、さらにはテレワークの推進など、これまでの働き方は大きく変化してきています。
このような状況に対応するため、多くの企業がさまざまな対策を立てています。
このような企業では特に、人事部門やマネジメント部門が重要な働きをします。
その中で注目されているのが
「タレントマネジメント」
という手法です。
IT技術の発展によって普及が進む、まだまだ新しいマネジメント手法のため、あまり聞きなれないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「タレントマネジメント」について、どのような手法なのか、何を目的として実施されるのかといったことを解説していきます。
あわせて、この手法の採用によるメリットとデメリットについてもみていきましょう。
タレントマネジメントとは
HRM(人材労務管理)などのこれまでの人材マネジメントに代わる、新たなマネジメント手法として注目される「タレントマネジメント」。
人材マネジメントにはさまざまな方法がありますが、これまでのやり方とこの新たな手法とでは、なにが違うのでしょうか。
ここでは、タレントマネジメントがどのような手法・考え方なのかを解説していきます。
新たな人材マネジメント手法
タレントマネジメント(「TM」と表記することもあります)は、人材マネジメントの手法・考え方のひとつです。
なにか特定のプロセスやシチュエーションで使われるものではなく、人事領域のすべてに採用される手法です。
この手法が注目される以前から実践する企業はありましたが、本格的に研究されるようになったのは2000年前後からです。
タレントマネジメントにおいて、従業員(人材)のもつさまざまなスキルを、『企業の資本』としてとらえます。
それを踏まえて、企業のニーズを満たす、現状の課題を解決する、将来的な成長へつなげるために実践されます。
注意しなければならないのは、あくまで人事手法であって、特定の目的のためにおこなわれるものではないということです。
そのため、この手法の実践内容は、そのケースごとにそれぞれ異なります。
元々、タレントマネジメントは優秀な人材に対してのみ実施されるものでしたが、現在はIT技術の発展により、高度なビジネス向けシステムが数多く登場したことによって、企業の人員全体が、その対象となっています。
「タレント」とは?
タレントマネジメントにおける「タレント」とは、その人材が持つ「能力・経験・スキル」のことを意味します。
また、才能やスキル単体ではなく、それらを持つ人材自身を指して「タレント」と呼ぶ場合もあります。
タレントマネジメントが注目される背景
この手法についての代表的な書籍が発表されたのは2001年です。
つまり、こうした考え方は、けっして真新しいものではありません。
では、なぜ近年になって、この手法が注目されているのでしょうか。
その背景として、人材不足・働き方改革・ITの発展の3つのトピックから、簡単に解説していきます。
少子高齢化による人材不足
少子高齢化による労働人口の減少によって、全国的な人材不足が問題となっています。
この傾向は今後も続くことが予想されており、例えばIT業界では、2030年までに70万人の人材が不足するとされています。
政府主導で外国人労働者の受け入れを進めていますが、問題解決には遠く、少子化による人材不足は深刻さを増しています。
そうした現状から、これまでのように「人手を増やす」やり方では企業活動が難しく、「少ない人手で成果を出す」という方向にシフトする必要があります。
そこで、人材のスキルに着目したマネジメント手法を導入する企業が増えているのです。
同じ人材でも、持っている能力や才能は様々です。
単純作業が得意な人もいれば、アイデアを出すのが得意な人もいます。
これらの人を、自分の才能とは逆の人事配置にしてしまうだけで、生産性は大幅にダウンします。
反対に言うと
「適切な人材を適切な場所に配置するだけで、同じ人材でも大きな生産性が期待できる」
と考えられます。
だからこそ、人口減少の日本において、このタレントマネジメントという考え方が注目されているのです。
「新しい働き方」への対応
近年、政府が推進している「働き方改革」に対応するために、この手法を採用する企業が増えています。
なかでも特に、企業による労働時間の短縮が大きな課題でしょう。
そのためには、1人当りの生産性を向上させる必要があります。
働き方改革へ対応し、時間当たりの生産性を向上させるという目的のために採用する事例が多いです。
IT技術の発達
タレントマネジメントを採用する企業が増えた背景には、ここ20年でのIT技術の発達もあります。
これまでも、人材のスキルを中心に考えた人事は、さまざまな場面で行われてきました。
しかし、スキルや経験などは数値化が難しく、担当者の主観的な評価に頼っていました。
マネジメントを担当する範囲が広がると、もはや人の手では適切な人員配置が不可能でした。
IT技術が発達したことで、抽象的な対象を多角的に評価することが可能になり、また、複雑な人員配置も、システムがほぼ自動で行うようになりました。
現在は、「タレントマネジメントシステム」という専用のシステム・サービスが登場しているため、こうした手法の人事への導入のハードルは、以前よりもずっと低くなりました。
例えば、入社試験の時に行うようなテスト。
これをデータとして分析すると、
・1人で作業をするのに向いているのか
・リーダーシップはあるのか
・ストレス耐性が高いか
・単純作業は得意か
・知識欲が高いか
・コミュニケーション能力は高いか
など、様々な指標を保管できます。
結果として、
「〇〇というタイプの人は、△△というタイプと組み合わせるとより高い生産性を発揮する」
というような、統計的なデータを元にチーム編成を行うことも可能になります。
こういった専用システムの普及から、タレントマネジメントへの注目が増しているのです。
タレントマネジメントを実施する目的
タレントマネジメントは、「こうしたらやったことになる」というものではなく、あくまで問題解決、目標達成のために実施されるものです。
それならば、具体的にどのような目的を達成するために採用され、実践されているのでしょうか。
タレントマネジメントの前提
タレントマネジメントを実施する上で前提となる目標、ゴールは
「企業の成長」
です。
そして、1番の目的は、企業利益の拡大や企業活動の活発化です。
以下で解説する「人材の確保・育成・定着・配置」は、この手法を取り入れて実践していく中での、具体的な小目標であって、ゴールはあくまで「企業の成長」です。
これを念頭に置かなければ、手段と目的が逆転してしまうため、注意が必要です。
人材の確保
現状を改善するために、あるいは、企業活動の発展のためにどのようなタレント(人材・スキル)が必要なのかを分析し、それを確保することが、タレントマネジメントの目的の1つです。
タレントを獲得する方法は求人採用だけではなく、これまであまり注目されていなかった、社内で埋もれている人材を、あらためて評価することも重要です。
求人採用についても、これまでのような一括採用ではなく、必要なスキルをもった人材を素早く獲得して配置する方向へシフトすることになります。
人材の育成と定着
いまある人材が持つスキルと、現状分析から必要と分かったスキルとのギャップを埋めていくのも、この手法を実践することの目的です。
ここでは、人材育成のために、必要な職務経験や教育を実施していきます。
いわゆる「ストレッチアサインメント(修羅場体験)」は、この手法の実践においてでよく採用される研修方法です。
そうして育成した人材が、長期間、企業で活動してもらうことも、タレントマネジメントの目的です。
モチベーションやキャリアなどへの関心を、人事の側からも与えていくといった方法があります。
「適材適所」の実現
人材のもつスキルを評価して、適切な人員配置を実現させるのは、タレントマネジメントの大きな目標です。
この手法における「適材適所」とは、その人材のもつスキルを最大限発揮でき、なおかつ負担の少ないポジションに配置することを指します。
これまでは、配置の根拠となるデータをとることも、多数の人員を適切に配置していくことも困難でした。
しかし、現在は高度なマネジメントシステムの登場によって、有用なデータベースを構築がこれまでよりも容易になり、また、複雑な条件を満たした配置も、システム側で処理してもらえるようになりました。
個々の仕事の価値観や温度感に応じた人事
近年は、仕事に関する価値観も多様化してきています。
若い人たちの中には、
「会社での出世はデメリットしか無い」
と考える人も増えています。
一方で、起業やフリーランスを希望する人も多くいます。
こういった社会の中では、自分の仕事に対する価値観とマッチした人材配置でなければ、離職率が上がってしまう可能性があります。
特に最近は、SNSによって多様な価値観を目にする機会が増えました。
昔のように、画一的な社内外の研修を行っても、響かない若い人も多いはずです。
システムにより、膨大なデータを分析できるタレントマネジメントシステムだからこそ、今後はこういった価値観にもフォーカスしていくと考えられます。
タレントマネジメントのメリット・デメリット
ここであらためて、タレントマネジメントを実施することによるメリットをまとめてみましょう。
また、さまざまなメリットがある反面、この手法には、いくつかのデメリットも存在します。
メリット
タレントマネジメントのメリットは、適材適所の人員配置による、企業利益の向上です。
人材不足が深刻になる現在では、今いる人員で、最大限の結果を出せるようにマネジメントしていくことが不可欠です。
タレントマネジメントによって、人材のスキルを適切に評価し、それに沿ったポジションを与えることで、その人材の能力を最大限発揮させることができます。
また、スキル評価の過程で、これまでは埋もれていた人材を発見することになりますし、能力を発揮できる場所で活動することで、モチベーションの維持やキャリア意識の形成にもつながります。
これらの要素が、企業の成長に結びつくのです。
デメリット
タレントマネジメントを採用することで生じがちなデメリットには、データ構築のコストが高いことや、それによる人事への負担の増大などがあります。
この手法においてはまず、正しいデータが集まっていることが大前提となります。
前提となるデータの有用性が低いと、人員配置もうまくいきません。
現在はタレントマネジメントシステムによって、データベース構築のコストは、ある程度おさえられていますが、それでも、評価項目の多さや作成にかかる期間などを考えると、やはりコストの高い手法であると言わざるを得ません。
さらに、この手法は多くの場合、本当に企業の成長に結びつくのかをイメージしにくいため、目標設定が難しく、結果として手段と目的の逆転が起きやすいというデメリットもあります。
タレントマネジメントを採用するのであれば、事前準備に時間をかけたうえで、長期的な視点を持つ必要があります。
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今回は、タレントマネジメントについてお話してきました。
人材配置によって、企業の業績は大きく変わる可能性があります。
また、離職率などの改善にも注目されているタレントマネジメントシステムですが、こういった仕組みを導入するにあたっては、
「現在の他のシステムとの連携」
を考えることも重要です。
例えば、タレントマネジメントシステムの情報は、部門情報や人事情報と連携しておくことで、毎年の人事異動による業務負荷が減ります。
これらをシステムで自動的に連動させる事も、よくある開発案件です。
もしも現在、色々なシステムを導入し、管理がバラバラになっていると感じるようであれば、是非AMELAにご相談下さい。
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