フードテックとは?注目される背景と可能性、取り組み状況は?事例についても解説

フードテックという言葉を聞いたことがありますか。

「食のフード」と「テクノロジー」

を組み合わせた造語で、最先端の技術を活用することで、全く新しい形の食品を開発したり、調理法を発見したりする技術です。

最近テレビなどで取り上げられる「深刻化する食糧問題」や「フードロス」、「SDGs」などの問題を解決するものとしても期待されているものです。

今回は、フードテックについて、それが注目される背景や可能性、取り組み状況を紹介し、最先端のフードテックや事例についても紹介します。

フードテックとは

冒頭でもお話した様に、フードテックとは

「食のフード」と「テクノロジー」

を組み合わせた造語です。

最先端の技術を活用することで、全く新しい形の食品を開発したり、調理法を発見したりする技術のことです。

関連する分野は
・農業
・漁業
・食品製造
・流通
・保存
・調理
・配送
など多く、多角的にテクノロジーを活用することで、食の世界に新たな可能性をもたらし、世界的に深刻化する食料問題の解決策としても期待されています。

フードテックが注目される背景

2020年7月に出された
「農林水産省フードテック研究会中間とりまとめ」
によれば、フードテックを次のように位置づけています。

10年後、20年後に
「完全資源循環型の食糧供給や食を通じた高いQOL(Quality of Life)を実現し、美味しく、文化的で、健康的な食生活を続けることのできる次世代のフードシステムを構築」
する上で、フードテックはキーテクノロジーである。

また、次世代のフードシステムにはSDGsの達成が不可欠であるとしています。

「完全資源循環型の食料供給」の背景にある「深刻化する食糧問題」

現在の食糧事情は、毎年40億トンの食料が生産されており、世界の全人口の食を賄うのには総量ベースでは十分な量だと言われています。

しかし、細かく見ると、多くが高収入で大量消費する先進国に集中しており、多くのフードロス(食べられるのに捨てられてしまう食品)を生む一方で、途上国には食料不足や飢餓に苦しむ人々がいます。

しかし、総量ベースでも、近い将来「世界の人口増加」や「温暖化による気候変動」に伴って起こる食糧不足が懸念されているのです。

急拡大を続ける世界の飲食料市場

農林水産政策研究所によれば、世界の主要34カ国・地域の飲食料市場の規模は、2015年は890兆円でしたが2030年には1369兆円に急成長すると推計しています。

このような急成長を続ける理由として次の2つを挙げることができます。

第一の理由は、世界人口の増加で、2015年の73億8000万人が2030年には85億5000万人になると国連では見ています。

欧州は減少に転じますが、アジアや北米は増加し続けると見ています。

第二の理由は、中国やインドをはじめ新興国の経済発展によって生活水準が向上し、食へのこだわりを持つ人が増加していることです。

消費者が口にする食料に「より安全で高品質、高付加価値」のものを求める傾向が強まっています。

フードテックは食の世界に新たな可能性をもたらせる

最先端の技術を活用することで具体的にどのような可能性が拓かれるか見ていきましょう。

食糧不足や飢餓などの問題解決

天候や虫害などの被害に苦しんできた農業が、AI搭載の機械や無人農場によって効率化されるでしょう。

また、食物生産の新技術や未利用食材を利用する技術などの開発が進むでしょう。

先進国で特に多い流通や消費段階で生ずるフードロスは保存技術の進歩で大幅に減少すると期待されます。

食の安全性

診断ツールを使うことで、食品が傷んでいるかどうか見分けやすくなります。

これにより、腐敗した食材を口にするリスクが減り、食中毒の防止が可能になります。

また、安全に長期保存できる梱包材料の開発が進んでいます。

傷みを軽減したり、異物混入の可能性を減らしたりできます。

人材不足の解消

農業や漁業、食品製造業などは常に人手不足で、外食産業も同じような悩みを抱えています。

ロボットやAIで省力化すれば、人材不足の解消になるでしょう。

人材不足の解消に伴って、商品を適正な価格で食品を販売したとしても、多くの利益が企業に残ることになります。

その結果、無理に販売個数を増やす必要性がなくなり、結果としてフードロスの解消にも繋がってくると考えられます。

フードテックへの取り組み

このような食糧事情を背景としてフードテックが期待されていますが、具体的にどのように取り組まれているのでしょうか。

ここでは、それについて見ていきましょう。

海外が先行し、日本は出遅れる

海外ではフードテックへの関心が急に高まっています。

米国はバイオテクノロジーなどフードテック分野の技術を輸出管理対象にしています。

また、EUでは植物・藻類・昆虫などの代替たんぱくに関する技術開発を重視した「飲食品産業戦略」を2020年5月に発表しています。

農林水産省によれば、2019年時点のフードテック分野への投資は、米国が9574億円、中国が3522億円、インドが1431億円、日本が97億円でした。

日本がフードテック分野への投資が少なかった背景には、飲食料関連の産業は成熟産業で、最新テクノロジーとは無縁と考えられていたからです。

成熟産業と見られていたのは、国土が狭く少子高齢化が進む日本国内だけを相手にしたビジネスを長年展開してきたからでしょう。

日本政府のフードテックへの取り組み

このような状況に危機感を持ち、フードテックを活用して国際競争を高める取り組みをはじめ、産学官連携の
「フードテック官民協議会」
を2020年10月に農林水産省が立ち上げました。

この協議会は、
・資源循環型の食料供給システムの構築(食や農林水産業の発展や食料安全保障の強化)
・食のQOLの向上を実現する技術基盤の確保
を目指します。

フードテック官民協議会の活動状況はWebサイト「FOOD TECH Lab」で公開しています。

一方、経済産業省の産業競争力の基盤となる新技術開発の国家プロジェクトでもフードテックに関連した研究テーマが取り上げられています。

フードテックとして生み出された最先端テクノロジー

ここではフードテックとして生み出された最先端のテクノロジーを紹介します。

人工肉

人工肉は小麦や水、自然由来の油などを原料に作られており、本物の肉を食べなくても健康に害を及ばさずに栄養を摂取できるものとして注目されています。

本物の肉に限りなく近く作られ、大豆ミートやグルテンミートいった製品として、既に市場に出回っています。

菜食主義者の代用食品として注目されていますが、米国などの市場では肉売り場に置かれて販売されており、一般的な食材としても認知されつつあります。

新食材

これまで人類が食べてこなかった食材の調理法や加工法を研究・開発し新食材として提供する試みが進んでいます。

ミドリムシを粉末にしてクッキーやドリンクにしたものや、昆虫を食用に供するための消費開発やレシピの研究が行われています。

中でも昆虫は栄養価が高く、環境にかかる負担も低く、低コスト・大量生産向きのため高い注目を集めています。

細胞培養

細胞培養とは、
・動植物の食べられる部分の細胞を抽出して培養する
・本物と変わらない牛肉や魚、野菜などの食材を作り出す
技術です。

培養肉はその例で、牛などの動物の肝細胞を培養して増殖させることで作り出されました。

従来の畜牛では、畜産の過程で排出されるCO2やメタンなどによる地球温暖化への悪影響が取り沙汰されていました。

人工培養肉は、地球環境にやさしく衛生管理をしやすいことから、非常に期待される技術です。

陸上養殖

陸上養殖とは陸地のプラントで魚を育てる技術です。

陸上で魚を養殖することには、
・作業負荷の軽減
・生産性向上(飼育環境を細かく管理できることによる)
・高付加価値(消費地近隣で養殖した場合に、新鮮な魚を迅速に届けることで生まれる)
などのメリットがあります。

陸上養殖には次の2つの方式があり、メリットが多いのは閉鎖循環式です。

・かけ流し式:海の近くにブラントを作り、海水を生け簀に送り込む
・閉鎖循環式:生け簀の汚れた水を濾過して循環させる

不可食部分の食用化

これは、Food Tech Labで紹介されている国内のベンチャー企業が取り組んでいる事例です。

これは、フードロス問題で誰も手を付けていなかった
「不可食部分(食べられずに捨てていた部分)」
を同社が発明した『加熱蒸煎機』を使って食べられるようにするものです。

この装置を使えば、野菜の不可食部分や米ぬか、果物の搾りかすなどを高付加価値化して食材と使えるようにすることが可能です。

この際、食材の風味の劣化と酸化、栄養価の減少を押さえながら食用化します。

汎用的な先端技術をフードテックに応用した事例

続いては、フードテックを目的として開発されたもの以外の、
「汎用的な先端技術」
でフードテックに応用されている事例を紹介します。

外食業界で活躍するロボットやドローン

外食業界では、フードロボットやフードデリバリーロボット、ドローンなどの導入が様々試みられています。

フードロボットは、ロボットアームを用いて調理や配膳、皿洗いなどの単純作業を自動化するもので外食産業の一部で実用化しています。

また、注文受付から商品提供まで一貫して行う飲食店も登場しています。

フードデリバリーロボットは自律自走式ロボットで街中を走行して配達するものです。

これ以外にも、配膳し客席まで運搬するロボットが先進の飲食店で活躍中です。

AIでフードロス削減に取り組む

フードロス削減の分野での取り組みの殆どは、人間知恵と努力に依存したものです。

最近は、AIを利用した「フードロス削減」サービスを提供する会社も生まれています。

例えば、飲食店などでの需要の予測や食材の発注。

なんとなく店長が「三連休だしたくさん来そう」といった感覚で発注したりします。

これを、AIによる予測にするだけでも、かなりのフードロス削減が期待できそうですね。

人間依存のフードロス削減対策

フードロスは、生産や流通・消費の段階で多く発生しています。

現在、フードロス削減のために採られている対策は、
・売れ残りそうな食品を値下げ販売する
・家庭で食糧を購入する際に冷蔵庫を確認してから買い物をする
など、従来から普通に採られていたものが殆どで、最先端の技術を使うフードテックと呼べるようなものを利用している例は殆ど見つかりません。

機械学習で廃棄食品を分類

これは、米国のスタートアップ企業が取り組んでいる事例です。

これは、レストランやカフェなどのキッチン向けに、「フードロスを把握し、削減を可能とする」サービスです。

このサービスは、廃棄される食品を機械学習して自動的にデータ分析するものです。

機械学習、高解像度カメラ、コンピュータビジョンを活用して、廃棄される食品を自動的に分類、定量化するものです。

IoTを活用してトレーサビリティを確保

トレーサビリティとは、食品に不良品や欠陥品が生じた場合、いち早く原因を特定し、リスクのある食品を回収・交換するなどの対策を打つのに不可欠なものです。

食品が消費者の手元に届くまでには、原材料・加工・生産・物流・小売などの多くの事業者が介在します。

原因を特定するためには、食品一点ごとに
「どのようにして生産された原材料を使い、どのように加工され、どのような過程を経て消費者に届いたのか」
まで細かく把握できるようにすることが不可欠です。

IoT通信機器を活用すれば、これらの事業者から必要な情報を手軽に集めてデータベース化できます。

3Dプリンターの活用

3Dプリンターは大規模な設備を持たずに短納期で小ロットをオンデマンドで生産することが可能な技術です。

3Dフードプリンターは2016年ころから導入されはじめ、現在は未だ黎明期ですが、2025年には4億~10億ドルの市場になると予想されています。

3Dフードプリンターには、食材や食感に対する柔軟性があり、個人の嗜好に応じたカスタマイズが可能などの特徴があります。

また、代用肉の成型加工において「肉らしさ」を再現する技術としても注目されています。

モノづくりのノウハウを取り入れた植物工場

ここでは、Food Tech Labに紹介されている自動車部品メーカの事例を紹介しましょう。

農業は異常気象や害虫などの影響を強く受けます。

この問題を解決するために生まれたのが「植物工場」で、砂漠はじめ植物の栽培に向かない地域でも農業を営むことができ、生産性の飛躍的な向上が期待されています。

そこで第一の目標を、
「栽培環境の整備を整え、未経験者でも安定して作物栽培ができるようにする」
こととしました。

気流技術を使って、農業ハウスの温度管理や窓の開閉を自動化して省力化し、さらに風や虫の影響を受けにくくする工夫もしました。

また、農業ハウスを標準パッケージとすることで、他の農家での栽培体験を効率よく学べるようにもしました。

第二の目標は
「計画的な農業生産を可能にする」
こととしました。

需要量を先に見積もり無駄なく作るのは勿論ですが、売る量が変化しても生産・在庫・出荷の量を順次調整することで、売れ残りや労力の無駄を無くすものです。

第三の目標は
「人の苦手な作業を代行する」
としました。

特に収穫期には、重たいものを運んだり、重量を計測したりして労働が過酷になります。

このような過酷な収穫作業を代行する自動収穫ロボットを開発しました。

このようにして自動化を進め、「人がこだわりたい」部分以外で、栽培に最低限必要となる部分を機器やシステムに委ね、作り手の想いを大切にしながら農業にかかわることができるようにしました。

このような特性を持つ植物工場は、農業分野以外の様々な分野の人が農業に参加することで、様々特徴をもった作物がつくられ、新たな食文化が生まれる可能性を秘めています。

業界の問題もITの導入で解決する可能性も大!いち早く導入するならAMELAに

今回は、フードテックについて見てきました。

昔から問題になっていた食糧問題に対して、IT技術の力で解決できる部分があるというのは、非常に魅力的ですね。

飲食店などは、他の業界に比べても比較的IT化が遅い業界として知られています。

加えて、業界の平均的な年収も低かったりと、様々な問題がある業界です。

しかし、ITの導入が本格的に進めば、こういった問題も並行して解決する可能性もあるでしょう。

あなたの業界でも、恐らく何かしらの「業界全体の問題」といったものがあるかと思います。

そういった問題をいち早くITの導入によって解決することができれば、同業他社をリードすることは難しくありません。

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