PMOとは?プロジェクトの成功率アップで脚光、仕事内容は?導入のメリットは?

PMOという言葉を聞いたことがありますか?

プロジェクトマネージャを支援・補佐する組織や専門職を指す言葉です。

意外かもしれませんが、ITに関するプロジェクトの成功率は低く、
・2003年には約25%、2018年には約50%と大きく改善された
・改善された背景にはPMOによるサポートがあった
という事をご存知でしょうか?

ITプロジェクトにこれだけ多くの失敗があるというのは、驚きですよね。

しかし、プロジェクトの成功率はそこから大きく改善されていません。

その原因は何で、改善される見込みがあるのでしょうか。

今回は、PMOがプロジェクトでどのような役割を果たすのかを中心に仕事内容を解説します。

また、PMO導入のメリットなどについても解説しますので、これからプロジェクトを立ち上げたり、既存プロジェクトの体制を強化する際の参考にして下さい。

PMOとは?注目されている背景は?

PMOとは
Project Management Office
の略で、企業内の様々なプロジェクトを横断的に支援したり、大規模なシステム開発の際にはプロジェクトマネージャ(PM)を補佐したりする組織や専門職を指す言葉です。

まず、対象となるプロジェクトについて今後の動向と、システム開発プロジェクトを例にPMOが注目されている背景を調べてみましょう。

以下の解説から、システム開発プロジェクトの約半数は失敗しており、失敗原因の1/3はプロジェクトマネジメント上の問題であることが分かります。

これこそ、システム開発プロジェクトにPMOが必要とされる根本的な理由だと考えられます。

プロジェクトエコノミー時代の到来

従来型のオペレーション型企業では、効率化を図り、生産性を高めることが企業活動の原動力になっていました。

今では、日々の企業活動にAIやロボティクスが浸透し、従来型のオペレーション業務は次々自動化されつつあります。

この結果、効率化や生産性だけを求める企業スタイルから、プロジェクト型企業に変化し、プロジェクトエコノミー時代が到来すると考えられています。

プロジェクトエコノミーでは、企業活動にアジャイル的なアプローチが求められます。

すなわち、俊敏に行動し軌道修正を繰り返しながら、ゴールに近づいていく手法です。

このように、企業活動の多くがプロジェクト化していくものと考えられているのです。

大幅に改善されているが、プロジェクトの半数は失敗している

プロジェクトの成功率は年々上がっていますが、それでも約半数は失敗しています。

日経BP社による成功率の調査によれば、2003年は26.7%でしたが、2008年には31.1%になり、2018年には大幅に改善され52.8%になっています。

成功率上昇の背景にはプロジェクトの「数量管理の浸透」があるとし、成功率が約50%に留まっている最大の原因は「要件定義の不十分」だとしています。

プロジェクトが失敗する原因の1/3はマネジメント不足

そこで、少し古くなりますが、2000年に発売されたハーバードビジネス・レビュー別冊に記されている分析を紹介しましょう。

この記事によれば、システム開発プロジェクトの失敗原因の内訳は、
プロジェクトマネジメント(34.4%)
スキル(20.0%)
製品(17.1%)
顧客(7.1%)
外注(7.1%)
管理者の支援(4.3%)
その他(10.0%)
となっています。

また、プロジェクトマネジメント上の問題点として
・発注者の求める仕様がはっきりしない
・スケジュールやタスクの見積もりが甘い
・進捗状況の管理が甘い
・メンバーのスキル不足や経験不足
・メンバーとのコミュニケーションに問題がある
・プロジェクトに余裕がない
の6点を指摘しています。

また、株式会社ネオマーケティングが行った調査報告によれば、プロジェクト制度のある企業の2/3でPMのスキル不足を指摘しています。

この調査で、回答者の1/3が「プロジェクトの迷走」を、1/2が「人間関係が悪化」を経験したと答えています。

また、PM自身も悩みを抱え、約6割が「会社を辞めたくなった」と答えています。

PMOはPMをサポートし、マネジメント不足を解消する

PMには「プロジェクトの目的を達成する」責任があり、その責任を果たすために、
・プロジェクトの目的を明確にする
・プロジェクト計画を作成する
・プロジェクトチームを結成する
・プロジェクト全体を管理する
役割を負います。

複数のプロジェクトチームからなる大規模プロジェクトの場合には、各チームを率いるプロジェクトリーダーからの進捗や発生した問題や課題を解決する必要があります。

また、必要ならプロジェクトオーナーとなるクライアント企業の責任者に折衝するのもPMの役目です。

このような、多忙を極めるPMの「プロジェクト全体の管理」をサポートするのがPMOの役目です

PMOの仕事内容

次に、PMOの仕事内容を見ていきましょう。

PMO組織としての役割と活動場所

PMOに期待されることは、
・プロジェクト内の人材をトレーニングする
・ベスト・プラクティスを共有する
・スケジュール管理を高度化する
・PMが行う優先順位付けや判断の助けとなる支援する
という事です。

更に、PMOの具体的な役割は、
・プロジェクト内で発生する業務の代行
・プロジェクトの障害要因を見つけて、問題を解決するコンサルティング
・プロジェクトマネジメントに関する研修・育成
まで様々あります。

PMOの設置場所としては、IT分野では、
・ITコンサルティング会社やSIer、ベンダーなどのITプロジェクトを抱える会社
・一般企業のIT部門
などです。

PMO専門職の仕事内容はポジションと個人の役割と参画の仕方で決まる

PMO専門職1人1人の仕事内容は、プロジェクトにおけるポジションと個人の役割と参画の仕方で決まります。

ポジションとは、PMO個人のミッションが
「全社のプロジェクトを対象とするか」
「部門内のプロジェクトを対象とするか」
「特定のプロジェクトを対象とするか」
を示すものです。

個人の役割は、
「プロジェクトチームの支援」
「コンサルティング」
「基準や手法の維持」
に大別されます。

参画の仕方には、
「事務局として」
「推進役として」
「参謀として」
の3種類があります。

PMO専門職の仕事内容(ポジション別)

ここでは、ポジションの視点からPMOの活動内容を見ていきましょう。

プロジェクト内PMO

単にPMOと言った場合はプロジェクト内PMOを指すことが多いです。

プロジェクト内PMOはPMの右腕として1つのプロジェクトの推進を支援します。

プロジェクト内PMOはマネジメントの徹底や生産性向上に関して責任を負いますが、プロジェクトの成果物に関しては責任がありません。

具体的には、
・プロジェクトメンバの作業状況把握のための情報収集、進捗報告書を作成する
・配下の複数のチームに必要なプロジェクトマネジメントの管理プロセスを導入して、回していく
という事が仕事です。

部門内PMO

部門PMOはProgram Management Officeの略だと言われることがあります。

例えば「金融システム」の例です。

この金融システムは
「定期改正等のプロジェクト」
「更改プロジェクト」
「DXプロジェクト」
の3つのプロジェクトが並行して進んでいるとします。

利用者に対しては、金融システムとして安定した途切れないサービス(Programに相当)が求められます。

部門PMOには、各プロジェクトを横断的に管理・推進し、
・各プロジェクトの計画策定
・計画に基づくプロジェクトの品質・進捗・リスク・課題等の管理
・ユーザーや開発部門との各種調整
等を行うことが求められます。

全社PMO

社長や役員が長を務める経営企画室のような常設の組織で、次の4つの役目を持ちます。

第1の役目は、プロジェクトマネジメント標準(資料テンプレート、承認プロセス等)を設計・構築したり、全社共通のプロジェクト管理ツールを導入することです。

第2の役目は、構築したプロジェクトマネジメント標準を教育・トレーニングなどを行いPMに定着・浸透させることで、個々のプロジェクトがスタートする前に行います。

第3の仕事は、個々のプロジェクト期間中に行うもので、
(1)個々のプロジェクトをモニタリングし、品質を客観的にチェックし評価して改善
(2)プロジェクト間のリソースなどの調整や連携
などの支援をすることです。

第4の仕事は、個々のプロジェクトが終了した後に行うもので、
(1)プロジェクト完了時のノウハウ、教訓の蓄積
(2)ノウハウ再利用の促進
などを行います。

次のようなスキルが求められます。

PMOは色々なプロジェクトのPMとやり取りし、調整することもあるので
(1)コミュニケーションスキル
(2)見やすく利用しやすい文書を作るスキル
(3)プロジェクト管理に関する知識
などが必要です。

PMO専門職の仕事内容(個人の役割別)

ここでは、個人の役割という視点からPMOの仕事内容を見ていきましょう。

PMOエキスパート(プロジェクトチームの支援)

PMOエキスパートが支援する
「プロジェクトチームの支援」
分野では、次の2つの役目があります。

第1の役目は「スケジュール管理と報告」です。

具体的には、プロジェクトの各メンバーに仕事を割り当て、納期に間に合うようにスケジュールを管理し、チームの進捗や作業内容などをPMに逐次報告します。

メンバーに仕事を割り当てる際に特定のメンバーに作業が集中しないように心掛けます。

第2の役目は「工程管理や人員管理システムを操作」です。

具体的には、プロジェクトの工程や人員を管理するためのシステムを一括で操作します。

これは、誤入力やトラブルを防止し、管理業務を責任をもって遂行するのに役立つからです。

PMOエキスパート(開発作業に伴う基準やルールの設定と維持)

PMOエキスパートが支援する「開発作業に伴う基準やルールの設定と維持」分野では、次の4つの役目があります。

第1の役目は「開発手順書」に関するものです。

開発手法や開発プロセスが記された開発手順書を作成し、メンバーに配布しましょう。

経験豊富なPMOなら誤りや抜け漏れの無い手順書が作成でき、これに沿って作業を進めることで、プロジェクトを円滑に推進できるようになります。

第2の役目は「ドキュメントの作成基準」に関するものです。

システム開発では様々な仕様書や設計書、マニュアルなどの様々なドキュメントが作成されます。

このドキュメントは開発チームの中で参照されたり、発注元に提出したりします。

これらのドキュメントは、プロジェクトに参加する多くのメンバーが自分の担当業務に合わせて作られることが多いです。

書式や様式、用語などを統一しないで作られたドキュメントは、大変読みづらいものになり、意思疎通に支障が出ることがあります。

そこで、様式や書式、用語などに基準を設けて、メンバーに守らせることが必要です。

経験豊富なPMOなら容易に作成基準を作成できるでしょう。

第3の役目は「開発やテストに使うソフトウェアの選定基準」に関するものです。

システムの開発やテストで使っているソフトウェアがメンバーによりバラバラでは、品質の評価が正確にできません。

そのため、使うソフトウェアの選定基準を設けて、チームで統一するようにしましょう。

第4の役目は「最適な開発手法を実践」に関するものです。

複数の開発手法の中から最適な方法を選定して推奨することで、効率的な開発に導くのも役割の1つです。

PMOコンサルタント(コンサルティング)

開発プロジェクトの内容によっては、コンサルタントの役目を負うことがあります。

多くの場合は次の3種類です。

第1の役目は「プロジェクト開始作業のサポート」です。

プロジェクトを開始するにあたって、さまざまな業務が発生しますので、そのサポート要員としてです。

例えば、スケジュール作成作業の場合です。

経験の浅いメンバーばかりですと、開発スケジュールの見積もりが甘くなりがちです。

経験豊富なPMOをコンサルタントとして加えることで、適切な開発スケジュールを作成できます。

第2の役目は「リスク評価」です。

プロジェクトには未知な要素や未経験な要素が必ず含まれ、それが手戻りや納期遅れ、仕様変更などのリスクとなります。

具体的にどのような所にどのようなリスクが考えられるかを抽出し、リスクが顕在化した場合の対策をあらかじめ検討しておくことが必要です。

この作業には経験が欠かせませんから、経験豊富なPMOのサポートが求められます。

なお、リスク評価の内容はPMとも事前に共有し、トラブルが発生した場合の対策も考えておくことが望ましいです。

第3の役目は「スケジュール遅延対策」です。

予定したスケジュールよりも遅れそうな場合は、PMOはメンバーとリカバリーのための具体的な対策を検討し、それをPMに報告する役目があります。

このようなスケジュール遅れを起こす要因は、開発作業中のトラブルやメンバーの体調不良など様々ありますので、日頃からコミュニケーションを良くし、手遅れにならないように注意しましょう。

PMO専門職の仕事内容(参画の仕方別)

次に、プロジェクトへの参画の仕方の視点でPMOの仕事内容を見ていきましょう。

事務局の場合

PMOアドミニストレーターとも呼ばれる役割で、
・スケジュール管理やプロジェクト開始に関わる事務的な準備
・会議のコーディネート、メンバーの労務管理、経費処理
・勤務時間の終わりに、毎日の進捗状況を収集
などを行います。

推進役の場合

PMOエキスパートやPMOコンサルタントが努めます。

求人広告ではPMOエキスパートはPMOコンサルタントや単にPMOとも呼ばれることありますので注意して下さい。

PMOエキスパートは「プロジェクトチームの支援」や「開発作業に伴う基準やルールの設定と維持」、PMOコンサルタントは「コンサルティング」が主要任務です。

PMOエキスパートには、エンジニアとしての豊富な開発経験は勿論、事務的なスキルも求められます。

また、PMOコンサルタントには、PMOやPMとしての豊富な経験が求められます。

参謀の場合

PMOマネージャーやプロジェクト統括PMOなどとも呼ばれることもあります。

PMを補佐して、プロジェクトを構成している複数のチームを「まとめる役」です。

プロジェクトの予算管理やメンバーの教育、プロジェクトが円滑に進むためのPMへの提言などを行います。

また、ユーザーや経営層に対してプロジェクトの状況を説明することもあります。

PMOとしての豊富な経験が必要で、プロジェクト全体を俯瞰して見ることができることが求められます。

PMO導入のメリット

PMOを導入すればどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、それについて見ていきましょう。

プロジェクト管理が強化される

近年は、働き方の多様化や新技術への対応などで、PMの担うプロジェクト管理業務の負担が増えています。

PMOの導入により、PMのプロジェクト管理業務の負担が軽減され、プロジェクトを円滑に進捗させることが期待されます。

これにより、プロジェクト管理の強化がされます。

プロジェクトの成功率が上がる

PMOが加わることで
「プロジェクトの数量管理」
が強化されます。

その結果、プロジェクトの成功率を大幅に改善する効果が認められており、現状では成功率50%程度です。

換言すれば、50%は失敗しており、その原因の多くは
「要件定義が不十分」
であるとされています。

しかし、システム開発手法は従来は「ウォーターフォール開発」でしたが、最近では多くのWeb系システムが「アジャイル開発」されるようになっています。

前者は「完璧な要件定義」を前提にしていましたが、後者は「不完全な要件定義」を前提としており、この面からもプロジェクトの成功率は上昇しているはずです。

この部分に対しても、経験豊富なPMOコンサルタントによる有益なサポートが期待されます。

PMO人材の乏しい一般企業にも朗報

一般企業のIT部門やITサービスを提供する事業者が、基幹システムなどを新しく導入する際にプロジェクトが立ち上がりますが、企業の内部にはPMO人材は乏しいです。

このため、この役割を担う人材をコンサルファームやフリーランスなど外部に求める企業が増えています。

このようなプロジェクト以外にも、プロジェクトエコノミー時代を迎えて、企業活動の多くでプロジェクト化が進んでいます。

このこともPMO人材不足に拍車をかけています。

優秀なIT人材はAMELAに相談を

今回は、プロジェクトの成功率を高めるためのPMOについて見てきました。

意外にもITにおけるプロジェクトの失敗は多く、その大きな要因はマネジメントにあることがわかっていただけたと思います。

しかし、現状日本のIT業界では、中々マネジメントまでできる様なIT人材は少なく、困っている企業様も多いのではないでしょうか。

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