SDGsの意味は?DXとの関係性は?政府や民間での取り組みの違いは?事例も紹介
SDGsはよく耳にする言葉ですが、その正確な意味や推進状況を知っていますか。
SDGsは「持続可能な開発目標」と訳される・・・という程度は分かっている読者も多いでしょう。
持続的な開発目標を追求する中で、皆様お馴染みのDXが役立つ分野が多々あります。
逆に、DXを推進した結果、持続的な開発目標の達成に貢献する効果が生まれる事例も多々あるのです。
今回は、SDGsについて、意味やDXとの関係性に焦点を当て、政府および民間での取り組みの違いについても解説し、それらの事例も紹介します。
SDGsとは
SDGsは「持続可能な開発目標」と訳され、最終目標「持続可能な社会の実現」を目指す取り組みを指します。
国連サミット:「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択
2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に、SDGsに関する以下の17の目標が設定されています。
目標1:貧困の撲滅
目標2:飢餓撲滅、食料安全保障
目標3:健康・福祉
目標4:万人への質の高い教育・生涯学習
目標5:ジェンダー平等
目標6:水・衛生の利用可能性
目標7:エネルギーへのアクセス
目標8:包括的で持続可能な経済成長、雇用
目標9:強靭なインフラ、工業化・イノベーション
目標10:国内と国家間の不平等の是正
目標11:持続可能な都市
目標12:持続可能な消費と生産
目標13:気候変動への対処
目標14:海洋と海洋資源の保全・持続可能な利用
目標15:陸域生態系、森林管理、砂漠化への対処、生物多様化
目標16:平和で包括的な社会の促進
目標17:実現手段の強化と持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップの活用
日本政府:「SDGsアクションプラン2022」を決定
2021年12月に政府のSDGs推進本部が「SDGsアクションプラン2022」を決定し、その中で「Pで始まる5つの分野」に重点を置き、推進することとしています。
最初のPはPeople(人間)で、「感染症対策と未来の基盤づくり」を目指した次の2つの項目です。
重点項目1:あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
重点項目2:健康・長寿の達成
第2のPはProsperity(繁栄)で、「成長と分配の好循」を目指した次の1項目です。
重点項目3:成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
第3のPはPlanet(地球)で、「地球の未来への貢献」を目指した次の3項目です。
重点項目4:持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
重点項目5:省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
重点項目6:生物多様性、森林、海洋等の環境保全
第4のPはPeace(平和)で、「普遍的価値の遵守」を目指した次の1項目です。
重点項目7:平和と安全・安心社会の実現
第5のPはPartnershipで、「絆の力を呼び起こす」を目指した次の1項目です。
重点項目8:SDGs実施推進の体制と手段
重点項目8に関連して、政府のSDGs推進本部の下に関係府省庁が一体となって、市民社会や有識者、民間企業、国際機関等あらゆる分野の関係者と連携して推進することを表明しています。
なお、読者の皆様が関係するITや情報関連の重点項目としては、以下のものがあります。
重点項目1では、
「教育のICT化」
「GIGAスクール構想」
「女性デジタル人材の育成」
です。
重点項目3では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します。
SDGsとDXの関係
SDGsと同様、政府が現在推進している取り組みにDXがありますが、両者は全く無関係なものでしょうか。
SDGsとDXには接点がある
SDGsは「持続可能な社会の実現」を目指すもので、DXは「デジタルの力でビジネス世界の変革」を目指すものです。
このため、両者には接点が無いように見られがちですが、DXを広義に解釈すれば、
「デジタルの力で現実世界(視野を広げて、ビジネスをはじめ様々な課題を抱えている世界)に変革」
をもたらすものと見ることができます。
両者の目指す方向は同じで、DXには推進力が期待される
SDGsの目指す社会は、
「地球環境を守りながら、経済的に成長し、雇用に恵まれ、誰でも楽しく暮らせる循環型社会」
です。
経済産業省はDXを企業のビジネス環境の観点で定義していますが、歴史を紐解けば、エリック・ストルターマン教授の提唱する
「人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させ、生活がより豊かになるもの」
という概念がDXの起源とされています。
このように、DXは経済以外に社会や環境面も含めて考えても良いと考えられますから、SDGsとDXは目指す方向は同じと言えるでしょう。
具体的に、SDGsの重点分野「成長と分配の好循環」および「地球の未来への貢献」に関わる様々な課題を解決して推進するDXの能力への期待が大きいです。
政府主導のSDGs:Prosperity分野の取り組みの鍵はDX
前章で紹介した
「SDGsアクションプラン2022」
のProsperityの分野では、「成長と分配の好循環」を目指すもので、
「成長市場の創出」
「地域活性化」
「科学技術イノベーション」
に向けた取り組みを加速することが宣言されています。
具体的には、「成長と分配の好循環」の起爆剤として、DXやグリーン分野の成長を含めた科学技術立国を推進するとしています。
DXには「地域が抱える人口減少・高齢化・産業空洞化などの社会課題をデジタルの力を活用することによって解決する」ことが期待されています。
具体的には、民間企業も巻き込んだ「Society5.0」と「デジタル田園都市国家構想」が掲げられています。
Society5.0とは
内閣府が公開しているSociety5.0の定義は
「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」
としています。
これまでの社会はSociety4.0(情報社会)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分でした。
また、次のような社会構造の変化もSociety5.0の重要性の高さを感じさせます。
・我が国および世界を取り巻く環境は大きな変革期にあり、経済発展が進む一方で解決すべき社会的課題も深刻さを増していること
・経済発展により、エネルギーや食糧の需要増加、寿命延伸・高齢化、国際的な競争力激化、富の集中や地域間の不平等が進んでいること
・解決すべき社会的課題として、温室効果ガス排出削減、食料の増産やロスの削減、社会コストの抑制、持続可能な産業化、富の再分配や地域間格差の是正
これに対し、Society5.0が目指すのは
・IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新しい価値を生み出すことで、前記のような社会的課題や困難
・AIによって必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行などの技術により、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題
などが克服された社会で、この点でSDGsと密接につながっています。
デジタル田園都市国家構想とは
「デジタル田園都市国家構想」については、内閣官房の事務局が公表している
「デジタル田園都市国家構想基本方針について」
に詳しく述べられています。
この構想は
「全国どこでも誰でも便利で快適に暮らせる社会」
の実現を目標としています。
地方の様々な社会課題を解決するための鍵はデジタルであるとし、そのため
「デジタルインフラを整備し、官民双方でDXを積極的に推進する」
としています。
地方活性化に取り組むにあたり、SDGsの理念を取り込むことで、政策の全体最適化や地域課題の解決の加速化という相乗効果を生み出し、未来志向で持続可能な地域づくりを目指すことを推奨しています。
構想実現により、
1.地方における仕事や暮らしの向上に資する新しいサービスの創出、持続可能性の向上、well-being(幸福で肉体的・精神的・社会的の全てで満たされた状態)の実現等により、構想に掲げた目標を実現できる
2.東京圏への一極集中は是正し、地方から全国へボトムアップの成長が推進される
としています。
DXで取り組む社会課題の解決
DXに期待される地方の社会課題として
・人口減少・少子高齢化
・過疎化・東京圏への一極集中
・地域産業の空洞化
などがあります。
このような社会課題をデジタルの力を活用して解決するため、以下のような取り組みがデジタル田園都市国家構想の中で行われています。
1.地方に仕事を作る:中小・中堅企業DX(キャッシュレス決済等)、スマート農林水産業、観光DXなど
2.人の流れをつくる:転職なき移住(テレワーク)、サテライトオフィスなど
3.結婚・出産・子育ての希望をかなえる:母子オンライン相談、子供の見守り支援など
4.魅力的な地域をつくる:遠隔医療、ドローン物流、自動運転、遠隔教育など
5.地域の特色を活かした分野横断的な支援:スマートシティ関連施策の支援など
民間主導のSDGsとDXとの関係
政府主導のSDGsでは、SDGs目標達成の手段としてDXが考えられています。
民間企業の場合は、ビジネスの視点が欠かせません。
経団連の取り組み
民間企業の取り組みを象徴するものとして、経団連タイムスに載っている「SDGs達成に向けたDX」という記事があります。
経団連は、国連の「SDGビジネスフォーラム」で「SDGs達成に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)」という分科会を主催しました。
その中で、
・Society5.0の実現に向けた投資と経済効果
・DXによる「医薬品の研究開発の加速」や「感染症による非常時の課題解決」
・コロナ危機でもアクセス可能な学習、健康、職業訓練などのデジタル公共サービス
などが報告されています。
このことから、政府と経団連が連携して「Society5.0」を推進していることが見て取れます。
民間企業のSDGs:無理なく貢献できる目標を絞って取り組むことが大切
民間企業の場合、ビジネスの視点を無視できません。
SDGsに関わる取り組みは継続することが求められますから、自社の立場でビジネス面でも無理なくできることが必要です。
そこで、本業でSDGsに直接貢献できる業種(農業機械メーカーや自動車メーカーなど)もありますが、それ以外の業種でも日常業務の中から条件に合うものを模索して取り組むことが重要です。
日常業務を見直してSDGsに貢献する例
例えば、社用車をハイブリッド車にすることでガソリン消費量削減に貢献するなどです。
また、Web会議システムの導入やリモートワークの実践で出勤負担を減らしたり、車通勤を減らしたりすることで移動に伴う環境負荷を減らすこともできます。
本業でSDGsへの貢献を目指す例:SDGsに貢献する製品の開発と販売
SDGsに貢献する製品の開発と販売している例としてスマート農業があります。
スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの最新技術を活用した農業で、日本の農業の高齢化や人手不足などの問題を解決する切り札として期待されています。
既に、「農薬散布ドローン」、収穫物の積み下ろしの力仕事を助ける「アシストスーツ」、「自動収穫ロボット」、自動運転する「スマートトラクター」などが市販されており、さらに高度の無人化を狙った研究も行われています。
スマート農業は、「持続可能な食糧生産」「環境保護」「農業の経済成長」「食料自給率のアップ」「人手不足の解消」などの点でSDGsに貢献するものと期待されています。
本業でSDGsに貢献できた事例:DXを推進した結果SDGsへの貢献にもなった
この例は、ビジネス上の課題解決のためにDXを推進したら、結果的にSDGsへの貢献につながった事例で、伊勢神宮の表参道にある老舗食堂「ゑびや大食堂」の場合です。
従来は勘に頼って来客数を予測していましたが、顧客の来店データ(年齢・性別・注文した商品・客単価・時間帯)を機械学習で分析して、天気や気温・時間帯などから来客数や注文商品、客層などを予測できるようにしました。
この結果、天気予報を基に仕入れを調節したり、新メニューを開発したり、食材の廃棄を減らしたりすることが可能になりました。
このようにして自社のビジネスを革新したばかりでなく、フードロス削減という社会課題(SDGs)につながる貢献ができたのです。
この事例は「ビジネス上の課題解決のためにDXを推進した結果、SDGsにも貢献できた」とも言えるものです。
AMELAと一歩先の未来へ
今回は、SDGsとDXとの関係性について見てきました。
テーマが大きく、内容も難しいものになってしまいましたが、多くの企業にとってSDGsを目指すことは、長期的に見た時にビジネス的なメリットも大きいです。
まだまだ、自社の売上を上げることに必死になっている企業が多い中で、いち早くDXを進め、SDGsにも取り組んでいく。
そんな企業になれば、遅かれ早かれ業績は上がると考えられます。
AMELAでは、様々な企業の問題を解決してきた実績と経験があります。
その中で、御社にあった最適な提案をしていきますので、是非ご相談ください。