PMBOKとは?最新版の改訂ポイントとは?PMP資格試験で重要視される第6版の知識エリアまとめ

プロジェクトマネジメントは、ビジネスの成功において、非常に重要な項目です。

しかし、
「プロジェクトを管理する」
と一言で言っても、どうするのかという点で、苦労する事も多いでしょう。

実は、このわかりにくい
「プロジェクトを管理するためのノウハウや手法」
を体系立ててまとめたPMBOKというものがあり、この分野では事実上の世界標準となっています。

PMBOKのガイドブック「PMBOKガイド」は1987年の発表以来改訂を重ねており、最新のものは2021年に発行され、内容は大きく変わりました。

PMP資格は実績のあるプロジェクトマネージャが保有すべき国際的な資格とされています。

ここでは、PMBOKとは何かについて解説するとともに、ガイドブックの改訂でPMP資格の認定試験がどのように変わったかも説明します。

PMBOKとは

PMBOKとはProject Management Body of Knowledgeの略語で、プロジェクト・マネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたものです。

プロのプロジェクトマネージャが知っておくべき知識の中核となるもので、プロジェクト管理のための事実上の世界標準とされています。

PMBOKの歴史と改定および普及活動

PMBOKは、アメリカに本部がある非営利団体PMIがガイドブック
「PMBOKガイド(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)」
を1987年に発表したのを機に知られるようになりました。

1998年にはPMI日本支部が設置され、PMBOKの普及促進やPMP(Project Management Professional)資格の認定活動を行っています。

PMBOKガイドは4年に1度程度の頻度で改訂を重ねており、最新のものは2021年に発行された第7版です。

改訂は、技術の進歩や組織および市場の変化を背景とした最新のニーズ
「企業の持続的な成長と新たな価値提供のために、早いサイクルでものごとを生み出す」
に応えて行われます。

時代の変化の早い現代、そして価値観の多様化した現代では、こうした内容が無いと、ビジネスの成功は難しいと考えられているのでしょう。

PMBOKガイド改訂の概要(第6版から第7版へ)

PMBOKガイドの最新版は第7版ですが、第6版から第7版に向けて全体としてどのような方向で見直しが行われたのか見ていきましょう。

今回の見直しは、技術の進歩に対応して
「適切なデリバリアプローチ(予測型・アジャイル型・ハイブリッド型)を見極めて選択し、プロジェクトを管理して想定した成果を出す」
役割をプロジェクトマネージャに課す方向で行われました。

この改訂では、
(1)「プロセス重視」の構成から「原理・原則」に基づく構成へ
(2)内容が大幅にコンパクトに
(3)焦点の当て方が「成果物」から「価値/価値提供」へ
の3つを柱に行われ、大規模なものとなっています。

(3)については誤解を招かないように、若干補足します。

従来のプロジェクト管理手法(予測型でウォーターフォール型とも呼ばれる)は多くの組織やプロジェクトに使われ、今でも多くの成果を出しています。

その一方で、最近ではITシステム関連の開発プロジェクトでアジャイル型の開発なども多く行われています。

ここで指摘しておきたいのは、成果物に焦点を当てた「従来型のプロジェクト管理手法」が今回の改定で否定された訳ではないということです。

これは、「関係者に成果物を提供する」行為が「関係者に価値をもたらす」ものと考えられ、「価値/価値提供」に当たると解釈されるので依然として有効だということです。

このような大幅な見直しの一環として、PMBOKガイドの「プロジェクト・マネジメント知識体系」と「プロジェクト・マネジメント標準」が大きく変わりました。

具体的には、「プロジェクト・マネジメント知識体系」の内容は、
・第6版:章立てが「はじめに」「プロジェクトの運営環境」「プロジェクトマネージャの役割」「10の知識エリア」
・第7版:章立てが「テーラリング」「モデル、手法、成果物」「8つのパフォーマンスドメイン」
となっており、第7版では「10の知識エリア」が削除されています。

また、「プロジェクト・マネジメント標準」の内容は、
・第6版:章立てが5つのプロセス群を示す「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」
・第7版:章立てが「はじめに」「価値提供のしくみ」「12の原則」
となっており、プロセス群の記載が無くなっています。

PMBOKガイドの改訂とPMP資格試験

PMP資格はプロジェクト・マネジメントに関する国際資格で、
「プロジェクト・マネジメントに関する一定水準の知識とスキルを有する」
ことをPMI本部が認定するものです。

以前はPMBOKガイドに基づいた試験でしたが、PMBOKガイド第7版が発行されたことで2021年以降行われるPMP試験の内容はどのように変わったのでしょうか。

このような疑問に対して、PMIからPMI認定の教育プロバイダーに対して次のような受験者向けの案内が出されています。

(2021年以降のPMP試験に向けた受験案内):PMBOKガイド第7版よりも作業プロセスを記述している
「PMBOKガイド第6版」
とアジャイルを説明している
「アジャイル実践ガイド」
を副読本として利用するのが望ましい。

また、新しいPMP試験合格者の話では、
「PMBOKガイド第6版は基礎知識として必要だが、詳細なプロセスの理解は不要」
「基本的な用語はつながりも含めて正確な理解が必要」
ということです。

新しいPMP試験でも押さえておきたい「PMBOKガイド第6版の知識エリア」

知識エリアはプロジェクト・マネジメントの中核をなすもので、10個の知識エリアで構成されています。

プロジェクト統合マネジメント

全体のバランスを取りながらプロジェクトを進めるために、他の9つの知識エリアを取りまとめて管理する役目を持ち、以下の7つのプロセスで構成されます。

(1)プロジェクト憲章(プロジェクトの目的などを明確化した文書)を作成し、承認を経てプロジェクトが正式に開始
(2)プロジェクト・マネジメント計画書を作成
(3)プロジェクト作業の指揮・マネジメント
(4)プロジェクト知識のマネジメント(過去の教訓や知識を活用/新知識を創出)
(5)プロジェクト作業の監視・コントロール(進捗を管理/是正)
(6)統合変更管理(処置の必要性を判断し、必要なら実施)
(7)プロジェクトやフェーズの終結(報告書作成)

プロジェクト・スコープ・マネジメント

プロジェクトを成功させるためには、目的となる最終的な成果物を明確にし、成果物を得るための作業範囲(スコープ)を確定させる必要があります。

プロジェクト・スコープ・マネジメントは、明確化した成果物を得るために必要な作業量を過不足なく管理する領域であり、以下の6つのプロセスで構成されます。

(1)スコープ・マネジメントの計画(要求事項収集やスコープ定義の実施方法を策定)
(2)要求事項の収集(ステークホルダーから収集)
(3)スコープの定義(最終成果物と作業範囲)
(4)WBSの作成(プロジェクトの作業範囲を細分化)
(5)スコープの妥当性確認(ステークホルダーよる成果物の検査)
(6)スコープのコントロール(変更がないかチェック、必要なら是正)

プロジェクト・スケジュール・マネジメント

納期を守るためにスケジュールをきめ細かく管理する領域であり、以下の6つのプロセスで構成されます。

(1)スケジュール・マネジメントの計画(立て方や管理方法、管理ツールを決定)
(2)アクティビティの定義(WBSで細分化された作業をアクティビティまで分解)
(3)アクティビティの順序設定
(4)アクティビティの所要時間見積もり
(5)スケジュールの作成(最終的なスケジュールを作成)
(6)スケジュールのコントロール(進捗が計画通りかチェック、必要なら是正)

プロジェクト・コスト・マネジメント

プロジェクト開始前に見積もった予算内で目的を達成するために必要な管理を行う領域であり、以下の4つのプロセスで構成されます。

(1)コスト・マネジメントの計画(コストの見積もり方や管理手法を決定)
(2)コストの見積もり(各アクティビティに必要なコストを見積)
(3)予算の設定(プロジェクト全体の予算が決定後、各アクティビティに配分)
(4)コストのコントロール(実績値が計画通りかチェック、必要なら是正)

プロジェクト品質マネジメント

成果物の品質は勿論、プロジェクトを進める際のプロセスや作業の品質も管理する領域で、以下の3つのプロセスで構成されます。

(1)品質マネジメントの計画(追求する程度と確保する方法を決定)
(2)品質のマネジメント(チェックデータを基に是正)
(3)品質のコントロール(成果物やブロセスの品質が計画通りかチェック)

プロジェクト資源マネジメント

人的資源(チームの構成員)と物的資源(資材)を確保・割り当て・管理する領域で、以下の6つのプロセスで構成されます。

(1)資源マネジメントの計画(人的資源と物的資源を獲得と活用方法を決定)
(2)アクティビティ資源の見積もり(WBSで扱う作業レベルまで落とし込む)
(3)資源の獲得(人的資源と物的資源を集めて割り当てる)
(4)チームの育成(メンバーの能力強化/チームワーク向上)
(5)チームのマネジメント(チームワークを強化)
(6)資源のコントロール(チェックと是正)

プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント

チームメンバーやステークホルダーとの情報交換を適切に管理する領域で、以下の3つのプロセスで構成されます。

(1)コミュニケーション・マネジメントの計画(必要とする情報と情報交換の方法)
(2)コミュニケーションのマネジメント(情報の収集と発信)
(3)コミュニケーションの監視(チェックと是正)

プロジェクト・リスク・マネジメント

PMBOKでは、発生すればプロジェクトの目的達成に影響を与えるものをリスクと捉えており、プラスの影響とマイナスの影響の何れも対象としています。

このようなリスクの扱いや対処に関する領域で、以下の7つのプロセスで構成されます。

(1)リスク・マネジメントの計画(リスクの捉え方、リスクの洗い出しや分析用のツール)
(2)リスク特定(リスクを洗い出す)
(3)リスクの定性的分析(リスクの発生確率や影響度を検討)
(4)リスクの定量的分析(コストやスケジュールに与える影響)
(5)リスク対応の計画(各リスクへの対応方法)
(6)リスク対応の実行
(7)リスクの監視(リスクの追跡、新たなリスクを特定、継続的なチェックと是正)

プロジェクト調達マネジメント

プロジェクトで使う物品やサービスを外部から調達する活動を管理する領域で、以下の3つのプロセスで構成されます。

(1)調達マネジメントの計画(調達の進め方のガイドとしてまとめる)
(2)調達の実行(納入業者からの提案書を評価し、合意書を交わして契約を結ぶ)
(3)調達のコントロール(契約が合意書通りに履行されているかチェックし、是正)

プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント

ステークホルダーにはチームメンバー以外に顧客など様々な人が含まれており、プロジェクトに肯定的な人ばかりでなく否定的な人もいます。

多様なステークホルダーとの関係を適切に管理する領域で、以下の4つのプロセスで構成されます。

(1)ステークホルダーの特定(洗い出し、役割やプロジェクトへの関心度・影響度)
(2)ステークホルダー・エンゲージメントの計画(関わり方)
(3)ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント(期待を管理)
(4)ステークホルダー・エンゲージメントの監視(関係をチェック、是正)

安全なプロジェクト運営はAMELAに

今回は、プロジェクトマネジメントに関する知識を体系立てて学べるPMBOKについて見てきました。

多くの現場で必要とされる知識が詰まっている反面、
「きちんと活用できている企業」
は、少ないともいえます。

時代の変化が早い現代では、正しい方法でやるだけでは成果が出ません。

そこに、「スピード」や「適切な価値提供」が必要な時代になっているのです。

AMELAでは、適切な管理の元、技術力の高い多くのエンジニアが、御社のシステム開発をサポートします。

是非、ご連絡相談頂ければと思います。