資金調達手段である助成金・補助金の特徴や種類などについて解説

経営のためには資金調達が必要になることが多いですが、返済の負担の必要がある融資は、毎月の返済が重い負担になってしまうことがあります。しかし、公共機関が支給している助成金・補助金は、返済義務がありません。ただし、助成金・補助金にもさまざまな注意点があります。この記事では、助成金・補助金の概要について解説します。

助成金・補助金の特徴

助成金・補助金は、国や地方公共団体が主体として提供されている支援制度です。融資やとは異なり、返済義務がないことが特徴です。助成金・補助金の種類は非常に多く、数千種類存在すると言われています。

助成金と補助金の違い

助成金と補助金の大きな違いは、審査の有無です。助成金は応募要件され満たせば原則支給されるのに対して、補助金は審査を通過する必要があります。

また、応募期間についても違いがあります。助成金は募集期間が比較的長めですが、補助金は短めです。

助成金・補助金の実施主体

助成金・補助金の実施主体は、以下のとおりです。

  1. 経済産業省
  2. 厚生労働省
  3. 地方自治体
  4. 民間団体・企業

では、それぞれの特徴について解説します。

経済産業省

経済産業省は、日本の経済や産業の発展を管轄しています。また、小規模事業者や起業家の支援をする「中小企業庁」も管轄しており、そこから地域活性化や中小企業振興を目的とした補助金を支給しています。経済産業省の補助金は、創業期の企業や小規模企業と相性が良いです。ちなみに、経済産業省が支給しているのは補助金のみで、助成金の支給はありません。

厚生労働省

厚生労働省は、福祉や労働、雇用などを管轄しています。厚生労働省の補助金や助成金は、職業能力向上や雇用促進を目的としたものが多いです。具体的には、高齢者や障碍者、第二新卒者を雇用した際に貰える助成金などがあります。もし今後従業員を雇う予定がある場合は、ぜひ厚生労働省の助成金・補助金もチェックしましょう。

地方自治体

地方自治体は、それぞれ独自の助成金・補助金を用意しており、中には趣向を凝らしたユニークなものもあります。もし興味がある場合は、自社の所在地を管轄する自治体のホームページを確認してみましょう。

民間団体・企業

公共機関だけではなく、民間企業や公益団体も助成金・補助金制度を設けていることがあります。その種類や支給条件、支給額などは企業や団体ごとに異なります。もし興味がある場合は、公益財団法人・助成財団センター(JFC)のサイトで助成金制度を設けている団体を検索できるため、ぜひ活用してみましょう。

助成金・補助金の種類

助成金・補助金の主な種類は、以下のとおりです。

  1. 創業支援等事業者補助金
  2. 小規模事業者持続化補助金
  3. ものづくり補助金
  4. IT導入補助金
  5. キャリアアップ助成金

では、それぞれについて解説します。

1.創業支援等事業者補助金

創業支援等事業者補助金は、新たな雇用の創出と、地域経済の活性化を促進することを目的とした補助金です。具体的には、新たに創業をする場合に経費の一部を支給してもらえます。ただし制度の適用は市区町村単位であり、すべての自治体が対象となっているわけではないため、確認する必要があります。

対象新たに創業を予定する方
補助率補助対象経費の3分の2以内
補助額50万~1,000万円

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が行う販路開拓や、業務効率化の取り組みを支援することを目的とした補助金です。具体的には、販促用のチラシ作成費用や、業務用ソフトウェアの設置費用などの一部を支給してもらえます。小規模事業者持続化補助金は、他の補助金と比べて審査通過率が高いことや、商工会議所の指導を受けられることなどがメリットです。

対象以下に該当する小規模事業者商業、サービス業(宿泊・娯楽業除く):従業員5人以下サービス業のうち宿泊業、娯楽業:従業員20人以下製造業、その他:従業員20人以下※いずれの場合も申込時点ですでに創業していることが条件
補助率補助対象となる経費の3分の2以内
補助額通常枠:上限50万円卒業枠:上限200万円創業枠:上限200万円賃金引き上げ枠:200万円後継者支援枠:200万円インボイス枠:100万円

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、企業の生産性向上を実現するためのサービスや製品開発を支援するための補助金です。対象業種に制限がないため、資本金と従業員数の条件を満たしていれば、どの業種の事業主であっても申し込み可能です。ちなみにものづくり補助金の申請は、インターネットのみから受け付けています。

対象以下に該当する事業者製造業・建設業・運輸業:資本金3億円以下、従業員300人以下卸売業:資本金1億円以下、従業員100人以下小売業:資本金5,000万円以下、従業員50人以下サービス業:資本金5,000万円、従業員100人以下ゴム製品製造業:資本金3億円、従業員900人以下ソフトウェア業または情報処理サービス業:資本金3億円以下、従業員300人以下旅館業:資本金5,000万円、従業員200人以下その他の業種:資本金3億円以下:従業員300人以下
補助率補助対象となる経費の2分の1以内(小規模事業者の場合は3分の2以内)
補助額通常枠A類型:上限150万円通常枠B類型:上限450万円デジタル基盤導入枠:上限350万円

IT導入補助金

IT導入補助金は、業務効率化を目的としたITツールの導入にかかる費用を補助する制度です。対象事業はIT業界に限らず、さまざまな業界の事業者が申請できます。

対象以下に該当する事業者製造業、建設業、運輸業:資本金3億円以下、従業員300人以下卸売業:資本金1億円以下、従業員100人以下サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く):資本金5,000万円以下、従業員100人以下小売業:資本金5,000万円以下、従業員50人以下ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く):資本金3億円以下、従業員900人以下ソフトウエア業又は情報処理サービス業:資本金3億円以下、従業員300人以下旅館業:資本金5,000万円以下、従業員200人以下その他の業種(上記以外):資本金3億円以下、従業員300人以下
補助率5万円~50万円以下の部分:補助対象となる経費の4分の2以内50万円超~350万円の部分:補助対象となる経費の3分の2以内
補助額通常枠A類型:30万~150万円未満通常枠B類型:150万~450万円以下セキュリティ対策推進枠:5万円~100万円以下デジタル化基盤導入類型:5万円~350万円以下

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の従業員のキャリアアップや、賃金規定の改定を行った際に支給されるものです。キャリアアップ助成金のコースは全部で7種類用意されており、さまざまなケースが支給対象となるため、ぜひチェックしてみましょう。

対象6ヵ月以上雇用実績のある契約社員・パート社員を正社員に登用し、さらに6ヵ月継続雇用した場合
助成額該当者1人につき最大72万円

※正社員化コースの場合

助成金・補助金の4つのメリット

助成金・補助金のメリットは、以下のとおりです。

  1. 返済が不要
  2. 労働環境の向上につながる
  3. 今後融資を受けやすくなる
  4. 事業計画改善のきっかけになる

では、それぞれについて解説します。

1.返済が不要

返済が不要なことは、助成金・補助金の最大のメリットです。特に資金繰りで困っている場合は、返済不要の資金が得られることは非常にありがたいはずです。

2.労働環境の向上につながる

助成金・補助金を申請する際は、企業の就業規則や雇用契約書などの提出が求められます。これらの書類に不備があった場合、審査に通る可能性が低くなるため、必然的に労働環境の整備や労働関連法の遵守などに着手するようになります。また助成金・補助金自体も、従業員の処遇改善や教育訓練などをサポートするものが多いです。

3.今後融資を受けやすくなる

助成金・補助金の支給を受けるためには、厳しい審査に通る必要があります。そのため、助成金・補助金の審査に通ることで、事業計画の優位性や将来性を証明できるようになります。助成金・補助金の支給を受けたという実績を作ることで企業の信用度が上がり、金融機関などの融資の審査にも通りやすくなります。

4.事業計画改善のきっかけになる

助成金・補助金の申請には、事業計画書の提出が必要です。そして審査に通るためには、当然事業計画書の質を高める必要があります。そのため、助成金・補助金の申請をきっかけに事業計画の改善ができます。事業計画の改善ができれば、審査に通りやすくなるだけではなく、事業で成功できる可能性もアップします。

助成金・補助金の7つの注意点

助成金・補助金の注意点は、以下のとおりです。

  1. 公募期間が定められている
  2. 支給までに時間がかかる
  3. 原則後払いである
  4. 事業期間外の経費は認められないことがある
  5. 提出書類の準備に大きな時間と労力がかかる
  6. 複数受給ができないことがある
  7. ものによっては倍率が高い

では、それぞれについて解説します。

1.公募期間が定められている

助成金・補助金は公募期間が定められているため、気が付いたらすでに応募を締め切っていたということが起こり得ます。また、申請に必要な書類の準備には時間がかかるため、期限までに提出が間に合わない可能性もあります。そのため、公募期間の確認や、早めの必要書類準備への着手が大切です。

2.支給までに時間がかかる

助成金・補助金は、他の資金調達手段よりも資金が入金されるまでに時間がかかります。基本的には、2ヵ月程度が目安です。したがって、もし早急な資金調達が必要な場合は、助成金・補助金以外の方法を検討しましょう。

3.原則後払いである

助成金・補助金は、原則後払いです。そのため、経費の支出に耐えるための資金繰りが要求されます。もし支給までに資金が足りなくなる可能性がある場合は、他の資金調達方法の併用も検討しましょう。

4.事業期間外の経費は認められないことがある

助成金・補助金では、補助対象となる経費について、交付決定からの期間が定められることがあります。この場合、事業期間外に支出した経費は支援の対象として認められず、助成金・補助金が支給されません。

5.提出書類の準備に大きな時間と労力がかかる

助成金・補助金の申請には、事業計画書や収支計画、申請書類などが必要になります。そのため、大きな時間と労力がかかります。もし自身ですべて揃えるのが難しければ、費用はかかりますが専門家に依頼するのも手です。

6.複数受給ができないことがある

助成金・補助金は、複数受けられない可能性が高いです。特に、同一の経費に対して複数の助成を受けられる可能性は低いです。ただし、申請自体は同時に複数行えます。

7.ものによっては倍率が高い

助成金・補助金は返済の必要がないため、事業者にとっては魅力的です。そのため、応募が殺到して倍率が高くなることがあります。

まとめ

助成金・補助金は審査のハードルが高いですが、通過すれば返済義務のない資金を調達できます。他にも、この記事で紹介してきたようにさまざまなメリットがあります。助成金・補助金の種類は非常に多いため、自社に合ったものを探して申請を検討してみましょう。

資金調達のサポートはAMELAまで

AMELAは資金調達でお悩みの企業様のサポートも承っております。これまでの実績を活かしてお力添えさせていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。