ブルーグリーンデプロイメントとは?意味や目的、メリットとデメリット、実際の手順についてを解説

ITシステムのリリースやアップデート時には、新しいバージョンに切り替えるためのデプロイメントが必要です。

しかし、デプロイメントには様々なリスクが伴います。

例えば、アプリケーションの動作に問題が生じたり、利用者に影響を与えたりする可能性があります。

そこで、リスクを最小限に抑えつつシステムを更新するために、ブルーグリーンデプロイメントという手法が注目されています。

本記事では、ブルーグリーンデプロイメントの基本的な考え方や手順、メリットとデメリットについて解説します。

ブルーグリーンデプロイメントとは

ブルーグリーンデプロイメントとは、アプリケーションの新しいバージョンをリリースする際に、古いバージョンと新しいバージョンを同時に稼働させる手法です。

ブルーグリーンデプロイメントでは、新しいバージョンを「グリーン環境」と呼ばれる新しいサーバーにデプロイし、古いバージョンを「ブルー環境」と呼ばれる既存のサーバーに維持します。

その後、トラフィックを徐々にグリーン環境に移行させ、問題が発生した場合にはすぐにブルー環境に戻すことができます。

この手法を用いることでアプリケーションの稼働中に発生する問題を最小限に抑え、高い可用性と信頼性を確保しながらリリースの効率を向上させることができます。

ブルーグリーンデプロイメントの由来

ブルーグリーンデプロイメントの由来は、軍事戦略に関する用語であるブルーとグリーンに由来します。

軍事演習ではブルー側が防衛側を、グリーン側が攻撃側を意味します。

ブルー側は自分たちの領土を守り、グリーン側は敵の領土を攻めるため、戦略やタクティクスが大きく異なります。

この軍事用語がソフトウェア開発の世界で使われるようになったのは2000年代初頭のことです。

当時はオートメーションや仮想化技術が発展し、リリースの効率化が求められるようになっていました。

そこで、安全かつ迅速なリリース方法を模索するようになった結果、従来のデプロイメントの問題点を解決するためにブルーグリーンデプロイメントという考え方が浸透していきます。

従来のデプロイメントでは、新しいバージョンのアプリケーションをリリースする際には、停止時間を最小限に抑えるために古いバージョンを停止してから新しいバージョンを起動するという手法が一般的でした。

しかし、この方法ではアプリケーションを停止する時間が必要であり、リリースの間にエラーや問題が発生した場合にはユーザーに影響を与えることがありました。

そこでブルーグリーンデプロイメントは、新しいバージョンのアプリケーションを別の環境でデプロイし、アプリケーションのトラフィックを徐々に新しい環境に移行させることで、ユーザーに影響を与えずにリリースできるようになりました。

また、もしエラーや問題が発生した場合でも、すぐに古い環境にトラフィックを戻すことが可能です。

現在、ブルーグリーンデプロイメントはクラウド環境の普及とともに広く使われるようになっています。

特にAWSのようなクラウドプロバイダーは、ブルーグリーンデプロイメントをサポートするツールやサービスを提供しており、開発者が簡単に実装できるようになっています。

ブルーグリーンデプロイメントの手順

ブルーグリーンデプロイメントを実施するにあたっての1つ目の手順は、2つの環境を用意することです。

現在稼働中の「ブルー環境」と、新しいバージョンを展開する「グリーン環境」の2つの環境を用意します。

2つ目の手順はグリーン環境におけるテストの実施です。

グリーン環境でアプリケーションをテストし、問題がなければブルー環境からグリーン環境にトラフィックを移行します。

3つ目の手順はトラフィックの移行です。

グリーン環境でアプリケーションが正常に動作していることを確認したら、トラフィックをブルー環境からグリーン環境に移行します。

4つ目の手順は(必要に応じて)ロールバックです。

もしグリーン環境で問題が発生した場合、ブルー環境にトラフィックを戻すことでロールバックできる状態を確保しておく必要があります。

5つ目の手順はブルー環境の削除です。

トラフィックを完全にグリーン環境に移行したら、ブルー環境を停止するなどの事後処理をおこないます。

ブルーグリーンデプロイメントのメリットとデメリット

ブルーグリーンデプロイメントを実施するにあたってはメリットとデメリットがあります。

ブルーグリーンデプロイメントのメリット

1つ目のメリットはゼロダウンタイムでのデプロイが可能なことです。

ブルーとグリーン2つの環境を切り替えることで、デプロイ中にサービスを停止する必要がなく、ゼロダウンタイムでデプロイが可能となります。

2つ目のメリットはリスクを最小限に抑えたデプロイが可能なことです。

ブルー環境が安定している状態でグリーン環境に新しいアプリケーションをデプロイしてからトラフィックを切り替えるため、リスクを最小限に抑えたデプロイが可能です。

3つ目のメリットはロールバックが簡単なことです。

問題発生時にはすぐにトラフィックをブルー環境に戻すことができます。

このため、ロールバックが簡単かつ安心してデプロイ作業を進めることが可能です。

4つ目のメリットはテスト環境の構築が容易なことです。

ブルー環境を利用することでテスト環境の構築が容易になります。

新しいアプリケーションをグリーン環境にデプロイしてテストをおこない、問題がなければトラフィックを切り替えることができます。

5つ目のメリットは複数バージョンの同時稼働が可能なことです。

2つの環境を利用することで、複数のバージョンのアプリケーションを同時に稼働できます。

このため、異なるバージョンのアプリケーションの比較や、古いバージョンと新しいバージョンの切り替えのテストが簡単におこなえます。

ブルーグリーンデプロイメントのデメリット

1つ目のデメリットは設定や手順が複雑なことです。

2つの環境を用意する必要があるため、設定や手順が複雑になる場合があります。

また、ブルーグリーンデプロイメントを実行するには、環境に合わせたツールの選定と導入をしなければなりません。

2つ目のデメリットはコスト面です。

2つの環境を同時に用意するためコストが割高になります。

また、ブルーグリーンデプロイメントを自動化したい場合などは追加のコストを要する場合があります。

3つ目のデメリットはハードウェアやソフトウェアの互換性による制約があることです。

2つの環境間にはハードウェアやソフトウェアの互換性による制約がある場合があります。

そのため、アプリケーションなどの依存関係を正確に把握しておかなければなりません。

ブルーグリーンデプロイメントの活用例

ブルーグリーンデプロイメントは、アプリケーションのデプロイにおいて高い信頼性と安定性を提供するため、幅広い場面で活用されています。

1つ目の活用例はECサイトです。

ECサイトでは高い可用性が求められるため、新しいバージョンのアプリケーションをデプロイする際は、サイトのダウンタイムを最小限に抑える必要があります。

ブルーグリーンデプロイメントを用いることでサイトの停止時間を短縮し、顧客のストレス軽減につながります。

2つ目の活用例はIoTシステムです。

IoTシステムではデバイスやセンサーからのデータ収集が重要な役割を担っています。

新しいバージョンのアプリケーションをデプロイする際には、データ収集の中断を最小限に抑えなければなりません。

ブルーグリーンデプロイメントを用いることでデータ収集の中断を最小限に抑え、システムの安定稼働を図れます。

3つ目の活用例は開発、およびテスト環境です。

開発環境やテスト環境においてもブルーグリーンデプロイメントを活用できます。

テスト環境においてはアプリケーションのデプロイによってテストデータが消失してしまう場合があります。

ブルーグリーンデプロイメントを用いることでデータの消失を回避し、生産性の向上につなげることが可能です。

4つ目の活用例はSaaSアプリケーションです。

SaaSアプリケーションでは複数ユーザーが同じインフラを共有するため、アプリケーションの変更によって他ユーザーに影響が及ぶ可能性があります。

ブルーグリーンデプロイメントを用いることで、他ユーザーに影響を与えることなく新しいバージョンのアプリケーション導入が可能です。

AWSのようなSaaSアプリケーションにはブルーグリーンデプロイメントを実現するための機能やサービスが備わっています。

ブルーグリーンデプロイメントの実施時の注意点

ブルーグリーンデプロイメントを実施する際には、いくつかの注意点があります。

1つ目の注意点はテストの充実です。

ブルーグリーンデプロイメントにおいては、新しい環境にアプリケーションをデプロイする前に十分なテストを実施する必要があります。

これにより、問題が発生した場合でも迅速に対処できます。

2つ目の注意点はデプロイ先の管理です。

ブルーグリーンデプロイメントをおこなう際には、デプロイ先の管理にも十分な注意が必要です。

例えば、異なるバージョンのアプリケーションが同時に稼働している場合には混乱を招く恐れがあります。

3つ目の注意点はデータの同期です。

ブルーグリーンデプロイメントをおこなう際にはデータの同期にも注意が必要です。

例えば、古い環境から新しい環境へデータを移行する場合にはデータの不整合が発生する可能性があります。

4つ目の注意点はデプロイプロセスの自動化です。

ブルーグリーンデプロイメントをおこなう際にはデプロイプロセスの自動化が重要です。

手動でデプロイをおこなう場合にはヒューマンエラーが発生する可能性があるため、自動化することでデプロイの信頼性を高めることが求められます。

これらの注意点に留意しながらブルーグリーンデプロイメントを実施することで、リスクを最小限に抑えて新しいバージョンのアプリケーションをデプロイできます。

安全なシステム運用はAMELAに

今回は、ブルーグリーンデプロイメントについてお話しました。

システム開発や、バージョンアップにおいて、予期せぬエラーのリスクは常にあります。

そういった状況の中で、
「いかにリスクを減らした運用ができるのか」
は、その企業の技術力や経験が求められます。

AMELAでは、多業種の開発を行っており、オフショア開発によって、技術力の高い海外のエンジニアを活用することが可能です。

安全なシステム開発・システム運用をする上で、御社に貢献できると考えておりますので、ぜひ一度ご相談頂ければと思います。