資金調達のための事業計画書を作成するコツは?どんなことを書けば良い?

資金調達が上手くいかない理由の1つとして、金融機関や投資家に対して事業が成功するイメージを与えられていないことが挙げられます。成功確率が高くなさそうな事業への融資や投資を渋るのは、至極当然のことです。そこで、資金調達成功の可能性を上げるための手段として考えられるのが、事業計画書の作成です。

では、なぜ事業計画書を作成すると、資金調達の成功率が上がるのでしょうか?また、事業計画書はどのようにすれば上手く作成できるのでしょうか?今回の記事では、資金調達に役立つ事業計画書について解説します。

事業計画書とは

事業計画書とはその名のとおり、どのような事業をどのように進めていくかをまとめたものです。事業計画書を作成することで、他社にも事業の概要や将来の可能性が伝わりやすくなり、その結果資金調達もしやくなります。そのため、融資や補助金などを受ける際は事業計画書を作成することが多いです。

事業計画書を作成する理由

事業計画書を作成する理由は、次の3つです。

  1. 自身のビジネスプランを客観的に見直すため
  2. 事業でどのくらいの利益が期待できるのかを明確にして資金調達の成功率を上げるため
  3. 事業計画を可視化しチームで認識を共有するため

では、それぞれについて解説します。

1.自身のビジネスプランを客観的に見直すため

事業計画書を作成することで、自身のビジネスプランを可視化でき、客観的に見直せるようになります。実際に自身の考えをアウトプットしてみるとわかりますが、ただ頭の中で考えているだけのときよりも、より自身の考えがクリアになります。例えば、事業計画での具体的な目標は何か、現時点で事業を成功させるのに現時点で何が足りないのかなどが、よりわかりやすくなるでしょう。

また事業計画書は、作成した時点だけではなく、今後事業を進めていくにあたって「事業は計画どおりに進んでいるか」を見直すときも役立ちます。事業計画書で「いつの時点でどのような目標を達成するか」というマイルストーンを設置しておくことで、事業が進んでいるのか遅れているのかが明確になります。そして、事業の計画に対する進捗状況を、他のメンバーや投資家などと共有するのにも役立つでしょう。

2.事業でどのくらいの利益が期待できるのかを明確にして資金調達の成功率を上げるため

資金調達の確率を上げるためには、金融機関や投資家の信頼を勝ち取らなければなりません。なぜなら金融機関や投資家は、貸付金が返済されなくなるリスクを極力避けたがっているためです。そこで、金融機関や投資家の信頼を勝ち取るために事業計画書を作成します。

なぜ事業計画書を作成すると金融機関や投資家の信頼が得られ、資金調達の成功率が上がるのかというと、より事業が成功する具体的なビジョンが伝わりやすくなるためです。金融機関や投資家は、利息や配当金を得て設けるために資金を貸し出すのですが、具体的にどのくらいの利益が期待できるのかわかっていた方が安心できます。そのために事業計画書を作成して、いつどのような目標を達成し、事業規模をどのくらいまで成長させ、どのくらいの利益を出せるのかを明確にするのです。

3.事業計画を可視化しチームで認識を共有するため

事業計画書を作成することで、事業計画をチーム内で共有し、認識を合わせられます。そうすることで、事業に対するチーム全員の方向性を統一できます。それにより、事業はスムーズに展開されやすくなるでしょう。

例として、「いつ何を達成するか」というマイルストーンがチーム内で共有されていることで、チームメンバーはその目標を意識して仕事ができるようになります。反対に、チームメンバーの認識が一致していなければ、定めた期限まで目標を達成できないかもしれません。事業を計画どおりに進めるためにも、事業計画書を作成してチームで共有しておきましょう。

資金調達のために事業計画書を作成するメリット

先述のとおり、事業計画書を作成することで、資金調達がしやすくなるというメリットがあります。なぜなら、事業計画が金融機関の審査担当者や投資家に伝わりやすくなり、理解を得られるためです。事業計画に対する理解が得られれば、成功する確率が高いという安心感を与えることにつながり、その結果資金を調達できる可能性が上がります。

また事業計画書を作成することで、融資のための審査期間が短くなることもメリットです。なぜなら、事業に関する情報をまとめて共有することで、コミュニケーションにかかる時間が短くなるためです。事業を進めていくうえでは、場合によってはなるべく早く資金が必要になる場面が出てくる可能性もあるため、審査期間が短くなることは魅力的です。

資金調達のための事業計画書に求められること

資金調達のための事業計画書に求められることは、いかに出資者に対し安心感を与えられるかです。しかし、出資者によって求められることが微妙に異なります。

金融機関から融資を受ける場合

金融機関に融資を求める場合は、事業計画書における損益計算書や資金計画の正確さが求められます。なぜなら金融機関は、きちんと返済期限に元本と利息の返済を受けたいためです。したがって、損益計算書が正確内容になっていることはもちろん、資金計画も数字に根拠があり、かつ実現可能性の高さを示す必要があります。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受ける場合

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、金融機関よりもさらに大きなリターンを期待して投資をします。そのため財務の健全性以外にも、ビジネスモデルの完成度や収益力の高さを求めてきます。

公的機関から助成金や補助金を受ける場合

公的機関は、将来的に国が目指す方向に事業が成長することを目指して、助成金や補助金を支給します。そのため、事業計画書の内容と国が目指す方向が一致しているかどうかが重要です。

例えば経済産業省の「IT導入補助金」は、資金力の乏しい企業のITサービス導入を支援することで、日本全体の生産性や国際競争力を向上させることを目的としています。したがって、IT導入補助金の申請に通りやすくするためには、自社にITサービスを導入することによってどのくらいの生産性向上が期待できるのかを具体的な数値で示すことが有効です。
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資金調達のための事業計画書に盛り込むべき13の基本項目

資金調達のための事業計画書に盛り込むべき基本項目は、以下のとおりです。

  1. 会社プロフィール
  2. 代表プロフィール
  3. 事業コンセプト
  4. 将来のビジョン
  5. 社内体制
  6. 市場分析
  7. 自社の強み
  8. 商品・サービスの説明
  9. 販売戦略・計画
  10. 主要な取引先・顧客
  11. 財務計画
  12. 借入状況
  13. 計画の実行手段

では、それぞれについて解説します。

1.会社プロフィール

会社プロフィールとして、以下の項目を記載します(創業前であれば予定のもの)。

  • 商号
  • 所在地
  • 役員
  • 代表者経歴
  • 株主構成
  • 電話番号
  • HPのURL
  • メールアドレス
  • 主要取引先
  • 主力商品

2.代表プロフィール

会社プロフィールのところで代表者の経歴を記載しますが、それとは別により詳細な代表プロフィールを記載します。例えば、以下が主な記載項目となります。

  • 生年月日
  • 学歴
  • 職歴
  • 保有資格
  • 事業に対する思い

3.事業コンセプト

事業コンセプトとは、簡単にいえば「なぜこの事業をおこなうのか」です。特に創業融資の場合は、この事業コンセプトや理念に共感し、融資を決めてくれるケースがあります。出資者の心を動かせるよう、力を入れて書きましょう。

4.将来のビジョン

将来のビジョンを詳細に記載することで、出資者に対し企業の将来性の高さをアピールでき、資金調達できる可能性が高まります。また、ビジョンを描くことで資金調達しやすくなるだけではなく、事業の方向性に迷った時に考えを改めるための指針となってくれます。

5.社内体制

社内体制とは、どのような人員配置や勤務体制で事業を進めるのかを明確にしたものです。意思決定のフローや、役割分担が明確になっている事業計画書は、高く評価されやすいです。そのため、第三者が組織図を見ただけでおおよそどのように事業が勧められていくのかイメージできるようにしましょう。さらに、人件費や採用計画についても記載しておくと、評価はより良くなります。

6.市場分析

市場分析についても記載しておくと、資金調達がしやすくなります。なぜなら、市場分析で競合他社に対する自社の優位性を明確にすることで、事業が成功するイメージが伝わりやすくなるためです。市場分析のための情報源としては、経済産業省や民間のシンクタンク、マーケティングリサーチ会社などが使えます。

市場分析のためには、競合他社の動向の把握が必要不可欠です。競合他社について調べる際は、いわゆる「4P」を軸とすると良いでしょう。

■4P

  • Product(商品):何を売っているのか
  • Price(価格):いくらで売っているのか
  • Place(流通):どういう流通経路で売っているのか
  • Promotion(販売戦略):どうやって売っているのか

7.自社の強み

ここでは、具体的な自社の強みについて記載します。例えば自社が持っている技術やノウハウ、企業風土、顧客に与えられる自社ならではのメリットなどです。特に顧客へのメリットは、「4C」をポイントに分析すると良いでしょう。

■4C

  • Customer Value(顧客にとっての価値)
  • Cost to the Customer(顧客の負担)
  • Convenience(利便性)
  • Communication(コミュニケーション)

8.商品・サービスの説明

商品やサービスの説明は、専門的な言葉は極力避け、誰にでもわかりやすく伝えましょう。なぜなら、金融機関の審査担当者や投資家が自社の事業について知識を持っているとは限らないためです。どのような商品やサービスを取り扱っているか上手く伝えられなければ、事業に対する理解が得られず、資金調達は難しくなります。

商品やサービスの説明について記載する際は、最低限以下の3点は記載しましょう。

  1. どのような商品・サービスであるのか
  2. ターゲットはだれか
  3. どのようにして販売するのか

上記の中でも、特に「どのようにして販売するのか」は重要です。なぜならどのようにして商品やサービスを売るのかを伝えられなければ、利益が上がるイメージも湧かず、出資者は不安になって出資したくなくなってしまうためです。出資者は計画の甘さに対して厳しいため、きちんと商品やサービスが売れるイメージを、具体的な計画を以て示す必要があります。

9.販売戦略・計画

販売戦略と計画については、より詳細に記載します。例えば、どのようにして商品やサービスのプロモーションをするのかや、いつまでにどのくらいの個数を販売する予定なのかなどが記載内容となります。また資金調達の際は、事業の安定性や継続性が問われるため、リピーターの獲得戦略についても記載しておくと尚良いです。

10.主要な取引先・顧客

主要な取引先と顧客を記載することで、企業の信頼度が高まり、資金調達がしやすくなります。それぞれの名称だけではなくチェア率も記載しておくことで、事業の透明性がより高まります。

11.財務計画

財務計画では、事業が将来どれだけの利益を上げられるのか具体的に示す必要があります。財務計画として記載する内容は、以下の5つです。

  1. 売上計画
  2. 売上原価計画
  3. 人員計画
  4. 損益計画
  5. 資金計画

では、それぞれについて解説します。

1.売上計画

売上計画とは、どのくらいの期間でどのくらいの売上出すのかを計画にしたものです。売上計画は事業ごとではなく、各商品やサービスごとに細かく立てます。売上計画ではただ単に売上の数値を出すだけではなく、見積もった売上の計算方法や、計算に用いた数値の根拠も記載した方がより具体性が増します。

2.売上原価計画

売上原価計画とは、仕入れなど売上のためにかかる費用がどのくらいの期間でどのくらい見込まれるのかを計画にしたものです。売上原価計画も売上計画と同様に、売上のためのかかる費用のみではなく、その計算方法や数値の根拠も記載した方が良いです。また売上原価計画も、事業でまとめて出すのではなく、各商品やサービスごとに出します。

3.人員計画

人員計画とは、事業に関わる人材の確保や配置を計画化したものです。なぜ人員計画まで記載するのかというと、人員の確保のためには人件費が発生するゆえ、融資の審査や投資家の判断の際に企業の費用状況計測の重要な指標となるためです。人員計画には、人員の人数以外にも職種や配置する部署。組織構造についても記載しましょう。

4.損益計画

損益計画とは、いつまで赤字が続き、いつから黒字化して利益が安定してくるのかを計画にしたものです。事業を始めたての場合は、1年目の業績予想と、その後2~3年の目標を記載しましょう。そうすることで、事業が軌道に乗った場合に事業開始時からどれくらい成長できそうなのかが、第三者に伝わりやすくなります。

損益計画を立てるのに必要な項目は、以下のとおりです。

  • 売上高
  • 売上原価
  • 販売管理費
  • 営業外損益
  • 法人税

これらを出すことで、売上総利益や営業利益などの各利益を算出できるようになります。そうすることで、事業計画書全体の信頼性が増し、資金調達に有利に働きます。

5.資金計画

資金計画とは、事業のための資金をいつどのように調達するのかを計画にしたものです。資金計画は、実際に見積もりを取るなどして根拠のある数字を示すことで、より説得力のあるものになります。また資金計画は、利益計画からはわからない「設備資金の支払や入金と出金の差異」も記載されるため、出資者にとっては重要な出資判断材料の1つです。

12.借入状況

借り入れ状況は、嘘をつかずに記載しましょう。嘘をついても必ずバレて、資金調達できる可能性はゼロになってしまいます。記載したくない場合もありますが、記載していないと不自然に思われ、結局出資者から突っ込まれることになります。

13.計画の実行手段

計画は、実行できなければ絵に描いた餅となってしまいます。そうなっては出資者も損をしてしまうリスクがあり、出資を渋ってしまうため、具体的な計画の実行手段を記載しましょう。例えば事業開始から何年目にいくらの売上を達成するか、どの地域に何店舗出すかなどを記載します。

資金調達のための事業計画書を書くときに押さえるべき7つのポイント

資金調達のための事業計画書を書くときに押さえるべきポイントは、以下の7つです。

  1. 訴求内容を簡潔に整理する
  2. 現実的な計画を立てる
  3. できるだけ具体的に書く
  4. 図や表などを挿入して分かりやすくする
  5. 統一されたフォーマットで書く
  6. 数値的根拠を記載する
  7. 第三者に説明してフィードバックをもらう

では、それぞれについて解説します。

1.訴求内容を簡潔に整理する

事業計画書の訴求内容は、簡潔に整理しましょう。なぜならダラダラと長い説明よりも、簡潔な内容の方が相手に伝えたいことが伝わりやすくなるためです。目安としては、1分程度でプレゼンできる内容にすることが理想です。

1分程度でプレゼンできる内容にまとめようとすると、必要な部分と不必要な内容が見えてくるはずです。不必要な内容は、相手に訴求する際のノイズとなりますので、思い切って削除しましょう。

2.現実的な計画を立てる

事業計画書では、現実的な計画を立てる必要があります。なぜなら実現可能性の低い計画は、金融機関や投資家が安心して融資や投資をできる材料とはならないためです。また実現可能性の低い計画を見せてしまうことで、ビジネスについてよくわかっていないという悪印象を与えてしまう可能性もあります。

実現可能性の低い計画を立ててもメリットはないため、強気に計画を立てるのではなく、地に足をつけて実現可能性の高い計画を立てましょう。計画はむしろ厳しめ(理想通りに事業が成長しないような見通しを立てるという意味で)に立てた方が良いです。

3.できるだけ具体的に書く

事業計画書に記載する内容は、なるべく具体的に書きましょう。なぜなら具体的に書くことで、事業計画書を見る人が内容を理解しやすくなり、出資してもらえる可能性が上がるためです。また具体性のある内容の方が、実現可能性が高そうな印象を与えられます。そのため、事業計画書を一旦作成した後は、抽象的な表現や曖昧な表現がないかどうか確認しましょう。

4.図や表などを挿入して分かりやすくする

説明は基本的に文章でおこないますが、場合によっては図や表を使った方がわかりやすくなることがあります。例えば、数値などのデータや業務のフローは、図や表にした方がわかりやすいでしょう。また図や表を用いることで視覚的にも見やすくなり、読む側の負担を軽減できるため心象が良くなります。

7.統一されたフォーマットで書く

フォーマットは、必ず統一させましょう。なぜならフォーマットが整っていないと、読みづらい事業計画書になってしまい、心象を悪くしてしまうためです。例えば文字のフォントについては、タイトルは○pt、本文は○ptなどのルールを決めましょう。

8.数値的根拠を記載する

事業計画書に記載する計画には、数値的根拠を持たせるとより説得力が増します。例えば、「〇月までに売上〇%増」という目標を設定するなら、具体的に「商品単価〇円、販売数〇点、合計〇円になるので売上が〇%増加する」などと記載しましょう。根拠を記載するのは簡単なことではありませんし、手間もかかりますが、事業計画書の質を高めて資金調達の成功確率を上げたいならしっかり取り組みたところです。

9.第三者に説明してフィードバックをもらう

事業計画書を一通り作成してチェックをおこなったら、第三者に説明してフィードバックをもらいましょう。なぜなら第三者の視点を取り入れることで、1人でチェックをおこなう際の視点の偏りが解消されたり、新たな気づきが得られたりするためです。特に、周りに金融機関の知人や公認会計士などの専門家がいる場合は、心強い味方となってくれます。

事業計画書の質を高めて資金調達の成功確率を上げよう

資金調達の成功確率は、事業計画書の質によって大きく左右されます。そのため、今回お話した内容を参考に、事業計画書のブラッシュアップをしてみてください。

また当社では、新事業立ち上げのためのサポートを承っています。資金調達に関するアドバイスも可能です。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。